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  1947.4.16
  東プロイセン ラステンブルク郊外



「距離…………3000。11時方向」

赤色灯が点された薄暗い空間に、若い娘の、低く押し殺した固い声が流れる。
狭い室内に立ちこめる空気はピリピリと張り詰めて、息苦しいほどだ。

――とても蒸し暑い。気流というものが、殆ど感じられなかった。
だが、その場にいる誰もが、白く瑞々しい柔肌に汗をまとわりつかせていながら、
文句のひとつも言わず、黙々と人いきれを堪えていた。

「翠星石、貴女の方でも『毒ヘビ』との距離を、見積もってちょうだい。
 索敵状況は、どうなっているの、金糸雀?」

カールツァイスの双眼鏡を目元から離すことなく、真紅は指示を飛ばす。
すぐに、打てば響くような反応があった。
ヘッドホンを通じて、最初は操縦手席にいる翠星石から。
それが終わるのを待って、無線手である金糸雀からの報告が続く。

「距離は……んん~……およそ2900ってトコですぅ」
「履帯音より照合したかしら。敵はT-34sが1両、自動人形が6体。
 頻りに、暗号で通信してるわ。斥候と見て、まず間違いないかしら」
「……ありがとう。いつもながら優秀だわ、貴女たちは」

敵の姿は、砲塔上部に設けられたペリスコープを通して、真紅も確認していた。
これから狩ろうとしている獲物からは、片時だって目を離したりしない。
にも拘わらず、わざわざ二人に確認を取ったのは、万全を期するためだった。
情報は持ち寄った数だけ、その信頼性を増すものだからだ。

加えて、迅速な意志の疎通を図る訓練……という目的もある。
些細なコミュニケーションを繰り返すことで、仲間意識を強め、信頼関係を築く。
それによって、一蓮托生をイメージさせて、各自のベストを尽くさせるのだ。
今しがた二人の娘が見せた鋭敏な反応も、これまでの積み重ねの賜物だった。


双眼鏡の向こうにいる敵は、ディーゼルエンジン特有の褐色の排煙を上げながら、
ゆるゆると接近してくる。金糸雀の報告どおり、T-34s『バジリスク』だ。
ソ連軍の中戦車T-34/76の改造型で、自律制御型の無人戦車である。
『毒ヘビ』と言ったら、この物騒な【おもちゃ】を指していた。

その周りを、カカシかヤジロベエのように一本脚で跳ねているシルエットが、6つ。
背丈は、丁度、子供くらいの上背だろうか。
こちらもT-34s同様、自動制御の機械人形だ。『ポーン』と綽名されている。
純然たる工業製品で、動力はバッテリーと油圧。
大量生産を念頭に置いた設計により、複雑で繊細な動きは犠牲にされていた。
そもそも、スチール製の外観からして、造りの粗雑さは瞭然である。
プレスしたままの、のっぺりした曲面を描くボディは、塗装すら施されていない。
跳ね回る自動人形が反射する陽光は鋭利で、双眼鏡を覗く真紅に、瞳の痛みを覚えさせた。


猛然と迫り来る、機械の群。ヤツらの稼働目的は、人間の殲滅。
こうして彼女たちの前に現れるまでにも、多くの命を屠ってきたことだろう。
与えられた仕事を忠実に、かつ淡々と処理することは、機械の本分に則った行為だ。

……が、それは所詮、向こうの都合にすぎない。
人類は、道具として使役するために、機械を生み出したのだ。
たかが一介の道具に過ぎない機械の義務に付き合い、殺されてやる義理などない。
ましてや、戦わずして滅びを待つなど……愚かしいにも程がある。
だからこそ、真紅は仲間の娘たちと共に、過酷な戦いへと身を投じたのだ。

