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『アヤシイウワサ』」(2007/01/12 (金) 10:20:06) の最新版変更点

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<p><br>   『アヤシイウワサ』<br> <br> <br> 「あそこ、出るんだってよ? 実際に、見た生徒が居るらしい」<br> 「やっぱり? なんだか気持ち悪いもんね、あの場所」<br> 「しょーもない話だって、笑うかも知れないけどさ」<br> 「いやいや……マジやばいんだって」<br> <br>   ウソの様な、ホントの様な――――<br> <br> 「わたしも友達と、一緒に見たんだから。木から木へ飛び移る、黒い影を……」<br> 「サルか何かを見間違えたんじゃないの?」<br> <br> <br> この薔薇学園には、最近になって怪しい噂が流布し始めていた。<br> レリーフの顔が笑ったとか、土の中からゾンビが出たとか。他にも、プールで……。<br> はっきり言えば、学校の怪談チックな馬鹿馬鹿しい内容だが、やけに真実味を帯びていた。<br> <br> <br> <br>  「最近、学園内で持ちきりの噂話を知ってる?」<br> <br> 蒼星石が徐に語りだしたのは、翠星石と二人で中庭のガーデニングをしていた時の事だった。<br> ともすればスキャンダラスな印象を与えかねない言い方だが、色恋沙汰は感じられなかった。<br> 翠星石は怪訝な表情で、楽しそうに話す妹を見つめた。<br> <br>  「知らないですよ。噂なんか興味ないです」<br>  「でも、なかなか面白そうな話なんだよ?」<br> <br> のほほん……と言った蒼星石の顔には、悪戯っぽい雰囲気が感じられた。<br> 話なんて家に帰って聞けばいい。どうせ、怪談話だろう。私が怖がりなのを知ってるクセに。<br> <br> 翠星石は顔を逸らして、手元に意識を集中させた。<br> <br>  「聞くだけ時間の無駄です。早く終わらせて、帰るですよ」<br>  「やれやれ……ちょっと怖い話をしてあげようと思ったのになぁ」<br>  「そんな話をして、どうするつもりです?」<br>  「ちょっと肌寒かったから、抱き付いてもらおうかなぁって」<br> <br> やっぱり、そういう魂胆だったか。翠星石は溜息を吐いた。<br> 蒼星石の考えそうな事ぐらい、簡単に察しが付く。<br> <br>  「バカですか、蒼星石は。寒いなら、片付けを済ませて早く帰るです」<br>  「はいはい。じゃあ、帰ってから抱き付いてもらうからね」<br> <br> 軽口を叩きながら、道具を片付けようと二人が小屋に入った途端、扉が閉まった。<br> <br>  「えっ?! ちょっ……蒼星石、悪ふざけは止めるですぅっ!」<br>  「ボクじゃないよ。勝手に閉まったんだ。いま開けるから……」<br> <br> 右も左も判らない暗黒。翠星石は、おずおずと両手を前に伸ばした。<br> その指が、生暖かい何かに触れる。これは…………髪?<br> 触った感じ、丸みを帯びた形状から、人の頭部だと察しが付いた。<br> <br>  「ここに居たですか。よかったぁ」<br>  「え? 何のこと?」<br> <br> 蒼星石の声は、左から聞こえた。正面ではなく――<br> じゃあ、いま触っている、この頭は誰……の?<br> <br> ――――ぺろり。<br> 翠星石の指を、誰かが舐めた。<br> <br>  「ンまぁーい」<br>  「うぉわひぇえぇ――――っ!!」<br> <br> 奇声を発しながらも、翠星石は何者かの頭部を両手で掴み、膝蹴りをかました。<br> <br>  「ぶっ! ちょっと……待ったぁ」<br>  「は?」<br>  「今の……って」<br> <br> なにやら聞き慣れた声だと思った矢先、小屋の扉を蒼星石が開けた。