第5話 アルカナの鍵

今回予告

 剣、金貨、杯。この三つが意味するものはいったい何なのか。その秘密を探るべく、二人の若きアルカナは、敵地へと赴いていた。だが、彼らとの連絡が取れないらしい。
 グレイとシユウは、現在持ち場から離れられない。だとすると、二人を救えるのは君達だけだ。
 アリアンロッド・アルカナ第五話『アルカナの鍵』
 幾重もの呪縛がキミを待つ!


登場人物

PC



PC周りの人物

  • グレイ(ドゥアン(天翼族)、男性、年齢不詳)
 『砂嵐』を統べるイケメンリーダー。PIYOPIYOエプロンが似合う家庭的な男。
 アレックスをミラ達の同行者として推薦し、消息を絶った二人のアルカナの捜索を依頼する。

  • シユウ・セイエン(ヒューリン、男性、27歳)
 秀才錬金術師。エクスマキナの少女達を溺愛していること以外は至ってまとも。
 レイシャとアステールの捜索をミラ達に依頼する。残念なイケメン。麺類大好き。

  • イズモ・ソ=バー(エクスマキナ、女性、稼働7年)
 シユウのサポートを行っているエクスマキナ。そば派。
 今日も元気に《ラッシュ》をぶちこんでいる。うどんは許しマセン。

  • レイシャ(ヴァーナ(兎族)、女性、16歳)
 『女教皇』を司る少女。呪いの力で本来の力を発揮できず、敵に捕らえられてしまう。
 恥じらいを隠しつつも、ミラ達に協力を求める。
 冷静に振舞っているが、アステールのことを想っているようだ。ラブコメ担当。

  • アステール(ヒューリン、男性、20歳)
 『星』を司る青年。『女帝』の手に堕ち、再びミラ達と戦う羽目になる。
 レイシャの想いに気付き始めているが、人前ではなかなか一歩を踏み出せない様子。
 助けられた際は「別に好きなワケじゃない」と言いつつもレイシャを抱き寄せていた。ラブコメ担当。

  • シズク(妖精、女性、不明)
 アステールのファミリアであるニクシー。
 操られた彼の頭をポカポカ殴っていた。

  • カルロス(ドゥアン(牙爪族)、男性、22歳)
 アレックスにグレイが呼んでいたことを伝えた細マッチョ。褐色肌に浮かぶ汗が扇情的。
 あまり描写で来ていないが、妻子持ちである。あと、カップリング妄想被害者。

  • リーゼロッテ(ヒューリン、女性、15歳)
 グレイの義理の妹。風邪をひいて寝込んでいた。
 寝床からミラのトラップ解除を応援する。

敵対者

  • ヴェレーナ(???、女性、年齢不詳)
 邪教団を統べる謎多き女性。『女帝』を司るアルカナのようだが、詳細は不明。
 他者の心を弄ぶことを喜びとする、邪悪な女。多分、GMが初めて描写できた「本当に嫌な奴」だと思う。

  • ブラッドヴェイン(竜、男性、年齢不詳)
 遺跡でアルカナの断片である『杖』を守っていた邪竜。キュアプラムスは撃てなかった。
 『女帝』により強制支配されていたが、ミラ達によって解放される。声が渋い。

  • マイケル(オウガ、男性、年齢不詳)
 HAHAHA、《スタンブル》ってなかなか面白いだろ、ボブ!

  • ボブ(オウガ、男性、年齢不詳)
 意外にいけそうだったけど、《エンカレッジ》撃つ前に終わっちゃったよマイケル!

  • ジョン(ケルベロス、オス、7歳)
 邪教徒の一人が飼っていたケルベロス。二人は強い絆で結ばれていた。
 幼い頃からいつも一緒に暮らしており、お風呂や寝る時も離れることはなかったという。


セッションまとめ

OPENING PHASE


 ちょうどミラ達がルネスにいる頃、『砂嵐』に所属する一人の青年に声がかかった。彼の名は、アレクサンド=アルジュ。グレイから特に信頼されているうちの一人だ。
 カルロスに言われるままにオアシスへと向かうと、そこでは一人の青年が水浴びをしていた。
 しなやかな四肢に、引き締まった身体。燦々たる陽光に照らされるそのシルエットは、一枚の絵になるかのようだ。背中から生える一対の白と黒の翼は、まるで彼が泉に降りた天使であるかの如く、陽光と水面からの照り返しで、美しくも儚げに輝いて見える。
「よく来てくれた、アレックス。単刀直入に言おう。ミラ達に力を貸してやって欲しい」
「お安い御用だ。具体的には何をすればいいんだ?」
 此処で、アルカナについての大まかな説明をするグレイ。
「詳しくは、彼女達が帰って来てから話そう。それより――お前も水浴びをしたらどうだ? 心地よいぞ」
「…………」
 一瞬、得体の知れぬ寒気を感じるアレックスであったが、グレイがそのような人間ではないことを知っていたため、言われるままにアレックスはダイワ風の衣装を脱ぎ始めた。
 布の擦れる音と共に、無駄のない肉付きの身体が白日のもとに曝される。そして、オアシスに足を踏み入れ、ゆっくりとグレイのもとへと歩いていくアレックス。
「今年のイベントはこれで決まりですわー!」
 茂みに何かがいたが、二人は気にせずに水浴びをしていた。

