Spontaneous rupture of hepatocellular carcinoma(肝細胞癌自然破裂)


腹部エコーにて内部不均一なHigh ecohic massを認め、肝表面にはわずかながら腹水の貯留が認められました。
肝細胞癌(HCC)のspontaneous ruptureを疑い、他院へ紹介しました。
転院先にて行った腹部造影CTにても、中心部が壊死と思われる低吸収域を示し、動脈相にてやや高吸収域、
門脈相にてモザイクパターンを示す腫瘤影が見られ、肝細胞癌の診断となりました。
バイタルサインが落ち着いていたので、翌日に血管造影と肝動脈塞栓術が行われました。

肝細胞癌の自然破裂は決して稀ではなく、1991年の日本からの報告ではHCCの死亡原因の10%程度を占めると
報告されていますが、近年の診断技術の進歩により、早期のstageにてHCCが発見されるようになってきた
ため、その頻度は減少傾向にあるようです。

症状は、多くが突然の心窩部痛や右上腹部痛で発症。HCCが見つかる初発症状となることも多く、病歴上、
本症例のように軽い打撲や体動があるケースも存在するそうです。
診断は腹部超音波やCTが有効で、超音波では高エコー域として,破裂部位が描出されることが多く、また
腹水の証明も大事な所見です。--血清腹水(hemoperitoneum)
血管造影も診断に有用で、継続して治療まで行えるというメリットがあります。
治療は・全身的保存的治療---輸液や輸血、ショックへの対応
   ・肝動脈塞栓術  Transcatheter arterial embolization(TAE)
            肝機能の悪い患者も適応となるので1st choice
   ・肝切除術    肝機能が良い患者で、単発性ならば適応。 
                            (以上Bri J Sur;1996,83,602-より抜粋)

ちなみに本例はHBs-Ag陽性でした。

                                 9/22/2000  久松・松木薗
最終更新:2006年08月29日 02:02
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