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抗真菌剤

 表17.2:全身投与に使われれる抗真菌剤
 表17.3:毒性

Ⅰ. AMPH-B
 侵襲性真菌症に対して最も信頼性のある薬剤
A. mode of action:真菌細胞膜のergosterolに結合し,孔を開き細胞抗生物質の漏出を来す.そして細胞死に至る.
B. PK:実は良くわかっていない.消化管からの吸収は良くない.全身性疾患はivで治療する必要がある.代謝は生じず,排泄は胆道からである.
C. 分布:組織濃度がもっとも高いのは肝臓,脾臓,肺,腎臓である.髄液,耳下腺液,水溶性ホルモン,尿,透析液への移行は良くない.血漿濃度が高いからと言って治療がうまくいく訳ではない.
D. 至適レジメン,総投与量,総治療期間についてのコンセンサスはない.
 初期投与量を1mgとしこれを30分から1時間かけて投与する方法がある.患者は稀に血圧低下などの特異反応やアナフィラキシー反応を示すからである.
 5-10mg/dの漸増法,単回投与する方法などあり,筆者らは重症患者の場合にはfull-dose (e.g. 0.5mg/kg/日)をivし0.7-1.0まで増量して行く方法を好んでいる.1日最大量を50mgとすべきという専門家もいる.
 1日量を4時間かけて投与する方法もあり,筆者らは好んでいる.短時間投与のほうが有害事象の頻度が低いという意見もある.AMPH-Bはほ乳類の細胞内Kを放出させる作用があり,腎障害患者では重篤な高カリウム血症のリスクがある.
 血清Cr 2.5-3.0またはBUN 40以上では,減量したり,回復するまで中止したり隔日法に切り替える専門家が多い.腎機能が落ちても累積はしない(胆道排泄だから).腎毒性はあるが累積はしない.透析になったらfull dose.初期腎毒性は量依存性,後期腎毒性は投与量依存性.治療中止数ヶ月後には正常に戻る例が多いが不可逆性の場合もある.投与前に生食を投与(500-1000mLを1〜2時間前に投与)すると腎毒性発生率を低減できるかもしれない.
 局所投与はcoccidioidal meningitisや難治性のcryptococcal meningitisで適応がある.
E. 毒性
1. 発熱,振えの副作用:投与開始後最初の1週間に出現することが一般的でやがて消失する.AMPH-Bにより単核球からIL-1やTNFが放出されることによる.プロスタグランジンE2の放出を続発する.視床下部の熱閾値をかえてしまう.acetoaminophen(成人では650mgを経口で),diphenhydramine hydrochloride(ベナドリル),meperidineをAMPH-Bの投与前30分に予防投与する向きもある.筆者らはルーチンには投与しないが,初回投与時に生じた場合には2回目以降では予防投与する.ibuprofen(10mg/kgの単回投与)も有用である.hydrocortisone 25-50mg ivを併用することもあり有用であるが,ステロイドを単独で使用することは推奨できない.
2. 食欲不振,吐き気,嘔吐が出ることも一般的だが,次第に軽減される.
3. 腎毒性:主要なdose limiting factor.早期毒性は用量依存性だが,後期毒性は総量依存性である.治療中止後数ヶ月で正常に回復することが一般的だが,不可逆性の場合もある.治療初期には隔日にモニターすべきである.安定している場合や在宅投与を受けている場合でも血清クレアチニンとカリウムを週に2,3回は検査する.円柱尿やRTAは投与量の調整の指標にはならないが,腎障害の予測にはなる.
 投与前に生食を投与すると腎障害を減じることが出来るかもしれない.もしくは塩分摂取を継続してもよいかもしれない.塩分負荷が差し支えない場合には筆者らは500mL-1000mLの生食を1-2時間で投与している.
4. 貧血:75%で生じる.EPO産生抑制と骨髄抑制による.白血球減少,血小板減少は稀.
5. 低カリウム血症はRTAにより生ずる.約25%.低マグネシウム血症も生じる.
