SS1 ヒートと酒と甘々男
某日、夕方
その日、五月の大型連休に合わせて、父方の親戚がうちにやってきた。
いつもなら父親の生家まで家族総出で出掛けるところなのだが、
今年は折悪く父の休暇が潰れてしまい、急遽叔父夫婦とその親族がこちらへ来ることになったのだ。
今年は折悪く父の休暇が潰れてしまい、急遽叔父夫婦とその親族がこちらへ来ることになったのだ。
年に数回顔合わせする程度の仲だが、それでも付き合いを円滑にするためには必要なイベントなのだろう。
それは分かる、分かるのだが……
それは分かる、分かるのだが……
女「お酌しまああああああああす!」
叔父「おぉ、ありがとう女ちゃん」
叔父「おぉ、ありがとう女ちゃん」
なんでこいつが、滅多に合わない親戚連中の輪の中にいるんだろう。
母「だって、ヒートちゃんはもう家族の一員みたいなもんじゃない。
だったら、みんなにも紹介してあげないとねぇ」
だったら、みんなにも紹介してあげないとねぇ」
どうやらヒートがこの場にいるのは、母さんの画策らしい。
女「男おおおおおおおお、飲んでるかああああああああ!?」
男「飲んでるよ。てか、お前人んちなんだからもっと遠慮しろよ」
叔父「いいじゃないか。どうせ近い将来親戚になるんだから、もっと馴れ馴れしくていいくらいだ」
女「いやー、あっはっはっは!!」
酔ってるせいで、叔父さんの台詞の意味もよく分からなかったらしいヒートが、
顔を髪色と同じように真っ赤にしながら笑う。
自分が未成年だという自覚は、そこから微塵も見てとれない。
顔を髪色と同じように真っ赤にしながら笑う。
自分が未成年だという自覚は、そこから微塵も見てとれない。
ざわざわしい会話、無理にでも飲まなければならない雰囲気、
人となりもよく知らない相手との付き合い方。
人となりもよく知らない相手との付き合い方。
俺は、まだ酒の味も知らない子供のころから、大勢での酒宴が好きではなかった。
あまりの騒々しさにうんざりした俺は、トイレに立つふりをして自室へと戻ることにした。
その途中、台所へ寄ってビールを二、三本ちょろまかす。
酒が飲めない訳ではない。どうも俺は、先天的に酔いに強い体質らしい。
カキリと音をさせてプルタブを開き、ビールを喉に流し込む。
その爽快感を一人で楽しんでいると、部屋の外から誰かの声がした。
その爽快感を一人で楽しんでいると、部屋の外から誰かの声がした。
「男ー? いるのかー?」
酔っていても分かるその特徴的な声。……ヒートの奴だ。俺がいなくなったことに、早くも気づいたのだろうか。
俺関連の事柄に対する勘の良さには、いっそ感心さえしてしまう。
俺関連の事柄に対する勘の良さには、いっそ感心さえしてしまう。
「あぁ、いるよ。勝手に入れ」
今さら足掻いても仕方ない。
二人きりになるのは望ましくなかったが、俺はヒートを部屋へ招き入れた。
二人きりになるのは望ましくなかったが、俺はヒートを部屋へ招き入れた。
女「やっぱりここにいたか!」
男「まるで知ってたみたいな言い方だな」
女「男は騒がしいの苦手だからな! きっと自分の部屋にいるだろうって思ってた!」
そうまで気遣えるなら、何故普段から静かにしてくれないのだろう。
男「で? お前、何しに来たんだ」
女「男といっしょに酒が飲みたかった! いっぱいお酌してやるから、飲もうぜ!」
男「お酌っつっても、グラスなんかないぞ」
女「抜かりはない、ビールとグラスは持ってきた!!」
男「人んちなのに用意周到だな、おい」
女「ふへへへ」
いつもならこの段階で冷たくあしらうのが常套なのだが、その日は酔っていたせいもあり
男「……分かった、、飲もう」
そう、軽々しく了承してしまった。
女「ささ、グッと行けグッと!!」
男「お前、おっさんみたいに酒を進めるんだな」
女「男の叔父さんの口調が移ったんだな、きっと!」
そう言いながらヒートは俺と自分のグラスにビールを注ぐ。
女「かんぱーい!」
男「……乾杯」
女「……ぷはーっ! やっぱり男と飲む酒は違うな!」
男「何も違わないだろ?」
女「そんなことないぞ! 好きな人と飲むビールは、酔いが早く進むんだ!」
そんな馬鹿な、と言おうとして俺はふと思う。
恋しい人間と一緒にいれば、脈も早くなろうし緊張もするだろう。そうなれば、確かに酒も早く回るのかもしれない。
恋しい人間と一緒にいれば、脈も早くなろうし緊張もするだろう。そうなれば、確かに酒も早く回るのかもしれない。
