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『煌めく時にとらわれ・・・』」(2007/01/12 (金) 10:21:32) の最新版変更点

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<p>  はじめに<br> <br> これはJKスレ最終回に、間に合わせで書き上げたSSです。<br> 最後でしたから、スレタイ物として完成させました。<br> それがケジメかな……と、勝手な解釈をして。<br> <br> <br>  《使用しているスレタイ》<br> <br> 【寒い季節 二人で・・・・】  【春は もうすぐ♪】<br> 【さよならは 言わないよ】 【花咲く頃は 貴方といたい】<br> 【ねぇ 手、つなご?】    【笑顔が咲く季節】<br> 【この気持ち 忘れない☆】</p> <hr> <p><br>   『煌めく時にとらわれ・・・』<br> <br> <br> ――春先にありがちな強い風が吹く、小雨降る一日だった。<br> <br> 舞い落ちた桜の花びらは濡れた地面に貼り付き、踏みしだかれていく。<br> 沈鬱な空模様と相俟って、校門をくぐる誰の足取りも、重い……。<br> <br> <br> <br>   今日、私立薔薇学園高等学校は、卒業式を迎える。<br> <br> <br> <br> 整然と椅子が並べられた体育館に、穏やかな曲が流れ続ける。<br> <br>  「意外に、あっけないもんだな」<br> <br> 在学中は、あんなに早く卒業したいと思っていたのに――<br> いざ終わるとなると、なんとも不完全燃焼な気分だった。<br> <br> 静寂が広がる館内の中心に、ジュンは立っていた。<br> 真正面にステージを見据えて、この三年間の思い出を回想する。<br> <br> <br> ……学祭の時には、バンド演奏した事があった。<br> ……舞台で演劇をしたこともあった。<br> ……バスケや卓球に白熱した事もあったっけ。<br> <br> <br> 四季折々、様々な光景が頭をよぎり、いい知れない感情が胸に去来する。<br> 過ぎ去った日常…………二度と、取り戻せない青春。<br> <br>  「この体育館って、実は結構、広かったんだな」<br> <br> 呟いたジュンの白い吐息が、ふわり……と宙に散った。<br> 何を感傷的になってるんだろうな、僕は。<br> これが、今生の別れって訳でもないのに――<br> <br> 失笑が、溜息に代わる。<br> こんなの……柄じゃない。<br> <br> 教室に戻るか――<br> <br> センチメンタルな自分を鼻で笑って、踵を返すジュン。<br> ふと体育館の入口に目を向けて、彼の脚が停まった。<br> ――静かに佇む、七人の薔薇乙女たち。<br> <br>  「どうしたんだよ、みんな。式には、まだ早いだろ」<br>  「一生に一度のイベントだもの。少しでも長く、胸に刻み込みたいのだわ」<br>  「寂しいよね……でも、ボクは、さよならは言わないよ」<br>  「そうです。別れなんて束の間ですよ。新しい出会いの季節、春はもうすぐ♪ ですぅ」<br> <br> 明るい口調で、陽気に振る舞う翠星石。彼女の瞳には、しかし涙が光っていた。<br> やおら、しゃくりあげる彼女に、雛苺が歩み寄る。<br> <br>  「うみゅ……泣いちゃダメなのぉ。ねぇ……手、つなご?<br>   そうしたら、きっと、元気が出るのよ」<br>  「う……うぅ……ほ、ほっときやがれですぅ」<br> <br> と言いつつ、翠星石は、差し出された雛苺のを、がっし……と握った。<br> 金糸雀が、湿っぽい雰囲気を嫌って、声を上げる。<br> <br>  「まあ、みんな一緒に卒業できて嬉しかったかしら。<br>   カナは一生、この気持ち忘れない☆」<br>  「そうね……みんなで、笑顔が咲く季節へ、歩いて行くのだわ」<br>  「来年も…………寒い季節……二人で・・・・」<br> <br> ひとり、ちぐはぐな事を口にして、水銀燈に抱き付こうとする薔薇水晶。<br> しかし、水銀燈は彼女の腕をするりと抜けて、ジュンと腕を組んだ。<br> <br>  「今日が、一生の別れじゃないものねぇ。ジュン……私ねぇ――」<br> <br> 徐にジュンの頬に唇を寄せて、水銀燈は彼の耳元で囁いた。<br> <br> <br>  「いつまでも……花咲く頃は、貴方といたいわぁ」<br> <br> その場にいた誰もが、二人のラブラブな雰囲気に当てられて辟易していた。<br> この二人には、卒業式のしんみりした空気も関係ないようだ。<br> <br> <br> <br> <br> ――厳かに執り行われる卒業式。<br> 校長の挨拶……卒業証書授与……その他、諸々。<br> さしたるアクシデントもなく、式は静かに締め括られた。<br> <br> 在校生に見送られながら、体育館を後にする卒業生たち。<br> 外に出ると、朝から降りしきっていた雨は、いつの間にか止んでいた。<br> 雲の切れ間から、新たに巣立つ雛鳥たちを祝福するように、柔らかな陽光が降り注いでいる。<br> <br> <br> ――煌めく時にとらわれ……僕らは旅立つ。<br> <br>  「でも、いつだって会えるよな。だって僕らは――」<br> <br> <br> <br>  『みんなの心の中に、生きているんだから♪』<br> <br> <br> <br> <br> 私立薔薇学園高等学校に巡り会い、薔薇乙女たちと出会えた幸運に感謝する。<br> <br> すべての生徒、すべて住民たちの幸せを願って……今まで、本当にありがとう。</p> <hr> <p>JKスレ最終回の即興SS。<br> この日、『ローゼンメイデンが普通の女の子だったら』スレが誕生した。</p>
<p>  はじめに<br> <br> これはJKスレ最終回に、間に合わせで書き上げたSSです。<br> 最後でしたから、スレタイ物として完成させました。<br> それがケジメかな……と、勝手な解釈をして。<br> <br> <br>  《使用しているスレタイ》<br> <br> 【寒い季節 二人で・・・・】  【春は もうすぐ♪】<br> 【さよならは 言わないよ】 【花咲く頃は 貴方といたい】<br> 【ねぇ 手、つなご?】    【笑顔が咲く季節】<br> 【この気持ち 忘れない☆】</p> <hr> <p><br>   『煌めく時にとらわれ・・・』<br> <br> <br> ――春先にありがちな強い風が吹く、小雨降る一日だった。<br> <br> 舞い落ちた桜の花びらは濡れた地面に貼り付き、踏みしだかれていく。<br> 沈鬱な空模様と相俟って、校門をくぐる誰の足取りも、重い……。<br> <br> <br> <br>   今日、私立薔薇学園高等学校は、卒業式を迎える。<br> <br> <br> <br> 整然と椅子が並べられた体育館に、穏やかな曲が流れ続ける。<br> <br>  「意外に、あっけないもんだな」<br> <br> 在学中は、あんなに早く卒業したいと思っていたのに――<br> いざ終わるとなると、なんとも不完全燃焼な気分だった。<br> <br> 静寂が広がる館内の中心に、ジュンは立っていた。<br> 真正面にステージを見据えて、この三年間の思い出を回想する。<br> <br> <br> ……学祭の時には、バンド演奏した事があった。<br> ……舞台で演劇をしたこともあった。<br> ……バスケや卓球に白熱した事もあったっけ。<br> <br> <br> 四季折々、様々な光景が頭をよぎり、いい知れない感情が胸に去来する。<br> 過ぎ去った日常…………二度と、取り戻せない青春。<br> <br>  「この体育館って、実は結構、広かったんだな」<br> <br> 呟いたジュンの白い吐息が、ふわり……と宙に散った。<br> 何を感傷的になってるんだろうな、僕は。<br> これが、今生の別れって訳でもないのに――<br> <br> 失笑が、溜息に代わる。<br> こんなの……柄じゃない。<br> <br> 教室に戻るか――<br> <br> センチメンタルな自分を鼻で笑って、踵を返すジュン。<br> ふと体育館の入口に目を向けて、彼の脚が停まった。<br> ――静かに佇む、七人の薔薇乙女たち。<br> <br>  「どうしたんだよ、みんな。式には、まだ早いだろ」<br>  「一生に一度のイベントだもの。少しでも長く、胸に刻み込みたいのだわ」<br>  「寂しいよね……でも、ボクは、さよならは言わないよ」<br>  「そうです。別れなんて束の間ですよ。新しい出会いの季節、春はもうすぐ♪ ですぅ」<br> <br> 明るい口調で、陽気に振る舞う翠星石。彼女の瞳には、しかし涙が光っていた。<br> やおら、しゃくりあげる彼女に、雛苺が歩み寄る。<br> <br>  「うみゅ……泣いちゃダメなのぉ。ねぇ……手、つなご?<br>   そうしたら、きっと、元気が出るのよ」<br>  「う……うぅ……ほ、ほっときやがれですぅ」<br> <br> と言いつつ、翠星石は、差し出された雛苺のを、がっし……と握った。<br> 金糸雀が、湿っぽい雰囲気を嫌って、声を上げる。<br> <br>  「まあ、みんな一緒に卒業できて嬉しかったかしら。<br>   カナは一生、この気持ち忘れない☆」<br>  「そうね……みんなで、笑顔が咲く季節へ、歩いて行くのだわ」<br>  「来年も…………寒い季節……二人で・・・・」<br> <br> ひとり、ちぐはぐな事を口にして、水銀燈に抱き付こうとする薔薇水晶。<br> しかし、水銀燈は彼女の腕をするりと抜けて、ジュンと腕を組んだ。<br> <br>  「今日が、一生の別れじゃないものねぇ。ジュン……私ねぇ――」<br> <br> 徐にジュンの頬に唇を寄せて、水銀燈は彼の耳元で囁いた。<br> <br> <br>  「いつまでも……花咲く頃は、貴方といたいわぁ」<br> <br> その場にいた誰もが、二人のラブラブな雰囲気に当てられて辟易していた。<br> この二人には、卒業式のしんみりした空気も関係ないようだ。<br> <br> <br> <br> <br> ――厳かに執り行われる卒業式。<br> 校長の挨拶……卒業証書授与……その他、諸々。<br> さしたるアクシデントもなく、式は静かに締め括られた。<br> <br> 在校生に見送られながら、体育館を後にする卒業生たち。<br> 外に出ると、朝から降りしきっていた雨は、いつの間にか止んでいた。<br> 雲の切れ間から、新たに巣立つ雛鳥たちを祝福するように、柔らかな陽光が降り注いでいる。<br> <br> <br> ――煌めく時にとらわれ……僕らは旅立つ。<br> <br>  「でも、いつだって会えるよな。だって僕らは――」<br> <br> <br> <br>  『みんなの心の中に、生きているんだから♪』<br> <br> <br> <br> <br> 私立薔薇学園高等学校に巡り会い、薔薇乙女たちと出会えた幸運に感謝する。<br> <br> すべての生徒、すべて住民たちの幸せを願って……今まで、本当にありがとう。</p> <hr> <p>JKスレ最終回の即興SS。<br> この日、『ローゼンメイデンが普通の女の子だったら』スレが誕生した。</p>

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