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アスペルギルス症

 アスペルギルス種は細菌学検査に付随する一般的な種である.また,培養結果が陽性であることと臨床的な疾患との関係は常に疑問視しなくてはならない.しかし,アスペルギルスは多様な疾患を生じ,過敏性肺臓炎から免疫抑制状態での播種性疾患まで幅広い.
Ⅰ. 発育と特徴
 アスペルギルス種はルーチンの真菌培地で容易に生育し,48時間から72時間で同定される.人の感染症で関連があるのはA. fumigatusとA. flavusである.典型的な状況においては培養が陽性であった場合,原因として関連があるかどうかを考える必要があり,定着状態であるかもしれない.確定診断には組織浸潤が示される必要がある.臨床検体のPAS染色で鋭角に分岐した菌糸が見えることが重要である.
Ⅱ. 病因
 アスペルギルス種は世界中どこにでもいる土壌腐生菌である.アスペルギルスは院外からのフィルターを通さない窓を通った空気を病棟で培養するとしばしば陽性となる.分生子の飛沫核を吸入することで獲得される.
Ⅲ. 臨床像
 アスペルギルス種の感染によりアスペルギルス症として知られる多様な病型の一つに至る.
A. 気管気管支への定着
 アスペルギルスは慢性肺疾患患者の拡張した気管支や肺の空洞に周囲の実質組織へ浸潤することなく定着しうるため,関連のある臨床像なしに検出されることがある.このような場合,アレルギー性または侵襲性アスペルギルス症は発現しない.時々,緩徐に悪化する肺浸潤影がみられる場合があり,このような場合には治療を要する.
B. アレルギー性アスペルギルス症は肺胞(外因性アレルギー性肺胞炎)や気道(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA))を侵す.
(1)外因性アレルギー性肺胞炎は過敏性肺臓炎であり,アトピー性ではないが繰り返しアスペルギルスの分生子に暴露された患者に生じる.例えばカビ臭い粒子に近接して閉鎖された空間で働く農家である.咳,息切れ,発熱,悪寒,倦怠感が,典型的な場合には暴露の4−8時間で生じる.繰り返された場合,肉芽腫性疾患や肺線維症に至る.
(2)ABPAはアスペルギルス真菌抗原への過敏性反応が気管支樹に生じた場合に生ずる.このことについての病態生理は複雑で部分的にしか解明されていない.即時型過敏反応(Ⅰ型)はIgE関連ではないかと思われているが,おそらくは本病態に特徴的な気管支攣縮症状に相当するものではないかと考えられている.レントゲン写真像はⅢ型(免疫複合体)に相当し,気管支の破壊性変化を来すものであろう.
a. 病像:ABPAは気管支攣縮の症状が特徴であり,エピソード的な喘鳴と呼吸困難を来す.咳は粘稠な痰を伴い,微熱,末梢血好酸球増多,肺浸潤影を伴うことが一般的である.胸膜痛や喀血もおこることがある.疾患は軽度で後遺症は残さないが,頻繁に繰り返されると気管支拡張症や肺線維症に至る場合もある.
b. 診断:ABPAはいくつかの診断基準に該当する場合に可能性が高い
(1)気管支喘息のエピソード
(2)末梢血好酸球増多
(3)アスペルギルス抽出抗原に対する皮膚反応が陽性.これはABPAではない者でも陽性となる場合があるため特異的ではない.
(4)血清沈降抗体は70-100%で陽性
(5)血清総IgEが著明に増加.活動期のABPAでは総IgEおよびアスペルギルス特異的IgEの双方が高値となり,緩解すると低下する.
(6)CXRは多彩な異常所見を示す.わずかな斑状の一過性の浸潤影(上葉が多い)から葉性・無気肺・空洞まで.多くの患者は時に中枢性気管支拡張を呈する.
(7)痰培養ではしばしばA. fumigatusが陽性となり診断を示唆するがこれを以て確定的ではない.
c. 鑑別診断
 結核も上葉に浸潤影や空洞を呈しうる.嚢胞性線維症は一般的なABPAの像を呈するため,ステロイド治療を開始するまでに除外しておく必要がある.肺癌,好酸球性肺炎,他の原因からくる気管支拡張症も検討する.
d. 治療は重症度や症状の発現頻度によって決定される.軽症の場合特異的治療を要さない.
(1)副腎ステロイドが治療の本体である.急性増悪期には連日大量(0.5-1.0mg/kg)のステロイドをCXR所見が解消するまで投与し,0.5mg/kg隔日でフォローする.3-6ヶ月間継続し漸減する.初期に積極的に治療すると病後期の肺線維化への進展を抑制することができるかもしれない.
(2)気管支拡張剤および体位ドレナージなどの理学療法も粘液栓を防止する.
(3)CXRは繰り返し撮り,IgEもモニターするとステロイド治療の指標となり増悪を把握できる.
(4)予防についての観点:アスペルギルスへの暴露がおこりやすい場所(堆肥の山や穀物倉庫)や行動(マリファナ吸引)をさける.
(5)最近の無作為試験ではITCZ 200mgを1日2回16週間併用することで良好な結果となることが判明した.ITCZはステロイド減量の薬剤として推奨されている.

C. アスペルギルス腫(”fungus ball”)
 アスペルギルス腫は既存の肺空洞への腐生菌の定着の結果として生じ,結核,サルコイドーシス,肺気腫などの病歴があることが一般的である.アスペルギルス腫は侵襲性肺アスペルギルス症の結果として生じることがあり,ときにABPAで起こることもある.アスペルギルス腫は菌糸成分,フィブリン,粘液が複雑に絡み合ったものの固まりである.
1. 臨床像
 喀血が最多で,症例の55-80%に生じる.喀血の程度は,血液の混じった痰程度のものから緊急外科的切除を要するほどの活動性出血のものまで多彩である.慢性咳嗽はあまりみられない.患者の多くは無症状である.
2. 診断
 典型的な画像所見,痰培養,血清検査で診断が確定する.
a. CXRまたはCTでは特徴的な,空洞内塊が部分的に半月状の空気に囲まれている.
b. 痰培養は1/3から1/2で陽性となる.
c. 血清沈降抗体は90%以上で陽性となり,特徴的なCXR像がある場合に診断を疑わせる.
3. 治療と予後
 アスペルギルス腫の自然経過(転帰)は多彩であり,治療は症状や肺基礎疾患によって個別化されるべきである.すなわち,保存的治療は慎重に観察を行うものだが,症状がなく稀にしか喀血しない場合にのみ適応がある.アスペルギルス腫の自然消失または融解は7-10%でみられることが知られている.重篤な喀血では肺切除の適応となる.抗真菌薬が有益かどうかについては明確になっていない.
D. 侵襲性アスペルギルス症
 日和見患者においてアスペルギルスは一般的な日和見起炎菌であるが,時に免疫抑制状態ではない場合にもみられる.細胞毒性のある薬物で化学療法を受け長期に好中球減少下にある患者に感染しやすい傾向にある.大量ステロイド投与中の患者や他の免疫抑制剤を服用している患者,小児で慢性肉芽腫性疾患の患者でも高いリスクにある.AIDSでの侵襲性アスペルギルス症,殊に好中球減少下にあって複数の抗生物質投与(AZM,ST合剤)を受けている場合に生じやすい.
1. 臨床像
a. 肺病変は最も一般的な病像である.肺では典型的な場合には壊死性気管支肺炎を呈し,狭い範囲の浸潤影から両側の出血性梗塞まである.最も一般的な経過としては,日和見状態にある患者で広域抗生物質を投与しているにもかかわらず熱が遷延し新たな浸潤影が出現,といったものである.呼吸困難感と乾性咳嗽が多い.喀血はあまりない.CXRでは気管支肺炎,粒状影,肺胞充満像,空洞を呈する.免疫抑制状態にある患者では侵襲性肺アスペルギルス症は急性で数日から数週で悪化する.頻度は高くないが,健常人もしくは免疫系がわずかに冒されている場合,侵襲性肺アスペルギルス症と比較してゆっくりと慢性に経過する.
b. 肺外への播種はIPA患者の多くで剖検時に認められる.
(1)中枢神経系病変は血行性播種でも,副鼻腔への浸潤でも,梗塞や膿瘍の結果としても生じる.髄液は細胞増多と蛋白上昇を呈すが,髄液の培養は通常は陰性である.
(2)壊死性皮膚潰瘍は通常四肢にみられ,血行性播種に続発して,若しくは環境中の感染源からの直接の定着でも生じる.
(3)骨髄炎は通常は免疫抑制状態にある患者で主に肋骨や椎体を冒す.
c. 副鼻腔の急速侵襲性感染症は日和見宿主で生じることがあり,眼窩や脳神経に進展する可能性がある.慢性侵襲性アスペルギルス性副鼻腔炎は健常人でも生じることがある.
2. 侵襲性アスペルギルス症の診断
 確定診断にはTBLBなどの生検標本で組織浸潤を示すか組織の培養で陽性となることが必要である.患者はきわめて重篤な状態にあることが多いため侵襲的な手技は致死率が高い.それなりの症候群があるなかで非侵襲的な検査が陽性となれば診断が示唆される.例えば,好中球減少,細胞毒性のある薬物治療や長期のステロイド投与があるなかでCXRで新たに粒状影や空洞影が認められ,かつ,痰培養や気管支肺胞洗浄液あるいは擦過の培養でアスペルギル症種が陽性となれば,あるいはBALFの細胞学的検査で特徴的な菌糸が明らかになるような場合である.
a. 侵襲性アスペルギルス症の患者で痰および鼻腔培養で陽性となることがある.また,侵襲性アスペルギルス症が存在しなくても同部位で陽性となることがある.ハイリスクの患者で痰またはBALFまたは気管支洗浄液でアスペルギルスが検出されれば侵襲性アスペルギルス症が強く示唆される.
b. 血清検査:標準的なアスペルギルス沈降抗体はABPAで上昇する.侵襲性アスペルギルス症ではまれにしか上昇しないうえ,有用ではない.
c. 血液培養は通常は陰性である.
d. IPAの確定診断のためには肺生検が通常は必要である.診断を確認するためには肺実質組織への浸潤を明示する必要がある.多くの研究者は組織を評価する上で十分な検体を採取する目的で開胸肺生検を推奨する.TBLBも用いられる.残念ながら侵襲性アスペルギルス症のハイリスク患者では肺生検が安全に行える訳ではない.そのため,臨床的な状況からIPAが非常に強く疑われる場合には痰や鼻腔の培養が陽性であった際には,エンピリックに抗真菌剤を使用する.IDへのコンサルトが推奨される.
e. 肺外病変の生検や培養で侵襲性アスペルギルス症を肺以外で診断できることがある.
3. 治療
 侵襲性アスペルギルス症はしばしば劇症型であり死に至る.早期の治療で多くの患者は助かる.予後は基礎疾患の状態に依存する.IDへのコンサルテーションが推奨される.
a. AMPH-B:伝統的に標準治療とされてきた.臨床家の多くは高用量(0.8-1.0mg/kg/d)を用い,反応が良くない場合には1.5mg/kg/dまで投与する場合もある.至適投与期間は明確にはされていないが,患者個々の重症度や免疫抑制の程度に応じて個別化されるべきである.腎障害がある場合や腎毒性のある薬剤を投与されている場合ではAMPHの脂溶製剤は使用できる.
b. ITCZ:侵襲性アスペルギルス症に対するITCZの研究ではAMPH-Bと同等の反応率であった.ITCZ 300mg1日2回で4日間その後200mg1日2回の治療法は,ITCZに干渉する可能性のある薬剤を受けていない患者ではAMPH-Bの代替となりうる.
c. ITCZまたはAMPH-B divを初期に投与し疾患が改善または安定したあとにはITCZ経口剤で長期にわたって継続できる場合がある.
d. caspofungin:echinocandin系抗真菌剤で初めての薬剤で,侵襲性アスペルギルス症の治療に際してAPMH-BもしくはITCZによる治療不成功例または不耐性のケースの場合でのFDAにより認可が下りた(初日に70mg div,二日目以降は50mg div).初期治療としては研究がなされていない.
e. voriconazole:侵襲性アスペルギルス症ではopen-label研究で認可されたtriazole系薬剤である.侵襲性アスペルギルス症に対して他の薬剤で不成功か不耐性である場合のVRCZでの治療ではCR/PRは50%以上であった.他のtriazole系では例えばposaconazoleはアスペルギルス種に対して非常に優れた発育抑制効果を示した.
f. 併用療法:侵襲性アスペルギルス症は単剤で治療された場合死亡率が非常に高いため,AMPH-Bとazole系またはflucytosineまたはRIFを併用した治療法が(in vitroまたは動物で)研究されている.caspofunginとITCZの併用は,少数例の侵襲性アスペルギルス症で有効であった.caspofunginと新規azole系(VRCZ,posaconazole)の併用も有望である.
g. ステロイドや細胞毒性性薬剤の減量:もし可能であれば,そのことで予後が改善される.
h. 外科的治療(切除):局所病変の患者の場合には有用かもしれない.
4. 早期の診断と積極的な治療,基礎疾患の寛解,骨髄抑制の回復により予後は改善する.治療への反応があった場合,好中球減少の解消が特に重要な要因である.
5. 生きながらえた後の化学療法
 侵襲性アスペルギルス症を乗り越えた患者は,後に化学治療を繰り返し骨髄抑制が生じた際に再燃のリスクにさらされる.研究によれば,過去に侵襲性アスペルギルス症に罹患した患者が後の化学療法中にアスペルギルス症の再燃に遭遇するのは50%以上という.化学療法を繰り返す患者の場合には,侵襲性アスペルギルス症を予防するために少なくとも48時間以上前にAMPH-B(1mg/kg/d)を開始し,好中球が回復するまで継続することが推奨されている.
E. アスペルギルス症の稀な病型
1. 心内膜炎:カンジダ心内膜炎に似る.人工弁患者に生じ,大きな尤贅が中サイズの血管の塞栓となる.血液培養が陽性となることは稀であるため,診断は困難である.治癒を目的とする場合,弁置換を早期に行うことが欠かせない.
2. アレルギー性アスペルギルス副鼻腔炎:アトピー歴のある若年者に起こる副鼻腔炎の一型として近年認識されるようになったものである.鼻ポリープと好酸球や真菌菌糸を含有した粘液物質が認められるのが一般的である.治療にはステロイドと外科的切除が必要である.

ノカルジア症

 ノカルジア症は,限局性または播種性の疾患で主にNocardia asteroidesにより生じ,少数例はNocardia brasiliensまたはNocardia caviaeにより生ずる.Nocardia種は健常人でも疾病を来すが日和見感染の原因として認識が高まってきている.真菌由来と思われてきたが細菌の高等種に分類され,Actinomycesに関連するとされている.

Ⅰ. 成長および性質
 Nocardia種はグラム陽性,好気性,弱抗酸性の桿菌でルーチンの細菌・真菌・抗酸菌培地から容易に分離される.通常コロニーは4日以内に発現するが2から4週間かかる場合もある.病原性は無いが成長が速い他の菌の影響によって分離困難な場合もある.臨床的にはnocardia症が疑われる場合,細菌学的検査室へはその旨伝達され,通常よりも長い期間培養される必要がある.グラム染色では繊細な分枝状で瘤状のフィラメントを有するグラム陽性である.Ziehl-Neelsen変法やKinyoun染色では弱抗酸性を示し,この特徴からActinomycesと鑑別可能である.しかし,Nocardiaの病理像は特有のものではないため診断確定には培養が不可欠である.
Ⅱ. 疫学と宿主要因
 Nocardiaは土壌寄屍植物?で世界中に分布する.N. brasiliensはしばしば原発性皮膚疾患を引き起こす.N. asteroides感染は主にこの微生物へ暴露された人の肺への吸引後に起こる.日和見病原体であり,白血病・リンパ腫・固形腫瘍・AIDS・ガンマグロブリン異常症・膠原病・慢性肉芽腫性疾患患者や臓器移植でステロイドや免疫抑制剤治療を受けている者は特に罹患しやすい.さらに,先行する肺疾患,特にCOPDや肺胞蛋白症がリスクファクターである.しかし約15%の患者は基礎疾患を有さない.
Ⅲ. 臨床像
 皮膚または皮下疾患の数例は皮膚への接着で発症するが,通常は肺から始まり,75%の患者は肺臓炎を呈する.血行性散布による二次性播種の多くはN. asteroidesによるものである.
A. 肺および全身性ノカルジア症は亜急性または慢性の経過をとり,数週から数ヶ月にわたる.重度の免疫抑制状態では劇症型の経過もとりうる.以前よりも肺病変は一般的である.鑑別困難な肺炎でLegionella pneumophila用に得られた検体からNocardiaが判明することもある.
1. 病像
 多くの症例で熱,寝汗,倦怠感,食欲不振,体重減少など本質的な症状が報告される.白血球増多が常にある訳ではない.
a. 肺所見:咳は乾性であることもあるが通常膿粘性の痰を伴う.喀血や胸痛の報告もある.CXR所見は変化に冨み非特異的である.限局性浸潤影が上葉にみられることが多い.単一または複数の結節,空洞,びまん性浸潤影,肺胞充満像,膿瘍,巨大塊,胸水の報告もある.
b. 中枢神経病変は25%の患者で報告がある.脳膿瘍である場合が多く,CTやMRIで疑われる.髄膜炎の報告もある.精神状態の変化,不安定性,頭痛,吐き気・嘔吐,けいれん,局所神経兆候も生じる.CSFの塗抹・培養ではNocardiaが証明されないため,脳生検が必要であろう.
c. 皮膚皮下膿瘍は約10%でみられる.
d. 胸水および胸壁浸潤は,近接する肺炎から生じ,約10%でみられる.患者は胸膜痛を訴え,瘻孔を呈することもある.胸水は感染性であることもあり,進展して膿胸を呈することもある.
e. 遠隔感染はほぼ全ての臓器で報告がある.
2. 診断
 ノカルジア症は,一般抗生物質に抵抗性の慢性肺炎の全ての症例で考慮する必要がある.特に日和見宿主で肺病変,中枢神経病変,皮膚病変が組み合わされた場合は特に疑わしい.
a. 痰または呼吸器検体:培養陽性ならdiagnosticだが,偽陰性が一般的である.胸腔穿刺,経気管吸引,肺吸引,肺生検などの侵襲性のある手技が必要な場合もある.
b. 血液培養はまれにしか陽性とならない.
c. 皮膚病変,副鼻腔,組織生検で得られた検体からの塗抹・培養は重要な(情報)源である.病理検査はsuggestiveだがdiagnosticには至らない.
d. 皮膚検査や血清検査は利用できない.
3. 治療
 sulfonamideベースのレジメンが最も有用であると証明されている.感染症医へのコンサルテーションを推奨する.
a. ST合剤:第1選択薬である.in vitroでの相乗効果,中枢神経系を含め組織移行が良好なこと,経口投与の利便性による.血清sulfa濃度を12-15mg/dLに維持するために血中濃度をモニターするべきである.
b. sulfonamide:単剤で効果がある.sulfonamide 8-12g/日を投与する.ピーク濃度を15mg/dL程度に維持するためモニターが必要である.
c. 耐性菌の場合や患者がsulfa剤に絶えられない場合は他レジメンが必要である.感受性検査が困難であり適切なラボで行われる必要である.MINO,DOXY,AMPC/CVAが効果的である.多くの株はAMKに感受性があり,sulfaレジメンや他のレジメンと併用するべきである.IPM/CSも代替薬である.
d. 治療期間ははっきり定まっていないが,多くの権威者は長期投与を推奨する.軽微な感染症や健常者の場合は最低2・3ヶ月だが,重症感染症例や免疫抑制状態では最長1年間が推奨される.専門家によっては,移植患者や継続して免疫抑制剤を使用している場合には再燃予防のための維持療法を推奨している.
e. 外科治療:膿瘍の場合,可能ならドレナージや切開を考慮する.
4. 予後
 死亡率は疾患部位や患者の基礎にある免疫抑制状態の重症度によって変化する.治療が早期に開始され血行性播種が生じる前であれば予後は改善される.中枢神経系病変を伴う場合は死亡率が最も高く,約40%である.孤立性肺病変(肺病変だけがあるもの)の場合,死亡率は10%から29%であり,被移植者や日和見患者ではより高率である.
B. N. asteroidesはラボで混入することは稀であり,喀痰で検出された場合は活動性疾患であることを示す.軽度上気道炎,気管支炎や無症候性患者でも喀痰培養で陽性であることもある.悪性疾患患者や免疫抑制患者の臨床検体から検出された場合は,即治療を開始する.他方,健常者で検出された場合は精査する必要があるが,侵襲性疾患の確たる証拠が無いのであれば直ちに治療を行わなければならないという訳ではない.感染症医へのコンサルテーションが推奨される.