春うらら、サクラも満開の入学式、 男「んーついに高校生か。」 男「・・・・・・知ってるやつだれもいないな」 男「・・・・・・・ぉーぃ」 男「ヤバイな。。他のやつらはもうグループ作り始めてる。」 男「・・・・ま、何とかなるだろ。」 男はまだ一人だった。 入学式から3日目。男の話し相手は居ない 男「んーむ、出遅れた感満点だな・・・」 男「ま、いいか。屋上で弁当でも喰うかな」 サクラの舞う屋上、そこは昨日発見し、かなり気に入った場所だった。 男「モグモグ・・・・・」 男「・・・・・・うぅむ。。やっぱり調子がおかしい」 男「俺が俺でない感覚って、気味が悪いな」 呟いているうちに、午後の授業は終わっていた。 ここにまた、教室の中で浮いたままの人物が居る 女「ねぇねぇ、ちょっと・・」 A「あ、女さん、なんですか?」 女「あなたは、私の下で働いてみる気はない?」 A「学級委員ですか、クラブとか入りそうなので遠慮しますw」 女「仕方ないわね、、じゃぁ、私の代わりに副委員になりそうな人探してよ」 A「それは女さん、あなたの仕事です。でわ」 女「・・・・・・それくらい、分かってるわよ」 人使いの荒い、高慢、端麗、そんな噂の学級委員長だった。 高校生活2週間目、男、自宅にて 男「ただいまー」 男母「あら、おかえり。ちゃんと友達できてるの?」 男「まぁ、ほどほどには」 男母「ムリに引越ししちゃってごめんなさいね。    初めての土地で分からないかもしれないけど、あなたのようにいい子ならちゃん とできると思ってるわ」 男「ん、大丈夫」 男母「さすがね、小さいときから勉強とか無理させてきてるけど、 いい子に育ってくれてうれしいわ。」 男「あはは、でも私立とか通っていいの?家買ったばかりなのに」 男母「いい大学、いい会社に入れば元は取れるわ。あなたに期待してるのよ」 男「それは頑張らなきゃね。」 高校生活2週間目、女、自宅にて 女「ただいまー」 女母「おかえりなさい」 女「あれ、もう仕事?」 女母「ごめんなさいね、今日は一緒にご飯食べられると思ったんだけど」 女「急患?」 女母「ん」 女「いいじゃんー一緒に食べようよー♪」 女母「ダメ、あなたも大切だけど、私を頼りに生きようとしている人もいるのだから」 バタン 女「冗談くらい分かってよ・・・・・まぁいいや、もう寝よう・・」 小さい頃から親の期待を一身に受け、いかな難題でも男はそれに応えた。 小さい頃から親の愛を空回らせ、女は本気とも冗談ともつかぬ無理を言った。 男と女の出会いは、この次の日から始まった。 新ジャンル「無理難題」 序章  高校入学3週間目、サクラは散り始めている 女「ねぇねぇ、ちょっと・・」 男「ん?」 女「あなたは、私の下で働いてみる気はない?」 男「いいよ」 女「仕方ないわね、、っていいの!?」 男「何か知らんがいいぞ」 女「内容も知らずに承諾して、知らないわよ?」 男「別に、することないし。で何なんだ?」 女「クラスの副委員長。」 男「ん」 女は、この日を忘れない。初めてワガママが通った日だったのだから。 5月にはいった。サクラの花びらが雨によって窓に張り付いている 女「この間頼んだ資料できてる?」 男「あぁ、これだろ?出来てるよ。」 女「・・・・速いわね。じゃぁこれも任せられる?」 男「ん。いいよ」 女「・・・・・・・あなたいつもそんな感じなの?」 男「いつも、、、なのかなぁ」 女「保証人になって自滅するタイプねw」 男「酷いなー、あんただって遅くまで残って大変だろうから手伝ってるだけだ」 そろそろ18時。下校時刻は近い 男、自宅にて 男「ただいまー」 男母「あら、おかえり。副委員長、忙しそうね?」 男「まぁ、ほどほどには」 男母「昔から副委員長の役目多いわねー」 男「そういえば3回目かなぁ」 男母「内申書の見栄えがいいと何かと便利だしね。」 男「あはは」 男母「勉強と両立、大変だろうけど頑張って」 男「もちろん。」 男は母が結婚するまでに人生1回分以上の苦労をしてたのを知っていた 母は、だからこそ男に楽をさせようと勉強させ続けるのだ。 