第7話 アルカナメイド隊・後編

今回予告

 お屋敷の仕事を手伝うこととなったアルカナフォース。そこには、実力を試すという意味合いも含まれていた。果たして、ミラ達はメイドさんとしての仕事を全うできるのだろうか?
 そして、地下倉庫の奥で待ち受けるとても可愛い乙女なメイドさん――
 アリアンロッド・アルカナ第七話『アルカナメイド隊・後編』
 過酷なご奉仕が君を待つ!


登場人物

PC



PC関係者

  • ササメ・ユウナギ(エルダナーン、女性、 検閲により削除 )
 敏腕 巨乳 メイド長。手負いでも即座に立ち上がり《ドラゴンブレイズ》を撃つだけの実力を持つ。
 年齢や体重を聞くのはタブー。本人曰く、永遠の17歳である。

  • グレイ(ドゥアン(天翼族)、男性、年齢不詳)
 ササメが療養中に、メイド服を着用して屋敷の仕事を手伝っていた。家事能力が高い。
 相変わらずの天然っぷりを発揮。

  • ダイチ・ケルヴィン(ヒューリン、男性、22歳)
 落ち着いた雰囲気のイケメンだが、空気のような男。アレックスのかつての同僚。
 砂嵐(ハムシーン)に就職が決まったようだが、早速カップリングの餌食となっているらしい。

  • ???(?、女性、年齢不詳)
 ミラの夢の中に出てきた女性。ミラと何処となく似たような出で立ち。しかし、ミラより胸は大きい。
 シリアスに演出しておきながら、メタ発言を連発するお茶目な性格。


ディアマンテ商会

  • マウラ・ディアマンテ(ヒューリン、女性、14歳)
 ディアマンテ商会会長。姫様。幼いながらもかなりのカリスマ性を持っている。
 どういうわけか、それなりの戦闘力がある。のじゃロリ枠。

  • セバスチャン(ドラゴネット(メディオン)、男性、76歳)
 マウラの世話をしている老執事。結構な歳だが、槍を構えつつ跳躍するなど、身軽である。
 胃痛と腰痛に悩まされている。商会では数少ない常識人。執事の鑑である。

  • マカロン・エクレール(ドゥアン(天翼族)、女性、29歳)
 マウラの護衛として働いているメイド。その正体は、影の二十二神将(シャドウ・アルカナ)の『正義』。
 ミラ達の実力を試すべく、地下倉庫の奥で待ち受けていた。声のイメージはライトニングさん。
 口調は軍人そのものだが、中身は純情可憐な乙女である。純情可憐な乙女である。婚活中。

  • キュービーちゃん(魔獣、?、年齢不詳)
 ディアマンテ商会のマスコットキャラクター。白いカーバンクル。某淫獣とは無関係である。
 可愛いもの好きなマカロンさんのハートを射止めている。

  • ボブ&マイケル
 ラッシャッセー、チューモ、オキマーッスカ
 ォライッ、ェーイ、オッケェーイ、アリャリャッシター

その他

  • ユージェン(魔族、男性、年齢不詳)
 カルカンドに出稼ぎに来て、焼きそばの屋台を開いているアラストル。鉄板とコテがよく似合う。
 バンバンと共にシユウの行方を捜しているが、解らないらしい。

  • バンバン(フィルボル、女性、15歳)
 アマルの住人で、シユウが生産した商品の配達を行っている少女。プリースト/バートル。
 シユウの行方を捜している。移動力が高い。

  • カブ(竜、オス、15歳)
 バンバンのコンパニオン。ビルの四階の高さから落下しても傷つかない頑丈さを持つ鎧竜。
 首から『VMAX』と書かれたプレートを下げている。鳴き声は「マッハマッハ」。
 乗物を見ると、渋い声で「カワサキか……」「漢カワサキ」と呟く。

  • クエノン(ヒューリン、男性、48歳)
 筋骨隆々とした、チンピラ風の男。かつて、ヴォルトやカイツと共に冒険をしていた。
 強面だが、力仕事は苦手。ちなみに、クラスはスカウト/バード。使用する楽器はフルート。


