親は小学校に入る前に死んだ。よくある交通事故。 この時だな。性格暗くなったの。 葬式の時は泣かなかった。今もそうだけど、たぶん実感がなくて。 声は忘れた。写真はあるけど正直ピンとこない。 それから祖父母の家に預けられた。 おじいちゃんおばあちゃんは優しくて好きだった。 小学校では、両親が居ない事とか、性格が暗いこととかでいじめられたりもしたけど、 おばあちゃんとおじいちゃんが慰めてくれたから平気だった。 小学校中学年。おばあちゃんを手伝ってる時にカレーを教えてもらった。 でも、ガンで死んじゃった。だから、カレーはもう食べられない。思い出すから。 おじいちゃんも追っかけて逝っちゃった。 このときは泣いたな。 それから高校入るまでは親戚の家に預けられた。 よくある親戚からの性的暴行なんかはなかったけど、物凄く気の弱い・気遣いの過ぎる家で、 私は腫れ物のように扱われた。 慣れなきゃと、試しに叔母さんの事を「お母さん」って呼んだら、「そんな呼び方しないで!!」って怒られた。 学校でいじめられて帰っても、誰も慰めてくれない。親戚は見なかったフリをする。 夜、寝る時に泣く事も多かった。 この辺で周囲と関わるのをやめた。もともと少なかった言葉数も、どんどん減っていった。 話さなくなると、人間て感情が無くなっていくんだね。 人並みに恋心なんてのもあったけど、思い出したくないな……まぁ、ぶっちゃけ……うん。襲われた。 私、いじめられてる割に、人気あったみたい。結構、人集まってたし。 中学終わる頃にはすっかり無表情・無感情・無関心人間になってた。 で、高校に入ったと同時に、親戚が耐えられなくなったのか独り暮らしをさせられた。 お金の面倒はみるから。と。 まぁね、この家には居場所なんて無かったし。疫病神みたいに思ってたのかも。なんも悪い事はしてないのにね。 その申し出を受け入れた時、親戚は嬉しそうだったな。 高校入っても、たいして変わらなかった一・二年。 まぁ、私にとっちゃ普通の日常。 みんなにとっちゃストレス発散だったり。悪霊退散だったり。除菌だったり。 三年。バカなやつって居るんだね。 一・二年。三年になった今でもいじめられてる私に声かけてくるやつとか出てきた。 前の席の男。どこにでも居そうな普通の男。毒にもクスリにもならなそうなヤツ。 私に声かけるなんて真性のバカか、相当の物好きか、私をオモチャにしたい相当変な性癖の持ち主よね。 中学みたいになるのはさすがにもうゴメンだから、ずっと無視してたんだけど、ずっと話しかけてくるのよ。 そんなこと続けてるうちに、男の友達とか、女の友達とかが集まってきてさ。 前の席の男と、仲が良いとか思ってたのかね? そんなのが嫌だから無視してたのに、男が懲りずに話しかけてくるもんだから勘違いされたのかな。 男友はいっつも笑ってて見るからにバカっぽいし、女友はもう幸せイッパイ注がれてます!! みたいな顔して。 その時からずっとイライラしてた。「あ。イライラするのも久しぶりだな」なんて思ったりもしたんだけどね。 で、いつの間にか仲良し四人みたいになっちゃって。いじめも減っちゃって。 いじめ減ったのは純粋に嬉しかったかもしれない。 だから、この三人とちょっと付き合ってみる気になったんだし。 そんな時かな。 他人と関わっちゃいけないって、今まで以上に強く思った事件。同時に三人にすんごく感謝した事件。 私が爆発しちゃったの。 ============================================================================= ○月×日(金) 男友 「明日バイトだっけ?」  男 「うん。五時から十時」 女友 「えー明日は女ちゃんの誕生日だよ?」  女 (ピクッ)  男 「あー。俺以外のみんなで祝ってやってくれ」  女 「……」 男友 「俺もバイトだしwwwwwww」 女友 「えぇー!! ちょっとー。みんな薄情。ね?女ちゃん」  女 「……」 男友 「まぁ、今度みんなでどっか行こうや。」  男 「わりいな。女」 女友 「じゃあ明日は女二人で寂しくどっか行こっかw」  女 (あくび) ============================================================================= ○月○日(土) 女友 「あー。買った買った。買ってやったw 女ちゃんって毎回何にも買わないよねー」  女 「……」 女友 「買い物付き合わせてるみたいでごめんねw」  女 「……」 女友 「もう七時か」  女 (あくび) 女友 「男友君はもうバイト終わってるかな。行ってみない?」(グイグイ)  女 「……」 ============================================================================= 女友 「着いたけど……電気消えてるね」  女 「……」 女友 「メールしてみるか」(ピッピピピッ)  女 (あくび) 女友 (あくび)  (ピリリッピリリッ) 女友 「お。返ってきた。早いな……え?いいのかな」  女 「……」 女友 「入れって。二階に来いって。居るのかな? まぁいいか。入れって言うんだし。入ろ?」(クイクイッ)  女 「……」 女友 「鍵……開いてる。