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 真菌感染症に対する有機的なアプローチがこの章で述べられ,続いて真菌各論に分割されている.主要な真菌感染症の疫学,宿主の状況,皮膚テスト,血清学的情報については表17.1に記載されており,読者が目の前の患者の診断を絞り込む際に手助けとするべきである.全身的な抗真菌化学療法を開始するべきかどうかを決定することは困難な場合があり,毒性の有する可能性のある抗真菌剤の適応かどうか,また投与方法などについては感染症専門医の助言を仰ぐべきである.アクチノマイセスとノカルジアもはや真菌には分類されなくなっている.これらは本章の最後で触れる.

カンジダ症

 カンジダ種は体表面の皮膚粘膜に常在しており,表在性皮膚疾患や膣炎を起こすことが多い.状況によっては,即ち宿主の防御力に変化が生じた場合には侵襲性疾患を来す場合がある.カンジダ感染症の発生率は,抗生物質,免疫抑制剤処方,重症患者の増加,HIV感染症の増加に伴い著しく増加している.
Ⅰ. 成長及び特徴
 ヒトに対しては多くのカンジダ種が感染症を生じる.これにはC. tropicalis,C. krusei,C. parapsilosis,C. glabrataが含まれるが,臨床的な感染症として最も頻度が高いものはC. albicansである.カンジダ種は酵母様真菌であり,血液寒天培地やSabourau培地で24時間から48時間で培養される.C. albicansが疑わしく確定するためには, positive germ testを用いて2,3時間で可能である(酵母コロニーを血清中でインキュベーションし特徴的な形態変化の有無をみる).種同定にはさらに2〜8日を要する.
Ⅱ. 疫学と宿主要因
 カンジダ種は世界中に分布する人類共生生物である.
A. colonization 常在:Candidaは女性性器,消化管,皮膚,尿道カテーテル留置者の尿から培養される.健常者よりも入院患者に置いて常在は多く,一般細菌の発育を抑制する抗生物質を使用することによりさらに増加する.
B. 宿主要因:カンジダ種感染に対して宿主の抵抗要因として,無傷の皮膚,好中球や単球などの貪食細胞,細胞性免疫システムは全て重要な要素である.宿主防御系が変化すると微生物の通常の共生状況が変化し引き続き組織へ侵入することになり疾患を生ずる.これらの変化は糖尿病やAIDSでは自然に生じる.またより高頻度に医原性要因により侵襲性カンジダ症に至る.広域抗生物質や副腎ステロイド使用,器具や化学療法剤使用による粘膜障害,血管内カテーテルや圧測定器具に依る皮膚統合性の破綻によって侵襲性疾患のリスクが増加する.
Ⅲ. 臨床像
A. 皮膚感染症
 カンジダは温かく湿った部分の皮膚,即ち腋窩,鼠径,臀部間,の感染症を来すのが普通である.会陰部,大腿,陰嚢,陰茎(亀頭炎)の病変を伴い会陰感染を呈することが一般的である.乳児のdiaper rashおむつかぶれはカンジダによるものであり,angler cheilitis口角炎も同様である.これらは紅斑様丘疹や斑を特徴とし,融合性の場合もあり強い掻痒感を伴う.免疫抑制剤使用下に於いて顕著である.感染部位を掻爬し10%-20% KOHでwet-mountし検査することで診断がつく.カンジダはまた,爪感染を来たし,爪周囲炎や爪甲真菌症の形をとる.手をよく水に浸ける者や非開放性グローブを扱う者は感染しやすい.糖尿病患者は一般人口よりも爪周囲炎に罹患しやすい.通常はnystatinやmiconazoleなどの局所剤による治療が健常者の皮膚粘膜病変には有効である.日和見患者の爪甲真菌症やより広範な粘膜病変では経口azole,例えばFLCZ,ITCZ,が必要である.ITCZ 200mg1日2回を1週間,これを毎月,3から4ヶ月間使用する.
B. 粘膜病変
1. 口腔カンジダ症
 鷲口瘡は時に健常人の新生児や歯科装具装着者でも生じるが,最近抗生物質を使用した者や吸入または経口ステロイド使用者,または免疫抑制剤使用者や癌やAIDS患者で生ずることが一般的である.盛り上がった白色調プラークが舌や口腔粘膜上に現れる.口腔カンジダ症は萎縮調であったり口角炎に伴う場合もある.掻爬した検体を光学顕微鏡で調べることで診断に至り,酵母または類菌糸塊として認められる.
2. 食道カンジダ症
 食道炎は日和見患者,特に血液悪性疾患またはAIDS,に生じることが多い.嚥下困難や嚥下時の胸骨後部痛が一般的な症状である.口腔カンジダ症を伴うことも多いが常ではない.鷲口瘡があり典型的な症状があるハイリスク患者の場合は,多くの臨床医は食道カンジダ症に対してエンピリックに治療を始める.確定診断には内視鏡が必要である.
3. 食道以外の消化管病変
 癌患者でみつかる場合が多い.侵される臓器としては胃が多い.カンジダは特徴的な胃炎を呈し,潰瘍床に侵入し,小腸及び大腸の表層潰瘍を来す.このような状況の場合は腫性カンジダ症を来すことも多い.
4. 外陰部・膣カンジダ症
 第16章を参照
5. 治療
a. 口腔カンジダ症:nystatin経口液 5mLを1日4回またはclotrimazoleトローチ1日4回,7から10日間.経口azoleも効果的であり,FLCZ 100mg/日7から14日間が局所剤より効果的であるといういくつかの研究がある.口腔咽頭カンジダ症でFLCZに反応しない場合はITCZ液 200mg/日で治療する.
b. 食道炎:全身的治療が必要である.FLCZ 100-200mg/日が非常に効果的であり,合理的な第1選択である.FLCZに難治性の食道病変はITCZ液 200mg/日またはAMPH-B ivで治療する.
 口腔および/または食道カンジダ症の再燃例は日和見宿主,特にHIV感染症患者で一般的である.FLCZによる長期抑制治療が効果的だが,残念なことに耐性が増加しつつある.そのため,重症の再燃を繰り返す例にのみ長期予防治療は推奨されている.
C. 慢性皮膚粘膜カンジダ症
 この疾患グループは皮膚,爪,粘膜面の持続性・再燃性カンジダ感染症としてタイプづけられる.慢性皮膚粘膜カンジダ症は小児や成人にも生じ,後半な粘膜障害を伴う.播種性カンジダ症は少ないが,他の細菌感染や皮膚生菌感染を伴うこともある.Addison病や甲状腺機能低下症,副甲状腺機能低下症などの内分泌異常を伴う場合もある.慢性皮膚粘膜カンジダ症患者では様々な免疫障害が報告されているが,多くはTリンパ球機能異常であり,遅発性過敏反応に対する免疫寛容として現れる.治療は個別に行う.経口azoleが選択薬となるが,年余に及ぶ長期抑制療法は安全性と有効性が証明されている.
D. 播種性カンジダ症
 かつては稀な疾患だったが,感染を受けやすい宿主が増加してきたため院内感染症として重要なものとなった.米国においてはカンジダは入院患者のBSIの原因としては4番目の原因となった.病変は無症候性の者からカンジダ血症を呈するような重症患者では多臓器に及ぶ者もいる.多くはC. albicansであるが,播種性カンジダ症では非albicans種も一般的になりつつある.
1. リスク・ファクター
 播種性カンジダ症ではいくつかのリスク・ファクターが知られている:最近の消化器手術,好中球減少,広域抗生剤使用,静脈内カテーテル留置,末梢栄養,癌化学療法,移植後の免疫抑制療法,カンジダ種の常在.加えて,最近の知見では病院内環境が感染源になる可能性が示唆されている.患者個々では複数のリスク・ファクターが同時に存在することもしばしばである.
2. 臨床像
 播種は,病態が不明瞭な発熱や,悪寒戦慄・弛張熱・低血圧・臥床を伴う敗血症症候群として発症することもある.通常多臓器が侵され,びまん性の微小膿瘍が形成される.膿,肺,肝臓,脾臓への播種は宿主防御機構の破綻が甚大であるかその一歩手前であることを表している.このような状況ではどんな臓器への拡散も起こりうるが,眼と皮膚への感染は殊に重要である.それらは診断上の重要な鍵となるからである.
a. macronodular skin lesion:塞栓fociを表しているが一部の患者でのみみられる。直径が0.5cmから1cmでピンクまたは赤色で単発または多発し全身性に分布する.パンチ生検の組織像および培養で真菌が認められる.カンジダはecthyma gangrenosumやpurpura fulminans類似の病変を来すこともある.
b. 眼内炎:播種性カンジダ症患者の20-50%にみられ,多臓器病変と密接な相関がある.眼内炎はblurry vision,scotomas,眼痛を来すが,無症候性に広範な病変を来す場合もある.眼内炎は適切な状況下であれば臨床的に診断が得られるが,時に繰り返し眼底検査が必要である.網脈絡膜内に白色の綿花様白班で周囲に浸出物を伴い糸状の境界を有し,硝子体へ拡大する.播種性カンジダ症のリスクを有する患者を評価する際には良質な眼科検査が重要である.
3. 診断上の問題
 播種性カンジダ症の確定診断は,組織を侵している微生物を組織学的に証明するか血液など通常は無菌状態の部位からカンジダ種を検出するかによって得られる.血液培養が陽性となることが一般的な方法だが,残念ながら多くの場合陰性であり,生前診断率はわずか10-40%に過ぎない.ハイリスク患者において典型的な症状や兆候がある場合にはそれを根拠にして疑診し,抗真菌剤を開始する根拠とする.基礎疾患が重篤な場合,時間が重要であるからである.ハイリスク患者においては最も需要な診断テクニックは,徹底的な毎日の理学所見を通じてである.
a. 血清学的検査:カンジダ抗体やarabinotolやenolaseなどの抗原検出法を利用しての診断は世界中で利用できる.現行の血清検査は侵襲性カンジダ症の診断には感度が低く,また常在菌と侵襲性感染症を信頼性を持って鑑別できない.Edwardsが述べているように,播種性カンジダ症の疑いがある患者で抗真菌剤を始めるべきかどうかの判断は血清学的検査のみに依ってはならず,ハイリスク患者の包括的な評価の中で行うべきである.本節で記しているように,血清学的検査は制約があり,臨床現場ではあまり使われてはいない.
b. 播種を来す前に常在化してることが多い:播種性疾患患者では尿,痰,便培養で陽性となる.これらの検体でカンジダ種が分離されれば的中率がある程度あがるが,確定診断には至らない.C. albicansが常在化している患者の一部分のみがこれによる侵襲性疾患に進展する.日和見患者でC. tropicalisが検出されれば,播種性疾患の診断価値がある.
c. PCR:真菌の共通プライマー,multicopy gene target,種特異的なプローベを用ている.カンジダ症を含む侵襲性真菌症の早期診断用に開発中である.前向き臨床試験で,これらの感度,特異度,(陽性)的中率と臨床的なアウトカムとの総監について確立される必要がある.
4. 治療
 全身性カンジダ感染症は抗真菌剤の全身投与で治療されなければならない.侵襲性カンジダ感染症の治療で最も効果的な現行の全身性抗真菌剤治療はAMPHとFLCZである.治療の選択法は患者の状況や感染を起こしているカンジダ種についての知識(情報)に依存している.
a. AMPH-B(0.5-0.7mg/kg/日):多種カンジダ種に対して広範な活性を有し伝統的には腫性疾患患者の治療薬剤として選択されてきたが,近年の比較試験ではFLCZが同等の有効性と低い毒性が示されている.現在,多くの専門家が初期治療をFLCZ 400mg-800mg/日で行うことを推奨している.低血圧,急速な状態悪化,多臓器不全など臨床的に不安定な患者の場合には初期治療として大量AMPH-B(0.7-1.5mg/kg/日)が推奨されている.
 C. albicans,C. parapsilosis,C. tropicalisによる播種性感染症はFLCZまたはAMPH-Bの通常量で治療されても良い.これらはazoleにもAMPH-Bにも感受性がある.C. krusei株はFLCZに耐性であり,AMPH-Bで治療されるべきである.C. glabrata感染症の治療については多くの専門家がAMPH-Bによる治療を推奨しているが,一方で大量FLCZ(800mg/日)も提唱されている.C. lusitaniae株の多くはAMPH-Bに耐性であり,この株の場合にはFLCZ 400-800mg/日が推奨される.感染症医へのコンサルトが推奨される.
b. Lipid-based AMPH-B:AMPH-B deoxycholateに堪えられない場合や難治性の場合,またはAMPH-Bで腎毒性のリスクにある場合に用いられる.脂質製剤が3製剤利用可能である(AMPH-B lipid complex(ABLC),AMPH-B colloidal dispersion(ABCD),liposomal AMPH-B(L-AMB)).3-5mg/kg/日が推奨量である.詳細は第2節へ.
c. Flucytisine:AMPH-BまたはFLCZと併用しカンジダ種に対する相乗効果で,患者によっては用いられる.併用療法の対象は心内膜炎,髄膜炎,眼内炎の患者である.AMPHまたはFLCZによる治療後にも血液培養が陽性である場合には,本療法の対象となる.骨髄抑制が副作用として知られている.推奨量は25mg/kg6時間毎であるが,腎不全がある場合には調節が必要である.
d. 侵襲性カンジダ症治療についての新規薬剤オプションは緒についたばかり:
(1)caspofungin:echinocandinでは最初に上市された.この新世代抗真菌剤は真菌細胞壁合成を阻害し,caspofunginの場合,カンジダ種に対しては殺菌的に作用する.初期の臨床試験の結果か期待が持てるものだった.本章後半の第Ⅴ節で述べる.
(2)voriconazole:新しい,triazoleで,最近認可された.カンジダ種に対してin vitroでは優れた活性を有し,動物実験では有効性が証明された.好中球減少および非減少下での侵襲性カンジダ症に対するvoriconazoleの有効性をみるための大規模臨床試験が現在行われている.詳しくは第Ⅳ節Eに述べられている.
e. 血管内カテーテルの存在は播種性カンジダ症のリスクであり,カンジダ血症が判明したら可及的速やかに静脈ラインは交換(刺し換える)するべきであるというデータもある.
f. 推奨される治療期間は血液培養が最後の陽性と播種性感染症の臨床症状が改善してから2週間である.
(1)カテーテル関連カンジダ血症が判明した.
 カンジダ血症は,播種性疾患の兆候が殆どないか欠如している留置カテーテル患者に於いて頻繁にみられる.抗真菌療法を受けなかった播種性カンジダ症の患者の後期合併症として,特に健常宿主ではなく日和見状態にある場合,いくつかの報告がある.このような場合,多くの専門家はカテーテルを除去し一定期間の抗真菌剤療法を推奨している.治療の原則は播種性カンジダ症のところで概略が述べられている.
E. 播種性カンジダ症が疑われた場合,以下の二つのシチュエーションではエンピリック治療を考慮する.即ち,
1. 好中球減少患者,(抗癌剤)化学療法後,抗生剤治療後にも熱が持続する場合.このような患者へのアプローチについては,第1節Hでも述べる.
2. ICUにいる重症患者.明白な感染フォーカスに乏しく播種性カンジダ症のリスク(広域抗生剤,高カロリー輸液患者,手術,カンジダ定着が多発している)を有する発熱患者では,FLCZまたはAMPH-Bによるエンピリック抗真菌剤治療を考える.
F. 特異的深部臓器感染
1. 肝脾カンジダ症は急性白血病や遷延性好中球減少症が回復した後にみられる.このような状況では,顕微鏡的または肉眼的な膿瘍が肝臓,脾臓,腎臓,肺に拡散することで特徴づけられる.
a. 病像:持続する熱,腹痛,肝脾腫,AL-P高値,白血球増多
b. 診断:CT,MRI,エコーで肝臓および脾臓(時に腎臓)に多発する欠損像および/または膿瘍が見つかる.CTは最も特異的なツールである.病変は低吸収域で,輪状の増強効果がある.確定診断には,生検,培養,組織学的検査若しくは可能であれば起炎菌を検索するために複数の膿瘍吸引が必要となる.
c. 治療:長期抗真菌剤投与が必要.多くの専門家が,FLCZ 400-800mg/日を数ヶ月間投与することを推奨している.AMPH-Bで短期治療しその後にFLCZを長期投与するという意見もある.治療は,全病巣が消失するまで継続するべきである.専門家に相談する.
2. カンジダ心内膜炎も,長期に血管内カテーテルが留置されている患者や最近心臓手術を受けた患者では重要な役割を持つ.多くの場合はC. albicansであり,麻薬常習者では三尖弁に好発する.
a. 病像:大きい弁にゆう贅を生じやすい以外は,細菌性心内膜炎に類似する.患者の多くは中等度サイズの動脈(脳,四肢,肺,腸間膜)の閉塞に伴う顕在性の塞栓イベントに陥る.心筋へも侵入する可能性がありこの場合は不可逆的である.
b. 診断:致命度および死亡を防ぐためには早期診断が重要だが,血液培養で陽性となるのは50%程度でしかない(人工弁でも75%).発熱,白血球増多は無い場合もある.診断を疑う重要な鍵は眼内炎,腫瘍な塞栓イベント,エコーでの巨大なゆう贅が認められることである.皮膚病変の生検も役に立つことがある.
c. 治療:早期に外科治療を行うこととAMPH-B(0.5-0.8mg/kg/日)である.再燃することが多いため長期間経静脈投与し注意深くフォローアップする必要がある.
d. 予後:不良.特に保存的治療のみの場合は不良.症例が増加し,早期診断・早期外科治療の症例が増加したこともあり,治療成功例も報告がある.AMPH-Bと外科治療で50%の患者は助かるかもしれない.
3. 性器・尿路感染
 入院中の患者,特にICUではカンジダ尿は一般的である.リスク・ファクターには糖尿病,広域抗生剤,尿路カテーテル留置,免疫抑制療法がある.一般的にはC. albicansである.
a. 定着vs感染:膿尿が無ければ侵襲性感染症の可能性は低いが,尿へのカンジダ定着と侵襲性感染症を鑑別するクライテリアは確立していない.尿定着の場合は無症候性で通常は尿路カテーテル留置を伴い,抗真菌剤治療を必要としない.好中球減少や免疫抑制下などのリスク・ファクター下では侵襲性感染症が起こりやすいが,この場合は抗真菌剤治療が必要である.
b. 病像:下部尿路感染(膀胱炎)では無症候性だが,排尿困難,血尿,頻尿を呈する場合がある.上部尿路感染では細菌性腎盂腎炎に特有の症状と兆候を呈する.即ち,発熱,白血球増多,CVA tendernessである.尿検査で顆粒円柱と菌糸がみられれば腎実質病変を表す.腎への感染は血行性散布が主因だが,尿路閉塞により上行性に感染を起こすこともある.
c. 治療:無症候性カンジダ尿では一般には抗真菌剤は必要ではない.無症候性カンジダ尿患者の多くは侵襲性感染症は来さず,抗真菌剤で治療しても長期的にはカンジダ種の除菌には至らない.最近の研究では患者の41%でカテーテル除去だけでカンジダ尿が解消し,可能ならこの方法が望ましい.
 症候性の患者で侵襲性疾患のリスクがある場合-腎移植を受けた者,好中球減少,非尿生殖器処置を受ける予定のある者-は抗真菌療法を受けるべきである.FLCZ 200mg/日が推奨される.AMPH-Bは代替だが,ivまたは50-200μg/mLで膀胱洗浄を3から5日間.可能ならカテーテルや他の器具を除去するべきである.日和見患者で抗真菌剤投与にも関わらずカンジダ尿が遷延する場合,腎膿瘍やfungus ballを否定するためにCTまたはエコーを実施するべきである.
4. 中枢神経系感染
 重症成人患者や重症新生児の播種性感染症の合併症である.免疫抑制,外傷,脳神経外科手術,最近ではAIDSで起こる.診断はCSFからカンジダ種を分離することでなされる.AMPH-Bおよびflucytosineでの治療が推奨される.可能ならばシャントは除去する.CNS感染症に於けるFLCZの意義は不明である.感染症医へのコンサルトする.
5. 肺感染
 血行性播種性感染症の二次感染であり,発熱と咳を来す.入院患者の痰で培養されることが多いが,多くは定着である.診断確定には生検で組織への侵入を証明する.原発性肺カンジダ症は,日和見患者以外は稀で,日和見患者でも多くはない.
6. 腹膜炎
 カンジダ種に依る腹膜炎は一般的には腹膜透析または消化管手術の合併症である.維持透析を受けている患者では播種はあまりないが,消化管手術の場合には起こりうる.カンジダ腹膜炎の患者は全て,AMPH-BまたはFLCZで治療される必要があり,維持透析の患者では透析カテーテルを除去するべきである.
7. 筋骨格感染
 播種性感染症の一部.関節炎は細菌性の場合と同様に急性である場合も慢性の経過をとる場合もある.骨病変では成人では椎体を小児では長管骨が侵される.診断には感染巣の吸引が必要である.骨髄炎の治療では局所の掻爬と全身的抗真菌剤投与が必要である.AMPH-B,FLCZ双方とも良好な成績であり,専門家によっては初めの2-3週間はAMPH-Bで治療しその後FLCZで長期治療,とする者もいる.関節炎の場合,関節ドレナージと全身的抗真菌剤投与を長期投与する.
8. 眼感染
 血行性播種性感染症についてはD節2.bで述べた.外傷や外科手技に伴う二次的感染が外因性に生じる.FLCZまたはAMPH-Bによる全身治療を,flucytosineを併用または併用せずに投与する.vitrectomyの意義は不明である.眼科医へのコンサルトを推奨する.
9. 感染性血栓性静脈炎
 静脈カテーテルに関連した末梢血管や大血管の感染性血栓性静脈炎が起こりうる.発熱,敗血症の兆候,遷延性カンジダ血症,がカンジダ種に依る末梢性血栓性静脈炎の特徴である.末梢静脈に化膿巣が認められた場合,静脈切開の上,抗真菌剤を開始するべきである.大血管の感染性血栓性静脈炎はAMPH-Bが奏功する.