「corr-su」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

corr-su」(2006/08/24 (木) 23:32:17) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

**CORRESPONDENCE  コロッケ会のHPにあるsubclinical hyperthyroidismの話興味深く読みました。 先日OB&GY外来でInfertilityのW/U中の患者(36歳)が紹介されてきました。 InfertilityのW/Uの1つとして行った甲状腺機能検査でTSH検出不能、FT4↑がある とのことで小生外来へ紹介されてきました。  Hxでは、特にhyperthyroidismを示唆する症状は本人からの訴えとしては ありませんでした。体重減少や動悸などもないとのことでした。月経異常も ないとのことでした。誘導質問では、夏より冬が好きという返事でした。  P.Ex.では、中肉中背の女性で、opthalmopathyなし。 極軽度の甲状腺腫を 認めました(エコーでも確認)。心拍数は約90で、regularでした。 軽度の手掌部の発汗亢進を認めました。  他には特にこれといった所見は認めませんでした。  FT3 6.01(N:1.92〜3.38)、FT4 3.00(N:0.73〜1.85)、TSH 0.00 TRAbはnegativeでした。microsome testは×400、thyroid test×100。  このケースがsubclinical と言えるかどうかわかりませんが、infertilityのW/Uの 過程で偶然見つかったという点ではsubclinicalに近いとは言えるかもしれません。 もっとも、hyperthyroidismがinfertilityの原因ということになれば、subclinicalとは いえないでしょう。  OB&GYの方は、hyperthyroidismがコントロールされてからinfertilityの治療を始め たいとのことでした。  このケースは比較的症状に乏しいため、無治療で様子をみたいケースでしたが、 infertilityの原因になっているかもしれないためと、OB&GYの意見も考慮してPTUに よる治療を始めました。目標はFT4正常上限、TSH 検出レベル以上としました。 比較的少量のPTUで短期間でFT4は正常範囲内になり、コントロールできています。  ご参考までにmedlineで調べた文献のabstractからまとめた情報を附記します。 ****(1)“Is there a need for treatment in subclinical hypo- and hyperthyroidism?”  Ther Umsch 1999;56:369-373.   ◯Subclinical Hypothyroidism     頻度:50歳以上の女性の7〜8%、男性の約3%     定義:TSH高値、FT3正常範囲、FT4正常範囲     TSH>12mU/L + positive antithyroid antibodies      overt hypothyroidismへ移行する可能性大      L-thyroxineによる補充療法が必要     TSH 12mU/L以下の場合:      次のようなリスクや基礎疾患があれば補充療法を行う       例:        ・Strumectomy        ・Coronary heart disease        ・Depression        ・Infertility   ◆Subclinical Hyperthyroidism(TSH suppression syndrome)     定義:TSH低値、FT3正常範囲、FT4正常範囲     原因:・exogenous L-thyroxine treatmentによるものが多い。        ・主にnodular goiterによるendogenous form of subclinical          hyperthyroidism;large goiter患者の約20%を占める。     治療:      ※subclinical hyperthyroidismの患者:       ・Afのリスク       ・bone massのリスク(postmenopausal womeの場合)       ・大部分の患者においてTSHは検出レベル以上のことが多い。      TRH試験にも反応することが多い(TRH投与でTSH↑)。      ※通常治療の必要性はない。       しかし、Afを伴っている場合には、抗甲状腺剤、β-ブロッカー、       RI療法を検討すべきである。 ****(2)“Disturbances of Menstruation in Thyroid Disease”  Ann NY Acad Sci 1997;816:280-4.   -Hyper-もHypo-も月経異常を来すことが多い。    ●Hyperthyroidismの場合:     ・最もよくみられるものはoligomenorrhea     ・annovulatory cycleも多い。     ・最近の報告では、21.5%に月経周期の異常があったという。    ●Hypothyroidismの場合:     ・polymenorrheaが多い(Hyperthyroidismと逆)。     ・annovulationが見られることもある。   -FertilityはHyper-でもHypo-でも低下する。   -興味ある点は、juvenile hypothyroidismではprecocious pubertyが報告されていること。     恐らく“glycoprotein hormone”の“spillover effect”による。すなわち、TSHには     多少FSH様およびLH様効果があるためであろう。   -Hypothyroidismではgalactorrheaがみられることがある。      hypophyseal TSH-releasing hormoneはTSHとprolactinの両方の分泌を     促進するためと考えられている。 ****(3) Thyroid disease and reproduction dysfunction.  Abe Y, Mototani N: Nippon Rinsho 1997;55:2974-8.   ・甲状腺疾患の生殖機能に及ぼす影響:性徴発達異常、月経周期異常、不妊、など。   ・男性のHyperthyroidim:女性化乳房を起こすことあり。   ・女性のHypo-およびHyperthyroidism:月経期間の異常、月経量の異常を来すことあり。   ・男性のHypothyroidism:生殖機能に及ぼす影響は女性の場合ほどclear-cutではない。   ・長期の未治療のHypothyroidismはgalactorrheaを来すことあり。   ・上記の異常は甲状腺ホルモンの補充療法(Hypo-の場合)やHyperthyroidismの治療により    reversible。   ・多毛症、月経異常、不妊、乳汁分泌症、女性化乳房の原因精査の際は、甲状腺機能異常の可能性    を念頭に入れるべきである。                               