初めてのお買い物×繁華街デート=????? *** 「ん?繁華街の方に出かけたい?」 俺は休みの日に朝から女の家に来ていた。女がしたいことがある、というメールをしてきたからだ そして俺が家に来てから女は繁華街の方に行ってみたい、と言い出した 「ああ。せっかくの休みだからな」 女はもう行く気満々のようだ。念のために財布に金を少し多めに入れておいて正解だった 「…けど、人がいっぱいいるぞ?」 只でさえ、女は親しい人以外の人に恐怖心を抱く。だから、俺は心配していた。だが 「…それを少しでも克服するためのリハビリも兼ねて、だ」 そう言って俺の顔を見据えるように見つめてくる女。どうやら意思は硬いらしい 「…なるほどな…じゃあ行ってみるか」 「うむ」 こうして、俺と女は繁華街のデートをすることにした。それと女は買いたい物もあるのだとか *** 俺と女はちょっとした繁華街の中を歩いていた。周りのやつらの反応は様々である 物珍しそうに見てくるやつ、恨めしそうに見てくるやつ、何だか懐かしむように見てくるやつ…… 人が沢山いる繁華街でこれだけ目立ってしまうのは… 「……お、男ぉ…ぜ、絶対に離れないでくれよぉぉぉ…?」 …やはり、女の様子が普通ではないからだろう 女は俺の背中にしがみ付き震えながら俺に何とかついてきていた。よく見ると膝もかくかくと笑ってる 見えていた結果とは言え、人からの視線が少し恥ずかしい 「こ、こんなにひ、人がいるなんて…」 どうやら女の想定外だったらしい。でも、このまますんなりと帰る気はないらしい 「…ところでどこに行きたいんだ?」 繁華街に行きたい、とは聞いていたが、ちゃんとした行き先は聞いていなかった 「……そ、そうだな…。で、デパートとかどうだ!?」 女はこの状況に少し興奮状態になってるようだ。最後の方は完全に声が裏返ってしまっている 「…声が裏返ってるぞ。デパートだな?」 「あ、ああ…」 俺は女をなだめながらデパートに向かった 「……女…デパートのどこに行くんだ?」 ようやく俺と女はデパートの中に入った。相変わらず女は震えっぱなしだ とはいえ、失神したり、暴走したりしていた頃に比べればマシだが 「そ、その……」 女は周りの状況に圧倒されてしまっているのか、今にも消え入りそうな声で答えた だが、俺は上手く聞き取れなかった 「…ん…?」 俺は聞こえなかったことを示すために女に答えを促す 「…よ、洋服屋だ!」 一瞬、近くにいた客たちが俺達の事を見、興味がなくなるとどこかに行ってしまった 「……だから、声が裏返ってるってば」 俺と女は洋服コーナーに向かうことにした *** 「…あー…この発想はなかったわ」 俺は思わず呟いた。今、俺は女と一緒に洋服コーナーにいる 「お、男、こ、これはどうだ?」 女は俺の背中にくっ付いたままで、手にとった物を肩越しに俺の目の前に持ってくる 「…あのさ、女。今だけは、少し離れてもいいか?近くにいるんだし」 俺は女に提案してみた 「なっ!?お、男、私がこうしてないと安心できないことを知っていての発言か!?」 女は何て恐ろしいことを! と言わんばかりに俺に反論してきた そりゃそうだ。女は例え相手が女性だろうが恐怖心を抱くのだ 女からすれば非道な提案である。わかっている、俺だってそれぐらいわかっている ……だけど 「だけどな……お前の下着を選ぶのにこの状況はすっごく周りの視線が痛い」 そう言うことだ。俺と女は洋服コーナーの女性の下着コーナーを他の女性に混じって見てるのだ 「ま、周りからの視線など、学校とかで散々浴びたはずだぞ」 女は人に怯えながらも俺に答える 確かに、俺は今までに登校中も学校でいる時も帰宅中も女と行動してると周りの視線を浴びつづけた デパートに入る前も散々見られつづけた、が…… 「いや、この視線は学校とかで浴びるのとは違う…そう、明らかに不審な物を見る目だ」 ここでの視線は今まで生きてきた中で一番厳しかったのかもしれない とても冷たく射殺されそうな雰囲気を感じれるぐらいだった 「そ、そんなこと言われても…あ、これなんかも……」 そう言って、女はまた俺の目の前に……下着をひらひらとちらつかせた 「だからそうやって肩越しから目の前に下着をひらひらさせるなあ!!」 *** 俺と女はデパートを後にした後、また繁華街を歩いていた 「…下着買うだけにここまで疲れるとは…」 あの後、何とか下着を購入し、そそくさと逃げるようにしてここまで来た その間もずっと他の女性は俺達の事を睨んでいた…と思う 「す、済まない、男…」 女は俺に申し訳無さそうに謝った 「いや、まあ仕方ないだろ」 そう言って俺は何気なく腕時計に目をやる。すでに正午を過ぎていた 「もうこんな時間か…どこかで昼飯食べるか…」 「そ、そうだな……」 女も俺の意見に賛成のようだ。しかし、女が安心して飯を食べれそうなとこなんてあるのか ましてやこの時間帯じゃ殆どの店は混んでそうだと、俺が思案していると女が発案してきた 「お、男。私、一度ハンバーガーを食べてみたいんだが…」 「食べた事無いのか?」 そう言えば、女はハンバーガーとか食べた事がなかったか、と思っていると 「いつも人がいっぱいで入ったことがない…」 なるほど。確かにいつも人が耐えないファーストフードなんかは女にとっては鬼門に近い物がある 「でも、今日は男が一緒だか、らな…」 そう言って女は俺の背中からぎゅうっと抱きしめてきた 「…わかった。お持ち帰りなら食べる場所選べるしな」 「うむ」 俺は女の頭を撫でながら店に向かった *** 「いらっしゃいま…せー♪」 店に入るとマニュアル通りの挨拶が返って…よく聞くと俺達の事を見て、少し店員が止まった ごまかしたつもりなんだろうが、ばればれなわけで…… とりあえずそんなことは気にせずに列に並ぶ。少しして俺達の番になった 「いらっしゃいませ〜。どれになさいますか〜?」 マニュアル通りの質問を少し間延びさせて話す店員。何でこんなに間延びさせるかは知らない 俺はメニューを一通り見てから注文することにした 「ん〜…じゃあ…てりやきバーガーのセットで。女はどうするんだ?」 俺は後ろで震えている女にどれにするかを質問する 「わ、私は…お、男と同じものでいい…」 まあ、初めてだし、無難な選択の仕方と言ってもいいだろう。それとこの状況から一刻も早く脱出したいのかもしれない 「わかった。てりやきバーガーセット、二つで」 俺は淡々と店員に告げる 「かしこまりました〜。お持ち帰りですか?こちらで頂かれますか?」 もちろんお持ち帰りだ。こんな人が沢山いる場所で食事なんてしたらそれこそ女は発狂しかねない それに本末転倒である。だから俺は店員にお持ち帰りと伝えようとした 「お持ち帰りで」 俺が言った瞬間に俺の後ろから同じタイミングで同じことを女が言ったのを理解した 俺は少し驚いて後ろを振り向く 「い、言ってみたかったんだ…」 そう言って女はふわっと少しだけ微笑んだ。その不意打ち、もろに食らったわけだが *** 俺と女は繁華街から少しだけ離れた所にあった公園に来ていた 「…ふう。この公園なら静かだし、人もあまりいないからいいだろ」 中々綺麗な公園だった。しかし休みの日とはいえお昼から公園で遊んだりする者など殆どいないのだろう 本当に殆ど誰もいない状態だった 「うむ。人がほとんどいない…やっと安心できた」 女はようやく人ごみから解放されて大きく伸びを一回。よほど緊張していたのだろう 「そうか。さて、このベンチでさっき買ったハンバーガー食べるか。女、ちゃんと座るなら隣にな」 そう言って俺は大きな木の下のベンチに座った。女も俺の隣にくっ付くようにちょこんと座る 「そうだ!男、早くハンバーガーが食べたい」 心気なしか、女の目が少し輝いてるような気がする。そんなにハンバーガーが食べたかったのか 「焦るな焦るな。ハンバーガーは逃げないぞ、ほれ」 俺は袋の中からハンバーガーを取り出し、女に渡した 「ああ……では、頂きます」 女は包み紙を全部剥がして両手でしっかりと持つと静かに食べ始めた 「どうだ、初めて食べるハンバーガーのお味は」 俺もハンバーガーを頬張る。口の中にてりやきソースの味が広がる 「…美味しい。こんなに美味しいものを今まで食べれなかったとは…」 どうやら未知との遭遇に少し感動したらしい。 俺はポテトやジュースも袋の中から出して、それも一緒に食べ始めた。女もポテトやジュースに手を出す 少しの間、無言で食べていた。よっぽど女はハンバーガーが気にいったらしい。と、思っていたら 「ぬ、男よ。口の周りにタレが…」 「ん?どこに?」 どうやらてりやきソースがはみ出てしまったらしい 「待て、今取るからな…」 そう言って女は俺に顔を近づけてきた。俺は女がソースをついてきた紙でふき取るのを待ち―― ――ぺろっ 「へ…?」 