MELAS患者に生じた腸閉塞

ID 36歳のMELASの女性
HPI 以前より痩せていた(BW30kg)が消化器症状は特になかった。
   1ヶ月前より腹部膨満、食欲低下が出現し前医入院。難治性イレウスということで
   当科入院となる。



   胃と十二指腸の著名な拡張を認めた。
   ミトコンドリア病に伴うCIPO(慢性偽性腸閉塞)と診断。
   しかし保存的治療により症状の軽快が見られなかった。


CIPO Chronic intestinal pseudo-obstruction 
 機械的な閉塞を伴わない消化管閉塞。基礎疾患は先天性疾患のほかにDM,SSc,SLEなどがある。
 神経叢の異常による腸管平滑筋の機能異常と思われる。ミトコンドリア病でもまれではない。 


本症例では画像診断を進めたところ、SMA症候群の合併が認められた。



大動脈に近接するSMAと、その間を挟まれた十二指腸の閉塞により、拡張した腸管が認められる。


本症例は外科転科となり十二指腸空調端端吻合によるバイパス術を行い、経口摂取を再開する
ことが出来た。CIPOによる低栄養状態が、脂肪組織の減少や平滑筋の萎縮を来たしSMA症候群
を引き起こしたと考えられた。


SMA症候群 
 十二指腸の3rd portionがAortaとSMAに挟まれることによってイレウス症状を呈する。
 aortomesenteric distanceは通常10-20mmだがSMA syndromeでは2-8mmと減少している。
 症状はlateral decubitus,knee-to-chest positionで軽快する。臥位で増悪する。 

典型的なSMA症候群の病歴ではないと思いますが、低栄養からの致死的合併症が起きる前に
SMA症候群の手術が出来たことは幸いでした。
最終更新:2007年09月15日 09:13
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