● ● ●

 それは異形であった。それ以外の表現が見つからない程の出で立ちで、辛うじて竜であることが解るくらいであろう。多くの者は、その姿を見れば、恐怖に苛まれるのは想像に容易い。
 だが、その異形を目の前にしても、その者はまるで恐れた様子はない。フード付きの外套に身を包んでいるためにその全貌は不明だが、その上からでも解る艶めかしいラインは、紛れもなく女性のものである。ちらりとのぞかせる口元は歪んだ笑みを作りだしており、人を惑わし陥れる毒婦のような禍々しさを醸し出している。
「ねえ、ちょっと私の言うことを聞いてくれるかしら?」
 歪んだ笑みをちらりと覗かせ、女は異形へと手を翳した。
 そして――


 二人の男女が遺跡の中で何やら話し合っていた。一人は黒髪のヒューリンの青年だ。年齢は二十歳前後だろうか。まだ顔立ちには幼さが残っているが、エメラルド色の双眸には、何かを決意したかのような生き生きとした闘志が感じられる。この年頃にありそうな無気力さを感じさせない、そんな青年だ。頬には、水の精霊をあしらった紋章が刻まれている。もう一人は、アウリラの少女だ。大海を思わせるかのような群青色の髪に、永久凍土の影を表すかのようなアイスブルーの瞳。一見可愛らしいように思えるが、明るそうな青年とは対照的で何処か影のある少女だ。
「嫌な予感がするけど、此処まできたらやるしかないわね」
「何もせずにいても始まらないさ。それに、あいつらのために力になってやんないと」
「……私は貴方の方が心配なのよ、アステール」
「大丈夫大丈夫、こんなとこでくたばりゃしねーって」
「…………」
「怖いか? 安心しろ、オレがお前を守るからさ」
 だが、この時二人は予想していなかった。
 未知の力が、自分達の力を封じ込めていることを。

● ● ●

「よく来てくれた、お前達に頼みがある」
 アレックスを新たに仲間に迎え入れたアルカナ・フォースに、アルカナについての情報を得たことを知らせる。それは、ルクスの持っている金貨と剣に関連するものだ。グレイ曰く、金貨、剣、聖杯、杖の四つのアイテムを揃えると、『魔術師』のアルカナが目覚めるという。そのうちの『杖』の在り処が明らかになったのだ。
 それは新たな一歩となる吉報でもあったのだが、同時に悪い知らせも入る。
「レイシャとアステールの二人が向かったようだが、連絡が取れない」
 神妙な面持ちで告げるグレイ。
「あの莫迦共……」
 レイシャとアステール。この二人は、一度は敵対したとはいえ、今は信頼できる仲間だ。
 彼らほどの実力ならば、命を落とすことはないだろう。だが、何か嫌な予感がする。ルクスは苛立ちと不安でいっぱいだった。
 グレイがアルカナについての説明をしていると、ぷちイズモ型発信機に連絡が入る。

「ハムッ ハフハフ、ハフッ! 茹で立てのパスタマジうめえ」

「うわ、きめぇ。食事しながら連絡してくるなんて何考えてんのかしら」
 ぷちイズモから聞こえてきた声に、フィールは率直な感想を漏らす。

「……おい、いきなり酷い言われようだな。俺はただパスタを食ってたってだけなのに。いやぁ、でもこうやって連絡が繋がるところをみると、やはり俺が一ヶ月かけて作り上げた『ぷちイズモたん型発信機』は素晴らしい性能だな。性能は勿論のこと、一つ一つ俺が丁寧に作り上げたキュートなボディに、フリフリヒラヒラのお洋服。勿論、着せ替えも可能だ。これは商品化したら間違いなく売れる。ああ、それにしても可愛いなぁ。 イズモ!イズモ!イズモ!イズモ!ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!イズモイズモイズモぅううぁわぁああああ!!!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー ――」
 いきなり語り出し、狂ったようにイズモへの愛を叫び始めるシユウだったが、間もなく物凄い轟音と何かが割れる音、そしてシユウの悲鳴が聞こえてきた。
「あー、こほん。ちょっとご主人サマが転んでしまったみたいなので、私が代わりにお伝えいたしマス」
 イズモ曰く、『あるかなしーかー・はいぱーいずもたん』が察知しているレイシャとアステールからの反応が弱まっているという。敵の手に落ちているのは確実だろう。

