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3.  原告・準備書面


平成20年(ワ)第77号事件
原告   開地区自治連合会外10名
被告   宇治市

準備書面

京都地方裁判所
第2民事部合議ろC係 御 中

平成20年7月15日

上記原告ら訴訟代理人
弁護士  湯   川   二   朗
弁護士  山   口       智


 上記当事者間の頭書事件について、原告は、被告答弁書に対し、以下のとおり、認否反論する。


第1.当事者について
 1.開地区自治連合会と開自治会、開水道対策委員会
開自治会は、開地区全居住者等をもって構成される自治会であった(甲16の1)ところ、昭和44年12月20日、水道問題の対策を専門的に行うための機関として水道対策委員会を設置し、同委員会委員長には自治会長を充てることとした(甲16の2)。そして、昭和63年3月12日、開自治会を第一自治会ないし第六自治会に6分割するとともに、それら6自治会をもって構成しこれらを統括する連合会として原告開地区自治連合会が設立された(甲17)。その後、平成19年5月26日、原告は水道問題の対策を専門的に行う機関として(第二次)水道問題対策委員会を設置した。
したがって、昭和53年1月に開自治会長兼水道対策委員長名義で締結された覚書(甲1)は、原告開地区自治連合会に引き継がれたものである。

 2.原告開地区自治連合会の原告適格
原告開地区自治連合会は、住民の福祉・厚生と生活・文化の向上を期し、住みよい明るい街づくりに寄与することを目的とするところ、水道問題(開浄水場を休止して府営水に切り替えること等)はまさしく住民の福祉・厚生に直接関わることであるために、各自治会ないし各住民が個別に取り組むよりも、開地区に居住して開浄水場の水の供給を受けている者全員に共通する問題として同原告が取り組むべき問題である。また、水道問題に関する対市交渉はすべて開地区自治連合会が窓口となってこれを行い、従来も昭和53年覚書(甲1)を締結するなどして、被告との交渉当事者として取り扱われてきた経緯がある。
かかる事情に照らせば、開地区自治連合会には本訴を提起する経験・知識・能力があり、個別の給水契約者原告に代えて/個別の給水契約者原告とともに本訴を提起する適格があるということができる。
そこで、今般、被告と給水契約をしている個別の需要者(原告)に加えて、開地区自治連合会自身も原告となって本訴を提起したものである。
以上に述べたとおり、開地区自治連合会に原告適格を認めることに合理的必要性があり、かつ、弁護士代理の原則・訴訟信託禁止の原則を潜脱するおそれもないから、任意的訴訟担当として原告適格を認めることができるものと解する。

 3.原告らの地位
原告太田は、本件覚書締結当時から本件浄水場給水区域内に居住して給水契約を締結し、その当時から現在に至るまで本件浄水を飲んでいるものである。その他の原告(自治連を除く)は、いずれもその親の代から本件覚書締結当時本件浄水場給水区域内に居住して本件浄水を飲用に供してきたものである。

第2.本件浄水場休止は水源の種別及び浄水方法の変更に該当すること
   被告は、本件浄水場の休止と府営水への切り替えは、既存の設備の一つを休止させ、別の既存の設備により給水を行うものであって、新たな浄水方法を導入するものではないから、水源の種別や浄水方法の変更には該当しない旨主張する。
しかしながら、浄水方法の変更とは、既認可の浄水処理工程に変更を加えること、又は当該施設の処理目的の変更や、大幅な設計諸元の変更を行うことを言い、変更の有無については浄水場ごとに判断される。そして、工程の全部を廃止する場合は浄水処理工程の変更に含まれる。したがって、浄水場の廃止は「浄水方法の変更」に該当し、認可を必要とする。
しかるところ、答弁書において被告自身が認めるところによれば、本件浄水場の休止は、被告による「浄水場の統廃合の一環」として行なわれるものである。これは、単に施設の更新のために一時的に浄水場を休止するのではなく、今後再稼働させる予定のない恒久的な休止を意味する。したがって、「休止」とは名ばかりで、実際には本件浄水場の「廃止」を行おうとするものである。現に平成18年11月7日付水道部作成に係る「宇治市水道部における地下水汚染対策について」と題する文書(甲21)において、被告は本件浄水場については「廃止の決定を行うこととする」としていた。
しかも、これまで本件浄水場の水の供給を受けていた原告らの立場に立って見るならば、地下水を水源として、急速濾過・塩素減菌処理によって浄水した水を給水されていたのが、天ヶ瀬ダム(琵琶湖の水)から取水して浄水処理した府営水に切り替わるのであるから、まさに水源の種別、浄水方法の変更に当たる。
したがって、本件浄水場の休止は、水源の種別、取水地点及び浄水方法の変更に当たるから、厚生労働大臣の認可を必要とすると言うべきである。
加えて、水道法11条1項は「水道事業者は、給水を開始した後においては、厚生労働大臣の許可を受けなければ、その水道事業の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない」と定めるところ、本件浄水場は水道事業計画の一部をなすものであるから、その休止は水道事業の一部の休止に当たる.。したがって、本件浄水場の休止は厚生労働大臣の許可を要する。仮に、需要者には府営水を給水するから水道事業の一部の休止には当たらないと解するとするならば、やはりこれは少なくとも水道事業の変更に当たると言うべきである(法は、事業の廃止・休止は許可、変更は認可を要するものとして、水道事業を監督しようとしている。)。