思わず馬鹿みたいな声が漏れた。今の感触といい、音といい…とても紙でふき取ったとは思えない 「そのままふき取ったら勿体無い気がしてな。舐め取った」 ああ、左様ですか…ってそういうヘヴィブローを不意打ちでかますのはどうかと思うぞ 俺の理性が大ダメージを受けてしまったではないか 「どうした?」 だが、どうやら本人は自覚症状がないらしい 「いや、何でもない…」 俺はハンバーガーの最後の一切れを口に放り込んだ *** 「…ふう、ご馳走様」 「ご馳走様。満足したか?」 しばらくして、袋の中にあった、ハンバーガーやポテト、そしてジュースは見事に俺と女の腹の中に消えた 「ああ、満足したぞ。それにしても、この公園は静かだし、人もあまりいないから楽だ」 女は本当に満足したようにのんびりとくつろいでいた 「だな。けど、それじゃリハビリにはならないぞ」 まあ、焦る必要もないとは思うが。それにあれだけ長い時間人ごみの中にいたのだから休憩も必要だろう 「うむ…」 女は返事すると共に俺に寄りかかってきた。女の頭が俺の肩に当たる 「ん…?どうした、女……?」 女の顔を見ると少しとろんとした表情だった 「……暖かくて…心地良いな、ここは…」 確かに、女の言う通り、木漏れ日が程よく暖かく、静かで心地いい 「…確かにな…。世の中の喧騒から逃れられる避難所みたいだな…」 俺ものんびりとすることにした 少しして、女がやたら静かになった。俺はそっと女の顔を覗く 「…………すう、すう…」 どうやら今までの疲れとこの場所の心地よさに寝てしまったようだ。俺は女を起こさずに女の頭を優しく撫でた 「ん……男、好き、だ…むにゃ…」 寝言を使ってまで俺の理性に攻撃してくるとは……侮れないな、女 *** 「…ん…む?」 女は寝ぼけ眼で起き、辺りを見回している。どうやら意識する前に寝てしまったようだ 「お、ようやく起きたか」 俺は女に声をかけ、また頭を撫でてやる 「…そうか、私は寝ていたのか。今何時だ?」 「三時だ。大体二時間ぐらい寝てたって事だな」 俺が時間を教えると女は少し残念そうな顔をした 「…勿体無いことをした。せっかくのデートだと言うのに」 どうやら寝てしまったことを悔いてるらしい。本当に悔しそうだった 「いやいや。あれだけ人の多いところ歩いてきたんだ。疲れるのも無理ないだろ」 「ううむ…」 俺は女をなだめるが今一納得できないようだった 「…それに、女の寝顔も堪能できたし、な」 思わずぽろっと本音が出た 「…………」 女は俺が本音に黙ってしまった。もしかして、嫌だったのかもしれない 「少し、濡れた」 「え?」 何が?何が起こって何が濡れたんだ、女よ *** 「他に寄りたいところとかあるのか?」 俺達は公園を後にし、また繁華街の方にいた。さっきのデパートとは違う方向だ 「そ、そうだな…」 女はまた、俺の背中に張り付いて震えながらついてきている。やはり人がいるところはまだまだこの状態が続くだろう そんな事を考えていると 「あ、男。く、クレープが売ってるぞ……」 そう言って女が指差す先には確かにクレープ屋があった。そういえば女は甘い物が好きだった 「お、本当だ。クレープ、食べたいか?」 「あ、ああ、食べたい」 女の視線はクレープ屋に釘付けになっていた 「けど、あんなに並んでたら、二人で並ぶと厄介だな…」 クレープ屋の前は結構列ができていた。今から並ぶと十分ぐらいかかってしまいそうだ かといって、女を置いていくわけにもいかないだろう 俺は女に諦めてもらおうと思ったその時、女はとんでもないことを俺に言った 「む……な、なら…わ、私はここで待ってる」 女は俺が困ってるのを察したのか、この人ごみの中で一人で待つと言ったのだ 「…大丈夫か?それなりに時間かかるぞ?」 流石にこの状態で女を置いていくのはまずいと思った俺は女に聞きなおす 「……頑張ってみようと思う」 これ以上俺が言ってもきっと女は意見を変えないだろう 「そうか…無理はするなよ?」 俺は女に念押しをして、クレープを買いにいった 八分後、俺はようやくクレープを買い終え、クレープを落とさないように走って女が待っているはずの場所に戻った 「…ふう、買ってきたぞ〜…ってあれ?女?」 待っているはずの女の姿が見当たらなかった もしかして待ってる間にぶっ倒れて病院に運ばれたか?それとも変なやつらに絡まれてしまったか? そんなことを考えていると、俺の携帯電話が鳴った。