男はそれを知っていて、だからこそ母の期待に応えたかった。 高校生活2週間目、女、自宅にて 女「ただいまー」 女母「おかえりなさい」 女「遅くなってごめんね?」 女母「委員長さん、頑張ってるみたいねw」 女「ん、下が頑張ってくれてるから楽だよ。」 女母「そう、じゃ、仕事行ってくるね」 女「寂しいなぁー」 女母「あなたも仕事頑張って。」 バタン 女「・・・・・・・早く明日にならないかな、、眠いしもう寝よう」 梅雨の近い屋上にて 女「あなたも物好きね。」 男「そうか?与えられた仕事をするのは楽だぞ」 女「目の下にクマ作って言うセリフじゃないわよ?」 男「んーここんとこ寝てないから」 女「ちょっと仕事回しすぎたみたいね、、、、」 男「大丈夫、ここんとこ調子いいから気にしないで・・・・・・zzz」 女「ここまで無理を聞いてくれてると、甘えたくなるじゃない。あなたが悪いのよ」 男「zzz」 女は、そんな男を見て悲しくなった 梅雨。雨の教室にて 男「女―これ、出来たぞ」 女「こっちももうすぐ出来上がるわ」 男「他にすることないか?」 女「・・・・・大丈夫、あとは私がやるから」 男「・・・・・・・・・・そっか」 男はそのまま立ち去った。女は少し、寂しくなった。 つらい日、寂しい日は、自然と眠気がやってくる。 まるで自らの思考をシャットダウンするかのように。 中間テストの終わり、やはり雨の教室にて 男「女―終わったぞー」 女「あ、ありがとう・・・」 男「いやいや、あんたも中間テスト中に大変だったなw」 女「少し休んだら?フラフラしてて、、倒れるわよ?」 男「お前も変わらんだろwフラフラした後、いつでもどこでも寝てるじゃんw」 女「やることはやってるわよ!?とにかく、ちゃんと寝て!」 男「いや、大丈夫だ・・・・・ょ?」 バタッ 女「男君!?」 男には1週間ほど眠った記憶がない 中間テストの終わり、雨の保健室にて 女「へぇ・・・・・」 男「なんかおかしいか?」 女「変わってるわよ。頼られるたびにNOって言わないなんて」 男「んー」 女「自主性の乏しい人ねぇ」 男「よく言われる。頼られると放っておけないだけだけどな。」 女「ちゃんと無理なら無理っていいなさいよ」 男「無理」 男は、女の難題に初めて無理と言った 6月、梅雨。 女「お願い、無理って言いなさい」 男「いやいや、大丈夫」 女「そうじゃないと、こっちが仕事渡せないのよ!」 男「あぁ。。。それは、、、、、ちょっと困るな」 女「・・・・・・・・仕事ないと困るの?」 男「ん、人に応えることが、ある意味俺が俺で居られる瞬間だから」 女「・・・・・・・・・・・そう」 男「ん」 女「ごめん、ちょっと寝させて、疲れた」 男「了解」 男は、自分を解っている。人に頼られて初めて、自分を形成できるという自分を。 7月、まだまだ雨は続く 女「男君、これとこれとこれとこれとこれとこれとこれ、手伝って。」 男「えらい多いな」 女「明日までに。」 男「うぉ、頑張る」 女「・・・・・・・・・・・(あなたは本当に無理と言わないのね)」 女「もし明日までに出来なかったら・・・・・」 男「?」 女「あなたに対する罰として、その半分を私も受け持つわ。それに・・・・」 男「?」 女「ここのケーキ屋に連れて行って。」 男も女を解っている。 女と初めて食べたケーキはとても甘かった。 8月、ついに夏が来た。 女「じゃ、今回も終わらなかったら罰ゲームね」 男「了解」 女「・・・・・・・・・・・・・・解ってるんでしょ?」 男「何を?」 女「こんな量、今日中には無理だって」 男「あぁそんなこと」 女「それに、、、私の気持ちも・・・・・」 男「・・・・・・・・・・・あぁ」 女「じゃぁ、これからは無理って言って。貴方の為じゃなく、私のために。」 男「・・・・・・・・・・・・了解」 女「ん、ありがと・・・ごめん、、ちょっと寝る・・・」 これより、男が徹夜後に罰ゲームを受けることは無くなった。 夏休み、自室でメール 男友「おまえ、女と付き合ってるのか?」 男「いや、別に」 男友「スッゲーうわさ立ってるぞ。」 