「すまないな。俺が行くべきなのだろうが、その……リーゼが風邪を引いてしまってな」
「妹さんは大切にしてやらないと。ここは俺達に任せてくれ」

「兄なんて尊敬しなくていいのよ! あんなキモいのはいなかったことにしていくらいよ」
 兄が色々とアレであるフィールは、アレックスの言葉をバッサリと切り捨てる。まあ、あまりにも残念すぎる兄を持っているので無理もないだろう。
「やめてくれないか、そういうこと言うと傷付くから」
「ああ。俺もリーゼに何度か「お兄ちゃんちょっとウザい」と言われたからな。反抗したい年頃なのは解るが、あまりきたない言葉を使ってはならないと言っているんだが……」


MIDDLE PHASE


 遺跡に到着すると、謎の女の声が響く。
「此処は私のフィールド。あなた達の力を封じ込めるなんて容易いことよ。でも、それも不公平だから、ゲームをしましょう?」
 妖艶とも高圧的とも取れる声だ。まるで、ミラ達を試すかのような態度である。
「そう言えば、あなた達のお友達かしら。可愛い子達がついさっき来たばかりなんだけど……。早く助けないと大変なことになるかもね。アーッハッハッハッハ――」
 ただ者ではない。そう警戒した一行は、気を引き締めて二人の救出に取りかかる。

 遺跡の中では、本来の力を封じ込められていた。技を撃つにはいつも以上の力を使わねばならず、移動するたびに体力と精神力を蝕まれる。また、本来の敏捷性も発揮できず、一行にとっては苦行とも言える道のりとなった。
 しかし、それ以上の結束力を得ており、アレックスもアルカナ=フォースにすっかりと打ち解けていた。呪いの力も順調に解除し、途中にあった多くの罠も、ミラが華麗な手捌きで解除していった。彼女の腕前にアレックスは驚嘆し、己の身をもって無理矢理解除していた様を見ていたフィール達も唖然としていた。

 暫く捜索を進めていくと、階段の近くに折れた矢と血の跡があることに気付く。周囲には喉を射抜かれた敵の死体が転がっており、この先にレイシャがいることを確信する。
 階段を降りると、予想通りそこにはレイシャが捕らえられていた。だが、彼女が捕らえられた牢屋の前には、三つの首を持つ犬と邪教徒達が待ちかまえていた。
 幾重もの呪いに戦いは難航するかのように思えたのだが――
「ふはははは、どうだ。オレの可愛いジョンの力は!」
「で? お前の自慢のペットの力はこの程度なのか」
 ルクスの鉄壁の守りの前に、ケルベロスの《トリプルブロウ》は殆ど通用せず、それどころか彼の怒りを買ってしまう。また、神竜王の加護を得たミラにも攻撃は通用せず、邪教徒達は次第に追い込まれていった。
「キュウウウウン……」
 ケルベロスのジョンはあえなく撃破される。
「……話し合おう!」
「断る」
「なんて酷い奴らなんだ!」
 邪教徒もあえなく撃破されてしまった。
  なんで邪神のしもべって《クールランニング》持ってないんだよ……。

「ありがとう。あなた達がいなかったらどうなっていたか……」
 少し恥ずかしそうに俯きながら、礼を言うレイシャ。全身ズタボロであったが、命に別条はないようだ。
「厚かましいのは解ってる。私達に力を貸して」
 普段のレイシャなら見せないであろう態度に一瞬戸惑いを覚えるルクスだが、
「いいだろう。あいつを助けてやらないとな」
 彼女の頼みを快諾した。

 レイシャを無事救出し、すべての呪いを解除した一行は、途中で出会った敵の見張りを絞めたり、書物を調べたりしつつ、多くの情報を集めて順調に進んでいった。出会った当初はやや険悪であったルクスとアレックスだが、戦闘の直前にお互いに剣をジャグリングし合うまでの仲になっていた。
「此処の遺跡は凶悪な力を持つ竜が守っているらしいわ。何でも、その竜の力を連中が祭器を使って強化しているとか」
 それはスカウトであるレイシャのなせる業なのだろうか。捕らえられている間も、敵の情報をしっかりと盗み聞きしていたらしい。彼女の助けもあってか、敵を強化するギミックの解除も、ミラとアレックスは順調にこなしていった。