着信相手は…女だ! 俺はクレープを片手に持ち替え、何とか電話に出た 「お、男ぉぉ…」 今にも泣き出しそうな女の声が電話から聞こえた 「ど、どうした?今どこにいるんだ?」 とりあえず失神したわけでも、変な奴らに連れて行かれたわけではなさそうだった 「す、すまない…さっきの公園のベンチにまで来てくれぇ…」 「わ、わかった…」 俺は電話を切ると今度は公園まで走った *** 「ええっと…ああ、いたいた…」 女はさっき座っていたベンチに座って、不安そうに周りを見ていた。そして俺の姿を捉えると俺に向かって走ってきた 「ぁ…お、男ぉぉぉ…」 女は正面からぎゅっと俺に抱きついた。女が震えてるのが感じられた 「よしよし…。…あれから何分あの場所に居た?」 何となく気になった俺は女に質問してみた 「ご、五分だ…。そこからは無我夢中でここまで来た…」 やっぱり耐え切れなくてまだ安心できそうなこの公園まで走ってきたと言う事か それだけ耐えれただけでも上出来だと思う 「とりあえず、カップうどんなら作れるな。よくがんばった。ほら、クレープ」 「う、うむ…ありがとう…いただきます」 女は俺から少し離れてクレープを受け取るともそもそと食べ始めた 「それは女が頑張ったご褒美みたいなもんだな」 俺は少し笑いながら女の頭を撫でた 「……ぐす」 安心しきってしまったのか、クレープを食べながら、泣き出した 「泣くな泣くな」 俺は女が泣き止むまで頭を撫でつづけた *** 「……ふう。ようやく家についたな」 クレープを食べ終えた後、人ごみの中を何とか抜けて女の家にたどり着いた 「…うむ。長かったな」 本当に長かった。俺と女は家の門をくぐり抜ける 「確かに。結構疲れたな…」 家の前に来ると一気に疲れがきたような気がする。女も疲れたようだ 「……でも、男とのデート、楽しかったぞ」 心底楽しかったみたいだ。俺の方を向いて無表情に近い顔がふわっと綻ぶ …だからその理性を削ぎ落とすような攻撃はやめてくれ 「…だな。さて、まったりと夕飯まで休もうか」 俺は女が家の鍵を開けるのを待っていた 「うむ。それと、下着を試してみたい。男にも見せたいしな」 俺は一瞬固まってしまった。それを見た女は不敵な笑顔を見せる 「……頼む、そう言う言葉は家の中で言ってくれ。お隣にも丸聞こえだぞ」 俺はきっと顔を赤らめていたのだろう 「ふふ、そういう所はやっぱり可愛いな、男は。男と一緒ならその程度の事は気にならないぞ」 女が冷静に戻ると一気にペースを持っていかれてしまう 「…やれやれ」 俺と女は家の中に入っていった 「これはどうだ、男?」 部屋に入った後、女は宣言通りに買ってきたばかりの下着を着ては俺に確かめさせると言った軽いストリップショー状態になっていた *** 女が下着の試着に満足し、夕食を仲良く食べ終えた後、俺と女は女の部屋に戻ってきた 「男、今日は私とデートしてくれてありがとう」 部屋に入るや否や、女は俺の後ろから話し始めた 「どういたしまして。俺も女とのデート、すごく楽しかったよ…」 俺はそのまま部屋に入り、ベッドの淵に座る 「…よかった。私、これからももっと頑張って、人に慣れていくからな」 女は安堵の表情を浮かべた 「…ああ。一緒に頑張ろう」 そう言って俺は笑顔を浮かべる 「…男……」 女は俺の隣に座り、くっついてきた。そして、そのまま俺に抱きついてきた。俺はそのまま抱き返した 「…大好きだ…男……」 「…俺も、女の事、愛してる…」 俺と女は抱き合ったままお互いの思いを言い合う。そしてここで俺の意識はぷつっと切れてしまった 「………男?」 私は男がぴくりとも動かなくなったのを不審がっていた。すると寝息が聞こえる よく考えると、男は私が寝てしまった時、きっと私の事を見守ってくれていたのだろう だから疲れて寝てしまったのだと私は推測した。 私は体をずらして男の頭をゆっくりと自分の太もも辺りに下ろした。俗に言う膝枕と言うやつだ 男はよほど疲れていたのだろう。そのまま私の太ももを枕にしてぐっすりと寝ている …ああ、寝顔が凄く可愛い。私は思わず屈んで男の額にキスをしてしまった もしかすると卑怯だったかもしれんが、たまにはいいだろう 「…お疲れ様、男」 私は男の頭を撫でてやった。男が私にしてくれたように *** (与式)=私と男の愛が強まった(今後もずっと強くなり、続いていくものとする) *** 〜END〜