――すべては、生き延びるため……。
それだけの為に、彼女たちは猛獣の名を冠する鋼鉄の塊を、飼い慣らしてきた。
機械を手足の如く操って、多くの機械を破壊してきた。


「蒼星石、Pzgr43/44(徹甲弾)装填。2500で撃つわ。急いで」

「了解、真紅」装填手である蒼星石が、30kg近い128mm砲弾を両腕で抱え、
蹌踉めきながらも砲尾へと押し込み、淡々と報告する。「装填完了したよ」

「早いわね、上出来よ。金糸雀、その後の索敵状況に、変わりはない?」
「自動人形を随伴させたまま、道なりに近付いてくるかしら。
 ……まだ、気付かれてないみたい。数は、増えも減りもしてないかしら」
「それは、なによりだわ。
 茂みに潜んで偽装しているとは言っても、油断はできないものね」

言うと、真紅は双眼鏡から顔を逸らせて、ふ……と、詰めていた息を吐く。
暑い。まるでサウナにでも入っているように、全身から汗が噴き出してくる。
ややもすれば、熱気に中てられ、クラクラと気を失ってしまいそうだ。
早く狩りを終えて、風に当たりたい。それは真紅のみならず、全員の本音だった。

水筒の温い液体で、その場しのぎに喉を潤した真紅は、彼女の目の前――
戦車兵の証である黒い軍服を纏った砲手の背中に、ひたと視線を送った。

「そろそろ出番よ、水銀燈。砲弾も少なくなってきたわ。外さないでね」
「ふふっ……誰に言ってるの、真紅ぅ」

砲手の娘は、単眼式のTZF.9f照準器を覗き込んだまま、不敵に含み笑う。
真紅には見えていなかったが、彼女は嗜虐的に歪めた唇を、ねっとりと舐めていた。
落ち着き払って微動だにしない背中が、揺るぎない自信のほどを窺わせた。

水銀燈が覗いている照準器には、距離を測るため、三角形の指針が七つ並んでいる。
底辺と高さが4シュトリヒの主指針と、底辺と高さが2シュトリヒの補助指針だ。
中央に主指針があって、その両脇に3つずつ補助指針が配されていた。
ちなみに、1シュトリヒは360°÷6400で算出される単位で、
英語ではミル角と呼ばれる。

「この128mmなら、3000でも百発百中よ。一撃でジャンクにしてやるわぁ」
「心強いわね。頼りにしているわよ」

水銀燈の背に微笑みを投げかけて、真紅が再び双眼鏡を覗き込もうとした矢先、
金糸雀の切迫した叫び声が、ヘッドホンを通じて全員の耳に届いた。

「砲塔の旋回音を確認っ! こっちの位置を特定されたかしらっ」

偽装から突き出した砲身を、探知されたのだろう。
機械人形のクセに、敵もなかなか目がいい。
真紅は小さく舌打ちして、金糸雀に負けないくらいの大声で叫んだ。

「水銀燈っ、照準の調整は済んでいるわね?」

問われて、水銀燈は照準器から目を離しもせず「当然よ」と短く答えた。
その声は掠れていたが、緊張のためか、暑さによる渇きのせいかは、判然としなかった。


敵戦車は今や、主指針の三角形の頂点に、ピタリと収められている。
真紅と翠星石の報告によって、照準器の距離設定は、調整ずみ。
射角も方位角も、すべて問題なし。敵の移動に合わせて、微調節するのも怠りない。
そればかりか、優秀な砲手である彼女は、指針から敵との距離すらも逆算していた。

「今2500……ってとこねぇ。あっちの76.2mmじゃあ、まだ射程圏外よ。
 まぐれで届いたところで、こっちの前面装甲を撃ち抜けやしないわ」

その数字を聞いて、真紅の表情が、少しだけ和らいだ。

「――そう。こちらは悠々、有効射程内ね。水銀燈! 射撃用意!」
「いつでも良いわよぉ。
 ちょぉっと遠いけどぉ……任せておきなさぁい。当ててみせるからぁ」
「信じてるわよ。翠星石は、移動する準備をしておいて」
「はいですぅ!」

ヘッドホンから、操縦席に座る翠星石の、元気のいい声が返ってくる。
真紅は双眼鏡を手に、ペリスコープを覗き、命令を下した。

「Feuer!」

水銀燈が、主砲の俯仰調整ハンドル脇にある発射レバーを、右手で軽く引く。
直後、爆音を轟かせて、55口径128mm砲が火を噴いた。
戦闘室内の空気も、ズシンと震えて、彼女たちの肺腑を圧迫する。
ヘッドホンで保護していなかったら、すぐに鼓膜がイカレるだろう。

放たれた徹甲弾は初速920m/s超で空を切り、T-34s目がけて飛んでいく。
そして、約2.7秒の後、真紅が見守る先で、敵の前面装甲を穿っていた。
車内で砲弾が誘爆したらしく、T-34sの砲塔が、フワリと宙を舞う。

「命中……撃破確認。蒼星石、念のため次弾装填よ」
「解ったよ。次も、Pzgr43/44で良いのかい?」
「ん……そうね。それで良いわ。
 さあ、急いで離脱するわよ。自動人形や攻撃機に、捕捉されない内に」
「RM動力機関、始動したですっ。いつでも発進できるですよ」
「Panzer vor! 金糸雀は索敵を継続」
「うっし! 行くですよ、ティーガーⅢ。キリキリ歩きやがれですぅ」
「諒解かしら!」


翠星石と金糸雀の返事が重なった直後、獰猛な鋼鉄の獣は大地を揺らし、歩を進める。
まとわりつく偽装の枝葉を振るい落としながら、65tの巨躯を白日の下にさらした。

通常、戦車には引火しやすいガソリンエンジンではなく、ディーゼルエンジンが積まれる。
しかし、ティーガーⅢは化石燃料に頼らない、最新鋭のRM動力機関を搭載していた。
ポルシェ博士の電気自動車理論を、優秀な科学者の顔を併せ持つ職人ローゼンが発展させ、
45年のベルリン攻防戦が始まる直前、たった一機のみ試作された動力機関である。
それを、ティーガーⅡのシャーシを改造して組み込んだのが、ティーガーⅢだった。
128mmという巨砲を載せるため、砲塔も僅かながら、大型化されている。

長く突き出した128mm/L55の砲身には、実に40本以上の白線が描かれている。
キルマークと呼ばれるソレは、文字通り、敵戦車の撃破数を示していた。
その殆どはT-34s相手に稼いだスコアだったが、M26A『アリゲーター』や、
JS2c『クロコダイル』も少なからず含まれている。
どちらも自動制御化された戦車で、重装甲・強武装を誇る強敵だ。
ティーガーⅢをも一撃で粉砕し得るだけに、できれば遭遇したくない相手だった。



移動を始めて間もなく、索敵していた金糸雀が、悲鳴に近い声を上げた。

「真紅っ! 周囲3000圏内に、新たな敵の反応多数かしらっ!
 T-34sが5、自動人形は……さ、30近くいるかしらぁーっ?!」

やはりね――と、真紅は独りごちて、ヘッドホンのマイクに命令を吹き込む。
斥候が動いているならば、その後ろに本隊が居るのは当然のこと。
発見された時点で、無線で増援を呼ばれたことは、予想の範疇だった。
ココロの準備ができていただけに、真紅は落ち着き払って対応してゆく。

「まずは、毒ヘビから黙らせるわよ。
 自動人形は、後回しでいいわ。ヤツらが接近するには、まだ距離があるもの」

優先順位は、長射程で破壊力のある戦車が一番。自動人形は、二の次だ。
とは言え、自動人形も侮れない存在である。
手榴弾は勿論、対戦車兵器を携行するタイプの人形もいるから、肉薄されれば危険だ。
その対抗手段として、主砲には7.92mm同軸機銃が装備されている。
いざとなれば無線手の金糸雀も、前面のMG34機関銃を撃つ役目を担っていた。


「翠星石、すぐ左手にある窪地に入ってちょうだい。起伏を掩蔽地にするのよ。
 砲塔、三時方向に旋回。分散される前に、毒ヘビを退治するわ」

ただちに真紅の指揮どおりの動きを見せる。
窪地から砲塔だけを突き出す格好で、彼女たちの戦車は停止した。
水銀燈が、足元のペダルを踏んで電動モーターを呻らせ、砲塔を敵に向ける。

優れた砲手がどうかは、概ね、この時点で解る。
旋回させすぎたりせずに、必要最低限の時間で、ピタリと敵を照準に納められるか……
その僅かな時間にこそ、明日への扉を開くためのカギが隠れていた。

真紅が距離を告げ、水銀燈が素早く微調節を済ませる。
号令一下、128mmが轟音を放ち、たちまち一両の戦車を屠った。
砲身から廃莢されると同時に、刺激臭のする硝煙が吐き出される。
そのニオイは、戦闘室内に充満して、彼女たちの軍服に染み込んでいった。

しかし、機械である敵は、怯むということを知らない。数を頼りに圧してくる。
すぐに真紅が方向と距離を見積もって指示を飛ばし、水銀燈が砲塔を旋回させ、
蒼星石が砲弾を装填する。その一連に要したのは、およそ20秒。
それ以上かかっているようでは、まず生き残れない。


約1分の間に3回の砲撃が行われて、ことごとく命中、撃破する。
戦車の誘爆に巻き込まれた自動人形の首が、爆風によって引きちぎられた。
油圧のオイルを撒き散らしながら倒れ、そのまま動かなくなる。

その様子を、真紅は双眼鏡を通じて、澄んだ蒼い瞳に焼き付けていた。
けれど、いちいち感傷になど浸っていられない。
破壊することにも、破壊されることにも、もう慣れきっていた。


残り二両となったところで漸く、敵も分散を始めた。
一両が囮になり、もう一両はティーガーⅢの後背へ回り込もうとしている。
戦車は前面装甲こそ分厚いが、側背面や上部装甲は薄く、弱点だからだ。
そのことは、戦車兵の常識として、必ず頭に叩き込まれる。
ティーガーⅢにおいても、この戦闘のセオリーに例外はなかった。

「翠星石っ、後退しつつ左旋回! 砲塔は三時に固定のままよ。
 まずは、後ろに食い付こうとしている敵を一撃するわ!」

ティーガーⅢは、その巨躯に似合わず、素直に真紅が思い描いたとおりの動きをする。
真紅が「いい子ね」と呟くのと同時に、128mmの徹甲弾が発射され、
また、T-34sが一両、一瞬にして鉄屑と化した。
残った一両は、ティーガーⅢめがけ、猛然と突進してくる。
全速を出していることは、吐き出しているディーゼルエンジンの黒煙で判断できた。
だが、それは完全に機を逸した、無謀とも言える突撃だった。


「引き際というものが解ってないのね。ふふ……教育してあげるわ。
 砲塔、12時方向に旋回よ。距離、1800!」
「自動人形との距離も、2200を切ったかしらっ!」
「Pzgr43/44装填完了したよ、真紅っ」
「こっちも照準いいわよ、真紅。いつでも撃てるわ」

戦闘室内に殺気だった怒号が飛び交い、生死をかけた数秒が流れる。
こちらが撃つのが先か。それとも、敵に撃破されるのが先か。

敵の砲撃が、先だった。しかし、走行しながらのため精密さを欠いていた。
ティーガーⅢの遙か前方に着弾した徹甲弾が、僅かに土を巻き上げたのみ。

「Feuer!!」

真紅の号令一下、巨砲が火を噴き、車内の空気が震える。
その一撃は、T-34s砲塔前面の装甲を易々と撃ち抜き、沈黙させていた。
数秒の後、爆発、炎上する様を一瞥しただけで、真紅は次の命令を発する。