男「マジかw」 男友「クラス中、女王様に尻敷かれてるお前を見てるからなぁ。」 男「別に?気にしてないけどな」 男友「感心する。で、どうなんだ?」 男「何が??」 男友「ぶっちゃけ、女に気は無いのか?」 男「・・・・・・・・・・」 この気持ち、いつからあったんだろうか。 夏休み、自室でメール2 女友「で?ちゃんと付き合ってるの?」 女「そんなんじゃないわよw」 女友「ケーキ食べてたり、デートしてるのは目撃されてるのよ?」 女「あぁー見られてたのか」 女友「男君、すごく頭いいし、あなたの事嫌ってないだろうからチャンスじゃない?w」 女「んー、そうかなぁ。。。」 女友「ぶっちゃけ、男君、好きでしょ?」 女「・・・・・・・好きねぇ」 そんな気持ちは昔に通り過ぎてた お互いがお互いに依存して、その想いは後になって付いて来る 男と女のメール 男「お、どうした?」 女「別に・・・・・ちょっと逢いたいなって」 男「いいぞー俺も女に逢いたかったし」 女「////// 10分で学校の前に来て!遅れたら罰ゲームっ!!!!」 男の家から学校までは、自転車でおよそ15分 夏の博物館にて 男「おープラネタリウムか」 女「これ、好きなのよねー♪」 男「罰ゲームがプラネタリウム代かよw」 女「ちゃんと無理って言わないからよ」 男「あぁー」 女「無理っていっても仕事が減ったりしないから、無理って言いなさい」 男「無理w  って、イタッ!殴るなww」 実は、夏休み4回目のデート プラネタリウムにて 男「すげぇなぁー」 女「素敵・・・・」 男「星、好きなのか?」 女「ん。」 男「なんで?」 女「秘密w」 男「ちぇっw」 暗闇の中、お互い隣を意識する。 自然に繋がれた手が、とても暖かかった。 夜の帰り道、天頂には幾千、幾万の星 女「・・・・・・・・・星、綺麗」 男「そうだな。。。」 女「あの赤い星、取って?」 男「そりゃ無理だなw」 女「・・・・高嶺の花って言うけど、取れないからこそ美しく見えるの。私が星を好きな理由。」 男「?」 女「叶わない願いを眺めるだけ、私はずっと綺麗な星を眺めてる」 男「・・・・・・・・・・・」 女「言いたいことがあるの。言っていい?」 男「・・・・・・・・・・・ダメ」 女「なんで?」 男「俺が言うから。好きだ。」 女「私も。」 女が手を伸ばせば、そこにはいつも男がいる。 星を取れない男は自ら星となって女の願いを叶えた。 女にとって、その星は手に入れても色あせることのない星だった。 夏の最後のデート 男「今日も楽しかったなー、これで夏休みも終わりかー」 女「二学期入ると体育祭に文化祭、頑張らなきゃねw」 男「おぉ、覚悟しとかなきゃな」 女「・・・・・・・・・・・・・・ねぇ」 男「ん?」 女「夏休みを増やして。。もっと一緒にいたい。」 男「そりゃ無理だなー」 女「じゃぁ、せめて・・・・・」 男「・・・・・・」 女「今日だけは、最後まで私と一緒にいて?」 男「・・・・・・ん」 女「そして、私が眠ったときは、抱きしめてキスで起こして。」 夏休みの最後、二人は星空高くまで昇った 二学期2週目 男「ほい、できたぞ。」 女「ありがとー、じゃ、これとこれ頼める?」 男「んー今日いっぱいなら1つが限度だなw」 女「仕方ないなぁ、、一緒にやりましょ///」 男「んw」 男友「ついに付き合いだしたか・・・・」 女友「いいなぁ・・・」 10月体育祭終了後 男「綺麗な星だなぁー」 女「ねぇーこんな夜中に屋上登れるのも委員長の特権ねw」 男「片付けだけどなw」 女「ねぇ、、、私の事愛してる?」 男「何を今更w」 女「じゃぁ、お願い。私が死んじゃったら、他の人をちゃんと愛して?」 男「・・・・・・・・・」 男は了解とも、無理とも言えなかった。 なぜなら、その言葉は、ものすごい真実味を帯びた言葉だったから。 次の日から、女は学校に来なくなった。 男、病院にて 男「ナルコレプシー・・・・・」 女母「あの子、そういうことは話してなかったみたいね。    いつもそうなの。他の人に心配を掛けたくないらしくて」 男「そうですか・・・たしかに眠ってることは多かったですし」 女母「無理難題な冗談の中に、寂しさと願いが混じる子だったから。」 男「知ってます。」 女母「私はこの病院にいますから、いつでも見舞いに来てあげて下さい。あの子も喜ぶわ」 男「はい」 女が眠り始めて1週間。いまだ起きる気配はない。 男、眠る女を前に。 男「・・・・・・・・・・・・」 男「・・・・・・・・・・・・」 男「・・・・・・・・・・・眠り病か」 男「委員会は任せとけ。俺が何とかするから。」 男「・・・・・・・・・・・・」 男「じゃ、ちょっくら星取ってくるわ。待ってろ。」 昏々と、女は眠る。 男、病院帰りの自宅にて 男「ただいまー」 男母「おかえり。病院の子、どうだった?」 男「よく寝てるよ。」 男母「そう、、心配ね。」 男「ま、心配してどうにかなるものでもないし。」 男母「それはそうね・・・。勉強、ちゃんと出来てる?」 男「出来てるよ。委員会の仕事もちゃんとどうにかしてる。」 男母「無理してはダメよ。女ちゃんも心配だろうけど、それであなたが倒れたら意味が ないわよ?」 男「わかってる。」 男は母の言葉の裏を知っていた。 母には女のことは見えていない。そこにあるのは、「男」という投資物が女によって 潰れてしまうのではないかと言う事。 本当に大切なものは、自分の人格ではなく、自分の商品価値 次の日、男は初めて家出した。 女の叶わぬ願いを、叶えるために。 それから、1ヶ月がすぎた。 いまだ、白い病室で女は静かに眠る。 そこに、懐かしい影が現われた。 男「よっ」 女「・・・・・・・・・・・・」 男「なぁ。。。俺は、お前がいなきゃ俺は俺でなくなるんだ。」 女「・・・・・・・・・・・・」 男「だから、お前に早く無理を言って欲しいんだよ。」 女「・・・・・・・・・・・・」 男「俺はお前の斜め上を行ってやる。そうやって悔しがる女が大好きだ。」 女「・・・・・・・・・・・・」 ゴトリ 男「ほら、星のカケラ。持ってきてやったからいい加減目を覚ませ。」 女「・・・・・・・・・・・・」 ある日の会話を思い出した。 たったちょっとした言葉。 でも、その日は2人の大切な日だったから、忘れはしないその言葉。 男は女に口付ける。 それは、とても優しくて、雪解けのように柔らかく そして、永遠のような一瞬のキスだった。 女「ねぇ、星を見せて。」 男「ん、、、、」 小さな、小さな星のカケラ。 でも、そこらに落ちているのと変わらない外見。 星は、手が届かないから輝いて見える。手に入ると、やっぱり色あせて見えた。 女「ありがと、でもそれは男君にあげる。私はもっと輝く星が欲しいもの。」 男「そりゃ無理だなw」 女「じゃぁ・・・・・」 男「じゃぁ?」 女「目の前の星で我慢するわ」 男「ん・・・・」 二人は再び口付ける。 真っ白な病室は、夕焼けで紅く染まっていた。 冬・クリスマス 女の自宅にて 男「今年もそろそろ終わりだな・・・」 女「そうねぇ、いろいろあったし、なんだか1年が速く感じたわ。」 男「そりゃ1ヶ月も寝てりゃ速く感じるだろw」 女「それより男君、思いっきり怒られたんだって?w」 男「1ヶ月も行方くらませてたからな、親が卒倒したってさw」 女「あらあら、親想いのあなたがそんなことするなんて」 男「それだけ女が大切なんだよ。」 女「・・・・・そういうこと素直に言わないで!!////」 男「いいじゃんw事実だから」 女「もうっ、そんな暇があるなら光ってる星取ってきてよ!   クリスマスツリーに飾るんだから!!」 男「そりゃぁ無理だな♪」 女「仕方ないわねぇ、じゃぁこれから一生、光る星取れるまで、私の事愛しなさい!!」 男「了解w」 女には、もう小さな悲しみも、寂しさも、願いもない。 ただ一つだけ。 どうか、あの天に輝く星たちが、男の手中に納まる日が永遠に無いように。 男にも、願いが唯一つ。 あの輝く星を手に入れて、女のあの、困ったような、拗ねた様な顔を見てみたい。 そんな無理難題な想いの中に。 二人の幸せは浮かんでいる。 END By温泉 ◆SPA/n44aNU