2007.4

地下水管理と住民の取り組み

                          環境カウンセラー 木村正孝
                        (NPO法人環境安全センター理事)


はじめに

 京都府宇治市の地域で、経費節減、地下水汚染を理由として浄水場廃止―良質な地下水―の給水停止問題が起こっている。住民のささやかな願いと長年の努力を無視し、過去の歴史を忘れ、今日の地球環境問題の重要な課題である水問題への見識を欠く行政施策が行われようとしている。
 この地域は、私が55年間住み続けてきた場所である。私は幼い頃からこの水で育ってきた。この美味しい自然の恵みの水を守るために、多くの先人達がたゆまぬ努力をしてきたことを知っている。今は亡き私の母もその先達の一人である。   
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1 日産車体の浄水場から市水道へ

 この地域は、当初、日本国策航業―現日産車体株式会社(以下日産車体)―の社宅で、その後住民が買い取り、改築などしながら住み続けているコミュニテイである。
 この地域の飲料水は長年にわたり日産車体が、井戸水(地下水)の浄水場を設置し供給していた。だが、日産車体は度々、料金値上げをし、また浄水場の廃止を計画していた。地元住民はそのたびに様々な知恵を出し合い、協力しあって日産車体と協議を繰り返し、裁判闘争も辞さず、この水を守ってきた。値上げ理由は、施設の改修や人件費の高騰。浄水場の廃止理由は、水不足や水の汚染、人手不足(管理人がいない)、施設の老朽化などであった。水不足がひどい時は、夏季昼間の断水は常態化。一晩かけて翌日分を貯め水したり、入浴も制限。市などの給水車のお世話になったこともある。この断水状態に耐えきれず、市水道に切り替える家庭もあった。
 それでもこの地域の多くの住民は、琵琶湖・宇治川を水源とする天ケ瀬からの市水道ではなく、この水を飲み続けることを選んだ。なによりこの水が、夏は冷たく冬は暖かい井戸水で、良質な自然の恵みの水であることを知っていたからである。
 昭和40年代、会社の経営問題等からあらためて日産車体が浄水場廃止を打ち出した。地元では自治会を中心に、水道対策委員会を設置。ある時には東京の日産車体本社にも出向き、また宇治市にも浄水場の存続を要望するなどして取り組みを続けた。
 その結果、昭和53年、地下水供給を存続するかたちで、この浄水場は宇治市に移管された。当時の市長の英断で、浄水場は「市の自己水」に位置づけられたのである。11年間かけて地元住民が取り組んだ成果であった。
 当時この解決内容は「三者一両損」と表現され、日産車体・宇治市・地元住民それぞれが、応分の負担をするというものであった。具体的には、日産車体は、宇治市に2,000万円の寄付と浄水場の土地を貸与。(その後日産車体が市に譲渡したので現在は市有地)。市は、水量確保とより良い水質確保のため、水源深度を掘り下げ、ポンプを更新。住民は、市水道本管から各家に給水管を引き込むことと料金値上げ。(昭和53年に締結された協定書―覚書)。住民は、市水道への移管に伴う引き込み設備費用のため、積立金を自治会で実施したりした。また水道料金は約3倍になった。
 以後この地域の飲み水は、自然の恵みの良質な地下水を、親の代から子の代へ、さらに孫の代へと、今日まで飲みつがれてきている。
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2 市水道の概要と浄水場の現状

 宇治市における給水は、購入している「府営水」(琵琶湖―宇治川が原水)と市内6カ所の「自己水」(地下水)でまかなわれている。1日の給水能力は95,300トン。内訳は、府営水62,800トンと自己水32,500トンで、その比率は約2:1である。市は、自己水比率三分の一確保を基本方針としている。その概要は資料1の通りである。

資料1 「市議会建設水道常任委員会資料」平成18年12月21日 

現在市水道部が、廃止・休止・統合等を検討対象にしているのは、市内全域の6浄水場のうち5浄水場である。市水道部は、給水に問題はないが、地下水(原水)の汚染が進行しているとして、次のように述べている。