女「私だって、いつもはビールの四本や五本で酔ったりしないぞ? それがこうなるのは、男と一緒に飲んでるからさ!!」
男「お前、未成年者だろうが。そんなに頻繁に酒なんか飲むなよ」
女「私のこと心配してくれてるのか!? 嬉しいぞ男おおおおおおおおおおおお!」
男「……まぁ、俺も人のことは言えないか」
俺の飲酒経験は、友とふざけ半分が二度、父の晩酌の付き合いが数回程度だ。
決して多いとは言わないが、それでもこいつより早く潰れるということはないだろう。
決して多いとは言わないが、それでもこいつより早く潰れるということはないだろう。
しかし、俺の思惑とは逆に、予想外に酔いの回りは早かった。
男「う……」
女「どうした男ぉ、目が充血してるぞ?」
男「ビールが効いてきたのかもしれないな、いつもならこんなことはないんだが……」
女「意外にだらしないな、私の方が飲んでるじゃないか!」
その台詞にムッとする暇もなく、ヒートは俺の膝にごろりと頭を預けた。
男「おいっ……」
女「にゃはは、男は今酔っぱらってるから、好き放題し放題だな!!」
その行動も酔いから来てることに気づかず、ヒートがそう言う。
残念なことに、確かに今の俺には、いつものようにヒートを冷遇する気力が残っていなかった。
残念なことに、確かに今の俺には、いつものようにヒートを冷遇する気力が残っていなかった。
女「ふぁ……何か、眠くなってきたぞ……」
男「お前、間違ってもそこで寝るなよ?」
……駄目だ、悪態にさえ平常時のような鋭さがない。
酔って鈍った頭脳では、こいつの暴挙を防ぐ手立てはないのかもしれなかった。
酔って鈍った頭脳では、こいつの暴挙を防ぐ手立てはないのかもしれなかった。
ヒートを膝枕したまま、俺は精一杯の理性を振り絞って考える。
俺は一体、こいつとどういう関係になりたいのだろう。
俺は一体、こいつとどういう関係になりたいのだろう。
恐らくこいつは今、俺にとって肉親以上に近しい異性だろう。それは、俺がこいつにちょっかいを出すからに他ならない。
本気でウザいと思っているなら、いつも他人にしているようにもっと突き離して接すればいいだけのはずだ。
なぜ俺は、こいつにそれをしないのだろう。
本気でウザいと思っているなら、いつも他人にしているようにもっと突き離して接すればいいだけのはずだ。
なぜ俺は、こいつにそれをしないのだろう。
- 『こいつに構ってしまうのは、こいつに構って欲しいから』
酔っている割には嫌に客観的な結論を、俺の脳は出した。
ヒートの言を借りれば、俺の酔いが早かったのも、好きな相手と
一緒に飲んでいたからだということになるのだろう。
不愉快だが、その結論を否定できない俺がいる。
ヒートの言を借りれば、俺の酔いが早かったのも、好きな相手と
一緒に飲んでいたからだということになるのだろう。
不愉快だが、その結論を否定できない俺がいる。
認めたくはない。けれど俺は、やっぱりこいつのことが……
男「……馬鹿か俺は。おい、起きろヒート」
女「うにゃ……?」
なんだかもう、考えることすら面倒だ。
それならいっそ、全てを酔った勢いにして、洗いざらい告白してしまおう。
それならいっそ、全てを酔った勢いにして、洗いざらい告白してしまおう。
女「うぁ……どーしたんだ、男?」
男「ヒート、今からゲームしようぜ。俺は今からお前の言ったことを鸚鵡返し
に繰り返すから、俺にお前が言った以外のことを喋らせてみろよ」
男「ヒート、今からゲームしようぜ。俺は今からお前の言ったことを鸚鵡返し
に繰り返すから、俺にお前が言った以外のことを喋らせてみろよ」
女「何なんだ、とーとつに……私は寝起きだぞ?」
男「何なんだ、唐突に。私は寝起きだぞ?」
男「何なんだ、唐突に。私は寝起きだぞ?」
女「あ、そういうことか…要するに男が、私の真似っこをするんだな?」
男「あ、そういうことか。要するに男が私の真似っこをするんだな?」
男「あ、そういうことか。要するに男が私の真似っこをするんだな?」
女「……」
男「……」
男「……」
女「…ヒート、愛してる」
男「…ヒート、愛してる」
男「…ヒート、愛してる」
女「……ッッ! 大好きだ、一生側にいる、もう絶対手離さない、お前は俺のものだ!!」
男「大好きだ、一生側にいる、もう絶対手離さない、お前は俺のものだ」
男「大好きだ、一生側にいる、もう絶対手離さない、お前は俺のものだ」
