※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

2009年01月27日 (火) 22時43分29秒 最終更新

3. 準 備 書 面①

   成20年(ヨ)第15号事件
   京都地方裁判所
   第5民事部保全係 御 中
   債権者   開地区自治連合会外312名
   債務者   宇治市
準 備 書 面
   上記当事者間の頭書事件について、債権者は、以下のとおり、準備する。
   平成20年2月  日
   上記債権者代理人
       弁護士 湯 川 二 朗
       弁護士 山 口   智  
第1.当事者について
   1.開地区自治連合会と開自治会、開水道対策委員会
   開自治会は、開地区全居住者等をもって構成される自治会である(甲★)ところ、昭和44年12月20日、水道問題の対策を専門的に行うための機関として水道対策委員会を設置し、同委員会委員長には自治会長を充てることとした(甲★)。そして、昭和63年3月12日、開自治会を第一自治会ないし第六自治会に6分割するとともに、それら6自治会をもって構成しこれらを統括する連合会として債権者開地区自治連合会が設立された(甲★)。その後、平成19年5月26日、債権者は水道問題の対策を専門的に行う機関として(第二次)水道問題対策委員会を設置した。
   したがって、昭和53年1月に開自治会長兼水道対策委員長名義で締結された覚書(甲1)は、債権者に引き継がれたものである。
   2.債権者開地区自治連合会の原告適格
   債権者開地区自治連合会は、住民の福祉・厚生と生活・文化の向上を期すことを目的とするところ、水道問題(開浄水場を休止して府営水に切り替えること等)はまさしく住民の福祉・厚生に直接関わることであり、かつ、各自治会ないし住民がが個別的に取り組むよりも開地区に居住して開浄水場の水の供給を受けている者全員に共通する問題として債権者が取り組むべき問題であるし、また水道問題に関する対市交渉はすべて開地区自治連合会が窓口となってこれを行い、従来も昭和53年覚書(甲1)を締結するなどして、債務者との交渉当事者として取り扱われてきたので、今般、債務者と給水契約をしている個別の需要者に加えて、開地区自治連合会自身も債権者となって仮処分を申し立てたものである。
第2.本件浄水場休止は水源の種別及び浄水方法の変更に該当すること
   債務者は、本件浄水場の休止と府営水への切り替えは、既存の設備の一つを休止させ、別の既存の設備により給水を行うものであって、新たな浄水方法を導入するものではないから、水源の種別や浄水方法の変更には該当しない旨主張する。
   しかしながら、浄水方法の変更とは、既認可の浄水処理工程に変更を加えること、又は当該施設の処理目的の変更や、大幅な設計諸元の変更を行うことを言い、変更の有無については浄水場ごとに判断される。そして、工程の全部を廃止する場合は浄水処理工程の変更に含まれる。したがって、浄水場の廃止は「浄水方法の変更」に該当し、認可を必要とする。
   しかるところ、答弁書において債務者自身が認めるとおり、本件浄水場の休止は、「浄水場の統廃合の一環」として行なわれる。これは、単に施設の更新のために一時的に浄水場を休止するのではなく、今後再稼働させる予定のない休止を意味する。したがって、「休止」とは名ばかりで、実際には本件浄水場の「廃止」を行おうとするものである。現に平成18年11月7日付水道部作成に係る「宇治市水道部における地下水汚染対策について」と題する文書(甲★)において、債務者は本件浄水場については「廃止の決定を行うこととする」としていた。
   しかも、これまで本件浄水場の水の供給を受けていた債権者らにとっては、地下水を水源として、急速濾過・塩素減菌処理によって浄水していたのが、天ヶ瀬ダム(琵琶湖の水)から取水して浄水処理した府営水に切り替わるのであるから、まさに水源の種別、浄水方法の変更に当たる。
   したがって、本件浄水場の休止は、水源の種別、取水地点及び浄水方法の変更に当たるから、厚生労働大臣の認可を必要とすると言うべきである。
   加えて、水道法11条1項は「水道事業者は、給水を開始した後においては、厚生労働大臣の許可を受けなければ、その水道事業の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない」と定めるところ、本件浄水場は水道事業計画の一部をなすものであるから、その休止は水道事業の一部の休止に当たる.。したがって、本件浄水場の休止は厚生労働大臣の許可を要する。仮に、需要者には府営水を給水するから水道事業の一部の休止には当たらないと解するとするならば、水道事業の変更に当たると言うべきである(法は、事業の廃止・休止は許可、変更は認可を要するものとして、水道事業を監督しようとしている。)。
