日本内科学会九州地方会・専門医部会教育セミナー

『微熱、全身リンパ節腫大、胸水・腹水、血小板低下で
発症し半年間の経過で難治性腹水の状態となった症例』

(『コロッケ会,内科学会へ!』特別企画)


日時
   2010年1月30日(土) 17時~18時30分
場所
   九州大学医学部 百年講堂 中ホール3
企画責任
   松木薗和也(鹿児島市立病院 内科)
司会
   松木薗和也(鹿児島市立病院 内科)
   黒田篤(市比野記念病院 内科)
症例提示
   西垂水和隆(慈愛会今村病院分院 救急・総合内科)
コメント
   小浜浩介(昭和会今給黎総合病院 血液内科)
   能勢裕久(慈愛会今村病院分院 救急・総合内科)



【症 例】72歳男性
【主 訴】腹満、腰痛
【既往歴】虫垂炎、鼡径ヘルニア
【現病歴】
 7/10、ゴルフ中に臍周囲の痛み、背部痛が出現したため救急部を受診。救急部での血液検査、エコー所見では特に異常はなく、鎮痛剤で症状は消失した。
 7/14、消化器科を受診し、GIF,AUSを受け、慢性胃炎と胆嚢ポリープの診断であった。この時には症状も消失していたため経過観察の方針となった。
 7/20、飲酒後に再び腹痛・背部痛が出現した。
 7/21、消化器科再診。この時のAUSでも、同じ所見だった。
 7/24、咳嗽および呼吸困難感が出現し、近医を受診した.胸部Xpで胸水が認められ,呼吸器科を紹介され受診。胸部CTで両側胸水、肺門リンパ節腫大、前縦隔に軟部組織様の腫瘤が認められた。胸腔穿刺で得られた胸水の所見からは診断につながる結果は得られなかった。このころから微熱が出現し、顔面、手、足の順で浮腫が出現してきた。
 経過観察中,8/10の血液検査で血小板が減少(7万)した。胸腹部CTを行い、血液内科に紹介された。頚部リンパ節腫大の所見あり。CTでは腹水、肝腫大も認めたため、リンパ腫が疑われ、骨髄穿刺・頚部リンパ節生検が行われた。骨髄は低形成の所見でありMDSが疑われたが、リンパ節生検の病理の結果は”反応性”というものであった。Bence-Jones蛋白、血清抗血小板抗体はいずれも陰性であった。腹部CTの所見から下大静脈血栓症が疑われ、8/20に精査及び加療の目的で総合内科へ入院となった。

【入院時現症】
バイタル:血圧 120/70mmHg HR 80/min. RR 18/min. BT 37.6℃
身体所見:全身状態は悪くない.意識清明.
前頚部,後頚部ともに左右差なくリンパ節腫大あり,最大で1cmほど.圧痛なく可動性良好.甲状腺腫大なし
心・肺所見 異常なし
腹部 肝脾腫大なし,腹満なし
四肢 下腿浮腫なし,関節腫脹なし
鼠径リンパ節節軽度腫大あり,腋窩リンパ節は5mm程度.
神経所見異常なし.感覚障害,運動障害,反射など特記所見なし.

【入院後経過】
 入院後、下大静脈血栓症では胸水、顔面、手のむくみは説明がつかないため、胸部CTを再検したが、他には明らかな血栓の所見は無く腋窩リンパ節の腫大が認められるのみであった。CTでの下大静脈血栓が疑われた件については、放射線科によると、血栓部位の再構築画像からは外部からの静脈圧俳像のようにもみえるが異常所見とまで言えないとのことであった。
 「微熱、全身リンパ節腫脹、胸・腹水、血小板減少&凝固異常」を説明しうる原因疾患は何かの検索を行う方針となった。
縦隔の腫瘤様病変/VATS、肝生検、腹膜生検、PET、各種培養・血清検査などの検査を行ったが、確定診断に至る所見は得られなかった。
半年経過後に、病態は難治性腹水(毎週外来にて腹水ドレナージ)が主体となった。消化器科にても原因は不明のままであった。

【問題点】
#この病態を説明できる疾患は?
#難治性腹水の鑑別・治療について


























































最終更新:2010年10月27日 10:07