おじゃましまーす……」 ============================================================================= 女友 「全然電気点いてないし……なんか怖い……あ。上の奥のドア開いてるね……見える?」(ギュッ)  女 「……」 女友 「階段狭いね……」  女 「……」 女友 「よし……私が先に行くから、女ちゃん少し後ろ着いてきてね? 居なくなっちゃやだよ? 怖いから……」  女 「……」 女友 (トン…トン…トン…トン…)  女 (あくび) 女友 「女ちゃん着いてきてる?」  女 (トントントントン) 女友 「入り口の近くまで来たよー……私が入って見てくるね。やっぱ電気ついてないのおかしいもん」  女 「……」 女友 (スッ)  女 「……」  女 「……」 女友 「きゃーっ」  女 (ダッ!!) =============================================================================  (パパパンッ!!)  女 「な……!?」  (パチッ)  女 「ん……っ」 三人 「女ちゃん!! 誕生日おめでとうーーーーー!!」(パチパチパチパチ)  女 「!?」 男友 「女ちゃん、おめでとうw 悪いねビックリさせてwww」  女 「え……」  男 「女、おめでとうw スマンwww」  女 「あ……」 女友 「女ちゃん!! おめでとうーーー!!」(ギュウ)  女 「あ……あぁ……」 男友 「よぉし!! はっぴばーすでーすんぞ!! はっぴばーすでー!!」  女 「……しょう……」 女友 「いつバレるかヒヤヒヤしたーwww ね、今日の服、実は女ちゃんへのプレゼントだったんだよー?」 男友 「ちょwww 女友フライングwww プレゼントはみんなで渡すんだろwww」  女 「く……」  男 「はははwww 女友ちゃんには頑張ってもらったwww」  女 「く……う……く……しょう……」 男友 「あれ……女ちゃん?」 女友 「女ちゃん……? どうしたの?」  男 「……泣いてるのか……?」  女 「いい加減……はっ……離れてよ!!」(ドンッ) 女友 「きゃっ!!」  男 「ちょ!! 女!! なにすんだよ!!」  女 「うるさい!! 黙れ!!」 男友 「女ちゃん……!?」  女 「ぢぐじょう!! なんだってこんなことするんだ!! 私は独りで平気なのに!!     なんで私に構うのさ!! 他の奴らみたいにバカにしてればいいじゃん!!     なんで!? なんでこんな事するのさ!! バカじゃないの!?     人の気持ちも知らないで!! あんたらに私の何がわかるっていうのよ!?     あんたら私の何を知ってるっていうのよ!! また私を裏切る気!?     なによこれ!! 独りで可哀想な私を祝ってやろうっての? 自分たちだけ良い気になって!! こんなの偽善だよ!!     私は独りでも大丈夫よ!! 独りで今まで生きてきたんだから!!     あんたたちみたいに、めいっぱい幸せに浸かって生きてきたやつらにわかってたまるもんか!!     男共はどうせ私の体が目当てなんでしょ? 女友ちゃんは複数プレイにでも興味があるの?     いいわよ。だったらお望み通りにすればいいじゃない!! こんな手の込んだ事までしなくったってヤらせてあげるわよ!!     襲われるのなんて慣れてるんだかr  男 「このバカ!!」(パチン) 女友 「あ……男君……」 男友 「男!! あ……あ、謝れ!!」  女 「……なんだってのよ……畜生……畜生……畜生……畜生……うぅぅ……」  男 「…………手をあげたことは……悪かった……」  女 「なんで……そんな……おじいちゃんみたいにぶつんだよぅ……」 三人 「……」  女 「なんでこんな幸せ味わわせるんだよぅ……こんなの初めてだよぅ……戻れなくなっちゃうじゃんかぁ……     せっかく今まで……独りで大丈夫だって……自分に……なんで……なんで……」 女友 「女ちゃん……」(キュッ)  女 「うえーん!! うれしいよぅ……うれしいよぅ……」 女友 「ずっと独りだったんだね……辛かったね……グスッ」  男 「……女……グス」  女 「女友ちゃんごめんねぇ……男ごめんねぇ……男友君ごめんねぇ……ありがとう……ありがとう……ありがとう……」  男 「はぁ〜〜〜……グスッ おし!! 仲直り!! 今からはっぴばーすでーすんぞ!!」 男友 「お、お、おぉ!?」  男 「男友!! 早くロウソク点けろ!! 点けたら電気消すから!!」 男友 「お、おう!! (カチャッ ジュッ) アッチィ!!」 女友 「あははwwwグスッ」  女 「あはは……グスッ」 ============================================================================= ――――で、まぁ、あとはみんなでぐしゃぐしゃになりながら、 ハッピーバースデー唄って、 ロウソク吹き消して、 プレゼント貰って、 ダサいだのいらないだの言って、 料理食べて、ケーキ食べて。 後片付けして、 DVD観て、 ゲームやって、 いつの間にか寝ちゃった男友に落書きして、 一睡もせずにカラオケ行って、 カラオケで寝て、 帰った。 うん。最高の誕生日会だったよ。