第3.債務者の主張(答弁書「債務者の主張」部分)についての認否
   1.債務者の主張を要約すると、債務者の負う給水義務は水を供給する義務であって、特定の浄水場で浄水された水を供給する義務ではなく、したがって、どの水道施設の水を需要者に供給するかは水道事業者の判断に委ねられているところ、本件浄水場は給水収益が悪く、設備も老朽化しているからこれを廃止し、容量に余裕があり給水収益もよい府営水道に切り替えることは債務者の合理的な施策の範囲内にあるというものである。
   しかしながら、第一に、債務者の主張は、これまで本件浄水場休止の理由として債務者が債権者ら及び市議会に対してしてきた説明の内容とは全く異なってきているということである。すなわち、債務者は、本件浄水場休止の理由として以下の通り説明してきた。
   平成18年11月7日 水道部の環境政策室宛の説明 平成17年度の水質が原水でトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンが環境基準値を超過している。(甲★)
   平成18年12月21日 水道部の市議会建設水道常任委員会資料 1)施設の老朽化が進んでおり当面更新費用で6700万円を要する。2)浄水は基準を満たしているが、テトラクロロエチレン・トリクロロエチレン等が含まれている。(甲4添付資料)
   平成19年4月26日 地元説明会での説明 ①水質(環境基準値を上回るテトラクロロエチレン・トリクロロエチレンが含まれている水を原料に水道水を供給することは100%安全安心の水道水を供給し続ける保障がない)、②施設の老朽化(効率化、コスト低減のために開浄水場の更新はしない)(甲★)
   同年6月3日 地元説明会での説明 ①水質(環境基準を超える原水は原則使用しない)、②施設の老朽化(約30年を経過し、更新時期に来ている)、③揚水量の低下、④小規模浄水場の統廃合、⑤府営水に余裕がある、⑥安心安全な水道水を送水できる方策がある(送水管のバルブの開閉操作のみで切替できる)(甲8号証5頁以下)
   このように債務者はこれまで本件浄水場の原水の水質を一番にあげて休止の理由を説明してきたのに、答弁書ではほとんどと言ってよいほど言及されていない。これは、債務者自身が本件浄水場休止の主要な理由がなくなったことを自認したものと言うべきである。
   第二に、水道事業者が負う給水義務の内容には特定の浄水場で浄水された水を供給する義務は含まれないというのは、一般論であって、本件のように簡易水道事業を市が引き継いだ場合には妥当しない。否、一般論としてであっても、厚生省の水道基本問題検討会報告「21世紀における水道及び水道行政のあり方」(平成11年)では、基本的視点として①需要者の視点、②自己責任原則、③健全な水環境を掲げ、水道行政のあり方として、全国的に全ての水道が達成すべき「ナショナル・ミニマム」に加えて、それぞれの地域ごとに需要者のニーズに応じた多様な水準の「シビル・ミニマム(ローカル・スタンダード)」を設定し、その達成へ行政が主導し牽引していく時代から、需要者である国民との対話を通じ、水道事業者が自らの意志と努力で方向を決めていく時代にふさわしい関係者の役割分担等を示し、具体的には、「安全に飲用できる水の供給を全ての水道で維持しつつ、需要者の選択に応じたおいしく飲用できる水の供給」ができるようにすることが水道事業者の役割とされており(甲★)、かかる需要者の視点に立てば、需要者の選択した水を供給する義務は一般論としてであっても十分に成り立ちうるものである(詳細は、3(5)、第4において後述する)。
   第三に、需要者にどの水道施設の水を給水するかは水道事業者の判断に委ねられているというのは、行政行為に関する古典的行政モデルに引きずられた考えであり、現在では妥当しない。水道事業は水道事業者と需要者との給水契約であるから、水道事業者が一方的に事業内容(計画)を決することができるというのは誤りである。前記検討会報告の需要者の視点にも反するものである。
   2.「2 本件覚書締結の経緯」について
   (1) (1)について
   第1文については否認する。旧日国工業は1946年に誕生した会社であって、戦時中存在していない。開簡易水道事業は、昭和16年、日本国際航空工業により始められ、それを1946年に誕生した旧日国工業㈱が引き継ぎ、次いで、日産車体㈱が旧日国工業より引き継いだのである。