第3.被告の主張(答弁書「被告の主張」部分)についての認否
 1.被告の主張を要約すると、被告の負う給水義務は水を供給する義務であって、特定の浄水場で浄水された水を供給する義務や地下水を供給する義務ではなく、したがって、どの水道施設の水を需要者に供給するかは水道事業者の判断に委ねられているところ、本件浄水場は給水収益が悪く、設備も老朽化しているからこれを廃止し、容量に余裕があり給水収益もよい府営水道に切り替えることは被告の合理的な施策の範囲内にあるというものである。
しかしながら、第一に、被告の主張は、これまで本件浄水場休止の理由として被告が原告ら及び市議会に対してしてきた説明の内容とは全く異なってきているということである。すなわち、被告は、本件浄水場休止の理由として以下の通り説明してきた。
平成18年11月7日 水道部の環境政策室宛の説明 
平成17年度の水質が原水でトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンが環境基準値を超過している。(甲21)
平成18年12月21日 水道部の市議会建設水道常任委員会資料 
    1)施設の老朽化が進んでおり当面更新費用で6700万円を要する。2)浄水は基準を満たしているが、テトラクロロエチレン・トリクロロエチレン等が含まれている。(甲4添付資料)
平成19年4月26日 地元説明会での説明 
    ①水質(環境基準値を上回るテトラクロロエチレン・トリクロロエチレンが含まれている水を原料に水道水を供給することは100%安全安心の水道水を供給し続ける保障がない)、②施設の老朽化(効率化、コスト低減のために開浄水場の更新はしない)(甲22)
同年6月3日 地元説明会での説明 
    ①水質(環境基準を超える原水は原則使用しない)、②施設の老朽化(約30年を経過し、更新時期に来ている)、③揚水量の低下、④小規模浄水場の統廃合、⑤府営水に余裕がある、⑥安心安全な水道水を送水できる方策がある(送水管のバルブの開閉操作のみで切替できる)(甲8号証5頁以下)
答弁書
①施設設備の更新の時期を迎えているが、設備の更新には7100万円を要する見込みであるところ、その規模、給水収益に照らしても過大な設備投資を行うことは適切ではない、②府営水には十二分に余裕があり、府営水の原価は本件浄水場の原価よりもはるかに経済的である、③本件浄水場の原水は環境基準値を超えており年々水質が悪化している、④浄水場の統廃合の一環である。
被告が本件浄水場の休止を求める理由は原告らには理解しがたく、そこには看過し難い変遷がみられる。被告はどうして本件浄水場の休止の理由がその都度変遷するのか、被告が本件浄水場の廃止を求める真の理由は何か、を明らかにされたい。被告は当初、本件浄水場の原水の水質を一番にあげて休止の理由を説明してきたのに、徐々にそれがトーンダウンしてきているのは、被告自身が本件浄水場休止の主要な理由がなくなったことを自認したものと言うべきである。ちなみに、水道事業者に浄水場や水源をどのように選択するのかの裁量が認められるとしても、それは全くの自由裁量ではなく、合理的な範囲での裁量しか認められず、浄水場や水源をどのように選択するのかには合理的な理由がなければならないのである。被告はまずそれを明確にされたい。
第二に、水道事業者が負う給水義務の内容が水の供給につきるというのは、水道法はナショナルミニマム(全国的な最低水準)を規定したものであるにすぎないことを理解しないものである(50点以上は可とするという合否基準があるときに、51点以上はとる必要がないと言うのと同じである)。厚生省の水道基本問題検討会報告「21世紀における水道及び水道行政のあり方」(平成11年)では、基本的視点として①需要者の視点、②自己責任原則、③健全な水環境を掲げ、水道行政のあり方として、全国的に全ての水道が達成すべき「ナショナル・ミニマム」に加えて、それぞれの地域ごとに需要者のニーズに応じた多様な水準の「シビル・ミニマム(ローカル・スタンダード)」を設定し、その達成へ行政が主導し牽引していく時代から、需要者である国民との対話を通じ、水道事業者が自らの意志と努力で方向を決めていく時代にふさわしい関係者の役割分担等を示し、具体的には、「安全に飲用できる水の供給を全ての水道で維持しつつ、需要者の選択に応じたおいしく飲用できる水の供給」ができるようにすることが水道事業者の役割とされている(甲20 日本水道協会『水道法逐条解説』)。このように水道法はナショナルミニマムとしての「水の供給」のみの水道事業者の義務とするが、これは給水契約で「需要者の選択した水を供給する義務」は水道事業者に負わせることを否定するものではないし、むしろ給水契約による「需要者の選択した水を供給する義務」を肯定するのが上記検討会報告の趣旨なのである(詳細は、3(5)において後述する)。
 第三に、需要者にどの水道施設の水を給水するかは水道事業者の判断に委ねられているというのは、行政行為に関する古典的行政モデルに引きずられた考えであり、現在では妥当しない(このような考え方は前記検討会報告の需要者の視点にも反する。)。水道事業は水道事業者と需要者との給水契約によって営まれるものであるから、水道事業者が一方的に事業内容(計画)を決することができるのではなく、水道事業者と需要者との対等・双方向的な対話・協議に基いて行われるものである。

