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京都府宇治市に開(ひらき)浄水場という水道施設がある。地下水を水源とする浄水施設だ。宇治市では、それを休止して天ヶ瀬ダムを水源とする府営水道に切り替える計画だ。その理由は、原水の水質悪化と浄水場が老朽化していて更新費がかかることだとされている。それに対して、地元住民は開浄水場休止に反対して訴訟提起に踏み切った。
(原告団313名の弁護人・湯川二朗弁護士のブログ田舎弁護士日記「開浄水場休止差止訴訟」より)
2009年01月28日 (水) 20時40分06秒 最終更新

仮処分命令申立審尋
仮処分Ⅰ(申立書・答弁書)1.原告・申立書 2.被告・答弁書
仮処分Ⅱ《準備書面①②》3.準備書面① 4.準備書面②
仮処分Ⅲ(準備書面③抗告理由書)5.準備書面③ 6.抗告理由書 7.抗告理由書補充書 8.被抗告人による反論

2008年(平成20)12月26日
自治会員のみなさんへ

開地区自治連合会会長 海老温信
開ヶ丘自治会会長 林 猛雄
一里ヶ丘自治会会長 徳岡拓万
第二次水道問題対策委員長 木村正孝

「大阪高裁-仮処分取り下げ-と本訴公判」のお知らせ

   寒波とともに年の瀬も近づき、あわただしくなってまいりました。
   さて、昨日開福祉センターにおいて、自治会長・水道問題対策委員・原告の方々と弁護士を交え会議を開き、本年4月大阪高等裁判所への仮処分申請を取り下げることを決定しました。
これは、4月時点と今日では状況が変化していることを踏まえ、本裁判(本訴)に集中するためです。詳細は下記の即時抗告申立取下書をご覧ください。
   なお、本訴第5回公判は、年明け1月21日(水曜日)午後4時から京都地方裁判所です。

即時抗告申立取下書

平成20年12月26日
大阪高等裁判所             
第11民事部 御中
上記申立人ら代理人
弁護士  湯   川   二   朗
弁護士  山   口       智

   本件仮処分は、被申立人がいつ給水停止・府営水切替の強硬措置に出てくるやも知れない切迫した情勢の下で給水停止・府営水切替の緊急の差止めを求めて申立てをしたが、この間、開地区住民の強い願いを受けて、開浄水場の給水は絶えることなく継続されてきた。そして、被申立人は、現在、公式文書の中で「現時点では司法の判断に委ねることとしていることから、当面は、水道事業会計予算の総枠の中で給水することで対応して参りたい」との姿勢を表明するに至り、給水停止・府営水切替の強硬措置をとる緊急のおそれはなくなった。そのため、仮処分の所期の目的は達成したものと評価できる。
   現在、京都地方裁判所において本案裁判の審理が始まり、給水停止・府営水切替の合理性の有無を明らかとすべく審理が開始されたことから、今後は、本案裁判に集中的に取り組むこととしたい。 以上のような次第で、今般、即時抗告の申立てを取り下げることとする。

市水道部が、年末の給水体制に万全を期す対応
   この間の取り組みの結果、開浄水場への給水について市と確認したものです。
   ポンプ揚水量の低下も心配するほどではなく、昨年より水道使用量が減っているため、ポンプの稼動時間はむしろ減少しています。年末に向け、節水をよろしくお願いいたします。

開浄水場休止差止請求訴訟-仮処分申立審尋

1. 原告・申立書

仮 処 分 命 令 申 立 書
当事者の表示    別紙当事者目録記載の通り
   平成20年1月16日
   債権者ら代理人
       弁護士 湯 川 二 朗
       弁護士 山 口   智     
申 立 の 趣 旨
   債務者は、開浄水場の休止をして、債権者らへの給水を京都府営水道に切り替えてはならない。
との裁判を求める。
申 立 の 理 由
第1 当事者
   1. 債権者らは、京都府宇治市開町及び広野町桐生谷に居住する住民及び当該住民らの代表者で構成された連合会である。
   2. 債務者は、水道法に定める水道事業者として水道事業を経営している。債務者の水道事業計画においては、上下水道事業の浄水施設として開浄水場(宇治市神明北65―26)を設置している。開浄水場の水源は地下水(井戸水)であり、浄水方法は塩素消毒及びエアレーションによっている。
   3. 債権者らは、債務者の水道事業計画の給水区域に居住し、開浄水場で浄水された水の供給を受けてきた。
第2  被保全権利
   1. 開浄水場から給水を受ける権利
   (1) 開浄水場の歴史
   開浄水場は元々日産車体株式会社の社宅向けに、同社の経営する簡易水道として用いられており、債権者らも当該簡易水道より水の供給を受けてきたところ、日産車体と債務者と債権者ら地域住民とが協議の上、昭和53年3月31日、債務者が日産車体からその簡易水道に係る水道施設の移管(譲渡)を受けて、市水道となった(甲1)ものであり、債権者ら地域住民はその後も引き続き開浄水場で給水された水の供給を受けてきた。
   【落丁…………………………………………………………………………】
   域住民を中心として1万180人もが署名している(甲12)。
 