<br> 翠星石が手にしていたのは、鼻血を垂れ流した薔薇水晶の頭だった。<br> <br>  「翠ちゃん…………ヒドイ」<br>  「なにがヒドイ……ですかっ! 大体、なんでこんな所にいやがったです」<br>  「忍びの修行…………通信教育で」<br> <br> はぁ? 翠星石と、蒼星石の声が重なった。なんで、そんな修行を?<br> そもそも、通信教育って――<br> <br>  「これ……」<br> <br> と、やおらパンフを取り出す薔薇水晶。<br> なるほど、確かに『忍者養成』通信修行講座と書いてある。<br> こんな講座があるなど、誰が知っているだろう。<br> <br> パンフを見ると、内容はかなり濃いものだった。意外に本格的かも。<br> <br>  「つまり……最近の怪しい噂は、みんな薔薇しぃの仕業だったんだね」<br> <br> 人気のない所で、枝から枝へと飛び移ったり……。<br> 花壇で土遁の術を試していたり……。<br> プールで水遁の術を練習してたり……。<br> <br>  「結局、薔薇しぃは、こんな修行してナニがしたかったですか?」<br>  「精神修養だとか?」<br>  <br> 薔薇水晶は頬を朱に染めて、フルフルと頚を振った。<br> <br>  「銀ちゃんの、ぼでぃーがーど♪ いつも一緒」<br> <br> 絶句する翠星石と、蒼星石。<br> 暫しの沈黙。そして――<br> <br>  「……帰ろっか、姉さん」<br>  「そうですね。お腹もすいたですぅ」<br> <br> 連れ立って小屋を出ようとする二人を、薔薇水晶の腕が繋ぎ止めた。<br> <br> <br>  「秘密を……知られたからには…………」<br> <br> 二人は悲鳴をあげる暇もなく小屋に引きずり込まれ、バタンと扉が閉ざされた。<br> <br> <br> <br> この後、学園のアヤシイウワサに『人喰い小屋』なる話が加わったそうな。</p> <hr> <p>一日一投ムチャ修行のSS。質の劣化は甚だしい。</p>
<p><br>   『アヤシイウワサ』<br> <br> <br> 「あそこ、出るんだってよ? 実際に、見た生徒が居るらしい」<br> 「やっぱり? なんだか気持ち悪いもんね、あの場所」<br> 「しょーもない話だって、笑うかも知れないけどさ」<br> 「いやいや……マジやばいんだって」<br> <br>   ウソの様な、ホントの様な――――<br> <br> 「わたしも友達と、一緒に見たんだから。木から木へ飛び移る、黒い影を……」<br> 「サルか何かを見間違えたんじゃないの?」<br> <br> <br> この薔薇学園には、最近になって怪しい噂が流布し始めていた。<br> レリーフの顔が笑ったとか、土の中からゾンビが出たとか。他にも、プールで……。<br> はっきり言えば、学校の怪談チックな馬鹿馬鹿しい内容だが、やけに真実味を帯びていた。<br> <br> <br> <br>  「最近、学園内で持ちきりの噂話を知ってる?」<br> <br> 蒼星石が徐に語りだしたのは、翠星石と二人で中庭のガーデニングをしていた時の事だった。<br> ともすればスキャンダラスな印象を与えかねない言い方だが、色恋沙汰は感じられなかった。<br> 翠星石は怪訝な表情で、楽しそうに話す妹を見つめた。<br> <br>  「知らないですよ。噂なんか興味ないです」<br>  「でも、なかなか面白そうな話なんだよ?」<br> <br> のほほん……と言った蒼星石の顔には、悪戯っぽい雰囲気が感じられた。<br> 話なんて家に帰って聞けばいい。どうせ、怪談話だろう。私が怖がりなのを知ってるクセに。<br> <br> 翠星石は顔を逸らして、手元に意識を集中させた。<br> <br>  「聞くだけ時間の無駄です。早く終わらせて、帰るですよ」<br>  「やれやれ……ちょっと怖い話をしてあげようと思ったのになぁ」<br>  「そんな話をして、どうするつもりです?」