 2.「2 本件覚書締結の経緯」について
  (1) (1)について
    第1文については否認する。旧日国工業は1946年に誕生した会社であって、戦時中には存在していない。開簡易水道事業は、昭和16年、日本国際航空工業により始められ、それを1946年に誕生した旧日国工業㈱が引き継ぎ、次いで、日産車体㈱が旧日国工業より引き継いだのである。
    第2文については認める。
  (2) (2)については認める。
  (3) (3)については概ね認める。但し、開簡易水道継続促進会については原告らに記録はない。開自治会が専門の機関を設けて水道問題に対応して簡易水道存続を求めるようになったのは、昭和44年に、開自治会が水道対策委員会を設置したことに始まる。
  (4) (4)について
    不知
  (5) (5)について
    第1文については、開自治会が開簡易水道の廃止について最終的な了解をしなかったことは認め、その理由(被告が挙げる「①」、「②」の理由)は否認する。
    そもそも、開町は日本国際航空工業の社宅として開発された町であり、地域住民は、開簡易水道(地下水)付の住宅としてこれを購入し入居したのであるから、開簡易水道の廃止は全く望んでいなかった(甲18,19)。
    第2文及び第3文については認める。
    ちなみに、次回にさらに詳細な準備書面を提出するが、日産車体が簡易水道を廃止する方針を打ち出して以来、開地区住民はこれに反対して地下水を飲み続けられるように被告に対して強く要求したのであり、被告は、その地元住民の強い要求を受けて「あの水を供給することが最大の目的である」との認識の下、「地下水は宇治市が責任を持って給水する」ために「(被告が日産車体)経営の開簡易水道にかわり新しく浄水場を建設し開水道の給水区域に市の上水道として給水する」こととして本件覚書を締結し、本件浄水場を建設したのである(被告は「宇治市といたしましては、皆さんにお約束した事項に基づき事業の推進を行い、皆さんがご要望になっている地下水の供給に向けて現在鋭意取り組みをいたしている」と述べている)。
  (6) (6)については認める。
    ただし、被告は「新たに浄水場を建設」したと主張するが、この浄水場は、それまでの浄水場で使われていた井戸を深くしたに過ぎないし、浄水場が建てられた場所は、それまでの浄水場と同じ場所である。また、「取水地点も開簡易水道と本件浄水場では異なる。」と被告は主張するが、「取水地点」が「異なる」とは、開簡易水道と本件浄水場の建設場所が異なることを意味しているのではなく、水を汲み上げる井戸の深さが異なっていたということである。
    そして、被告の主張するとおり、開簡易水道が廃止され、本件浄水場が供用開始に至るまで、暫定的に開地区の各世帯に対して府営水の供給が行われていたが、開浄水場が供用開始されると同時に、府営水の給水は取りやめられて、再び開浄水場の浄水が給水されるに至った。この事実こそ、まさに、原告に本件浄水場から水の供給を受ける権利があることを示す証拠である。すなわち、被告は、地下水を飲み続けたいという地元住民の要求を受けて、「あの水を孫子末代まで飲んでいけるように、日産ではなく、市の上水道として供給することを確立すべく」日産車体と交渉し、長い交渉の結果、開簡易水道施設と同じ場所に新たに本件浄水場を建設し、浄水場建設期間だけ府営水に切り替えて、本件浄水場が完成した暁には再度、開浄水に切り替えたのである。仮に被告の主張するとおり、被告が地域住民に対し給水義務を負うだけであって、開浄水場で浄水された水を供給する義務を負わないのであれば、一旦府営水に切り替えた以上は、そのまま府営水を給水すればよかったのであって、開浄水場の供用開始を待って、開浄水場の浄水に再度切り替える必要は全くなかったのである。
  (7) (7)については全て争う。