セッションまとめ

OPENING PHASE 1

 ディアマンテ商会本店の屋敷の一角にある部屋。使用人の寝泊りのために造られた部屋のため、然程広くはないが、置かれている調度品などを見るとそれなりに高価なものであることが窺える。
 一人のエルダナーンの女性が、ベッドから半身を起こし、虚空を見つめている。美しくも妖しげな黒髪は真っ直ぐ切り揃えられており、肌は透き通るかのように白い。女性らしさの象徴である二つの大きな実は、ネグリジェから零れ落ちそうだ。
 彼女の名は、ササメ・ユウナギ。ディアマンテ商会の敏腕メイド長である。尤も、それは彼女の表の顔に過ぎない。「そろそろ護衛に就いたあの子が帰ってくるわねぇ。これからのこともあるし、彼女にミラちゃん達の指導をお願いしようかしら、うふふ」と、相変わらずの笑顔を浮かべながら、何やら良からぬことを考えているササメ。そこに、一人の天翼族の青年が現れる。背中から生えた白と黒の翼。高価な絹糸の輝きを思わせるかのような美麗な銀髪。一言で言えば美形だ。十人に尋ねれば、十人がイケメンであると答えるであろう、この青年。残念なことに、彼はそんなイケメンな雰囲気をブチ壊してしまうかのような格好――メイド服を着ており、おまけに食事を乗せたサービスワゴンまで運んでいるため、なんかもう色々と台無しである。それでも様になっているあたりが、彼の魅力なのだろうか。
 青年の名はグレイ。今はとある事情で使用人として働いているのだが、普段はメアンダールにて自警団『砂嵐』を率いて、日々治安維持に当たっている。尤も、彼の場合もそれは表の顔に過ぎない。
「似合っているわねぇ。将来、いいお嫁さんになるんじゃないかしら?」
「嫁だと? 残念だが、俺は男だ。嫁になるのは無理だ」
 この場に誰かがいれば、間違いなくずっこけるであろう返答だった。

 それはさておき――
 二人の裏の顔、それは『影の二十二人将』と呼ばれる存在であることだ。ササメは『戦車』、グレイは『死神』のアルカナを司っている。彼らがこの場にいるのには、当然理由があった。先の『太陽』と『月』との戦いで消耗したササメは、少しの間療養を余儀なくされた。その間、家事能力に長けるグレイが彼女に代わり手伝いに来たのだ。
 ササメを気遣うグレイ。だが、彼は知らず知らずのうちにタブーに触れ、部屋の一部が焼け焦げ、マッスルームの像が変形するというトラブルが発生するが、彼女が永遠の17歳であるということで、何とか本題に戻ることが出来た。女性に年齢を連想させるような話題はタブーである。相手によっては命がいくつあっても足りないので、皆も気をつけよう。
 いつになく真剣な表情で、ササメはグレイに問うた。「あなたが『彼女』のために動いているのは解る。でも、『彼女』が本当にそれを望んでいると思う?」と。その問いかけに対してグレイは答える。「誰がどう言おうと、歩みを止めるわけにはいかない」と。
「じゃあ、何故私を生かしているのかしら? あの時もそうだったけど、今のあなたなら、手負いの私を仕留めるのも容易い筈よ」
 そこには、普段のササメからは想像できないような、何処か哀しげな表情が見え隠れしていた。しかし、そんな彼女の様子に気付いた様子もなく、グレイは表情を変えず、沈黙を保つのみであった。そうだ、かつて出会ったあの時から、この人はそうだった。グレイの内に眠る信念を悟ると、ササメは普段のおっとりとした表情を取り戻し、つまらないことを聞いたと詫びる。
 これ以上話すことは無い。屋敷の仕事も、ミラ達に頼むのだという。それを聞いたグレイは、一先ず持ち場に戻ることにした。そう、まだ自分にはやるべきことがある。ちょっとした余興で立ち上げた自警団だが、あれ程まで大きくなるとは思ってもいなかった。
「食事は此処に置いておく。一人で食べられるか? 食べられないのなら、俺が食べさせてやる」
「ううん、大丈夫よ。食べるくらいの力はあるから」
「洗濯物は済ませておいた。部屋の掃除もお前ほど上手くできたとは思えないが、そちらもやっておいたぞ。買い物は此処の使用人達に聞いて、必要なものは揃えておいた。何かあれば言ってほしい」
「やっぱり、良いお嫁さんになれるわ、グレイ」