   上記協定によって、債務者は日産車体から、債権者らに対して開浄水場の水を供給する債務を引き継いでいることは、覚書(甲1)第2条等を見れば明らかであるが、さらに、上記のような、開地区における給水の歴史や地域住民の井戸水に対する愛着等を考慮すれば、日産車体は、債務者らに対して、日産車体が経営する水道施設によって給水を受けさせる債務を負つていたところ、上記協定によって、日産車体の当該債務を債務者が承継したと考えるべきである (すなわち、給水契約の承継)。そして、日雄車体が債権者らに対して給水していた水は、現在では開浄水場で給水されたた水なのである。
   そうすると、債権者らは、債務者に対して、上記給水契約に基づいて、開浄水場で浄水された水の供給を受ける権利を有しているということができる。
   ある地域で採取された水が市版され、価値を有するようになった現在において、「ある特定の水を受ける権利」というものを観念することについては何ら問題はない。その点からいっても、「開浄水場で浄水された水の供給を受けることを求める権利」というものは十分観念できるといえる。
   2. 債務者による開浄水場休止の計画
   債務者は、平成19年1月22日、突如として債権者連合会長に対して開浄水場休止計画を伝えてきたものであり、地元説明会は同年3月5日に初めて行われた(甲8)。
   債務者が開浄水場を休止する理由は、①開浄水場の原水に「人の健康の保護に関する環境基準」を上回る値のトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンが含まれているところ、これらの量が増えた場合に基準を守れなくなるおそれがある(水質)、②施設が老朽化し、現時点でも電気盤等の改修に6700万円の工事費が必要となっており、市の宇治浄水場の経費と比較したとき小規模の浄水場であることから浄水単価が高くなっている(施設の更新費用の増大)というものであり(甲4)、開浄水場を休止し、府営水へ強引に変更しようとしてきた(甲7)。
   しかしながら、債務者らが府営水へ変更すべきとしてあげる上記の点に関しては、①水質 開浄水場の原水は環境基準値を超えているものの、過去10年間に悪化してきたわけでもなく(甲5)、しかも、浄水後の水質検査では水道水質基準に適合しており(甲5)、体重50キ回グラムの人が毎日約20リットル一生飲み続けても健康への影響はないと考えられるものである(平成19年4月13日付京都府調査結果 甲6号証末尾添付)。仮に原水の本質が悪いのであれば、汚染源を確認・除去し、原水を採取する位置を変え、又は深く掘ったりして対応することも可能であって、直ちにちに休止しなければならないものではない。従つて、開浄水の水質が悪いという点に関しては、府営水へ切り替える理由にはならない。また、②施設の更新費用の増大 「宇治市水道事業中・長期整備計画」(平成14年)では、開浄水場は「施設管理は比較的良好であるが、機械・電気設備において法定耐用年数を超過している可能性もあるため、機能診断調査を実施する。」 と評価されており(甲3号証18頁)、 しかも平成3年度に新たにエアレーション設備(曝気装置)を設置したばかりであって(甲2)、施設のを老朽化は認められないばかりか、開浄水場よりも古い施設は外にも多数あり、しかも更新費用にも莫大な費用はかからない(甲10号証5頁)。よって、更新費用がかかるというのも、府営水へ切り替える理由にはならない。