 3.「3 「特定の水を受ける権利」が「観念」出来ないこと」について
  (1) (1)について
    第一文は認めるが、第二文は否認する。電気やガスはどこの電気やガスの供給を受けようとその品質には変わりはないが、水は地域によって、また水源の種別や浄水方法によって全く質が変わる(蛍の歌ではないが、水については「こっちの水は甘いぞ、あっちの水は苦いぞ」ということが言える)。そうである以上、給水契約の目的は単なる「水」ではあり得ず、どの水を、どの水源の水を、どのような質の水を供給するかが問題となり得る。ましてや、本件のような、地域における水の歴史があるときは、水道事業者・被告は、①府営水=府営宇治浄水場ではなく、開浄水場からの水を、②府営水=天ヶ瀬ダム水ではなく、井戸水を、③府営水=府営水道購入水ではなく、現在飲んでいる水質の水を供給する義務を原告に対して負うのである。
  (2) (2)について
    第1文については認める。
    第2文については否認ないし争う。また、被告は、「水道事業の効率的、経済的な観点からの見直しは当然あり得る」と主張するが、給水契約の内容を一方的に変更することは契約法理に反し許されない。そもそも、被告はどのような効率的経済的な観点からの見直しをしたというのであろうか。むしろ逆に、本件では、水道事業の効率性、経済性を考慮すれば、開浄水場を休止すべきでないという結論に至るのである。さらにいえば、本件では、開浄水場の運営にかかるコストは被告が計算しているよりも低額で済むのであり、被告の計算は誤りである(維持管理費用は4(1)で、配水原価は4(2)で後述する)。
  (3) (3)について
    第1文及び第2文については特に争うものではない。
    第3文については否認ないし争う。被告は「需要家台帳にも使用開始届にも給水する水道水の区分(府営水、自己水)の記載はない」と主張するが。被告自身、本件浄水場による給水区域図を所持しており、被告は開地区住民のうち誰が本件浄水場による給水を受けているかを個別に把握している
    したがって、需要家台帳や使用開始届に府営水、自己水の区分が記載されていなくても、被告自身は誰が本件浄水場の水を受けているかを認識しているのであるから、台帳や開始届に府営水、自己水の区分が記載されていなくても、給水契約の内容として特定の水を供給することが含まれるのである。
  (4) (4)について
    第1文は認める。もっとも、被告は、開浄水場の原水の水質を休止の理由の1つとしてあげた。ところが、それにも関わらず、被告は、開浄水場の水が「飲料水としての基準内であって、安全な水道水である。」と認めざるを得ない。被告の主張がいかにご都合主義かをよく物語るものである。
    第2文については否認する。府営水と本件浄水場の水との間には、臭い、味等で素人でも判断できる違いがある。府営水=ダム水と本件浄水=地下水とは水質が全く違い、試飲してもダム水は苦みを感じ、ぬるくなると口に入れてうっと引っかかる感じがし、小島貞男(NHKブックス「おいしい水の探求」著者)の基準に照らせば、開浄水場の水は「特急水」であるのに対し、府営水は「3級水」となる。現実に地下水からダム水に切り替えられた山形県鶴岡市では、冬冷たく夏ぬるくまずい水になったというアンケート結果が出ている。それほど、府営水と本件浄水とは質的に異なるものであるから、本件浄水場で浄水された水の供給を受ける権利が認められるのである。だからこそ、原告らは開浄水場の水にこだわるのであり、だからこそ、開簡易水道事業の廃止に反対し、被告がこれを浄水場として引き継ぐことを求めたのである。
    第3文については否認ないし争う。本件浄水場から水の供給を受ける権利はある。
  (5) (5)については争う。
   宇治市水道事業中・長期整備計画(平成14年3月)(甲3)では、水道事業経営の基本方針として、①豊でゆとりある水道(安全)、②信頼性の高い水道(安定)、③わかりやすく・親しまれる水道(健全経営)の3点が掲げられている。豊でゆとりある水道(安全)の基本方針のための基本施策が「安定給水の確保」であり、そのための課題が「水源の複数化」であり「浄水・配水施設の再整備」である(26頁)。「水源の複数化」の施策内容は「これまで施設整備においては、自己水源が利用できないときは、府営水道の活用が可能となるように行われてきた。しかし、府営水道が事故等により利用できなくなった場合の想定がなされていないことから、府営水道への依存を保ちつつ、危機管理として、自己水源からの取水の安定性を確保する。」ことであり、「浄水・配水施設の再整備」の施策内容は「浄水施設の安全性・安定性・信頼性を確保し、災害対策にも資するため、合理的・総合的な浄水・配水施設の再整備に取り組む必要がある。」ということである(28頁)。
    中・長期整備計画の冒頭1頁にも引用されているとおり、同計画は、厚生省の水道基本問題検討会報告「21世紀における水道及び水道行政のあり方」(平成11年)を踏まえたものとなっている。すなわち、同報告は、基本的視点として①需要者の視点、②自己責任原則、③健全な水環境を掲げ、水道行政のあり方として、全国的に全ての水道が達成すべき「ナショナル・ミニマム」に加えて、それぞれの地域ごとに需要者のニーズに応じた多様な水準の「シビル・ミニマム(ローカル・スタンダード)」を設定し、その達成へ行政が主導し牽引していく時代から、需要者である国民との対話を通じ、水道事業者が自らの意志と努力で方向を決めていく時代にふさわしい関係者の役割分担等を示し、具体的には、「安全に飲用できる水の供給を全ての水道で維持しつつ、需要者の選択に応じたおいしく飲用できる水の供給」ができるようにすることが水道事業者の役割として示した(甲20)。
    このような検討会報告や宇治市水道事業中・長期計画に照らせば、ライフラインの確保のために水道事業者の判断により地下水あるいは府営水のどちらを供給できるか決定できるとする被告の主張は、まさに「安全」に反し、需要者の選択・需要者との対話を無視することである。渇水時、地震等の災害時においても生活用水の供給ルートを確保する必要があるが、そのような災害時において、水源が単一化されていた場合、その地域住民の水の供給が絶たれてしまうのであって、そのようなことを防ぐためには、地下水を水源として持つなど、多様な水源を持つべきなのである。ライフラインの確保のためにはまさに水源の多様化こそが求められているのである。
    さらに言えば、水道法10条は、水道事業者が水源の種別、取水地点若しくは浄水方法を変更しようとするときには、厚生労働大臣の認可が必要と規定している。それに対し、水道料金等供給条件の変更は届出で足りるものとした(法14条5項)。このように事業開始の認可事項であっても事業変更の認可事項とはされないものがあり、水源の種別の変更等に限り、厚生労働大臣の認可を必要としているのは、清浄な水の確保のためであり、水道事業者の判断にこれを委ねることが許されないと法が判断したからである。これは、まさに、法が水源の個別性を認めているからに他ならず、水源の種別等についての需要者の法的利益を水道事業者に対して保障しているからである。
    以上に照らせば、本件事実関係の下では、原告らの特定の水の供給を受ける権利は当然観念できるのである。

 4.「4 本件浄水場休止の必要性」について
  (1) (1)について
    第1文については、本件浄水場が昭和53年に新設されてから約30年が経過したことは認めるが、その余は否認する。乙4号証を見ても、施設の一部に耐用年数を経過しているものも見られるが、エアレーション設備は平成3年に設置されたばかりで耐用年数に達していないし、全体的に耐用年数を経過しているというのは明らかに事実に反する。ましてや更新の時期には来ていない。
    そもそも、「耐用年数」を越えていると言うが、「耐用年数」というものは地方公営企業の有形固定資産の減価償却のための基準となる概念であって、当該施設の機能評価の基準ではない。したがって、ある施設の耐用年数が経過しているからといって、当該施設の機能が劣っていることにはならないのである。だからこそ、中・長期整備計画では、開浄水場については機能診断調査を実施するとの評価がなされていた(甲3)。ところが、機能診断調査は現実には未だ行われていないのであるから、更新の時期を迎えているとの評価はなしようがない。
    第2文については概ね認める。但し、配水池の壁の水漏れと言っても軽微なものであり、圧力タンクの腐食とは言っても表面に錆が生じているにすぎない。
    第3文については否認する。現在、開浄水場の稼働率は約46パーセントである。稼働率が低いのに、揚水量が落ちているから稼働時間が長くなるというのは理解できない。設備の稼働率を上げれば解決する話である。
    そもそも、乙6号証の表は、「平成20年1月25日」に作成されている(乙6参照)。すなわち、本訴に先立つ仮処分申立がなされた後に作成されているのであって、何らの信用性がない。
    第4文については否認する。開浄水場の施設運営費用は、昭和53年に新設されてから28年間で約1億2700万円しか要していない(甲22号証6頁)のに、設備の更新費用にその56%にも相当する7100万円も要することはない。甲8号証は、本訴申立以前に被告より開示を受けた資料であるが、この7100万円という値は、浄水場の設備を新しく取り替える場合の費用であると思われる。そもそも本件浄水場は更新の必要は認められないのだから、更新費用をここで問題とするのも誤りである。
    第5文については否認する。中・長期整備計画で施設の老朽化が問題点として指摘され、統合を含めた更新の必要性について言及されているのは、神明浄水場と奥広野浄水場であり(甲3号証37頁)、本件浄水場ではない。中・長期整備計画は、「合理的かつ総合的な水道施設整備」を基本方針として掲げるが、具体的には施設の機能診断調査を実施することを指摘するのみで、浄水場の統廃合はその施策とはされていない(同36頁)。本件浄水場については機能診断調査を実施することが指摘されているだけである(同18頁)。
  (2) (2)について
    第1文については、府営水の協定水量の値や、平均受水量の値は認めるが、その余は否認する。そもそも槇島浄水場も「廃止」ではなく、「休止」である。
    平成19年6月市議会で、浅見議員の質問に対して、市当局は「契約水量は安定的に水道水を供給するのに必要なものと考えております」と答弁し、府営水の契約数量に余裕はないことを認めている。
    第2文については否認する。
    被告は、府営水の原価は1立方メートル当たり155円、本件浄水場229円であると主張する(甲23)が、甲23号証は、被告作成に係る資料であるところ、この資料は、府営水の単価を安く見せるため、配水量で全ての費用を按分しているのである。しかしながら、現実には、開浄水場は無人で自動装置により運転されている。そのため、開浄水場の単価を計算する場合は、減価償却費及び各戸までの配管費を加算すれば足りるのであって、それ以外の費用を上乗せして計算するのは誤りである。他方、府営水の場合は、地形により配水池、加圧ポンプ、送水管等が必要であり、多額の設備費及び借入返済金(企業債)が加算されるのであり、これらは本件浄水場の給水単価を計算する上では何ら関係のない費用である。従って、甲23号証の資料によって府営水の単価の方が安いというのは誤りであり、現実には、給水単価は明らかに府営水の方が高いのである。
    この点、西川議員の調査によると、配水量1立方メートル当たり単価は府営水道157円であるのに対して開浄水場132円(甲23号証3枚目浄水場別給水単価計算2-2末尾)、水谷議員の調査によると、府営水155円、地下水135.8円(甲24)となる。また、西川議員の資料要求に基づき市水道部が提出した資料によると、1立方メートル当たり府営水83.3円であるのに対し、本件浄水場24.4円と計算される(甲25)のであって、これが正しい給水単価である。。
  (3) (3)について
    第1文については、「年々水質が悪化している。」という主張は否認し、その余は認める。甲5号証を見ても、水質が年々悪化しているとは認められない。
    第2文については不知ないし否認する。本件浄水場の原水の水質は、環境基準値は超えているものの、体重50kgの人が毎日約20リットルを一生飲み続けても健康への影響はないと考えられる程度である(甲6号証参考資料)し、浄水に至っては水道水質基準に適合しているのであるから、取水場所を変更する必要は何らないし、原告らは誰も浄水場の新設など求めていない。
  (4) (4)について
    否認する。槇島浄水場は、平成9年に住都公団から移管された施設であり、比較的新しい施設であって、中・長期整備計画でも「当面現状維持とする。」と評価されていたものであって、施設の老朽化は指摘されていなかった。槇島浄水場は「廃止」されておらず、平成19年4月から「休止」されているだけである。
    前述したとおり、中・長期整備計画では「浄水場の統廃合」は施策として計画されていない。そもそも府営水に切り替えて、当該浄水場を「休止」しただけで、浄水場を廃止したわけでも統合したわけでもないのに「浄水場の統廃合」ということはあり得ない。それをとってみただけでも、被告の主張する本件浄水場の休止の必要性がいかに根拠のないものか明らかである。
  (5) (5)については否認ないし争う。
    被告は、「どの浄水場を休止すべきかについては、水質や収益を考慮の上決定するもので」ある旨主張するが、答弁書を見る限り、被告は水質を考慮した形跡は全く伺われない。このことからも明らかであるが、被告は、何らの根拠もなく本件浄水場を休止しようとしているのである。
 5.「5 まとめ」について
    争う。