6. 血管炎:一般的.AMPH-B濃度が0.1mg/mLを超えないようにすると予防しうる.ヘパリン同時投与もよい.
7. 重篤な肺障害:急性の呼吸困難,低酸素血症,間質性浸潤影がAMPH-B投与やWBC輸血で報告されている.AMPH-BにしろWBC輸血にしろ,間隔は長い方がよい.
8. 生食負荷,プレメディが事前に印刷された用紙,日毎の投与量と総投与量,血清クレアチニンや他の治療が記録できるフロー・シートを用意している施設もある.
F. 妊娠:胎児への影響はない.
G. 併用療法:flucytosineとの併用は相乗効果がある.殊に非AIDSでのクリプトコッカスの場合である.他の薬剤での併用効果については有望だが,動物実験での話である.
H.  好中球減少下での遷延性の発熱に対して.慎重に診察し検査をフォローしてもフォーカスがつかめないことが多いうえ,広域抗生剤を投与しても熱は遷延する.播種性真菌感染症の早期診断は困難であるため,抗真菌剤の全身投与も考慮すべきである.広域抗生剤投与にも関わらず熱が5-7日続き,血液培養が陰性であれば白血球減少から回復するまでAMPH-B 0.5mg/kg/日を開始する.入院中の重症患者ではもっと早く開始する場合もある.AMPH-Bに引き続いてFLCZを投与することについては前向き研究で確立した.
I. コストについては表17.4を参照

Ⅱ. AMPH-B脂溶製剤
従来のAMPH-Bでは有害事象がもとで投与量が制限されることが多い.リポソーム工法によるDDSで全身的な毒性を増さずに臓器へのAMPH-B高濃度を実現できている.脂溶製剤は3つある.
A. 治療指標改善のメカニズム
1. 毒性を軽減しつつ効果を増強するメカニズムについてはわかっていないが,
a. 真菌感染の主な部位であるマクロファージへ高濃度で到達する.
b. 組織マクロファージへ速やかに取り込まれるため,大量投与による腎障害を回避できる.
c. 脂肪から真菌細胞膜への伝達が選択的.
d. in vitroのデータでは,感染によるサイトカイン放出を惹起せず,従来のAMPH-Bと同程度である.
B. 薬物動態
 研究は少数.従来のdeoxycholate-AMPH-Bとの効果の比較もない.臨床効果や毒性がどのように変わっていくかは未知数.
C. 適応と投与量
1. ABLC:AMPH-Bに不耐性か難治性の侵襲性真菌感染症に承認されている.
2. L-AMB:有熱性好中球減少症で真菌感染症が疑われる場合のエンピリック治療に承認されている.AMPH-Bに不耐性か難治性の重症真菌感染症に承認されている.推奨投与量は3-5mg/kg/日である
3. ABCD:AMPH-Bに不耐性か治療不成功例の侵襲性アスペルギルス症に対して承認されている.
D. 効果と毒性
1. 前向き,無作為抽出臨床研究はないが,これまでのデータから脂溶製剤はAMPH-Bより腎毒性がきわめて少ない.注射に関連した毒性もやはりあるが,L-AMBが最も軽微である.ABLCとABCDは,L-AMBとAMPH-Bの中間くらいである.
2. 効果は同等である.腎毒性が少なくより高用量を投与できれば,治療上有利である.
3. 日和見宿主では侵襲性アスペルギルス症・ムコール症は死亡率が高いことから,実際の臨床ではL-AMBの大量投与で治療を開始することになる.
4. コストの点から今のところは他の抗真菌薬で治療がうまくいかなかった症例や耐えられなかった症例,あるいはAMPH-Bで腎障害を生ずるリスクが高い症例への代替薬の位置づけである.

Ⅲ. Flucytosine (5-FC)
 C. neoformans,Candida種,Torulopsis種に活性があるが,耐性が増加している.
 5-fluorouracilと5-fluor-2-deoxyuredylic acidに変換され,RNAとDNAの機能を阻害する.
 体液のある空間への分布は良好.特にCSFでは血清濃度の60-80%に達する.