   そもそも、上記のとおり、債権者らは、債務者に対して開浄水場で浄水された水の供給を受ける雄利を有しているところ、債務者が債権者らに新たに供給しようとしている府営水は、京都府が天ヶ瀬ダムから取水して浄水処理を行った水であり、その水源はこれまで債権者が供給を受けてきた井戸水ではないので、府営水の水のみを債権者らに対して供給しようとすることは、債務の本旨に沿わないものでは債務不履行となる。しかも、府営水も、その原水については環境基準に適合しない項目が4項目もあり(一般細菌、大腸菌群、色度、濁度)、汚濁物質も多いため総トリハロメタン値は開浄水よりも10倍以上悪いのである(甲5)。
   3. さらに、開浄水場を休止にし、その代わり府営水を供給するということは、水源の種別を地下水から配水池に変更し、浄水施設も変更することであるから、厚生労働大臣の許可を受けなければならない事業計画の変更に該当する(水道法10条1項)と考えられる。しかしながら、債務者はこの認可を全く受けておらず、それにも関わらず、府営水へ切り替えようとしているのである。この点においても、開浄水場の休止は違法である。
第3  保全の必要性
   1. 債務者は、債権者ら地域住民の意向を聴取することもないまま、平成18年12月21日、開浄水場の休止を決定し、これを債務者議会建設水道常任委員会に報告している。債務者は、平成19年1月22日になりようやく、開自治連合会長に対して開浄水場の休止、及び、府営水への切り替えが議会において決定されたことを報告したが、その後、同年6月12日深夜には、府営水への切り替えに反対する債権者ら地域住民の意向を無視して一方的に開浄水場を休止し、府営水ヘの切替工事を強行しようとしたのである(甲9)。そして、同年12月28日、債務者は債権者連合会に対して話し合い打ち切り及び早期休止の最後通告をしてきた(甲14)。債務者(宇治市市長及ぴ水道事業管理者)は議会等でも、また債権者らに対しても、これまで繰り返し平成19年度内に府営水への切り替えを行う旨言明している。このままでは本年1月中には、債務者は強引に府営水への切替工事を行ってしまうおそれが極めて高い。
   2. そもそも、上記のとおり、債権者らが、債務者より開浄水場によって浄水された水の供給を受ける権利は、債権者らと債務者との間の給水契約に基づくものである。従つて、開浄水場を休止し、府営水へ切替ようとすることは給水契約の内容を変更するものであり、この変更に際しては、変更によって最も影響を受ける給水契約者たる債権者らの意向を聴取し、協議した上で、債権者らと債務者との間で合意が成立しなければならないはずである。
   よって、債権者らの意向を無視した一方的な変更は認められるはずはない。このような一方的な変更は認められるべきでないといったことはこれまで債権者らは債務者に対して何度も申し入れてきたが、債務者はそれを全く聞き入れようとせず今日に至っている。このような態度を取られているのであれば、いつ府営水へ切替えられてしまうか分からない。
   しかも、現実問題として、一度、開浄水場が休止され、府営水ヘ変更されてしまったら、その後、再び開浄水場を稼動させ、府営水から開静水場によって浄水された水へ切替えることは困難である。
第4 結論
   よって、申立の趣旨記載のとおりの決定を得るべく、本申立に及んだ。
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2. 被告・答弁書

