心の拠り所 *** 私にとって君は昔からの親友であり、頼れる存在であり、一緒にいて安心できる存在であり… 俺にとってお前は昔からの親友であり、頼られる存在であり、一緒にいて欲しい存在であり… ―――そして…… *** 「…………」 女は無言で俺に頭を擦り付ける 「……二人になるとすごく甘えてくるよな、女って」 俺は女の頭を優しく撫でてやる。女はしばらく俺に頭を撫でられるのを堪能した後、いきなり話し始めた 「…対人恐怖症になる前、一番仲良くて、一番優しかったのは男、君だ。だから、男に優しくされるのがすごく嬉しい」 女は素直に自分の気持ちを伝えてくる。静かに、けれども、はっきりとした口調で 「…五年間、寝たきりだったもんな」 俺は女の頭を撫でつづける 「……夢の中でもずっと男を遊んでいたぞ」 女はそれを思い出すように、嬉しそうに話す 「…………」 俺は静かに女の話を聞いていく 「目覚めたら…小学四年以前の知り合いと家族以外には上手くコミュニケーションが取れない…」 「…だな」 少し、女の顔が少し悲しそうな顔になった。俺はゆっくりと、優しく女の頭を撫でつづける 「…そんな私も、君に頼りっきりで生きてきて、もう高校二年生だ」 「ああ…」 俺も静かに相槌を打つ。女は話を続ける 「…高校を卒業したら、君と離れ離れになるのかと思うと、すごく寂しい」 女の顔がさらに悲しそうになる。俺の服の裾をきゅっと掴んだ 「…これからもずっと一緒にいる」 俺は女の背中に腕を回す。女に告白されてから、ずっとそのつもりだった 「無理だ…君には夢がある。その夢に、私は邪魔になってしまう…」 「…………」 俺はその言葉に黙り込んでしまう。女は今にも泣きそうな顔でさらに続ける 「だから、私はあんな本を親に買ってもらって…男から…ぐすっ、自立、しようと…うう…」 女は俺の体に顔を埋め、泣き始めた。何時の間にかぶるぶると震えていた 「…そんな風に泣かれたら、余計離れれるかよ…」 俺は女を優しく抱きしめた。強く抱きしめたら、壊れてしまいそうなぐらい、女が儚く見えたから―― *** 「ぐす…ぐす…」 女は20分ほど泣きつづけていた 「…ほら、とりあえず泣き止め」 俺はまた女の頭を撫でる。女はようやく顔をあげた 「…今まで通り、一緒にいればいいだろ。進路なんて変わってもおかしくないんだし」 俺は女に少し笑顔で話す。安心してほしかった。それに本当にそう思っていた 「…けど、それでは男の夢が…」 女はまだ悲しげな顔のまま、俺の顔を見る。俺は少し間を空けて、呟いた 「…夢追いかけるよか、女と一緒にいたいかな」 「ぇ……」 女はあっけに取られたような顔になった。こんな顔、初めて見るかもしれないな… 俺は無言で女を抱きしめた。今度は少し強めに、絶対別れない、という意をこめて、女を抱きしめる 「ん……男……」 女も俺を強く抱き返してきた。まるで俺から離れるのを恐れるように 「……好きだ、女」 月並みかもしれない。下手かもしれない。でも、飾った言葉より、素直な言葉の方がいいと思ったから 「……改めて言おう。私もだ、男」 女もやっぱり素直に返してきた *** 「……男」 「ん……?」 少しして、女がまた話し始めた。どことなく声が不安げだ 「これから先…対人恐怖症が完治するかわからない」 「ああ」 「…もしかしたら、今の状態に近い状態のままかもしれん」 「…ああ」 何時もみたいな覇気が今の女には見られなかった。そんな女を見たくなかった。だから…… 「…それでも、ずっと一緒にいてくrっ…んむ…」 だから、俺は女が話すのを無理矢理止めるようにキスをした。ただ唇を重ねるだけの淡いキス 「……ん…」 少しの間、静止した後、静かに離れる 「ぷは……男、不意打ちは卑怯だぞ…」 どうやらキスの間、息を止めてたらしい。そんな仕草がすごく可愛い 「…お前がこれからずっとこんな状態でも、ずっと一緒だ」 「…ありがとう、男…」 女はまた男を強く抱きしめた *** 「…男。頼みたいことがある」 「ん?何だ?」 女の声はいつもの冷静な感じに戻っていた 「カーテンを閉めて、部屋の電気を小さくしてほしい」 「…わかった」 俺にはこの言葉の意味がよくわかっていた 俺は女から少し離れると部屋のカーテンを閉め、部屋の電気を小さくした 「…準備できたぞ」 「うむ」 俺と女はベッドの上で抱きしめあった *** *** 俺と女は仲良く並んで蒲団を被って寝転がっていた。女の頭の下には枕じゃなく、俺の腕が敷かれている 「はあ、はあ……」 女は、息を整えるように大きく息をついていた 「ん、大丈夫か、女?」 俺は少し心配になり、女に声をかける 「…うむ、大丈夫だ、男」 そう言って、女は俺に抱きついた。俺はそれを無言で抱き返す。とても暖かかった 「…いっぱい愛してくれてありがとう、男」 女が俺の胸の中で呟く 「当然だろ。こっちこそ、いっぱい愛してくれてありがとう、女」 俺は女の頭を愛しそうに撫でた 「うむ……」 それが心地よかったのか、また女は大人しくなった 「…あのさ、女。俺……」 俺は女に伝えたいことがあった 「…………」 だが、女からの返事はなかった。疑問に思い、女の顔を見てみる すると、疲れてしまっていたのか、女は可愛い寝顔を浮かべながら、すやすやと眠っていた 「…寝ちゃったか。ま、いいかな…」 俺は女の寝顔を少し眺めた後、俺も寝ることにした。多分聞こえてないだろう、女に囁くように ――俺、絶対女を幸せにするからな *** ずっとお互い支えあう存在だ―― ずっとお互いに愛し合う存在だ―― ずっと、ずっと…… *** 〜END〜