11/16/2000                               沖縄県立八重山病院 池原 修                                        コロッケ会
**CORRESPONDENCE  コロッケ会のHPにあるsubclinical hyperthyroidismの話興味深く読みました。 先日OB&GY外来でInfertilityのW/U中の患者(36歳)が紹介されてきました。 InfertilityのW/Uの1つとして行った甲状腺機能検査でTSH検出不能、FT4↑がある とのことで小生外来へ紹介されてきました。  Hxでは、特にhyperthyroidismを示唆する症状は本人からの訴えとしては ありませんでした。体重減少や動悸などもないとのことでした。月経異常も ないとのことでした。誘導質問では、夏より冬が好きという返事でした。  P.Ex.では、中肉中背の女性で、opthalmopathyなし。 極軽度の甲状腺腫を 認めました(エコーでも確認)。心拍数は約90で、regularでした。 軽度の手掌部の発汗亢進を認めました。  他には特にこれといった所見は認めませんでした。  FT3 6.01(N:1.92〜3.38)、FT4 3.00(N:0.73〜1.85)、TSH 0.00 TRAbはnegativeでした。microsome testは×400、thyroid test×100。  このケースがsubclinical と言えるかどうかわかりませんが、infertilityのW/Uの 過程で偶然見つかったという点ではsubclinicalに近いとは言えるかもしれません。 もっとも、hyperthyroidismがinfertilityの原因ということになれば、subclinicalとは いえないでしょう。  OB&GYの方は、hyperthyroidismがコントロールされてからinfertilityの治療を始め たいとのことでした。  このケースは比較的症状に乏しいため、無治療で様子をみたいケースでしたが、 infertilityの原因になっているかもしれないためと、OB&GYの意見も考慮してPTUに よる治療を始めました。目標はFT4正常上限、TSH 検出レベル以上としました。 比較的少量のPTUで短期間でFT4は正常範囲内になり、コントロールできています。  ご参考までにmedlineで調べた文献のabstractからまとめた情報を附記します。 ****(1)“Is there a need for treatment in subclinical hypo- and hyperthyroidism?”  Ther Umsch 1999;56:369-373.   ◯Subclinical Hypothyroidism     頻度:50歳以上の女性の7〜8%、男性の約3%     定義:TSH高値、FT3正常範囲、FT4正常範囲     TSH>12mU/L + positive antithyroid antibodies      overt hypothyroidismへ移行する可能性大      L-thyroxineによる補充療法が必要     TSH 12mU/L以下の場合:      次のようなリスクや基礎疾患があれば補充療法を行う       例:        ・Strumectomy        ・Coronary heart disease        ・Depression        ・Infertility   ◆Subclinical Hyperthyroidism(TSH suppression syndrome)     定義:TSH低値、FT3正常範囲、FT4正常範囲     原因:・exogenous L-thyroxine treatmentによるものが多い。        ・主にnodular goiterによるendogenous form of subclinical          hyperthyroidism;large goiter患者の約20%を占める。     治療:      ※subclinical hyperthyroidismの患者:       ・Afのリスク       ・bone massのリスク(postmenopausal womeの場合)       ・大部分の患者においてTSHは検出レベル以上のことが多い。      TRH試験にも反応することが多い(TRH投与でTSH↑)。      ※通常治療の必要性はない。       しかし、Afを伴っている場合には、抗甲状腺剤、β-ブロッカー、       RI療法を検討すべきである。 ****(2)“Disturbances of Menstruation in Thyroid Disease”  Ann NY Acad Sci 1997;816:280-4.   -Hyper-もHypo-も月経異常を来すことが多い。    ●Hyperthyroidismの場合:     ・最もよくみられるものはoligomenorrhea     ・annovulatory cycleも多い。     ・最近の報告では、21.5%に月経周期の異常があったという。    ●Hypothyroidismの場合:     ・polymenorrheaが多い(Hyperthyroidismと逆)。     ・annovulationが見られることもある。   -FertilityはHyper-でもHypo-でも低下する。   -興味ある点は、juvenile hypothyroidismではprecocious pubertyが報告されていること。     恐らく“glycoprotein hormone”の“spillover effect”による。すなわち、TSHには     多少FSH様およびLH様効果があるためであろう。   -Hypothyroidismではgalactorrheaがみられることがある。      hypophyseal TSH-releasing hormoneはTSHとprolactinの両方の分泌を     促進するためと考えられている。 ****(3) Thyroid disease and reproduction dysfunction.  Abe Y, Mototani N: Nippon Rinsho 1997;55:2974-8.   ・甲状腺疾患の生殖機能に及ぼす影響:性徴発達異常、月経周期異常、不妊、など。   ・男性のHyperthyroidim:女性化乳房を起こすことあり。   ・女性のHypo-およびHyperthyroidism:月経期間の異常、月経量の異常を来すことあり。   ・男性のHypothyroidism:生殖機能に及ぼす影響は女性の場合ほどclear-cutではない。   ・長期の未治療のHypothyroidismはgalactorrheaを来すことあり。   ・上記の異常は甲状腺ホルモンの補充療法(Hypo-の場合)やHyperthyroidismの治療により    reversible。   ・多毛症、月経異常、不妊、乳汁分泌症、女性化乳房の原因精査の際は、甲状腺機能異常の可能性    を念頭に入れるべきである。                               11/16/2000                               沖縄県立八重山病院 池原 修                                        コロッケ会   [[→症例提示へ>http://www4.atwiki.jp/croquette/pages/51.html]]

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: