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*engage #ref(http://www4.atwiki.jp/ameagari/?cmd=upload&act=open&page=engage&file=bridal15.jpg) ***第一章 ナサニエルの想い 知っているさ。彼女の気持ちが奴に傾いていることなんて、とうの昔に。 二人の間に俺が入る場所などないのさ。 だが、諦め切れなかった。 恋破れても、彼女への想いが途切れることはなかった。 だからせめて、この想いだけでも、彼女の傍においておきたかった。 「だから、受け取って欲しいんだ、この指輪を。」 俺はソフィーの手にそっと指輪を握らせた。 これは俺がカテリーナにプロポーズするときに渡そうとしていたダイヤの指輪。 彼女にこれを渡すことは叶わなかったが、 これは俺の彼女への想いのカタチだと思い、俺はこの指輪を持ち続けていた。 「ナサ、これはナサが恋人にあげようとしたものなんでしょ? 私なんかに渡してはダメよ。」 彼女は困ったような顔でそういった。俺は彼女を見つめて言った。 「俺はカテリーナを愛していた。 そして確かに、君をはじめて見たとき、俺は君にカテリーナの姿を重ねた。 だが、今はカテリーナの代わりとしてのソフィーでなく、 ソフィー自身を愛している。それに、指輪をこのままにしておくより、 君に渡したほうがきっと彼女も喜んでくれると思うんだ。」 「ナサ、でも、私は…ギルのことを、選んだのよ?」 「いいんだ。君の想いが誰に向かっているかは知っている。 ただ、君を愛している俺がいるということを覚えておいて欲しいんだ。 ただ、それだけなんだよ。」 そう言って俺は指輪ごと彼女の小さな手をぎゅっと握った―― ***第二章 ギルバートの嫉妬 洞窟の中ではソフィーが寝息を立てていた。 いつもの光景だ。そして、俺はいつものように眠っている彼女の左手を握る。 ……いつもと何かが違った。 彼女の左手の薬指には小さなダイヤが光っていた。 そしてそれはどう見てもエンゲージリングにしか見えなかった。 「ナサニエル…」 彼女にそんなものを送る奴など一人しか考えられなかった。 ナサニエルからソフィーへ、何かの約束が送られていたのだ。 「あいつはまだ、あきらめていないんだな… あいつは、彼女に自分の刻印を刻むことで、いまだに俺を脅かす。」 もう完全に勝利しているはずなのに、俺はなぜか奴が怖かった。 いつか、彼女は俺から攫われるかもしれない。そんな不安に、俺は怯えた。 だから、どうしても彼女から奴を取り除きたかった。 俺はそっと彼女の指から指輪をはずした。 「君のそばにいるのは、俺だけでいいんだよ。」 このまま指輪を捨てる、それだけで十分なはずなのに、 俺の気持ちはそれだけではおさまらなかった。 どす黒い、「何か」がそのとき俺の心を支配していたのだ。 「おまえはいなくなれ。」 俺は洞窟を出て行き、その指輪を眠っているナサニエルの手に握らせた。 それが何を意味するのかを知りながら―― ***第三章 ソフィーの苦悩 「ない……」 昨日、ナサがくれた指輪が忽然と姿を消していた。 洞窟の中の何処を探してもない。 「どうしよう。私もうナサと顔合わせられないわ… あの指輪がどんなに大事なものか知っていて失くすなんて、 私、最低よね。」 彼にあったらきっと私は何も言えなくなる。 だから私は、ナサニエルに逢いませんように、と思いながら外を歩いていた。 神様は私のことが嫌いなのかしら。 こんな日に限って彼と出くわしてしまったのだから。 「ソフィー?」 そう私に声をかけた彼は何故か少し悲しげな表情をしていたので、 私は自分のしたことが彼に見透かされているような不安を覚えた。 「ナサ、あのね…」 「いいんだ。君には迷惑だったんだろう? 無理やり押し付けて悪かった。」 私が話を切り出すより先に、彼はそういった。 「ナサ…どういうことなの?」 私には上手く話が飲み込めなかった。 ナサの口ぶりからすると、彼は私が指輪を失くした事を知っているようだった。 なぜ? 「どういうことも何も、昨夜君は俺に指輪を返したじゃないか。」 「……」 違うのに、なにも答えられなかった。 私は、ただなくしただけ。 どうしてこんなことになったの? そんなことが出来るのはただ一人しか思い浮かばなかった。 そしてその一人が、不敵な笑みを浮かべ私たちの目の前に現れた―― ***第四章 砕けた指輪 「ギル?どうしてここに…?」 睨み合う二人を交互に見つめ、困惑するソフィー。 だが二人は、彼女を省みず、口論を始めた。 「諦めが悪いぞ、ナサニエル。いまさらお前が何をしようとムダだ。 ソフィーは俺のものなんだから。」 「ギル、お前… そうか、やっと分かったよ。あんなことをしたのはお前だったんだな!」 「そうさ。だがそれに何の意味がある? こともあろうにお前はソフィーを疑った。 お前はソフィーを信じてやることが出来なかった。 そんなお前にソフィーを愛する資格があるのか?」 「うるさいッ!こんな汚いことをするお前こそ、ソフィーには相応しくないッ!!」 ナサニエルがギルバートに掴みかかり、ギルバートもナサニエルに拳を振り上げた。 争いが始まる。 「やめて!二人とも私のために争わないでッ!」 だが、今の二人にソフィーの声は届かない。 そして、指輪が手の平から零れ落ち、地に堕ちた。 「こんなもの、壊れてしまえ…っ」 ギルバートは叫び、ナサニエルの想いを、砕いた。 「指輪が…俺の気持ちは…」 争いは終わり、ギルバートは去った。 夕闇の中、砕けた指輪の傍に、ナサニエルとソフィーは佇んでいた。 「例え指輪が砕けても、ナサの想いは砕けてないわ。 私は、信じてるから。」 ナサニエルは、砕けた指輪に目をやる。 例え指輪は砕けても、石はいまだ美しい輝きを放っていた。 「ありがとう、ソフィー。君は、俺の気持ちを傍においてくれるかい?」 「ええ。」 そう言って優しく微笑むソフィーの姿をそのときだけは独り占めに出来た。 それだけでナサニエルは幸せだった。 たとえ恋心が砕けても、その想いはいまだ彼の中で輝いていた――
*engage ***第一章 ナサニエルの想い 知っているさ。彼女の気持ちが奴に傾いていることなんて、とうの昔に。 二人の間に俺が入る場所などないのさ。 だが、諦め切れなかった。 恋破れても、彼女への想いが途切れることはなかった。 だからせめて、この想いだけでも、彼女の傍においておきたかった。 「だから、受け取って欲しいんだ、この指輪を。」 俺はソフィーの手にそっと指輪を握らせた。 これは俺がカテリーナにプロポーズするときに渡そうとしていたダイヤの指輪。 彼女にこれを渡すことは叶わなかったが、 これは俺の彼女への想いのカタチだと思い、俺はこの指輪を持ち続けていた。 「ナサ、これはナサが恋人にあげようとしたものなんでしょ? 私なんかに渡してはダメよ。」 彼女は困ったような顔でそういった。俺は彼女を見つめて言った。 「俺はカテリーナを愛していた。 そして確かに、君をはじめて見たとき、俺は君にカテリーナの姿を重ねた。 だが、今はカテリーナの代わりとしてのソフィーでなく、 ソフィー自身を愛している。それに、指輪をこのままにしておくより、 君に渡したほうがきっと彼女も喜んでくれると思うんだ。」 「ナサ、でも、私は…ギルのことを、選んだのよ?」 「いいんだ。君の想いが誰に向かっているかは知っている。 ただ、君を愛している俺がいるということを覚えておいて欲しいんだ。 ただ、それだけなんだよ。」 そう言って俺は指輪ごと彼女の小さな手をぎゅっと握った―― ***第二章 ギルバートの嫉妬 洞窟の中ではソフィーが寝息を立てていた。 いつもの光景だ。そして、俺はいつものように眠っている彼女の左手を握る。 ……いつもと何かが違った。 彼女の左手の薬指には小さなダイヤが光っていた。 そしてそれはどう見てもエンゲージリングにしか見えなかった。 「ナサニエル…」 彼女にそんなものを送る奴など一人しか考えられなかった。 ナサニエルからソフィーへ、何かの約束が送られていたのだ。 「あいつはまだ、あきらめていないんだな… あいつは、彼女に自分の刻印を刻むことで、いまだに俺を脅かす。」 もう完全に勝利しているはずなのに、俺はなぜか奴が怖かった。 いつか、彼女は俺から攫われるかもしれない。そんな不安に、俺は怯えた。 だから、どうしても彼女から奴を取り除きたかった。 俺はそっと彼女の指から指輪をはずした。 「君のそばにいるのは、俺だけでいいんだよ。」 このまま指輪を捨てる、それだけで十分なはずなのに、 俺の気持ちはそれだけではおさまらなかった。 どす黒い、「何か」がそのとき俺の心を支配していたのだ。 「おまえはいなくなれ。」 俺は洞窟を出て行き、その指輪を眠っているナサニエルの手に握らせた。 それが何を意味するのかを知りながら―― ***第三章 ソフィーの苦悩 「ない……」 昨日、ナサがくれた指輪が忽然と姿を消していた。 洞窟の中の何処を探してもない。 「どうしよう。私もうナサと顔合わせられないわ… あの指輪がどんなに大事なものか知っていて失くすなんて、 私、最低よね。」 彼にあったらきっと私は何も言えなくなる。 だから私は、ナサニエルに逢いませんように、と思いながら外を歩いていた。 神様は私のことが嫌いなのかしら。 こんな日に限って彼と出くわしてしまったのだから。 「ソフィー?」 そう私に声をかけた彼は何故か少し悲しげな表情をしていたので、 私は自分のしたことが彼に見透かされているような不安を覚えた。 「ナサ、あのね…」 「いいんだ。君には迷惑だったんだろう? 無理やり押し付けて悪かった。」 私が話を切り出すより先に、彼はそういった。 「ナサ…どういうことなの?」 私には上手く話が飲み込めなかった。 ナサの口ぶりからすると、彼は私が指輪を失くした事を知っているようだった。 なぜ? 「どういうことも何も、昨夜君は俺に指輪を返したじゃないか。」 「……」 違うのに、なにも答えられなかった。 私は、ただなくしただけ。 どうしてこんなことになったの? そんなことが出来るのはただ一人しか思い浮かばなかった。 そしてその一人が、不敵な笑みを浮かべ私たちの目の前に現れた―― ***第四章 砕けた指輪 「ギル?どうしてここに…?」 睨み合う二人を交互に見つめ、困惑するソフィー。 だが二人は、彼女を省みず、口論を始めた。 「諦めが悪いぞ、ナサニエル。いまさらお前が何をしようとムダだ。 ソフィーは俺のものなんだから。」 「ギル、お前… そうか、やっと分かったよ。あんなことをしたのはお前だったんだな!」 「そうさ。だがそれに何の意味がある? こともあろうにお前はソフィーを疑った。 お前はソフィーを信じてやることが出来なかった。 そんなお前にソフィーを愛する資格があるのか?」 「うるさいッ!こんな汚いことをするお前こそ、ソフィーには相応しくないッ!!」 ナサニエルがギルバートに掴みかかり、ギルバートもナサニエルに拳を振り上げた。 争いが始まる。 「やめて!二人とも私のために争わないでッ!」 だが、今の二人にソフィーの声は届かない。 そして、指輪が手の平から零れ落ち、地に堕ちた。 「こんなもの、壊れてしまえ…っ」 ギルバートは叫び、ナサニエルの想いを、砕いた。 「指輪が…俺の気持ちは…」 争いは終わり、ギルバートは去った。 夕闇の中、砕けた指輪の傍に、ナサニエルとソフィーは佇んでいた。 「例え指輪が砕けても、ナサの想いは砕けてないわ。 私は、信じてるから。」 ナサニエルは、砕けた指輪に目をやる。 例え指輪は砕けても、石はいまだ美しい輝きを放っていた。 「ありがとう、ソフィー。君は、俺の気持ちを傍においてくれるかい?」 「ええ。」 そう言って優しく微笑むソフィーの姿をそのときだけは独り占めに出来た。 それだけでナサニエルは幸せだった。 たとえ恋心が砕けても、その想いはいまだ彼の中で輝いていた――

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