平成20年(ヨ)第15号浄水場休止差止等仮処分命令申立事件
債 権 者 開地区自治連合会 外312名
債 務 者 宇 治 市
答 弁 書
平成20年1月30日
京都地方裁判所第5民事部 保全係 御中
   〒604-8187 京都市中京区鳥丸通三条下ル 大同生命京都ビル8階
   烏丸法律事務所(送達場所
   TEL:075-223-2714 / FAX:075-223-2718
               債務者代理人 弁護士 小 野 誠 之
                   同    弁護士  野 澤   健
第1 申立の趣旨に対する答弁
   1 債権者らの申立を却下する。
   2 申立費用は債権者らの負担とする。
との裁判を求める。
第2 申立の理由に対する答弁
   1 「第1当事者」について
   (1)   第1項について、債権者には「宇治市神明宮北」「宇治市広野町桐生谷」「宇治市広野町東裏」に居住する者も含んでいる。また、「開地区自治連合会」は町内会の連合会と思われ、「債権者住民らの代表者で構成された連合会」との主張は不知。その余は争わない。
   (2)   第2項については認める。
   (3)   第3項については、債権者●●●●(番号117番)を除く債権者らが、現在、開浄水場(以下「本件浄水場」という。)で浄水された水の供給を受けていることはi認める。
   2 「第2 被保全権利」について
   (1)   「開浄水場の歴史」について
   概ね認める。ただし、現在の本件浄水場は、昭和53年10月に債務者が新たに開設した施設であり、日産車体から移管を受けた施設により水道水の供給を行ったことはない〔但し,水道管の一部については、昭和36年以降に日産車体の負担で新設したものを含んでいる)。
   (2)   「開浄永場と債権者地域住民との結びつき・愛着」について
   甲第1号証の覚書(以下「本件覚書」という。)の締結にあたり、地域住民が本件浄水場で取水されている井戸水の供給を希望していたことは認める。しかしながら、本件覚書が「井戸水の供給を受ける利益債権者ら勝ち取った証」であるとの主張はいずれも争う。
   また、「地下水(井戸水)を守り、その積極的な活用と自己水源を増やすことを求める」要望書とは、乙第8号証のことであり、本件浄水場の休止に反対する署名ではない。
   (3)   「債務者の債務の目的」について
   「債務者が日産車体から、債権者に対して本件浄水場の水を供給する債務を引き継いだ」との事実は否認し、債権者らが「本件浄水場で浄水された水の供給を受ける権利」を有しているとの主張も争う。
   本件覚書は、債務者が開簡易水道の受給者(当時)に対して,今後「給水を行うこと」を約束したものではあるが、「本件浄水場の水を供給する」旨約束したものではない。そもそも、日産車体においても、開簡易水道受給者に対して給水すべき債務はあっても、本件浄水場の水を供給する債務を負っていたものではない。
   また現在においても、地方公営企業である水道事業において、「ある特定の水を受ける権利」(ある特定の水を給水すべき義務)を「観念」することなどできないし、ましてや本件覚書締結当時において、かかる権利 義務を確認したと考えることは出来ない。
   (4)   「債務者による開浄水場休止の計画」について
   本件浄水場の休止に、施設更新費用の負担と水質の低下を主な理由としている点は認める。さらには、京都府営水道(府営水)の受水量に余裕があることも考慮して決定したものである(甲第8号証 添付「地元説明会資料」5~13頁参照)。
   これらの理由が府営水へ切り替える理由にはならないとの主張については争う(後記「債務者の主張」参照)。
   (5)   本件浄水場の休止及び府営水の供給が、厚生労働大臣の認可を受けなければならない事業計画の変更に該当するとの事実は争う。
   厚生労働大臣の認可が必要となるのは、①給水区域の拡張、②給水人口または給水量の増加、③水源の種別、取水地点または浄水方法の変更であり(水道法10条1項)、本件浄水場の休止と府営水への切り替えは、既存の設備の1つを休止させ、別の既存の設備により給水を行うものであって、新たな浄水方法を導入するものではないから、水源の種別や浄水施設の変更には該当しない。
   3 「第3 保全の必要性」について
   債務者が早期に本件浄水場を休止して府営水への切り替えを実施する予定であることは認める。債務者は、すでに合計8回にわたって地元説明会を開催し(甲第14号証参照)、地域住民の理解を求めるとともに、その説明を十分に尽くしてきた。そもそも、債権者らの主張する被保全権利は認められないのであつて、保全の必要性を認める余地はない。
   4 「第4 結論」について
   争う。
第3 債務者の主張
   1 当事者について
(1)   債務者代表者の記載の誤り
   水道事業については,、地方公営企業法の適用を受け(同法第2条1項1号)、同法7条により管理者が設置され、管理者は同法8条1項により当核地方公共団体を代表するものとされている。したがって、債務者の代表者は宇治市長ではなく、宇治市水道事業管理者となるべきものである。