   第2文については認める。
   (2) (2)については認める。
   (3) (3)については概ね認める。但し、開簡易水道継続促進会については債権者らに記録はない。開自治会が専門の機関を設けて水道問題に対応して簡易水道存続を求めるようになったのは、昭和44年に開自治会に設置された水道対策委員会である(甲★)。
   (4) (4)について
   第1文については不知
   第2文については概ね認める。市長斡旋案の提示があったので一度は開自治会もこれを了承した。
   (5) (5)について
   第1文については、開自治会が開簡易水道の廃止について最終的な了解をしなかったことは認め、その理由(債務者が挙げる「①」、「②」の理由)は否認する。
   そもそも、地域住民は、開簡易水道付の住宅としてこれを購入し入居したのであるから、開簡易水道の廃止は望んでいなかった。
   第2文及び第3文については認める。
   (6) (6)については認める。
   ただし、債務者は「新たに浄水場を建設」したと主張するが、この浄水場は、それまでの浄水場で使われていた井戸を深くしたに過ぎないし、浄水場が建てられた場所は、それまでの浄水場と同じ場所である。つまり、新しい浄水場を建設したのではなく、それまでの浄水場を「更新」したに過ぎない。また、留意すべきなのは、「取水地点も開簡易水道と本件浄水場では異なる。」と債務者は主張するが、「取水地点」が「異なる」とは、開簡易水道と本件浄水場の建設場所が異なることを意味しているのではなく、水を汲み上げる井戸の深さが異なっていたということである。上述のとおり、開簡易水道と本件浄水場の建設場所は全く同じ場所である。
   また、債務者の主張するとおり、開簡易水道が廃止され、本件浄水場が供用開始に至るまで、開地区の各世帯に対して府営水の供給が行われていたが、開浄水場が供用開始されるや、府営水の給水は取りやめられて、再び開浄水場の浄水が給水されるに至った。この事実こそ、まさに、債権者に本件浄水場から水の供給を受ける権利があることを示す証拠である(仮に債務者の主張するとおり、債務者が地域住民に対し給水義務を負うだけであって、開浄水場で浄水された水を供給する義務を負わないのであれば、一旦府営水に切り替えた以上は、そのまま府営水を給水すればよかったのであって、開浄水場の供用開始を待って、開浄水場の浄水に再度切り替える必要はなかったのである。)。この点に関しては後述する。
   (7) (7)については全て争う。  
   3.「3 「特定の水を受ける権利」が「観念」出来ないこと」について
   (1) (1)について
   一般論としては認める。但し、本件事実関係の下においては、債務者には開浄水場で浄水された水を供給する義務が認められる。
   理由は後述する。
   (2) (2)について
   第1文については認める。
   第2文については否認ないし争う。上述のとおり、本件浄水場の水の供給を受ける権利は存在している。また、債務者は、「水道事業の効率的、経済的な観点からの見直しは当然あり得る」と主張するが、そもそも、本件では、水道事業の効率性、経済性を考慮すれば、開浄水場を休止すべきでないという結論に至るのである。さらにいえば、本件では、開浄水場の運営にかかるコストは債務者が計算しているよりも低額で済むのであり、債務者の計算は誤りである。従って、この主張は開浄水場を休止しようとしている債務者の主張としては矛盾した主張になるのである。
   (3) (3)について
   第1文及び第2文については特に争うものではない。
   第3文については否認ないし争う。繰り返しになるが、債務者の主張は一般論であって、本件においてはそのまま適用されるものではない。本件浄水場から水の供給を受ける権利は観念できる。
   (4) (4)について
   第1文については認める。もっとも、債務者は、開浄水場の原水の水質を休止の理由の1つとしてあげた。ところが、それにも関わらず、債務者は、開浄水場の水が「飲料水としての基準内のであって、安全な水道水である。」と認めざるを得ない。債務者の主張がいかにご都合主義かをよく物語るものである。
   第2文については否認する。府営水と本件浄水場の水との間には臭い、味等で素人でも判断できる違いがある。本件浄水場の水は地下水を浄水したものであって、だから「おいしい」のである。それに対して、府営水は「おいしくない」。その点もあって、債権者らは開浄水場の水にこだわるのであり、だからこそ、開簡易水道事業の廃止に反対し、債務者がこれを浄水場として引き継ぐことを求めたのである。
   第3文については否認ないし争う。本件浄水場から水の供給を受ける権利はある。
   (5) (5)については争う。
   宇治市水道事業中・長期整備計画(平成14年3月)(甲3)では、水道事業経営の基本方針として、①豊でゆとりある水道(安全)、②信頼性の高い水道(安定)、③わかりやすく・親しまれる水道(健全経営)の3点が掲げられている。豊でゆとりある水道(安全)の基本方針のための基本施策が「安定給水の確保」であり、そのための課題が「水源の複数化」であり「浄水・配水施設の再整備」である(26頁)。「水源の複数化」の施策内容は「これまで施設整備においては、自己水源が利用できないときは、府営水道の活用が可能となるように行われてきた。しかし、府営水道が事故等により利用できなくなった場合の想定がなされていないことから、府営水道への依存を保ちつつ、危機管理として、自己水源からの取水の安定性を確保する。」ことであり、「浄水・配水施設の再整備」の施策内容は「浄水施設の安全性・安定性・信頼性を確保し、災害対策にも資するため、合理的・総合的な浄水・配水施設の再整備に取り組む必要がある。」ということである(28頁)。
   中・長期整備計画の冒頭1頁にも引用されているとおり、同計画は、厚生省の水道基本問題検討会報告「21世紀における水道及び水道行政のあり方」(平成11年)を踏まえたものとなっている。すなわち、同報告は、基本的視点として①需要者の視点、②自己責任原則、③健全な水環境を掲げ、水道行政のあり方として、全国的に全ての水道が達成すべき「ナショナル・ミニマム」に加えて、それぞれの地域ごとに需要者のニーズに応じた多様な水準の「シビル・ミニマム(ローカル・スタンダード)」を設定し、その達成へ行政が主導し牽引していく時代から、需要者である国民との対話を通じ、水道事業者が自らの意志と努力で方向を決めていく時代にふさわしい関係者の役割分担等を示し、具体的には、「安全に飲用できる水の供給を全ての水道で維持しつつ、需要者の選択に応じたおいしく飲用できる水の供給」ができるようにすることが水道事業者の役割として示した(甲★)。
   このような検討会報告や宇治市水道事業中・長期計画に照らせば、ライフラインの確保のために水道事業者の判断により地下水あるいは府営水のどちらを供給できるか決定できるとする債務者の主張は、まさに「安全」に反し、需要者の選択・需要者との対話を無視することである。渇水時、地震等の災害時においても生活用水の供給ルートを確保する必要があるが、そのような災害時において、水源が単一化されていた場合、その地域住民の水の供給が絶たれてしまうのであって、そのようなことを防ぐためには、地下水を水源として持つなど、多様な水源を持つべきなのである。ライフラインの確保のためにはまさに水源の多様化こそが求められているのである。
   さらに言えば、水道法10条は、水道事業者が水源の種別、取水地点若しくは浄水方法を変更しようとするときには、厚生労働大臣の認可が必要と規定している。それに対し、水道料金等供給条件の変更は届出で足りる(法14条5項)。水源の種別の変更等に限り、厚生労働大臣の認可を必要としているのは、清浄な水の確保のためであり、水道事業者の判断にこれを委ねることが許されないと法が判断したからである。これは、まさに、法が水源の個別性を認めているからに他ならず、水源の種別等についての需要者の法的利益を水道事業者に対して保障しているからである。
   以上のような考え方からすれば、本件事実関係の下では、債権者らの特定の水の供給を受ける権利は当然観念できるのである。  
   4.「4 本件浄水場休止の必要性」について
   (1) (1)について
   第1文については、本件浄水場が昭和53年に新設されてから約30年が経過したことは認めるが、その余は否認する。乙4号証を見ても、施設の一部に耐用年数を経過しているものも見られるが、エアレーション設備は平成3年に設置されたばかりで耐用年数に達していないし、全体的に耐用年数を経過しているというのは明らかに事実に反する。ましてや更新の時期には来ていない。
   そもそも、「耐用年数」を越えていると言うが、「耐用年数」というものは地方公営企業の有形固定資産の減価償却のための基準となる概念であって、当該施設の機能評価の基準ではない。したがって、ある施設の耐用年数が経過しているからといって、当該施設の機能が劣っていることにはならないのである。だからこそ、中・長期整備計画では、開浄水場については機能診断調査を実施するとの評価がなされていた(甲3)。ところが、機能診断調査は現実には未だ行われていないのであるから、更新の時期を迎えているとの評価はなしようがない。
   第2文については概ね認める。但し、配水池の壁の水漏れと言っても軽微なものであり、圧力タンクの腐食とは言っても表面に錆が生じているにすぎない。
   第3文については否認する。現在、開浄水場の稼働率は約46パーセントである。稼働率が低いのに、揚水量が落ちているから稼働時間が長くなるというのは理解できない。設備の稼働率を上げれば解決する話である。
   そもそも、乙6号証の表は、「平成20年1月25日」に作成されている(乙6参照)。すなわち、本件仮処分の申立がなされた後に作成されているのであって、何らの信用性がない。
   第4文については否認する。開浄水場の施設運営費用は、昭和53年に新設されてから28年間で約1億2700万円しか要していない(甲★)のに、設備の更新費用にその56%にも相当する7100万円も要することはない。甲8号証は、本申立以前に債務者より開示を受けた資料であるが、この7100万円という値は、浄水場の設備を新しく取り替える場合の費用であると思われる。そもそも本件浄水場は更新の必要は認められないのだから、更新費用をここで問題とするのも誤りである。
   第5文については否認する。中・長期整備計画で施設の老朽化が問題点として指摘され、統合を含めた更新の必要性について言及されているのは、神明浄水場と奥広野浄水場であり(甲3号証37頁)、本件浄水場ではない。中・長期整備計画は、「合理的かつ総合的な水道施設整備」を基本方針として掲げるが、具体的には施設の機能診断調査を実施することを指摘するのみで、浄水場の統廃合はその施策とはされていない(同36頁)。本件浄水場については機能診断調査を実施することが指摘されているだけである(同18頁)。
   (2) (2)について
   第1文については、府営水の協定水量の値や、平均受水量の値は認めるが、その余は否認する。そもそも槇島浄水場も「廃止」ではなく、「休止」である。
   平成19年6月市議会で、浅見議員の質問に対して、市長は「府営水の余裕はない」との答弁を行っている。
   第2文については否認する。
   債務者の主張では、府営水の原価は1立方メートル当たり155円、本件浄水場229円であると主張するが、西川議員の調査によると、配水量1立方メートル当たり単価は府営水道157円であるのに対して開浄水場132円(甲★)、水谷議員の調査によると、府営水155円、地下水135.8円(甲★)となる。また、西川議員の資料要求に基づき市水道部が提出した資料によると、1立方メートル当たり府営水83.3円であるのに対し、本件浄水場24.4円と計算される(甲★)。
   (3) (3)について
   第1文については、「年々水質が悪化している。」という主張は否認し、その余は認める。甲5号証を見ても、水質が年々悪化しているとは認められない。
   第2文については不知ないし否認する。本件浄水場の原水の水質は、環境基準値は超えているものの、体重50kgの人が毎日約20リットルを一生飲み続けても健康への影響はないと考えられる程度である(甲6号証参考資料)し、浄水に至っては水道水質基準に適合しているのであるから、取水場所を変更する必要は何らないし、債権者らは誰も浄水場の新設など求めていない。
   (4) (4)について
   否認する。槇島浄水場は、平成9年に住都公団から移管された施設であり、比較的新しい施設であって、中・長期整備計画でも「当面現状維持とする。」と評価されていたものであって、施設の老朽化は指摘されていなかった。槇島浄水場は「廃止」されておらず、平成19年4月から「休止」されているだけである。
   前述したとおり、中・長期整備計画では「浄水場の統廃合」は施策として計画されていない。そもそも府営水に切り替えて、当該浄水場を「休止」しただけで、浄水場を廃止したわけでも統合したわけでもないのに「浄水場の統廃合」ということはあり得ない。それをとってみただけでも、債務者の主張する本件浄水場の休止の必要性がいかに根拠のないものか明らかである。
   (5) (5)については否認ないし争う。
   債務者は、「どの浄水場を休止すべきかについては、水質や収益を考慮の上決定するもので」ある旨主張するが、答弁書を見る限り、債務者は水質を考慮した形跡は全く伺われない。このことからも明らかであるが、債務者は、何らの根拠もなく本件浄水場を休止しようとしているのである。