<br>  「ちょっと肌寒かったから、抱き付いてもらおうかなぁって」<br> <br> やっぱり、そういう魂胆だったか。翠星石は溜息を吐いた。<br> 蒼星石の考えそうな事ぐらい、簡単に察しが付く。<br> <br>  「バカですか、蒼星石は。寒いなら、片付けを済ませて早く帰るです」<br>  「はいはい。じゃあ、帰ってから抱き付いてもらうからね」<br> <br> 軽口を叩きながら、道具を片付けようと二人が小屋に入った途端、扉が閉まった。<br> <br>  「えっ?! ちょっ……蒼星石、悪ふざけは止めるですぅっ!」<br>  「ボクじゃないよ。勝手に閉まったんだ。いま開けるから……」<br> <br> 右も左も判らない暗黒。翠星石は、おずおずと両手を前に伸ばした。<br> その指が、生暖かい何かに触れる。これは…………髪?<br> 触った感じ、丸みを帯びた形状から、人の頭部だと察しが付いた。<br> <br>  「ここに居たですか。よかったぁ」<br>  「え? 何のこと?」<br> <br> 蒼星石の声は、左から聞こえた。正面ではなく――<br> じゃあ、いま触っている、この頭は誰……の?<br> <br> ――――ぺろり。<br> 翠星石の指を、誰かが舐めた。<br> <br>  「ンまぁーい」<br>  「うぉわひぇえぇ――――っ!!」<br> <br> 奇声を発しながらも、翠星石は何者かの頭部を両手で掴み、膝蹴りをかました。<br> <br>  「ぶっ! ちょっと……待ったぁ」<br>  「は?」<br>  「今の……って」<br> <br> なにやら聞き慣れた声だと思った矢先、小屋の扉を蒼星石が開けた。<br> 翠星石が手にしていたのは、鼻血を垂れ流した薔薇水晶の頭だった。<br> <br>  「翠ちゃん…………ヒドイ」<br>  「なにがヒドイ……ですかっ! 大体、なんでこんな所にいやがったです」<br>  「忍びの修行…………通信教育で」<br> <br> はぁ? 翠星石と、蒼星石の声が重なった。なんで、そんな修行を?<br> そもそも、通信教育って――<br> <br>  「これ……」<br> <br> と、やおらパンフを取り出す薔薇水晶。<br> なるほど、確かに『忍者養成』通信修行講座と書いてある。<br> こんな講座があるなど、誰が知っているだろう。<br> <br> パンフを見ると、内容はかなり濃いものだった。意外に本格的かも。<br> <br>  「つまり……最近の怪しい噂は、みんな薔薇しぃの仕業だったんだね」<br> <br> 人気のない所で、枝から枝へと飛び移ったり……。<br> 花壇で土遁の術を試していたり……。<br> プールで水遁の術を練習してたり……。<br> <br>  「結局、薔薇しぃは、こんな修行してナニがしたかったですか?」<br>  「精神修養だとか?」<br>  <br> 薔薇水晶は頬を朱に染めて、フルフルと頚を振った。<br> <br>  「銀ちゃんの、ぼでぃーがーど♪ いつも一緒」<br> <br> 絶句する翠星石と、蒼星石。<br> 暫しの沈黙。そして――<br> <br>  「……帰ろっか、姉さん」<br>  「そうですね。お腹もすいたですぅ」<br> <br> 連れ立って小屋を出ようとする二人を、薔薇水晶の腕が繋ぎ止めた。<br> <br> <br>  「秘密を……知られたからには…………」<br> <br> 二人は悲鳴をあげる暇もなく小屋に引きずり込まれ、バタンと扉が閉ざされた。<br> <br> <br> <br> この後、学園のアヤシイウワサに『人喰い小屋』なる話が加わったそうな。</p> <hr> <p>一日一投ムチャ修行のSS。質の劣化は甚だしい。</p>

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