女「うわあああああああん! 大好きだ男おおおおおおおおおおおお!!」
男「俺も、お前が好きだ」
男「俺も、お前が好きだ」
そうだ。どうせこれは、酔漢の戯言なのだ。
それでヒートが喜ぶなら、いくらでも口にしてやろうじゃないか。
それでヒートが喜ぶなら、いくらでも口にしてやろうじゃないか。
女「男……今、私の真似しなかったぞ」
男「あぁそうだな、俺の負けだ。お前にはいつも敵わないよ」
男「あぁそうだな、俺の負けだ。お前にはいつも敵わないよ」
そう言って俺たちは、深く、深く互いを抱きしめあった。
そのあとのことは、脳が記憶することを拒んだためか、よく覚えていない。
翌早朝、ヒートと手を繋いだまま、上半身を裸にされた状態で目を覚ますまで、
昨日自分が何をしたか全く思い出せなかった。
昨日自分が何をしたか全く思い出せなかった。
ふと姿見を見ると、首筋や胸に無数のキスマークが見える。
一瞬かなりの焦りを覚えたが、ヒートの着衣が乱れていないところを見ると
一方的に攻め込まれただけで、最後の一線は越えなかったようだ。
ナイス昨日の俺。
一瞬かなりの焦りを覚えたが、ヒートの着衣が乱れていないところを見ると
一方的に攻め込まれただけで、最後の一線は越えなかったようだ。
ナイス昨日の俺。
因みに、母さんと妹は、ヒートが途中でいなくなったことに気付いていたらしく、
「俺が男になった記念だ」とか言って夕飯に赤飯を炊いてくれた。なんのこっちゃ。
「俺が男になった記念だ」とか言って夕飯に赤飯を炊いてくれた。なんのこっちゃ。
男「……とまぁGW中、俺とヒートの間に起こったことはそれが全てだ」
友「ふむふむ」
男「それがだ。それがなんで、俺とヒートが出来てるって噂になってるんだよ!?」
友「いいじゃん、ほとんど恋人みたいなもんだったんだし」
男「よくない! 大体誰だ、こんな根も葉もない噂流したのは!?」
女友「……」
【情報漏洩経路】 男母発 → 女友母経由女友行き → クラスの女子着
友「二人して寝た仲なんだし、あながち間違いでもないじゃないか」
男「だから寝たとか言うなよ、なおさら誤解されるだろ!」
女友(ごめんね、私がつい口を滑らしたせいで……)
女「たったたた大変だ男おおおおおおおおおおおおおおお!!」
男「うるさい、こっちはお前に言われるまでもなく大変なんだよ」
女「それどころじゃないんだ! 今誰かが話してたけど、私はいつの間にか男の子をお腹に宿してたらしいぞ!!」
男「なにぃっ!?」
女「ビックリしたぞ、私の知らないうちに子供なんて! でも、男との子供なら、私は全然嫌じゃないし……」モジモジ
男「だあぁっ、モジモジすんな! 余計誤解が深まるだろうが!!」
女「そんな! あの日あの時愛してるって言ったのは嘘だったのか!?」
男「嘘じゃないから問題なんだろうが!!」
男「だから寝たとか言うなよ、なおさら誤解されるだろ!」
女友(ごめんね、私がつい口を滑らしたせいで……)
女「たったたた大変だ男おおおおおおおおおおおおおおお!!」
男「うるさい、こっちはお前に言われるまでもなく大変なんだよ」
女「それどころじゃないんだ! 今誰かが話してたけど、私はいつの間にか男の子をお腹に宿してたらしいぞ!!」
男「なにぃっ!?」
女「ビックリしたぞ、私の知らないうちに子供なんて! でも、男との子供なら、私は全然嫌じゃないし……」モジモジ
男「だあぁっ、モジモジすんな! 余計誤解が深まるだろうが!!」
女「そんな! あの日あの時愛してるって言ったのは嘘だったのか!?」
男「嘘じゃないから問題なんだろうが!!」
- ざわっ
男「あ……」
<やっぱあの二人、出来てたんだ
<学生で妊娠? 超ヤリチンじゃん
<学生で妊娠? 超ヤリチンじゃん
友「あーあ、墓穴った墓穴った」
女友「可哀想に。これで二人の仲はクラス公認だね」
男「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
女友「可哀想に。これで二人の仲はクラス公認だね」
男「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
……誤解を解くまでに、丸々1ヶ月かかりました。
もう二度とヒート相手に仏心なんて出しません。
もう二度とヒート相手に仏心なんて出しません。
~・完・~
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