OPENING PHASE 2

 ミラは夢を見ていた。漆黒の闇に染まった空間に、一人の女性の姿が浮かぶ。一糸まとわぬ姿だが、淡い光に包まれたそれは、不思議と淫靡さを微塵も感じさせない。その女性は、何処となくミラと似たような雰囲気を持っていた。数日前に見た夢にも彼女が出てきたことを、ミラは覚えていた。一体、彼女は何者なのだろう――
「……可哀想に。もう望みは捨てた方が良いですね。うん、でも小さいのが好きな人もいるから、そこまで気にすることはありませんよ」
 ワザとらしく胸を逸らしつつ、残念なことになっているミラの胸元を見て、哀れむような表情を見せるが、ミラは遠回しにバストサイズを小馬鹿にされたことには気付かなかった。一度嘲笑うかのような表情を見せておきながら、「またお会いしましたね」と挨拶をする謎の女性。白々しいにも程がある。前に出会った時の儚げな様子を残しているが、今回の態度を見る限り、お茶目な一面があるようだ。決してGMのせいではない。
 女性は先日の礼を言うと、再びアルカナについての情報をミラへと教える。新たなアルカナを持つ存在が近づいているが、それには敵意は無いので、暫くは羽を休めるように伝える。しかし、その情報を伝えると、何者かの妨害を受けたのか、「シナリオ上、まだ明かせないことが多いので失礼します」と苦しみながらメタなことを言って消滅した。
『太陽』と『月』との戦いは厳しいものだった。謎の女性の言うとおり、少しくらい、休んでもいいだろう。そう考えるミラだが、羽根を伸ばす余裕など彼女には無いということを、後に思い知らされることとなる。ご奉仕的な意味で。

OPENING PHASE 3

 アレックスは宿屋にて、療養していた。『太陽』と『月』との戦いでは、最後まで立っていることができたのだが、疲労によって倒れたササメをおぶった際に、「重っ」と呟いてしまったのだ。当然、それは触れてはいけないことであったため、瀕死の重傷を負うこととなってしまった。真っ直ぐすぎるのも考えものである。女性に対して体重を連想させるような話題はタブーである。相手によっては命がいくつあっても足りないので、皆も気をつけよう。
 ベッドに半身を預け、妹エメラルへの手紙を書くアレックス。いつものように気遣うのは勿論、後で刀とか送っといて欲しい、発送料は砂嵐につけといて、などとちゃっかりしている性格が垣間見られる内容であった。暫く手紙を書いていると、何処となく部屋の雰囲気が変わったような、それこそ本当に注意しないと気付かないのでは、と思うほどの存在感の薄さの青年――ダイチ・ケルヴィンが現れる。アレックスがかつて暗殺組織に所属していた時の同僚である。
「容態はどうだ?」
「(誰だっけこいつ)お、おう。大丈夫だ」
 どうやら、ダイチは砂嵐に就職が決まったらしい。あまりにも存在感が薄いダイチだが、どうやら砂嵐では女性からの視線がギラついており、ある意味存在感が濃くなってきているようだ。主に、駄目な方向に。
 アレックスはダイチから、「カルカンドのディアマンテ商会の会長が目ぼしい物を手に入れ、近いうちに戻ってくる」という情報を手に入れる。空気ではあるが、彼の情報収集能力は本物である。
 一方その頃、『砂嵐』では新たな薄い本が出版されていた。大丈夫かこの自警団。