   5.「5 まとめ」について
   争う。
第4.開浄水場の水の供給を受ける権利について
   1.債務者は、開浄水場の水の供給を受ける権利なるものを観念できないと主張するが、これは、これまで、開町の住民が開浄水場の水の供給を受けるに至った歴史を明らかに無視した主張であって、債務者は債権者に対して「開浄水場の水」の供給を行う義務を負うものである。以下、理由を述べる。
   2.まず、債務者自身が答弁書(5頁16行目及び17行目)において認めるとおり、開簡易水道が廃止された昭和53年3月末から本件浄水場が完成する同年10月までの間、各世帯に対しては府営水の供給が行われていた。ところが、その後、本件浄水場が完成した後、開自治会その他地域住民との合意にしたがって、債務者は再び府営水から本件浄水場の浄水へと戻したのである。この事実こそ、まさに、債権者らが債務者から開浄水場の水の供給を受ける権利を有していることを示していると言えるのである。
   すなわち、債務者は、一度は債権者らに対して府営水の供給を行いながら、本件浄水場が建設されるや本件浄水場からの水を債権者らに対して供給するようになっているのである。この府営水の供給から本件浄水場の水の供給へと切り替えた(切り戻した)理由は、昭和53年1月の開自治会その他地域住民と債務者との合意に基づくたものであって、仮に、債務者が日産車体から引き継いだ義務が債権者らに対して「本件浄水場からの水」の供給を行う義務ではなく、一般的に水を供給する義務のみであれば、上記のように、府営水から本件浄水場の水へ切り替える(切り戻す)必要はなかったのである。
   債務者自身が、覚書の内容や覚書締結に至る経緯等から、債務者には債権者らに対して本件浄水場の水の供給を行うべき義務があると認めているからこそ、府営水から本件浄水場の水へと切り替えたのである。
   3.また、債務者が債権者らに対して本件浄水場の水の供給を行うに至った経緯からしても、債務者には債権者らに対して「本件浄水場の水」の供給を行うべき義務があることが明確に分かると言える。
   すなわち、前述の通り、昭和44年に、開自治会に水道対策委員会が設置された。その後、昭和46年12月、翌47年2月、同年3月にそれぞれ、開簡易水道から市水道への切り替えについての公聴会が行われた(甲★○)。そうした中、昭和47年9月に、開町自治会長より市議会に対して宇治市開町簡易水道存続に関する請願書が提出された(昭和50年3月5日採択)。そして、昭和49年8月には、地域住民より市に対して開簡易水道を市で運営してほしい旨の要望があった(甲○★)。
   そして、簡易水道を廃止したい日産車体、開簡易水道を残して市水道(府営水)へ切り替えないことを望む地域住民、市水道への切替えをしなければならない市との間で協議をした結果、昭和51年に、日産車体が債務者に開簡易水道施設を移管し、債務者が開簡易水道施設を取り壊してその場所に開浄水場を建築し、債務者が債権者ら地域住民に開浄水場の浄水を供給するという合意(日産車体の開水道施設からの給水義務を債務者が引き継ぐという合意)がなされたのであり、覚書(甲1)はその一部を構成するものである。
   このように、上記合意は、開簡易水道が市水道(府営水)へ切り替えられることを防ごうとした地域住民の運動によって締結されるに至ったのである。このような事情、及び前項で述べたとおり、本件浄水場建設中には開地区の住民に対しては府営水を供給していながら、本件浄水場建設後、本件浄水場の水の供給へと切り替えた(切り戻した)という事実からすれば、債務者が債権者らに対して負う給水義務が、特定性のない一般的な水を開地区の住民に対して供給する義務ではなく、開簡易水道及びそれに続く本件浄水場からの水の供給をする義務であることは明らかである。
   そもそも、覚書が交わされなくとも、開地区の住民は市水道(府営水)の水の供給は受けられていたのである。覚書が交わされなければ、開地区住民は市水道(府営水)の供給を受けていたであろう。しかし、地域住民はそれを選択せず、市水道(府営水)へ切り替えられることを阻止するために覚書を締結し、その結果、日産車体の事業が債務者へと引き継がれたのである。このように開地区住民があえて覚書を締結し、債権者らが債務者から本件浄水場の水の供給を受けていたという事実が、債権者らが債務者に対して「本件浄水場からの水」の供給を受ける権利を有しているということを如実に物語っていると言える。
第5.結語
   以上より、債権者らは、債務者に対して本件浄水場からの水の供給を受ける権利を有しているので、本件仮処分は認められるべきである。