 排泄:90%は代謝されずに尿に排泄される.腎機能が落ちていると集積される.肝機能障害では影響ない.蛋白結合はわずか.透析や腹膜透析で除去される.
 経口剤の吸収は良好(90%<)で経口剤のみ.
 腎機能正常では12.5-37.5mg/kgを6時間毎だが,専門医の多くは最大量を100mg/日とすることを推奨する.
 腎障害時には減量する.血中濃度をモニターしながら調節する.100μg/mL未満とするが推奨は40-60である.Stammらはノモグラムを作成した.表17.5を参照すること.

 毒性は多くの場合,血中濃度が100を超えた場合に生ずる.
  肝障害:5-7%.無症候性が多く可逆性.致死的肝壊死の報告もあり,毎週肝酵素はチェックする.
  白血球減少と血小板減少:骨髄障害の既往がある場合に出やすい.AIDSでクリプトコッカス髄膜炎の治療にAMPH-Bと併用して5-FCを投与する場合によく生じた.そのため,AIDSのクリプトコッカス髄膜炎の場合にはAMPH-B単独で治療する.一方で,5-FCと併用した方が過度の毒性なく予後もよいという研究もある.AIDSのクリプトコッカス髄膜炎ではFLCZとの併用で良好な成績である.
  消化管:軽微な下痢が多いが重症化する場合もある
  催奇形性:動物実験では催奇形性があるため,妊婦では有用性が胎児への危険性を上回る場合にのみ使用する.
  授乳:母乳中に排泄されるかどうかはわかっていないので,5-FCを投与された場合には授乳を中断する.
F. 併用療法
 CandidaとCryptococcusの多くは5-FCに感受性があるが,重症感染症に単剤で使用する機会が増えるにつれ耐性が広がっている.AMPH-Bと併用することで,in vitroでもin vivoでもCandidaおよびCryptococcusに対して相加・相乗効果を有する.相加効果あるということは,AMPH-Bの投与量を減らすことが出来るということであり,毒性を少なくすることにつながる.残念ながら,AMPH-Bは5-FCの腎排泄を障害し5-FCの毒性を増す.そのため,特にAMPH-Bと併用する場合には5-FC血中濃度を測定しなければならない.併用療法はクリプトコッカス髄膜炎と時に全身性カンジダ症に頻繁に推奨される.
G. コスト

Ⅳ. アゾール
 アゾール系は全身性真菌感染症に対するAMPH-Bの代替薬で,安全で効果的.表在性感染症の局所治療としても有用.窒素分子の数によって分類される.5-membered zole ringはimidazole (miconazole,ketoconazole)またはtriazole (itraconazole,fluconazole)である.アゾール系は同一のメカニズムで真菌活性を発揮する.真菌細胞膜の主なステロールであるエルゴステロールの生合成を,cytochrome P450依存性真菌酵素であるC-14 lanosterol demethylaseへの干渉を介して,阻害する.膜透過性が変化して細胞生育と複製を阻害する.残念ながら,アゾール系はほ乳類のcytochrome P450系依存性の酵素に作用し,このことで重大な障害や薬物相互反応を生じる.triazoleはimidazoleに比べ,ほ乳類のcytochrome P450酵素へよりも真菌のcytochrome P450酵素に対しての親和性が高く,毒性と薬物相互作用がより小さい.
C. Fluconazole
 bis-triazole.カンジダ感染症,AIDS患者のクリプトコッカス髄膜炎の一部の初期治療および予防に用いられる.ivまたはpo製剤あり.
1. 薬物動態
  消化管からの吸収は優れており(90%<),iv投与の場合と同等.吸収に際して胃酸は必要ない.H2-blockerの併用で吸収は低下しない.
  代謝は受けず,80%はそのままの形で腎から排泄される.腎不全でも減量の必要はない.
  尿中濃度は高い.尿路カンジダ症にも効果がある.
  CSFへの移行も良い.血清レベルの60-80%である.痰,唾液,水晶体への移行も良い.
  薬物動態は若年者と高齢者で同等である.
2. 臨床用途
  AIDS患者のクリプトコッカス髄膜炎の初期治療と維持療法の両方に有用であることが証明されている.しかし,重症者,意識障害を伴っている患者,予後見通しの悪い患者ではAMPH-Bが選択され,患者が落ち着きCSFパラメータが改善した後の治療としてはFLCZでもよい.AIDS患者での維持療法としては経口剤で200-400mg/日が選択される.
  日和見患者の口腔咽頭カンジダ症および食道カンジダ症の治療にも有効.
  膣カンジダ症のマネージメントではルーチン使用は推奨されない.局所治療がうまくいかなかった場合や再発を繰り返す場合には有効かもしれない.
  カンジダ血症や全身性カンジダ症患者の治療にFLCZを用いることについては議論が残る.しかし,最近の研究では,好中球減少がある場合もない場合も,これらの症候群の治療にFLCZを用いてAMPH-Bと同等の効果だったとするものもある.
  骨髄移植時の予防投与でも良好な成績.しかし,FLCZ耐性のCandida kruseiの報告もみられる.AIDS患者の多くは継続的にもしくは断続的に長期にわたってFLCZが投与されており,また世界的に使用されているため,FLCZ耐性も増加してきている.
  coccidiodomycosis,histoplasmosis,blastomycosis,sporotricosis治療にFLCZを使用のする際の役割は検討段階.以前の研究では,FLCZはcoccidioidal meningitis治療に有用であった.
  肝脾カンジダ症もFLCZに(良好に)反応する.
3. 投与量
  経口でも吸収が良いので,経口投与量と経静脈投与量は同じ.消化管運動が障害されている場合や経鼻胃管で吸引されている場合はivが選択される.懸濁液もよい.
  口腔咽頭カンジダ症では,初日200mg,以降は100mgを感染がなくなるまで.数日以内に反応することが多く1週間以上の治療は不要.AIDS患者では頻繁に再燃することが知られており,このような場合維持療法が有効.1週間に1回100mgで多くの場合再燃を予防できる.
  食道カンジダ症では,初日200mg,二日目以降100mg.最大400mgが必要な場合もある.最低2週間治療する.
  全身性カンジダ症またはカンジダ血症では,最近出た二つの無作為抽出試験によると,好中球減少下にはない場合はFLCZ 400mgでAMPH-Bと同等のアウトカムであった.C. kruseiのようなnon-albicans種のいくつかではFLCZに耐性があるため,このような場合にはAMPH-Bが使用される必要がある.
  クリプトコッカス髄膜炎:AIDS患者での再燃防止には,経口で200mg/日.
    AIDS患者のクリプトコッカス髄膜炎の初期治療では,初日に400mg,次いで低リスク患者では200-400mg/日.専門家の多くは当初はAMPH-Bで,その後FLCZという治療を推奨する.
    HIV陰性者のクリプトコッカス髄膜炎でFLCZが適切かどうかについては明確にはなっていない.
  腎不全患者では投与量を減らす.loading doseを投与した後は減量する.Ccr 50<では通常量,Ccr 21-50では半分量,Ccr 11-20では1/4量.維持透析中の患者では,透析後に通常量を投与する.
  iv FLCZは経口投与が出来ない場合に用いられる.血清濃度は経口の場合と同程度なので,それ以外にivの利点は特にない.
  妊娠:適切な研究がない.益が害を上回る場合にのみ使用すること.
  授乳:乳中中濃度は血清中濃度と同等であるため,授乳中婦人の服用は推奨しない.
4. 有害事象
  低頻度だが,毒性はAIDS患者で報告されている.皮疹,吐き気と嘔吐,Stevens-Johnson症候群,肝毒性.副腎でのステロイド合成に影響するがketoconazoleほどではない.インポテンス,女性化乳房,月経異常(無月経)が稀だが報告されている.
5. 薬物相互作用
  頻度は少ない.ketoconazoleほど多くはない.
  RIF;FLCZ濃度を下げる.
  ワーファリン,フェニトイン,RBT,CsA;FLCZによる増加.PT測定や血中濃度測定が重要.
  FLCZとterfenadine,astemizoleとの相互作用は十分研究されていない.データがそろうまでは併用はさけるべき.cisaprideにも干渉する.
6. コスト;高価である.
D. Itraconazole
 もともとは真菌感染症の全身的投与用に発売された経口剤であったが,β-cyclodextrinで処理を施しivで投与できるようになった.原発性histoplasma症およびblastomycosis症の治療用に認可され,現在は侵襲性アスペルギルス症にも認可されている.
1. 薬物動態
  カプセルの空腹時の吸収は30-40%である.生物活性は食事によって著しく増強されるため,食事とともに服用するのが良い.胃酸で増強され,制酸剤で減弱する.
  経口剤は空腹時での吸収がよく,また酸の影響を受けない.
  蛋白結合率が高く(99.8%),CSF移行性は皆無.
  脂質親和性が高く,組織濃度は血清濃度を上回る.皮膚,爪にも移行し,半減期は血清中より組織中の方が長い.
  過剰な肝代謝が生じ,しかし代謝物の大部分も抗真菌活性を有し,1%未満が尿中に排泄される.
  腎不全,透析,腹膜透析は血清濃度に影響しない.しかし,iv中のβ-cyclodextrinは腎臓より排泄される.
2. 臨床応用
  histoplasma,blastomycosisの治療に認可されており,アスペルギルス症では代替薬である.
  in vitroでは幅広い抗真菌活性を有し,Candida種,C. immitis,S. schenckii,C. neoformans,Aspergillus種に活性がある.
  慢性皮膚爪真菌感染症の一部の治療に有用.
3. 投与量
  食事と一緒に接種する必要がある.iv製剤は経口摂取不能の患者でよい.200mg/日以上では分割投与する.
  histoplasma,blastomycosisでは200mgでも400mg/日でも治療成績は同じという結果が出た.治療抵抗性の場合は100mgずつ増量し最大400mg/日とする.最短6ヶ月間の治療が推奨されているが,histoplasma症ではしばしば1年以上必要な場合がある.
  アスペルギルス症では,肺および肺外アスペルギルス症でAMPH-Bに抵抗性の患者での効果があとになって証明された.200mg1日3回をloading doseとして(重症では3日間),200-400mg/日で治療する.ABPA,mycetomaの治療にも用いる.
  FDAはsporotrichosisの治療にも認可したが,ヨウ化カリウムの代替薬として有用である.皮膚型もしくは皮膚リンパ型では通常量は200mg/日で3-6ヶ月間投与する.高用量(200mgを1日2回)は骨・関節感染症や肺感染症に用いる.
  小児用量:小児での安全性および有用性は証明されていない.
  腎不全:腎不全での投与量の調節は必要ない.透析でも腹膜透析でも血清濃度は変化しない.β-cyclodextrinを含有するiv製剤は腎で排泄されるため,腎不全では投与量を調節する.Ccr 30mL/min未満ではiv ITCZは使用すべきではない.
4. 毒性
  200-400mg/日の推奨量では認容性は十分ある.毒性の報告は600mgを超えた場合がほとんどである.
  吐き気・嘔吐:10%みられるが,中止する必要はない.夕食時に投薬したり,均等二分割するとよい.
  肝機能障害は軽微で一過性.
  稀なものとしては掻痒感,皮疹,頭痛,高血圧,低カリウム,足底浮腫,うっ血性心不全.インポテンツは通常一過性.600mg未満では副腎のステロイド産生には影響しない.
5. 薬物相互採用
  ketoconazoleと比べ,肝microsomal enzyme阻害能は低い.
  制酸剤,PPI,H2RAは血清濃度を下げる.
  RIF,PHTは代謝を誘導し濃度を下げる.CBZ(carbamazepine),PBT(phenobarbital)も下げる.
  terfenadine,astemizoleとの併用は禁忌.QT延長や致死性の心室性不整脈を誘発する.cisaprideも同様.
  CsA,digoxin,PHTの濃度を上昇させる.
  ワーファリンの抗凝固活性は増強される.
  SU剤の血糖降下作用は増強される.
6. 妊娠:ラットでは催奇形性あり.乳汁中にも排泄される.
7. コスト:高価な薬剤

E. Voriconazole
 侵襲性アスペルギルス症に認可.Scedosporium apiospermum(Pseudallescheria boydiiの無性型),Fusarium種による重症感染症で他の薬剤に認容性のないものにも認可.他の病原性真菌,Candida種,Cryptococcus種,Dermatophyte種など,多くに活性がある.経口でもivでも投与可.有害事象も少ないが,視覚障害を訴えることが多く,また肝障害も報告がある.
1. 薬物動態
  VRCZはCNSを含む組織移行性が良好.肝臓で代謝され代謝物は腎臓から排泄される.薬物動態は直線的ではない.
  経口剤(50/200mg)の生物活性はヒトでは96%,最高血中濃度は経口投与後2時間.他の特性はiv製剤とpo製剤で同等.
  iv製剤にはsulfobutyl ether β-cyclodextrinを含有する.dextrinは腎から排泄されず,腎不全患者では蓄積する.腎不全患者では投与量の調節が必要.
  血中の58%は蛋白と結合している.
  体内分布は速い.4.6/mg.CSF濃度は血清と同時に測定した場合には30%-68%.
  肝臓でcytochrome P450酵素系により代謝される.代謝の飽和度によるため代謝は直線的ではない.肝不全では投与量の調節が必要.
  loading doseが投与された場合,最初の24時間でピーク濃度に達すし安定レベルに至る.
2. 臨床応用
  侵襲性アスペルギルス症では初期治療およびサルベージ治療のいずれにも認可されている.初期治療としては,反応率 53%である(AMPH-Bでは32%).
  症例コホートは少数だが,Scedosporium apiospermumおよびFusarium種では63%,43%と良好な成績である.
  将来的には侵襲性カンジダ症,カンジダ血症の治療薬として,また,有熱性好中球減少症でのAMPHに替わる薬剤かもしれない.
3. 投与量
  初日にはloading doseを投与し血漿濃度を定常状態近くに持っていく.loading doseは6mg/kgを12時間あけて2回投与する.
  維持量:4mg/kg q 12hr.ivで開始されたら経口に切り替える.経口の場合,体重40kg以上なら200mg q 12hr,40kg未満なら100mg q 12hr.
  肝不全では投与量調節が必要.loadig doseは同じだが,維持量は中等度肝不全(Child-Pugh "A" or "B")なら50%とする.重度の肝不全(Child-Pugh "C")では検討されていない.
  腎不全:経口剤は影響を受けないので投与量調節は不要.対照的に,iv製剤中のsulfobutyl ether β-cyclodextrinは中等症以上の腎不全(<50mL/min)では蓄積していく.透析で,VRCZは除去されるがsulfobutyl ether β-cyclodextrinは除去されない.
4. 毒性
  主要なものは視覚障害,皮膚反応,肝酵素上昇.
  視覚障害は臨床試験では30%に出た.機序は不明だが,網膜に直接作用してるらしい.また,濃度と投与量に関連しているようである.軽微で一過性.中止しないといけないケースは稀.幻覚は4%.
  皮膚反応は6%.日光過敏.多くは軽微.
  著明な肝酵素上昇は13.4%.量の調節をしてもしなくても治療をしている間に改善する.治療開始時点と治療中はルーチンに検査する.
5. 薬物相互作用
  肝で代謝を受ける.cytochrome P450系で代謝される薬物が相互作用する.
  VRCZは以下の薬物の濃度を上げる(ので併用禁忌);sirolimus,terfenadine,astemizole,cisapride,pimozide,quinidine,ergot alkaloids
  VRCZは,多分以下の濃度を下げる;carbamazepine,長時間作動型barbiturates
  VRCZは以下の薬物の活性をあげる(禁忌ではない);CsA,tacrolimus,warfarin,statins,benzodiazepines,Ca-blockers,SU剤,vinca alkaloids
  VRCZは以下の併用で自身の血清/組織濃度が下がる;RIF,Rifabutin,PHT. 重症感染症では併用をさけるべき.
  VRCZは以下の薬物とは相互作用が全くないかほとんどない;cimetidine,ranitidine,digoxin,macrolide,indinavir
  妊婦への安全性はカテゴリー"D".
  小児への使用経験はまだこれからだが期待が持てるかもしれない.しかし,安全性についても確立していない.

Ⅴ. Echinocandin
 真菌細胞壁全体の構成成分であるB-(1,3)-d-glucan合成を阻害する.caspofunginが最初に上市されたが,現在のところ他剤に不耐性か難治性の侵襲性アスペルギルス症にしか適応がない.Candida種に対してはin vitro/in vivoともに優秀な抗真菌活性を有しているため,侵襲性カンジダ症やカンジダ血症の治療では突出した役割を担うようになるかもしれない.caspofunginはin vitroでもin vivoでもC. neoformansやMucor種に対しては全くまたはほとんど活性がない.
A. 薬物動態
  caspofunginは唯一のiv製剤で,アルブミンとの結合は97%,hydroxylationとN-acetylationによってゆっくり代謝される.そのため肝不全時には投与量の調節が必要.
  腎不全時,投与量調節は不要.透析されない.透析後の補充投与も不要.
B. 臨床応用
  caspofunginは,他剤(AMPH-B,liposomal AMPH,ITCZ)に不耐性または難治性の侵襲性アスペルギルス症にのみ適応がある.caspofunginを第1選択とした臨床研究はまだ終わっていない.AIDS患者での播種性カンジダ症や難治性カンジダ食道炎での観察からは,本薬剤の有用性がまもなく証明されるはず.
  caspofunginは,in vitroではA. fumigatusおよびA. flavis,A. tereusに良好な活性を示した.
  不耐性もしくは難治性侵襲性アスペルギルス症の69人を対症としたopen-labelの非比較試験では,63人がクライテリアに合致し,転帰のデータが得られた.少なくとも41%が良好な結果を得た.7日以上投与を受けた患者のうち50%は良好な反応だった.前治療に不耐性のケースでは70%が良好な転帰,前治療に難治性の場合には36%が良好な転帰だった.
  caspofunginとITCZの併用療法は,単剤治療で不成功だった侵襲性アスペルギルス症の治療でよい結果だった.免疫抑制状態が遷延している患者では,併用療法が重要であると筆者らは考えている.
C. 投与量
  侵襲性アスペルギルス症では70mg iv(div)を初日に投与し,二日目以降は50mg/日.データ数は少ないが70mg/日でも認容性はある.70mg/日以上は安全性と効果についての評価中.
  腎不全;投与量調節は必要ない.
  肝不全;軽度の肝不全(Child-Pugh "A")では量調節は不要.中等度の肝不全(Child-Pugh "B")では(初回投与70mgをloadingしたあとの)毎日量を35mgに減量する.Child-Pugh "C"の高度の肝不全では使用経験がない.

D. 毒性
  50-70mgの推奨量ではほとんど問題ない
  投与中のヒスタミン症状の報告あり.皮疹,顔面腫脹,掻痒感,あったかい感じ.稀だがアナフィラキシーも.
  発熱,皮疹,吐き気,嘔吐,注射部位の血管炎
  caspofunginとCsAを同時期に併用して肝酵素上昇
E. 薬物相互作用
  cytochrome P450系の酵素を何ら阻害しない.また,他の薬剤のCYP3A4代謝を誘導しない.
  肝臓のcytochrome P450系で代謝されないが,他剤との併用で広範囲に肝酵素系を活性化するため,caspofungin自身の代謝が加速される.臨床試験では有害事象として結果が残る.efavirenz(Sustiva),nelfinavir(Viracept),PHT,DEXA,RIF,CBZと併用する場合,caspofunginを増量する場合は注意を要する.
  caspofunginを同時併用すると,tacrolimusは約25%濃度が下がる.
F. その他考慮すべきこと
  妊婦に対してはカテゴリー"C".
  小児への使用の安全性については確立していない.