OPENING PHASE 4

 うどん。それはサヌキにとってメイドとしての仕事よりも重要であった。自分の仕事を放り出し、彼女はのうのうとうどんの屋台を開いていた。ちなみに、放りだした仕事は他の者にしわ寄せが来るのであった。
 食べると空を飛べるうどん――フライトをかけるだけのインチキ商法で順調に客足を伸ばしていると、近くからソースの焼け焦げるかのような香りが漂ってくる。そちらに視線を移すと、かつて敵対したことのあるアラストルの青年ユージェンが焼きそばを作っていた。屋台は騎竜と繋がれており、いつの間にやら規模が大きくなっていたようだ。
「お、サヌキちゃんじゃん。久しぶり! 相変わらずうどんなんか作ってんの? 遅れてんなぁ、ハハハハ」
「殺すドーン。ところで、そいつは誰だドーン」
 ユージェンの傍らでは、フィルボルの少女がキャベツを切っていた。
「ああ、この子は俺が色々とやらかして捕まった時に助けてくれたんだ。アマルの街の財政を支えるために、彼女も一生懸命働いてくれてるんだ」
「こんちわ。ボクの名前はバンバンって言うんだ。一応、アマルの住人なんだけど、運び屋としての仕事がメインだから、あまり街にはいないけどね」
 ちなみに、彼女のクラスはプリースト/バートルである。戦闘は出来ないが、移動能力が自慢らしい。
「そしてこの子はカブ。素晴らしいバイk……鎧竜だよ」
 鎧竜の首からは、『VMAX』と書かれたプレートが吊るされていた。カブはサヌキのスパゲッティーミートソースちゃんを見るや否や、「カワサキか……」と呟くだけであった。
 サヌキは二人からある情報を手に入れる。時々、アマルの街に『ぷちいずもたん』で連絡を取っているのだが、どうやらシユウとの連絡が取れないというものだ。何か嫌な予感がすると思っていた二人だったが、サヌキは気にせずにうどんを茹で続けていた。

OPENING PHASE 5

 ルクスは再び何処かへと旅立ってしまった父ヴォルトの情報を探していた。
 あの放蕩親父、何処に行きやがったんだ。やりきれない感情が抱くルクス。苛立ちを覚えながらも、酒場に足を踏み入れる。ちなみに、この時のルクスの格好はメイド服である。というのも、ミラはお昼寝中、アレックスはタブーに触れたために重傷、サヌキは仕事を放り出してうどんの屋台と、それらのしわ寄せが来たのだ。ルクスの仕事は、ディアマンテ商会の宣伝(という名の羞恥プレイ)。常識人であるルクスが貧乏籤を引いてしまうのは、ある意味必然と言えよう。
「世の中腐ってやがる……」
 がんばれルクスさん。
 酒場に入ると、独特の饐えた臭いや、グラスのぶつかる音やならず者同士の喧嘩など、普段から目にしており、すっかり慣れてしまった光景がそこにはあった。この後に起こることは解っている。どうせ、喧嘩を売られるんだ。どちらにしろ、やることは変わらない。売られた喧嘩は買う。そして、しばき倒す――
 だが、一向に誰も絡んで来ない。それどころか、まるで珍しい物を見るかのような――いや、違う。いつも絡んでくる筈のチンピラ達は、何かを察したかのような、哀れむかのような視線でルクスを見ていた。
「まあ、趣味は人それぞれだからな、うん」
 此処でルクスは改めて自分の服装を見て、思った。世の中腐ってやがる。
「からかうのはその辺にしとけ」
 チンピラの中でも、ひと際目立つ男が立ち上がり、ルクスのもとへとやってくる。角や翼、爪が見られないことから、彼がヒューリンであることは解った。だが、あまりにも大きく、筋骨隆々とした肉体はドゥアンにも勝るとも劣らないほどだ。
「お前さ、何かあのヴォルトと雰囲気が似ているよな」
「親父とどういう関係だ?」
 筋骨隆々とした男は、クエノンと名乗った。どうやら、彼はかつて、ヴォルトとカイツと共に冒険者をやっていたらしい。今は引退をして、情報屋としての仕事をしているようだ。
 ある時、ヴォルトは縁を切って何処かへと行ってしまったのだという。元々、何かがあると周囲を巻き込みたくないと考えていた男だ。それは、息子であるルクスも同じだったのではないかとクエノンは言う。
「出来ることがあるなら協力するさ。ただし、力仕事は無理だ。こう見えても、俺はスカウト/バードだからな」
 そう言うと、クエノンはフルートの演奏を始めた。