4. 準 備 書 面②

   成20年(ヨ)第15号事件
   京都地方裁判所
   第5民事部保全係 御 中
   債権者   開地区自治連合会外312名
   債務者   宇治市
準 備 書 面 (2)
   上記当事者間の頭書事件について、債権者は、以下のとおり、準備する。
   平成20年3月  日
   上記債権者代理人
   弁護士  湯   川   二   郎
   弁護士  山   口       智
第1.債権者開地区自治連合会の原告適格
   平成20年3月4日付債権者準備書面の第1の2項に記載した事情に照らせば、開地区自治連合会には本訴を遂行する経験・知識・能力があり、個別の給水契約者に代えて/個別の給水契約者とともに本訴を遂行する適格があるということができる。
   したがって、同連合会には原告(債権者)適格を認めることには合理的必要性があり、かつ、弁護士代理の原則・訴訟信託禁止の原則を潜脱するおそれもないから、任意的訴訟担当として原告適格を認めることができるものと解する。
第2.被保全権利について
   前回の審尋期日において、被保全権利の内容について、裁判所より釈明を求められたため、この点について明らかにする。
   1.本件仮処分における、債権者らが主張している被保全権利は、第1に開浄水場から給水を受ける権利(以下、「第1の被保全権利」という。)である。
   債権者らの準備書面(平成20年3月4日付け)においても主張したことであるが、開浄水場の前身であった、開簡易水道を、当時管理していた日産車体(株)が廃止しようとしたため、債権者ら開地区の住民らが反対の意思表示を示し、その結果として、債務者が開簡易水道を日産車体(株)から引き継ぎ、開浄水場を整備し直して債権者ら開地区の住民らに開浄水場からの水を供給するようになったのである。
   このように、債権者らが府営水ではなくて、開簡易水道(開浄水場)からの水の供給にこだわったのは、債権者らは開簡易水道について給水契約をし、開簡易水道(開浄水場)の水源である井戸水からこれまで長い年月にわたって給水を受けてきており、その水質や「おいしい水」であることに愛着があったからであった。このように、債権者らが開簡易水道(開浄水場)の水源である井戸水に愛着を持っていたという事情は、これまで債権者らが提出してきた証拠等を見れば容易に分かることである。そして、開簡易水道の施設が日産車体(株)から債務者へ引き継がれる時には、日産車体(株)も債務者もこのような事情を当然知って、覚書(甲1)を締結するに至っている。従って、債務者は日産車体から給水契約上の地位の承継を受けたというべきであり、少なくとも、債務者の認識としても、債権者ら開地区の住民らに対し、開浄水場からの水を供給することが給水契約の目的であるという認識を有していたはずである。
   以上より、債権者らは、債務者に対して、他のどこでもない、開浄水場からの水の供給を受ける権利を有しているのである。
   2.第2に、債権者らは、府営水の水源である天ヶ瀬ダムの水(琵琶湖の水)ではなく、開浄水場の水源とする井戸水の供給を受ける権利(以下、「第2の被保全権利」という。)を被保全権利として主張している。開浄水場を休止し、府営水に切り替えるということは、井戸水の供給をしないということであるから、債務不履行に当たる。
   債権者らは開浄水場の水の供給を受ける権利があると主張するものであるが、その内実は、開浄水場の水源である井戸水(地下水)の供給を受ける権利である。上記第1の被保全権利と異なる点は、第1の被保全権利の場合は、「開浄水場からの」水の供給を受ける権利であったのに対し、こちらの被保全権利の場合は、特定の場所(浄水場)からの水の供給を受ける権利ではなく、井戸水(水源の区別としての井戸水)の供給を受ける権利があると主張している点である。言い換えれば、井戸水の中でも、ある場所で採取される井戸水と別の場所で採取される井戸水とが区別できるとするのが第1の被保全権利であり、その区別を問わないのが第2の被保全権利である。
   すなわち、地下水は水質が良好で、恒温性があることがその特性とされており(甲27)、地下水の保全と適正な利用は日本の水資源の課題とされている(甲28)。ダム水と地下水とは水質が全く違い、試飲してもダム水は苦みを感じ、ぬるくなると口に入れてうっと引っかかる感じがし、小島貞男(NHKブックス「おいしい水の探求」著者)の基準に照らせば、開浄水場の水は「特急水」であるのに対し、府営水は「3級水」となる(甲30)。現実に地下水からダム水に切り替えられた山形県鶴岡市では、冬冷たく夏ぬるくまずい水になったというアンケート結果が出ている(甲31)。府営水の水源となる琵琶湖は毎夏水位が低く(甲32)夏場の府営水の安定供給に不安があるばかりか、近時の水質の悪化は著しい(甲32)。