資料2 「宇治市水道部における地下水汚染対策について」平成18年11月7日
1 開浄水場
平成17年度の水質は、原水でトリクロロエチレンが最大値0.092mg/L、平均値0.054mg/Lと環境基準値0.03mg/Lを超過している。テトラクロロエチレンは最大値0.011mg/L、平均値0.007 mg/Lで、最大値で環境基準値の0.01 mg/Lを超過している。給水では基準値をクリアしているが、原水で環境基準値を超過している状況から、18年度に廃止の検討に入り、19年度の早い時期に廃止の決定を行う。
2 槙島浄水場
  平成17年度の水質は、原水でテトラクロロエチレンが平均値で0.003 mg/Lで環境基準値の三分の一程度検出。シス1・2ジクロロエチレンが微量検出。給水では基準値をクリアしているが、原水は6浄水場の中でも水質の悪化が進んでおり、平成18年度中に休止措置を行う。
3 神明浄水場・奥広野浄水場
  両浄水場とも、今後、水質悪化の進行が懸念される。両浄水場の統合も含め検討を進める。
4 西小倉浄水場  
水質悪化が進んでいるが、当面現行の運転を継続する。施設内に府営水道5,000m3の受水機能があるので、水質悪化が進行することになれば、直ちに府営水の利用を検討し対処する。
5 宇治浄水場  存 続
                                     ※傍点は筆者

この資料には、廃止・休止対象の1、2「開」「槙島浄水場」の原水については、環境基準値を超える物質名と数値を明記しているが、3、4の浄水場については、水質悪化の進行としか書かれていない。また5については、存続だけである。
しかし筆者が10数年間のデータを、市情報公開制度により入手した水質検査結果(原水)からみると、4「西小倉浄水場」においては、テトラクロロエチレン、鉄及びその化合物、マンガン及びその化合物で、環境基準値を超える数値が検出。全く触れられていない5「宇治浄水場」でも、四塩化炭素やトリクロロエチレンが検出され、マンガン及びその化合物が、10年間継続して環境基準値を超え、一般細菌や大腸菌郡も数年間検出されている(基準値は「検出されないこと」)。水質悪化を理由に、統合対象になっている3「神明浄水場・奥広野浄水場」の原水は、環境基準値を超える数値は全く見あたらない。
さらに廃止・休止後切り替え予定の「府営水」においても、一般細菌、大腸菌郡、色度、濁度が10年間継続して環境基準値を超えている。また給水において、発ガン性の一つの指標である「総トリハロメタン」値が、他の浄水場に比べ高いなど問題点がある。(住民説明会でこの事実を指摘。市水道部は10年間のデータを公開、この事実を認めた。)
以上のことからみれば、市水道部は「市民に安心・安全の水を供給する立場を最優先に、府営水へのシフト替えをさらに進めることが必要と考えられる」としているが、「水質」を問題として、浄水場の廃止・休止・統合を検討しているのではないことが推測される。
さらにいえば、当初から開、槙島の浄水場廃止・休止ありきから考えているふしがある。
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3 市の決定と議会への報告


市水道部は、突然、平成18年12月21日、市議会建設水道常任委員会に、平成19年3月末日をもって、槙島・開浄水場の2浄水場を休止し、府営水に切り替えるとの方針を報告した。休止理由は、経費と水質の2点で、水質については、環境省の指導があったと説明。

資料3 建設水道常任委員会資料(資料1とおなじ)
1) 両浄水場の給水人口と戸数、給水能力と1日配水量
槙島浄水場 1,333戸 3,402人 計画能力2,7003/日 平均配水量8103 
 開浄水場   910戸 2,324人 計画能力1,5003/日 平均配水量6903  
2) 休止理由
① 更新費用の増大(各設備更新費用合計)
槙島浄水場 7,300万円 建設後23年経過し施設の老朽化が進行。
開浄水場  6,700万円 建設後28年経過し施設の老朽化が進行。
② 地下水の水質悪化
槙島浄水場 浄水において基準を満たしているが、原水に鉄・マンガン・テトラクロロエチレン等が含まれている。薬品使用量は宇治浄水場の約2.2倍。
開浄水場  浄水においては基準を満たしているが、テトラクロロエチレン・トリクロエチレン等が含まれている。