「次は、残った自動人形どもを一掃するわよ。翠星石、微速後退。
 蒼星石、Sprgr.L5.0(榴弾)を一発だけ装填。
 金糸雀は、索敵しつつMGの射撃準備に入って。対空警戒は、私がするわ」


真紅は命じながら、ハッチを静かに開いて、僅かに頭を覗かせた。
狙撃タイプの自動人形が随伴していないことは、既に確認していたし、
もし居たとしても、2000m以上の距離が開いていれば、銃弾など届かない。

榴弾の砲撃が済むのを待って、真紅は思い切って、上半身を乗り出した。
彼女の瞳に映る美しい蒼穹は、立ちのぼる黒煙によって、薄汚れていた。




弾薬食料の補給のため、ラステンブルクの司令部および補給廠へ向かう道すがら。
真紅は換気と見張りを兼ねて、キューポラのハッチを開き、半身を乗り出していた。
ある程度の広さはあっても、所詮、気密性の高い鋼鉄の箱。
換気ファンは常に回されているが、暑苦しさと、息の詰まる感じは拭いきれない。
さっきの戦闘による硝煙のニオイも、まだ車内に残っていた。

ここが自分たちの棺桶になるかも知れない。そう思うと、流石にゾッとしなかった。


吹き過ぎる風が、汗ばんだ肌を優しく撫で、彼女の金髪を靡かせる。
戦闘の興奮で火照った身体が、心地よく冷やされていった。


ふと、草原に転がっている、赤茶けた物体が真紅の視界に入った。
破壊され、打ち捨てられたままの自動人形だった。
のっぺりとした装甲の体躯は、量産目的であっても、造りが粗雑すぎる。
損壊の激しい人形は雑草に抱かれながら、どこまでも高く蒼い空を、恨めしげに見つめていた。

(この子もまた、被害者なのかも知れないわね)

真紅は、後方へと過ぎ去っていく壊れた人形を目で追いながら、
胸の中で問いかけた。

(――お父様。あなたは、何をお考えなのですか?)


今はどこにいるとも知れない、偉大なる職人――
彼女たちが駆る、この鋼鉄の猛獣を生み出した科学者にして、
自動人形たちの原型、オリジナル・ローゼンメイデンを作り出した男へと。

(お父様…………なぜ、こんなにも虚しい戦いを続けさせるのですか?
 もう、世界は充分すぎるほど傷つき、荒れ果ててしまいました。
 人々は、自ら流した血と涙の海で溺れて、沈みそうになっているのに……
 どうして、まだ混乱の渦を拡げ、人類を滅びに向かわせようとするの?)


真紅には、父の考えが全く解らなかった。
解らないからこそ、再び父と相見え、問い質そうと思った。
そのために、なにがなんでも、生き延びてやろうと決意していた。


  『闘うことは、生きること……』


かつて、父が教えてくれた言葉。
そんなものが、彼女の心の拠り所になっているなんて、なんとも皮肉だった。



――∞――∞――∞――∞――

1947.4.16

今日の戦果は、6両のT-34sと、自動人形が35体。
けれど、こんな戦果なんか、焼け石に水でしかない。
敵はすぐに、損害を補充してくるもの。
私たちは――死んだら、それで終わり。修理も補充も効かない。


私たちは、いつまでこんな戦いを続けなければならないの?
いつになれば、埃と硝煙にまみれ、汗と血で汚れた軍服などではなく、
煌びやかなドレスに身を包んで、幸せな乙女として暮らせるの?


教えてください、お父様。

――∞――∞――∞――∞――



日記代わりの手帳に想いの丈を綴って、真紅はそれを、軍服の胸ポケットに押し込んだ。
不条理な現実に憤る感情を、華奢な身体に詰め込んで押し潰すように、

力強く……。




世界を巻き込んだ二度目の大戦は、もはや枢軸軍も連合軍もなく……
人類と自動人形の群は、武器を手に、非生産的な戯れを繰り返していた。


この『Panzer Garten』で――