CLIMAX PHASE


 突如、一行の足元に転送法陣が描かれ、見知らぬ部屋へと飛ばされる。そこには、外套を羽織った妖しげな女性が待ち受けていた。
「あらあら、可愛い兎さんだこと。逃げると思ってたけど、わざわざ自分から檻の中に入ってくるなんて。よっぽどこの子のことが好きなのね」
 そう言うと、見覚えのある青年がふらつきながら姿を現す。
 そう。一度は敵対したが、今では信頼できる仲間であるアステールだ。だが、様子がおかしい。瞳には光が宿っておらず、まるで生気が感じられないのだ。
「アステール……、私が解らないの?」
 思わず駆け寄ろうとするレイシャだが、彼女の頬を強力な冷気が掠める。
「無駄よ! この子は私の忠実なしもべだから。それより、素敵だと思わないかしら? 愛し合っている二人が、こうやって今殺し合おうとしている。ほんと、ゾクゾクしちゃうわ!」
 高らかな笑い声を上げる女。
「最低な女ね! 正直爆発しろとは思ってるけど、人の心を弄ぶなんて!」
「無理矢理操っておきながら、自分のものにしたと思うなよ?」
 今までにない敵のやり方に、アルカナ・フォースの者達は怒りを覚えていた。この女は、絶対に許してはならないと。
 自分に絶対的な余裕があるのか、女は自分がアルカナの一人であることを告げる。『女帝』のヴェレーナ。それが、彼女の正体だった。
「ふん、生意気な子達だこと。まあいいわ、『女帝』たるこの私に歯向かったらどうなるか、思い知らせてあげる! 出でよ、我が僕ブラッドヴェインよ!」
 言って、指を鳴らすヴェレーナ。彼女の呼びかけに応じるかのように、巨大な異形がその場に姿を現した。
「アーッハッハッハ、あなた達もこれで終わりよぉ!」

● ● ●

 禍々しい姿の異形の他には、護衛と思われる兵士、刺青を入れた妖魔、そして操られたアステールの姿があった。
 まずは優位に立つべく陣形を整えようとするミラ達だが、初めにブラッドヴェインが動き出そうとするも、それはフィールによって妨害され、何とか被害を出すことを防ぐ。だが、敵も黙ってはおらず、オウガシャーマンがルクスの動きを呪いによって封じ込める。これにより彼は移動を封じられ、ベストな陣形を作りだすことはできなかった。
 それでも、ブラッドヴェインにミラが接近し、オウガシャーマンのもとにアレックスが向かうことが出来たのは、大きなアドバンテージとなる。ブラッドヴェインの術はミラによって打ち消され、オウガシャーマンもアレックスの攻撃とうどんの魔術によって一瞬にして倒された。
 アステールの魔術によって強化された護衛兵の攻撃も、ルクスの鉄壁の防御の前にはほとんど通らなかった。また、アステールがフィールへと向けた冷気の魔術も、当たることなく明後日の方向へと飛んでいった。
 足止めによる戦術が瓦解したブラッドヴェインが斃されるのに時間はかからなかった。強力な治癒能力を持つ彼だが、それさえも使うことなく力尽きる。邪龍が斃れると共に、アステールは糸の切れた操り人形のように、そのまま地面に倒れ伏した。


ENDIND PHASE


「莫迦。心配したんだから」
「ごめんな、オレはお前を……」
 抱き合っている二人を見て 爆発しろと 微笑ましく思っていると、何かが落ちる音が聞こえてくる。
 そちらに視線を移すと、杖のようなものが落ちていることに気付く。ルクスがそこに近づくと、持っていた金貨と剣が共鳴し始めた。
「ちょっとそこのリア充、抱き合ってないで――」
「はいはいお嬢ちゃん。若い二人を邪魔するのは野暮だぜ?」
「ちょっと何すんのやめなさいってばぁぁ!」
 爆発しろと連呼するフィールを引き摺っていくアレックス。
 ひとまず一行はグレイのもとへ報告のため戻ることにする。

「『女帝』か。面倒な奴が出てきたものだ……」
 グレイもまた、『女帝』を快く思っていないらしい。次に相見えるのはいつになるか解らないが、決して奴に屈してはならないとミラ達に忠告する。
「アルカナの鍵が三つ揃ったワケだ。残りの一つの所在は解らないが、あの二人が一度見たと言っていた。彼らに任せた方がいいだろう」

 再び、ぷちいずもたん型発信機に連絡が入る。
「ハムッ ハフハフ、ハフッ! 焼きうどんマジうめえ」
 何かを食べる音、そして悲鳴と轟音が聞こえてくる。最早、恒例行事と化していた。

「何やら、ご主人サマ曰くカルカンドの方面がキナ臭いようデス。街で怪しげな取引が行われているとか。あのポメロオタクの本店もあるみたいなので、何かがあるのは間違いないようデス」
 イズモの知らせに、「またアイツか」と溜息をつくフィール。
 そして、未だ見たことのない大規模な商業都市に、一行は期待に胸を膨らませるのだった。