OPENING PHASE 6

 皺寄せが来ていたのは、フィールも同様であった。ただ、彼女の場合はルクスよりも面倒臭い仕事だった。誤魔化しの利く外回りの宣伝などの仕事とは異なり、他のメイド達と「とある人物」を出迎えなければならないというものだ。フィールは本店で働いていたことが無いため、その詳細は知らなかった。だが、他のメイド達が、姫様がつまらないものを持って帰ってくる、屋敷の地下のペットが獰猛、神殿からは目を付けられている、給料は良いけど物理的に身体を壊す人が多い、税金を誤魔化しているんじゃないか、などなど――あまりにも生々しい内容の会話をしているため、碌な事が起きないんじゃないかと悟っていた。ちなみに、最近の出来事では、生意気だった新人が翌日にボロボロになり、とても真面目になっていたらしい。
 とある人物。それは姫様と「あのお方」だという。姫様は魔獣好きで会計を圧迫させている以外はまともな人らしいのだが、あのお方がマズイのだという。なんでも、ササメとは別ベクトルの恐ろしさを持っているのだとか。
 そんな噂をしていると、激しい銃声が幾度か響いた。それと同時に無数の重力球がメイド達を襲う。彼女達は一斉にその場から飛び退き、フィールも持ち前の機敏さを生かしてそれを回避。重力球が当たった床には、大きなクレーターが形成されていた。
「ほう、私達がいない間、雑談するほどまで落ちぶれていたとは思ったが……。ふむ、動きを見る限り、訓練は怠っていないようだ」
 現れたのは、薄紅色の髪のオルニスの女性だった。背中には巨大な錬金銃を背負っており、ただ者ではないことを窺わせる。
「お帰りなさいませ!」
「声が小さい! 貴様らそれでもメイドか! もう一度だ!!」
「お帰りなさいませッ!!」
「ふん、その声では懲罰ものだが、私も疲れている。大目にみてやろう。ペルラ商会や邪教団とのゴタゴタもあったときくからな」
 一体何が起こってんのよ。突然の出来事に戸惑いながらも、フィールは周りに適当に合わせていた。だが、彼女の目はごまかせなかったようで。
「貴様、何者だ」
 こっちの台詞だと思いつつも名を名乗るフィール。その名を聞くや否や、オルニスの女性は興味深そうに一瞥し、去っていった。

 続いて帰ってきたのは、金髪縦ロールの少女と、カイゼル髭の執事だ。会長のマウラ・ディアマンテと、執事のセバスチャンだ。少女の方は収穫があったことを喜んでいるが、執事の方は疲労のせいか表情が曇っていた。
「マウラお嬢様。少々買いすぎでは? 大変申し上げにくいのですが、我が商会の売り上げは年々落ち込んでおり……」
「戯け! お嬢様ではない、姫様と呼ぶのじゃ。いつも言っておろう」
 フィールは思った。この仕事をやめたい、と。
 しかし、そんな中、二人の会話から気になる情報を手に入れる。何でも、何処で手に入れたのか、伝説の聖杯がどうのこうのという話を聞いたのだ。これは、一度ミラ姉さま達に報告した方がいいかもしれない。



MIDDLE PHASE 1

 ディアマンテ商会に呼び出されたミラ御一行。マウラは自分が出掛けている間に働いてくれたことに深く感謝すると同時に、終わらない仕事があるのでそちらも手伝ってほしいと頼む。報酬として出すのは、旅先で手に入れた聖杯だという。それを見せると、ルクスの持っていた剣、金貨、杖と共鳴し、それがアルカナの鍵の一つであることが解った。マウラ曰く仕事の内容はとても簡単なもので、地下倉庫の掃除をしてほしいという内容だ。この時点で嫌な予感しかしないのだが、傍らにいるササメがはんなりとした笑顔で発する圧力に圧され、引き受けざるを得なくなる。
 掃除という名の試練に挑むにあたって、実力を見たいということで模擬戦を行うこととなった。戦いには、商会の執事であるセバスチャンが打って出る。老人とは思えない華麗なフットワークで挑むセバスチャンだったが、ミラ達には及ばず、殆んど何もできずに撃沈してしまった。そして、彼の腰痛はより悪化することとなった。
 実力は充分だと解ったところで、地下倉庫の説明を始めるマウラとササメ。アルカナに関する情報はマウラにも既に話されていたようで、掃除にはこれからの戦いのための試練も兼ねているということを知らされる。もう、この時点で嫌な予感しかしない。そこに追い打ちをかけるかのように、ササメは『試験官の可愛いメイドさん』を呼びに行った。
「お疲れのところ申し訳ないんだけど」
「はっ、私になんなりと。なるほど、彼女達の実力を……しかし」
「ちょっと殺……怪我させるくらいでも大丈夫よ」
 暫くすると、錬金銃を背負ったオルニスの女性が現れる。彼女はマカロン・エクレールと名乗った。ルクスは彼女がササメやグレイ、そしてミラと似たような雰囲気を持っていることに気付く。なるほど、彼女もアルカナの一員なのか――
「掃除とはいえ、甘く見ないことだ。使用人という職業が如何に過酷なものなのか」
 確かにそうだ。デッキブラシをブン回しながら灼熱の炎で半径5メートルを消し炭にしたり、いきなり現れてはグラビティライフルを乱射するようなメイドは、エリンディルを探してもそうはいないだろう。


MIDDLE PHASE 2

 地下倉庫の掃除は順調に進んでいった。埃が溜まっていたために一部で苦戦を強いられたり、ペットの魔獣の餌やりでケルピーの《コキュートス》が飛んできたり、白いカーバンクルが「ボクと契約してプレミアム会員になってよ!」と契約を求めてきたり、アレックスが途中にあったササメによって書かれた張り紙「先週、この部屋で食器を割った者は正直に申し出ること。怒らないので、必ず申し出ること」を見て原因不明の戦慄を覚えたりと様々なことがあったが、なんとか全ての部屋で掃除を済ませることが出来た。
 ちなみに、この商会は某変態錬金術師とも繋がりがあるようで、「仕入先:シユウ・セイエン様 商品内容:『ぷちいずもたん』『特性ポーション』」などと書かれた段ボールも点在していた。途中で飼われていた魔獣といい、この商会の将来が色々と不安である。
 暫く進んでいくと、マウラとセバスチャンが部屋で待ち受けていた。
「おお、良く来たのじゃ! 妾も退屈でのう、ちょっと付き合ってほしいのじゃ!」
「姫様。何故私も駆り出されているのですか?」
「戯け! 妾を守るための壁になるために決まっておるではないか!」
 セバスチャンの胃痛が悪化した。
 二人……というより、マウラの言い分はこうだ。暇だし、このままでは身体が鈍ってしまうので少し戦いに付き合ってほしいというものだ。どうやら彼女達を倒さなければ先に進めそうにない。仕方が無いということで、ミラ達は姫様の余興に付き合うこととなった。
 マウラは鉄扇術の使い手であり、カンナギの技能を身に着けていた。舞うような動作でミラ達を翻弄し、自分に攻撃が着たらセバスチャンに庇わせ、善戦する。しかし、カンナギの技は自身の身体に大きな負担をかけるため長くは続かず、ついにミラ達の前に敗れる。
「ふむ、楽しかったぞ。お主達の力なら、マカロンにも勝てるじゃろう。これ、爺。いつまで寝ておる。妾は疲れておる、早く妾をおんぶするのじゃ!」
「し、しかしですな、姫様。私は今の戦いでこ、腰が、いたたた……」
「つーかーれーたーのーじゃー!!」
「は、た、ただいま」
 不満を漏らさずに任務を全うするあたり、執事の鑑と言えよう。だが、腰痛と胃痛はセバスチャンの身体を確実に蝕んでいった。頑張れ、セバスチャン。