(2)   本件覚書の当事者「丙」は「開自治会長」「開水道対策委員長」となっている。本申立における債権者「開地区自治連合会」との同一性など、法的な関係を明らかにされたい。また、給水を受けている住民個人とは別に「自治連合会」が債権者として申立を行う法的利益は何か、明らかにされたい。
(3)   本件浄水場の水が現在供給されている地区のうちの約半分以上の地区(桐生谷地区など)は、従前は本件浄水場とは別の市水道から給水を受けてい た地区である。
   本件債権者らのうち72名は、本件覚書締結当時から本件浄水場の水の供給を受けてきた世帯であるが、その他の債権者らは、①従前別の市水道 から給水を受けてきたが、本件浄水場の給水区域の拡大にともない、本件 浄水湯から給水を受けるようになった者、あるいは②転入により本件浄水場の給水区域に居住するようになつた者である。
   上記①または②に該当する債権者らについては、「本件浄水場の水の供給を受ける権利」を有する旨主張する根拠として、本件覚書を援用する余地はない。
   2 本件覚書締結の経緯(乙第1号証)
(1)   開簡易水道は、もともとは日産車体の前身である旧日国工業が戦時中、 同社の社宅に給水していた施設である。日産車体は、昭和36年8月、京都府知事宛に簡易水道廃止届を提出し、「他の水道施設が完成するまでこれを廃上してはならない」との条件付で、簡易水道事業の廃止を許可された。
(2)   昭和38年7月には、開簡易水道の水量不足により、同水道により給水を受けていた319世帯のうち、 104世帯が市水道に切り替えられた。切替の際に必要となった費用(本管から各家庭までの引込工事費用)は 、各世帯の負担であった。
(3)   その後も開簡易水道を廃止して、府営水(昭和40年度より供絡開始)に切り替えることが検討されたが、地域住民は難色を示し、昭和46年9月には地域住民により開簡易水道継続促進会が発足され,開簡易水道存続の要求が行われるようになった。
(4)   一方、府営水の受水枠は、(当時)1日あたり5万1000立方メートルとなっていたが、受水枠稼働率は、昭和50年には96.5%に達したため(乙第2号証)、府営水への切替が難しい状況となり、債務者(宇治市)としても新たな水源の確保が必要に迫られた。
   そこで、債務者、日産車体及び開自治会が協議した結果、昭和50年12月ころ、債務者が日産車体から土地の無償貸与等を受けて新たに浄水場を建設すること、給水管引込工事費用は各世帯が負担することで基本的合意に達した。
(5)   ところが、その後も開自治会は、①日産車体が浄水場用地を債務者に譲渡しないこと、あるいは②引込工事費用の負担が高額であることを口実として、開簡易水道の廃止について最終的な丁解をしなかった。
   昭和53年1月、 日産車体が債務者に2000万円を寄付し、これが引込工事費用(本管からメーターまで)に充当された。各世帯の費用負担はメーターから各家庭内までの引込工事とすることで合意し本件覚書の締結に至った。
(6)   債務者は、本件覚書の記載に従つて、新たに浄水場を建設し、昭和53年10月に本件浄水揚が完成した。本件浄水揚の建設にあたっては、新たに水道管の敷設が行われ(工事の一部については日産車体の負担により本件覚書締結に先行して行われていたが浄水場の設備も全て新たに建設された。取水地点も開簡易水道と本件浄水場では異なる。
   なお、開簡易水道が廃止された昭和53年3月末から本件浄水場が完成する同年10月までの間は、各世帯に対して府営水の供給が行われている。
(7)   以上のとおり、本件覚書は、①債務者が日産車体から給水、すなわら水道事業を引き継ぎ、本件浄水場を新たに建設すること、②地域住民は自己の負担においてメーターから各家庭内への引込工事を行うこと③日産車体は債務者に2000万円を寄付することなどをそれぞれ約束したものであつて、本件浄水場を建設するにあたつての各自の負担を確認したものである。
   本件覚書は、債務者が日産車体から水道事業を引き継ぐことを内容としているものであり、地域住民が本件浄水場で浄水された水の供給を受ける権利を有することを認め、これを保障することまでも約束したのではない。
   3 「特定の水を受ける権利」が「観念」出来ないこと
(1)   水道事業の性格
   水道事業は、原則として市町村が経営するものとされ(水道法第6条2項)、事業者(市町村)は給水契約が成立した水道利用者に対し`て常時給水の義務を負う(同法15条)。
   水道は、電気、ガスなどと同様に、日常生活に必要不可欠であつて、継続的に供給されることが極めて重要であるが、それ以上に、特定の浄水場で浄水された水を供給すべき義務を認める余地はない。