   ちなみに、水道法も、水道事業者に対し、工事設計書に「水源の種別」「浄水方法」(法7条5項2号、5号)を記載するよう求め、また「水源の種別」又は「浄水方法」を変更しようとするときには厚生労働大臣の認可を求めている(法10条1項)のであって、「水源の種別」は水道事業における重要な要素である。したがって、水源を井戸水(地下水)から、天ヶ瀬ダムの水(琵琶湖の水)に変更するに当たっては、需要者の同意・承諾を要すると言うべきであるし、需要者の同意・承諾を得ずにこれを変更することは債務の不履行・不完全履行に当たると言うべきである。
   さらに、準備書面(平成20年3月4日付け)においても主張したとおり、債務者は、開浄水場施設改良工事中には開地区の住民に対しては府営水を供給していながら、開浄水場建設後、開浄水場の水の供給へと切り替えた(切り戻した)。これは、覚書(甲1)の締結を含む、債務者が日産車体の開水道施設からの給水義務を債務者が引き継ぐという合意に基づいた行為であるところ、債務者としても、府営水と井戸水とを区別していないのであれば(債務者が本審尋で主張するように、とにかく水を供給すればよいというのが給水契約の目的であるとすれば)、このような対応(一旦府営水に切り替えながら、開浄水場改良工事が完了すると同浄水場からの給水に切り戻すような措置)は行わなかったはずである。債務者としても、府営水と開浄水場の水ないし井戸水とを区別して(別物と)考えていたことは明らかであるし、債権者らが府営水ではなく、開浄水場の水ないし井戸水の供給を求めていることを債務者も認識してそれに沿う事業を行ったことは明らかである。  
   3.第3に、債権者らは、債権者らが現在飲んでいる水質の水、言い換えれば、「おいしい水」の供給を受ける権利を被保全権利(以下、「第3の被保全権利」という。)として主張している。
   水は生きるために必要不可欠なものであるので、安心・安全・おいしく飲める水が当然供給されなければならない。厚生省(現厚生労働省)の水道基本問題検討会報告では、「安全に飲用できる水の供給を全ての水道で維持しつつ、需要者の選択に応じたおいしく飲用できる水の供給」ができるようにすることが水道事業者の役割として示されており(甲20 平成20年3月4日付債権者準備書面)、また宇治市水道事業中・長期整備計画でも、「豊かでゆとりある質の高い水道サービス」を目指すため「安全でおいしい水」を供給することを「給水サービスの向上」として位置づけている(甲3号証20,23頁)。逆に言えば、住民は、「安全でおいしく飲用できる水の供給を受ける権利」を有しているのである。
   債権者らは開浄水場の水の供給を受ける権利があると主張するものであるが、その内実は、現在飲んでいる水質の水の供給を求めるものであり、現在飲んでいる水の水質を悪化させないことを求めるものである。
   債権者らは、昭和53年に債務者と給水契約をしてから(遡れば、開簡易水道の時代から)これまで、安全でおいしい水の供給を受けてきた。平成3年12月には曝気装置(エアレーション設備)が設置され浄水の水質が向上した。現在でも、その原水の水質は「体重50kgの人が毎日これらの水を仮に約20リットル一生涯飲み続けても健康への影響はないと考えられる」安全なものである。債権者らとしては、今後もこの水質の水、「安全でおいしく飲用できる水」の供給を受ける権利を有する。
   ところが、債務者が開浄水場を休止してこれから債権者らに対して供給しようとしている府営水は、その原水については環境基準に適合しない項目が4項目あり、その浄水においても、汚濁物質が多いため総トリハロメタン値が開浄水場よりも10倍以上悪くなっている(甲5)。しかも、府営水は、開浄水場の水に比較して、「おいしくない」(甲30,31)。
   したがって、債務者が開浄水場の水の供給を休止して府営水の供給へと切り替えることは、明らかに債務不履行となる。
第3.結語
   以上のとおり、本申立における被保全権利は、①(府営水=府営宇治浄水場ではなく)開浄水場からの水の供給を受ける権利、②(府営水=天ヶ瀬ダム水ではなく)井戸水の供給を受ける権利、及び、③(府営水=府営水道購入水ではなく)現在飲んでいる水質の水=安全でおいしい水の供給を受ける権利である。
以 上
上へ