CLIMAX PHASE

 最後の部屋で待ち受けていたのは、マカロンだった。
「良くここまで来たな。私が言いたいことはひとつだけだ。私を倒し、力を示してみろ!」
 そう言って、戦いが始まる。
 マカロンはすぐさま、懐から一枚のカードを取り出した。そこには、一人の天使が剣と天秤を手にした絵が描かれており、「8」と「JUSTICE」の文字が刻まれていた。それは、彼女がアルカナの一人、『正義』であることを示していた。『正義』のアルカナは、あらゆる可能性を封じ、ひとつに固定するというものであった。(※データ的には、フェイトやスキルによる振り直しをそのシーン中封じるというもの)しかし、すぐにミラはその力を己の『運命の輪』のアルカナによって打ち消した。
「貴様もアルカナか……。なるほど、面白い」
 満足そうな笑みを浮かべるマカロン。彼女は、戦いを楽しんでいるようだ。メイドってなんだっけ。
 マカロンの動きは、今まで戦ってきた相手よりも鈍かった。この程度の相手なら倒せるだろう。だが、それはすべてマカロンの戦闘スタイルによるものだった。ミラ達は着実にマカロンの体力を削っていった。だが、ある時に異変に気付く。マカロンが持っていた錬金銃が大きく形を変え、刀の形を成していたのだ。
 魔導剣と呼ばれる武器だ。錬金銃による攻撃は仮のものであり、刀がマカロンの本来の戦闘スタイルに合ったものであった。
 ミラ達はそれでもマカロンへの攻撃の手を緩めなかった。まず、うどんがマカロンの取り巻きの弓を持ったメイドを一掃。アレックス、ルクス、ミラは各々の武器でマカロンへと斬りかかる。だが、マカロンはその攻撃を避けようともしなかった。
「自分が倒れなければ問題ない」
 ワザと攻撃を食らい反撃に移るサムライの技能《ストライクバック》――それこそが、マカロンの戦闘スタイルであった。本当にメイドってなんだっけ。
 無論、本気をだしているわけではないだろう。だが、ミラ達は着実にマカロンの反撃により体力を削られていく。長引けば不利だ。そこで、フィールは掃除ついでに捕まえたカーバンクルを見て思い出す。
「ちょっと、ついてきたんだから少しは守りなさいよ」
 フィールが途中で捕まえたカーバンクルのキュービーちゃんを投げる。
「わけがわからないよ」
「なぁっ!? 貴様、可愛いキュービーちゃんになということを!!」
 軍人気質とはいえ、やはり中身は乙女のワケで。マカロンの渾身の反撃は、度々キュービーちゃんとフィールの放つ障壁によって大きく軽減された。また、渾身の《アルティメットボディ》による《ギガンティックブロウ》も、ミラの妨害により不発に終わる。ついに、鬼メイドも膝をつくこととなった。
「見事だ。それだけの力があれば、問題あるまい」


ENDIND PHASE 1

 無事にお手伝いを終えたミラ達を、マウラは満面の笑みで労い、これからの旅路に於いて自分達に出来ることがあればサポートをすると約束。商会の力で、いつでも買い物が出来るようにと《派遣販売》のギルドスキルをプレゼントする。ちなみに、この時セバスチャンは腰痛で寝込んでいた。
 また、聖杯も無事に手に入れることが出来た。しかし、それは共鳴をするばかりであり、何かが起ころうとする気配はない。これは、一度グレイに見せた方が良いかもしれない。ミラ達は一先ず、ササメと共にメアンダールへと戻ることとなった。


 メアンダールへと帰る途中で、ササメはミラ達に聞こえない声で呟いた。
「うーん、だいぶ長く生きてきたけど、あまり先は長くなさそうね。でも、あの子達が強くなるまでは、まだ……」


ENDIND PHASE 2

 敵地に乗り込むべく、シユウはアイテム類の整理をしていた。調合したポーション類を整理していると、何の前触れもなく、一つのポーションの瓶にヒビが入った。次に、彼の目の前を黒猫が横切った。
「ついてないな。ま、一本くらいすぐに調達できるからいいか」
 彼には普段のふざけたような態度は微塵も感じられなかった。その双眸に宿るのは、復讐の二文字だ。
「さて、行くとするか。必ず帰ってくるからな、俺の可愛い娘たちよ」
 首からぶら下げたロケットを開けると、そこには普段共に暮らしているエクスマキナの少女達の写真が嵌められていた。
「先生、アンタの仇は俺が討つ」