(2)   また、水道事業は地方公営企業法の適用を受け(同法2条1項1号)、「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。」と定められている(同法第3条)。すなわち、水道事業の効率的、経済的な観点からの見直しは当然にあり得るものであるから`「本件浄水場で浄水された水の供給を受ける権利」、「地下水の供給を受ける権利」あるいは「府営水の供給を受ける権利」などというものを「観念」した水道事業を運営することは出来ない。
(3)   宇治市内においては、住民が給水の申出を行う際には、「給水装置(公共下水道)使用開始届」(乙第3号証の1)に署名押印して債務者に提出をする。この使用開始届の様式が用いられる以前は、「需要家台帳」(乙第3号証の2)を作成し、給水管理が行われていた。
   上記「使用開始届」あるいは「需要家台帳」には,給水を受ける水道水の区分(府営水あるいは地下水、浄水場の種類など)はなく、このことからしても、「特定の水を受ける権利」を契約内容とするものではないことは明らかである。
(4)   また、本件浄水場で浄水された水道水と、他の浄水場で浄水された水道水、あるいは府営水の水道水は、いずれも飲料水としての基準内にあって、安全な水道水である。臭い、色、味などの差異はほとんど無い。本件浄水場で浄水された水を他の浄水揚からの水と区別することは困難であり、「本件浄水場で浄水された水の供給を受ける権利」を「観念」する実益はない。
(5)   以上のとおり、債権者らは、「特定の水を受ける権利というものを観念することについては何ら問題はない」と主張するが、水道事業においては、地域住民のライフラインである水の供給を継続的に確保することが重要なのであって、水道事業者である債権者の判断により、地下水あるいは府営水のどちらを供給するかを決定出来るというべきである。給水契約について、市販されている水(ミネフルウォーター)を購入することと同様に論じることは誤りであって、給水契約の性質に照らして、「ある特定の水を受ける権利」などというものは「観念」出来ない。
   4 本件浄水場休止の必要性
(1)   本件浄水場は昭和53年に新設されてから約30年が経過し、施設設備の更新の時期を迎えており、消毒設備、エアレーション設備、高圧電気設備など、全体的に耐用年数を経過している(乙第4号証)。具体的には、配水池の壁に水漏れが生じたり、圧カタンクに腐蝕が生じるなどしている(乙第5号証)。取水ポンプの揚水量にも低下が見られ、稼働時間が長くなっている(乙第6号証)。
   施設の更新には7100万円が必要となる見込みであるところ(甲第8号証10頁)、本件浄水場は、平成19年9月現在、給水人口2339人、給水戸数927戸と比設的小規模な浄水場であり、給水収益に照らしても、上記のような過大な設備投資を行うことは適切でない。
   中・長期整備計画(甲第3号証・平成14年9月に配布)においても、既存施設の老朽化が問題点として指摘されており、「合理的かつ総合的な水道施設整備」の観点から、浄水場の統廃合は必要かつ適切な行政施策となっている。
(2)   また、府営水の協定水量(府営水から受水することが出来る最大量)は 、1日あたり6万2800立方メートルとされているところ。平均受水量は1日あたり4万2261立方メートルにすぎず、槇島浄水場(廃止ずみ)及び本件浄水場を休止して府営永に切り替えても、十二分に余裕がある(甲第4号証添付資料8項目及び乙第7号証)。
   なお、平成17度における府営水の原価(原水及び浄水費、人件費、諸経費)は、1立方メートルあたり155円であり、同会計年度の本件浄水場の原価(1立方メートルあたり229円)よりもはるかに経済的である(甲第8号証12頁 )。
(3)   債権者らも認めているとおり、本件浄水場の原水は、環境基準に定められている項目の物質が基準値を超えており、年十水質が悪化している。施設の更新にあたり、水質改善の観点から取水場所を変更するとなれば、上記に記載した以上の費用がかかり、仮に浄水場の新設をする場合、用地費を除いても2億1100万円以上の経費が必要となる。
(4)   なお、債務者は、平成19年4月、本件浄水場と同様に小規模な浄水場であり、施設の老朽化が進んでいた槇島浄水場を廃止している。本件浄水場の休止は浄水場の統廃合の一環である。
(5)   以上のとおり、本件浄水場の休止は、給水収益が悪く、設備も老朽化している施設を廃止し、容量に余裕があり給水収益も良い方施設による給水に変更するものである。また、複数ある宇治市の浄水場のうちどの浄水場を休止すべきかについては、水質や収益を考慮の上決定するものであって、本件休止は債務者の合理的な施策の範囲内にあるというべきである。
   5 まとめ
   以上のとおり、本件覚書は、本件浄水場で浄水された水の供給を受ける権利を保障しているものとは言えず、そもそも「特定の水を受ける権利」を「観念」することも出来ないのであって、債権者らが主張する被保全権利を認めることは出来ない。
   本件浄水場の休止は、債務者の施策として合理的な判断であって、何ら違法ではない。したがって、債権者らの申立は速やかに却下されるべきである。
以  上

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