◆この資料では、開浄水場も休止と記載。さらに、自己水の計画能力が4,2003減少するが、現状能力を確保する方向で検討すると付記されている。(資料2では開浄水場は廃止と記載。また、廃止・休止後の措置として、府営水へのシフト替えが必要とあり、自己水確保は全く触れられていなかった。)
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4 住民・自治会の動きと市水道部の対応

 平成18年12月末、あわただしい年の瀬に、地元は初めて浄水場休止の情報を知った。住民が大切に守ってきた地下水の給水停止、府営水へ切り替える方針を打ち出した市水道部に対し、開自治連合会(650世帯)は、1月初めから浄水場継続を求める署名を開始。同じ水を飲んでいる隣接の2自治会にも署名運動を呼びかけ、連携した動きに。
地元に対する市水道部の対応は次のようなものである。

1)1月22日 市水道部から責任者2人が、自治連合会長に初めて説明に。
休止理由は、原水の水質悪化の一点張り。議会報告にあった経費の問題は一切触れず。
突然の決定は、環境省の指導があったためで、安心安全な水を供給する立場を強調。
2)1月25日 京都新聞に廃止の記事。
3)2月27日 地元紙「城南新報」に同様の記事。
上記2紙の報道は市水道部の提供情報に基づくもので、水質悪化を印象づけ、休止の正当性をアピール、世論形成を意図していることが伺える。自治連合会長には全く説明のなかった老朽化と経費も休止の理由としている。
4)3月5日 第1回地元住民への説明会
  市水道部は「給水系統切り替えのお知らせ」と題する文書を配布。水道水の基準値を超えた環境汚染物質が検出している、地下水質改善の見通しが立たない状況にあるなどと、根拠のない休止理由をあげると共に、口頭でも同様のことを説明。
しかし多くの住民から、「昨日まで飲んでいた水を急に危険と言われ驚いた」「発ガン物質云々で住民を脅しているとしか思えない」「給水に問題がないのになぜ休止なのか」「環境省の指導は本当にあったのか」「防災の観点からも浄水場は残すべき」など質問、水質データに基づく反論や意見が相次ぎ、返答に窮する。住民は、一方的に休止しないこと、過去10年間の水質検査結果、原水の汚染原因調査、他浄水場や府営水の水質及び経費等資料を要求。この結果、市水道部は、「地元住民の理解がないままに、一方的に3月末をもって休止しない」ことを確約。また、水質、経費資料を次回に提出すること、議事録を作成して提出することなどを約束。
5)3月9日 市議会予算特別委員会(水道部局審査)
数人の議員が質問と意見。議員の追及の結果、開浄水場を急遽休止する理由としていた、「環境省の指導」はなかったことを認め、陳謝。また浄水場原水の汚染原因調査を実施すると答弁。これらのことは翌日、地方紙2紙で報じられた。
6)4月1日 第2回地元住民への説明会
市水道部は、前回約束の水質や経費資料、議事録等を提出。環境省の指導はなかったことも明らかにした。この結果、前回に筆者や住民が指摘した原水の水質悪化が進行している事実はないこと、他の浄水場でも環境基準を超える物質が継続的に検出されていること(市水道部は11月以来一貫してこの事実を隠している)など、休止理由の矛盾が浮き彫りに。市水道部は再び立ち往生、同じ説明を繰り返すばかり。休止は決定されたことで変更できないとも。自治連合会は、休止の根拠はないこと、住民の質問や問題点の指摘にきちんと返答できず、同じ説明を繰り返すばかりでは、説明責任を果たしていないこと。新しい提案をしない限り、次回説明会は行わないと市水道部に通告。また「一方的に休止・切り替えしないことを再確認」。
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5 地元住民・自治会の主張

