『誰より好きなのに』
いつも、見ていた。
ずっと、見つめ続けてきた。
出逢ったときから、片時だって、瞳を逸らさないで。
抱かれている――と感じたのは、私の本心の表れだったのか。
ふわり。
防波堤の突端から、荒れる海へと飛んだとき、私は確かに、そう感じた。
真紅に――お母さまに、戻れと言われ……私は従った。
でも、それは本当に、正しい選択だったのだろうか。
お父さまを襲った悲劇も、知らず、私が持ち帰ったからじゃないの?
『浦島太郎』の昔話にある、玉手箱みたいな、余計なお荷物を。
閉ざしたカーテンの向こうから、スズメたちのケンカする声が飛び込んでくる。
私はベッドの中で、朦朧としながら、それを聞いていた。
最終更新:2008年09月26日 01:15