以上
上へ

4. 第1回公判―原告・意見陳述メモ


原告 大田 孝 意見陳述要旨メモ-「ウソをつく、誤魔化しをする、約束を破る」

 私は旧日国の社員で、この地に住み60年間この地下水を飲み続けてきました。

1. 宇治市は 水を飲んでいる地元と話をつけてから議会の可決など手続きを順に進めるべきであった。議会では地元の諒解を得るべく注意した数名の議員が居られたが、それを無視して議会の議決を進めた。

2. 答弁書によると、水道は日常生活に必要不可欠であって継続的に供給されることがきわけて重要あるが「それ以上に」特定の浄水場で浄水された水を供給すべき義務を認める余地はない、と云うのが骨子であるようだが、我々にすれば「それ以上」のものでもなんでもない。開の地下水であり、今まで飲んできている水なのである。この水があってこそ開の町が出来たのだと思っている。「大自然のめぐみの水である。」

3. 当時の会議記録(公文書)によると、市長(故渡辺博氏)は①開の水は孫の代まで飲んでもらう。②宇治市でやるので日産がやるのではない。③地下水は宇治市が組織として責任をもって給水すると明言している。

4. 覚書第八条、この覚書に定めのない事項及び疑義が生じた場合には甲・乙・丙相互に協議するものとする。とありますが、協議が行きづまると一方的に交渉を打切リバルブ切替工事に入りました。平成19年6月11日~12日(第一回)、平成20年1月21日~22日(第二回)。自治会はそれに対抗し会員の力を結集してそれを追い返しました。
 水道管理者は昨年から今年にかけて総計10回(実力行使2回含む)の協議がありましたが、一回も出席しておりません。これでは地元の声がわかるはずがありません。覚書違反です。

5. 開浄水場の水が(府営水より)うんと安いのです。


◎【休止差止請求訴訟】
本訴-訴状・答弁書?(1/16,7/9)
本訴-準備書面(7/15)
本訴-準備書面Ⅱ(9/4)
本訴-準備書面Ⅲ(10/7,12/26)
本訴-準備書面Ⅳ(1/21)
京都地方裁判所
第2民事部合議ろC係
吉川愼一・上田卓哉・森里紀之
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