1) 私たち住民、開町自治連合会は、夏は冷たく冬は暖かい自然の恵みである「良質な水」を飲み続けるために、数十年間努力して参りました。施設の老朽化や水量不足、地下水汚染の進行などを理由とする日産車体の給水停止の意向に際し、夏の断水への協力や節水、また裁判闘争なども通じて、この大切な地下水を守り続けてきました。その結果、当時の市長のご英断により、地下水を残したまま、市水道に切り替える合意を得て、昭和53年、宇治市、日産車体、自治会の3者協定(覚書)を締結し、今日に至っております。
2)ところが、市水道部は、住民には何の説明もないまま突然、昨年12月、開・槙島浄水場を休止し府営水に切り替える方針を、市議会建設水道常任委員会に報告されました。その後、市水道部から、住民説明会が2回ありましたが、休止に対し、地元住民が納得できる説明が十分になされないまま、今日を迎えています。
3)浄水場存続を願う私たちの考え
① 給水には全く問題がありません。
井戸水を浄化した給水は、水質基準値を十分クリアしており、飲み水として全く問題はありません。市水道部も問題なしとして、この10数年間給水を続けてきました。
② 原水の水質は10年間同じです。
休止理由の「原水が悪化している」との市水道部の説明は、事実ではありません。水質検査結果からも、この10年間、水質が悪化している状況は見られません。
むしろ自然界にはない汚染物質が10年前から検出している事実を知りながら、放置してきたことが問題です。汚染物質の原因究明や汚染源の特定、汚染者負担の原則に基づく改善指導等を図ることが、行政の役割ではないでしょうか。
③ 琵琶湖の水質が悪化する兆しがあります。
地球温暖化、暖冬の影響により降雪量が激減した結果、琵琶湖の水質汚濁が懸念されています。琵琶湖を水源とする府営原水の汚染を懸念するのは杞憂でしょうか。
④ 防災の観点からも、地下水保全は重要です。
地元にとり地震や水道管の破裂など災害・緊急時対策として、「自己水」確保は重要な意味を持つものです。自己水確保を方針としながら、浄水場をなぜ廃止するのでしょう。(一方を閉鎖し、もう一方を拡張するのはなぜでしょうか。)
⑤ 経費は高くなる
住民説明会において市水道部が明らかにされたところでは、開浄水場のランニングコストは24円、切り替え予定の府営水は70円とのことです。わざわざ高い府営水を購入するのはなぜでしょうか。
⑥ 改修に要する費用は、6年でペイ
老朽化した施設の改修費用は、6,700万円と説明されています。ランニングコストで府営水との差額は、年間1,150万円。改修費用は6年でペイできるものです。
⑦ 環境省の指導はなかった。
突然、急な休止決定を行った理由にあげられた「環境省の指導」はなかったことが、議会予算委員会において明らかになっています。
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6 問題の所在

1)唐突な決定 
今回の市水道部の決定は、あまりにも唐突である。昭和53年協定の趣旨にも反する。
一般的に考えれば、翌年3月末に休止する場合、よほど緊急性を要することが発生したと考えられる。ところが、その理由は、市水道部が10年前から検出を把握しており、給水に問題なしとしてきたトリクロロエチレン等発ガン性2物質が原水に含まれていることなのである。
事実、市水道部発行の報告書(各年度年4回検査。「水質検査結果について」)には、「原水の一部で基準値を超えましたが、浄水及び給水では全て基準値内で異常ありません」と記載されている。(この報告書をみれば、テトラクロロエチレンは、10年間継続的に基準値を超えているのではない事実も判明。)
また報告書には、開・槙島以外の浄水場原水にも、トリクロロエチレンよりも発ガン性が高い「四塩化炭素」が検出されていることや、鉄・マンガン・一般細菌などが基準値を超えて、数年~10年間検出している事実も明記されているのである。
さらに、突然に決定した理由としていた「環境省の指導」はなかったことが、議会での追及で明らかになり、ウソがばれている。(市水道部は思い違いと述べているが、水道水の管轄は厚生労働省で、環境省ではないことを知らなかったというのだろうか。)一体、何故このような決定が、急遽されたのか。この謎を地元住民は知りたいと思っている。
2)データの意識的操作
市水道部は、原水中の発ガン性物質存在を金科玉条に、またそれを強調するために、データの意識的操作を行っている。水質悪化進行を印象づけるため、近年5年間だけのデータを使用したり、突出した数値だけを強調している。さらに公表資料の一覧表では、数値を1桁多めに記載した部分もある。これらをもとに水質が年々悪化、改善の見通しはない(汚染調査をしておらず、根拠がない)と発表している。しかし、住民説明会で市水道部も認めたように、10年間のデータでみれば、水質の悪化が進行している事実はない。
3)浄化装置で解決可能でも、給水停止が必要か
「飲み水の原水に発ガン性物質がある。発ガン性物質はないに越したことはない。府営水という代替水があるからいいではないか。」この論理が、正確な情報を得ていない他の地域の住民や議員などに、給水停止やむなしと納得させているようである。
しかし、例えば府営水の原水―琵琶湖・宇治川水に、環境基準値を超える発ガン性物質が検出された場合、直ちに給水停止をするだろうか。むしろ浄水機能を向上させる対策を講じるのではないかと、地元住民は考える。
事実、問題になっている物質は、「曝気処理」で解決できるのである。薬品もいらない。このことは市水道部担当者も認めている。平成3年度に開浄水場に曝気処理―エアレーション装置が設置され、その結果、「エアレーション装置の効果で、トリクロロエチレンの検出量が大幅に改善された」と報告書でも明らかにされている。
(テトラクロロエチレンは、継続して検出されていないことや、他の浄水場でも検出されている事実もあり、徐々に、この問題―休止理由―から、はずされてきているようである。)
4) 飲み水の水質は最高に良い
 開浄水場からの給水は、全水質項目において良質である。問題の2物質でも水質基準値を10分の1以下で、発ガン性指標の一つである「総トリハロメタン」(塩素処理で生成される発ガン性のクロロホルム及びその構造のよく似た3種の化合物)は、検出されておらず、原水中の汚濁物質が少ないことを物語っている。塩素と曝気処理だけの給水が、切り替え予定の府営水(オゾン・活性炭使用の高度処理水―市水道部)よりも良いのである。
さらに給水の質にとって、配管経路が短いことは、大きな利点である。
5)環境基準は行政目標、なぜ給水停止の根拠に 
① 地下水原水で検出の発ガン性物質―トリクロロエチレンの環境基準を理由に、市水道部は給水停止を決定している。しかし、環境基準は、水質保全のための基準であり、維持するための「行政上の施策の達成目標である。」
環境省は、「地下水の水質汚濁に係る環境基準の取扱いについて」で、次のように通知している。「地下水の重要性及び近年における地下水の水質汚濁の状況等を踏まえ、地下水の水質保全のための諸施策を総合的な観点から強力に推進する際における共通の行政目標として設定されたものである。(「環境基準について」各都道府県知事・各政令市長あて環境事務次官通知 環水管79号)
市が求められているのは、地下水保全のための政策である。汚染の原因調査と原因の究明。汚染源を特定し、汚染者負担の原則に基づく改善指導等の施策である。
② 発ガン性物質云々といえば納得されやすい。しかし、「水」の専門家で水処理関係者には著名な中西準子横浜国立大学環境科学研究センター教授は次のように述べる。『「発ガン性物質は少量でも危険があるから駄目」という考え方は、「非ガン性物質は、何種類接種してもそれぞれがADI以下なら安全」という考え方の裏返しであるが、これは事実に反する。』『総合して毒性を評価するという考え方がないからである』(水の環境戦略・岩波書店・1994.7)飲料水における毒性の問題は、一つ一つの物質を問題にするだけでは、本当の安全性とは言えないのである。
※ADI―人体に影響のでない量。1日許容摂取量。
※環境基準における数値は、1日2リットルの水を70年間飲み続けて、10万人に一人が発ガン性の確率。
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おわりに

 命を育む水は、この地球上にわずか3%しかない。そのうち氷河の氷の部分が一番多く、次に地下水、湖。川の水はたった0.0001%。地下水の希少価値を再確認することが必要だ。
水は文化のもとでもある。美味しい京都の地下水が、京料理を維持してきた。
「地下水管理の向上のためには、地域の多様性(地下水の物理的特性や社会経済状況)を考慮した上で、科学的知見や知識を共有していくこと、専門家を含め行政とステークホルダーの協同が、重要で有効」(第4回世界水フォーラム提言 2006年3月17日 メキシコシテイ)と考えられている。
開浄水場だけでなく、市内全浄水場を存続させるためには、行政の見識と受益者住民のつよい意志が必要だ。地下水が地球上の重要な資源であることを関係者が再確認し、地下水保全と管理の向上に向け、ステークホルダーの協同を模索したい。
資料4  開浄水場 原水 水質検査結果
最終更新:2009年01月27日 12:26