千坂ちずな/きずな(せんざかちずな/きずな)


『現世への執着』

義理の姉と自分を殺した相手に復讐する為

キャラクター設定

異能殺人者集団・裸繰埜一族に所属する少女。
14歳ながら正体不明の殺し屋として暗躍する、裸繰埜実働隊の1人である。
2人の人格を所有する多重人格者。身長145センチ、体重は秘密。
ちずなが本来の人格で、日常生活の大半はこちらが担当している。産まれついての魔人。
髪色は白く、毛先が肩に届く程度のおかっぱ頭。
陰鬱な雰囲気を宿す瞳を持つ。一人称は『私』。 ややぶっきらぼうな喋り方で、限られた人物以外に心を開く事は無い。
頭部を除く全身に無数の傷がある。これらの殆どは母親の虐待によって付けられた物。
ちずなの人間不信と白髪化、そしてきずなが産み出された原因でもある。

きずなは殺人や戦闘を請け負う。
声はちずなよりも少し高く、幼い。
きずなの年齢が産み出された10歳当時から成長していない為。
普段は敬語を使って話し、ある程度の会話も可能だが、
母親の幻影を見ている間はあどけない子供の口調になる。
一族から殺しの技術や知識を叩き込まれている事に加えて、後述の身体能力を
兼ね備えている為、その戦闘力は極めて高い。
外見や一人称はちずなとほぼ変わらない。

桁外れの怪力と頑丈さを兼ね備えた魔人で、特にきずなは車1台を片手で持ち上げ、
心臓や肺を弾丸で撃ち抜かれても数分は戦闘可能な程の生命力を誇る。

ちずなは幼少の頃から母親に壮絶な虐待を受けて育った。
虐待は精神、肉体を問わずありとあらゆる手法で行われたが、
『商品』としての価値が下がる為、顔にだけは手を出されなかった
そうした苦痛から逃れる為にちずなが無意識に産み出した人格がきずなである。
きずなは苦痛を快楽へ変換する術を持っており、
母親の暴力は愛情表現であると考える事で精神の均衡を保っていたのだ。

しかしある時、行為の最中に聞こえて来た母親の一言で、
自分の解釈が間違いであったという事実を悟ってしまう。
混乱したきずなは自分も愛情を表現する必要があると思い込み、
その夜母親を能力で取り出したハンマーによって滅多打ちにし、殺害後逃亡。
それから間も無く裸繰埜一族の少女から声をかけられ、
その言葉に感銘したちずなは一族の仲間となる事を承諾した。

それから4年後、とある理由からその少女が身内に粛清された事を知り、
錯乱状態に陥る。
冷静さを欠いたまま半ば衝動的に粛清を行った人物へ挑むが、

奮闘空しく返り討ちにあってしまう。
死後その魂は地獄へ堕ちたが、仇人への恨みは些かも衰えず、
現世に戻って復讐を遂げる為に今回の戦いへ身を投じる事となった。
1度死亡した事、そして仇人に受けた攻撃の副作用によって、
2人の人格の境界線は極めて曖昧な状態になっている。

特殊能力『震える舌/天国まで百マイル』


能力はいずれも非公開。

『震える舌』

ちずなの魔人能力。
彼女の声を聞いた者の気力や精気を徐々に奪い、暗い気持ちにさせていく能力。
普通の人間ならば毎日30分の会話を1ヵ月程続ければ自殺を図る程度の効力を持つ。
無論戦闘においては殆ど役に立たない。
人間にしか効かないという制約がある。

『天国まで百マイル』

きずなの魔人能力。
簡単に言えば自分の傷口から武器を取り出せる能力である。
どう取り出そうとしても傷口の幅を超える武器や、現実に存在しない物質で出来た武器、
あるいは現代技術では作成不可能な武器等は取り出せない。
また武器として使用するのに無理のある物も取り出せない(楽器や通信機、食物、衣類など)。
傷の深さと武器の強力さは比例し、かすり傷程度ではカッターナイフぐらい。
胴体に拳大の穴が空いたとするとチェーンソー等も召喚可能。

プロローグSS

「標的の顔は覚えたか?」

ルームミラー越しに少女の横顔を見やりながら志波相馬は尋ねた。
流星のように光の線を描く街灯を眺めていたちずなは、気だるさを含んだ声色で答える。

「覚えたよ。当たり前でしょそんな事、初めてじゃないんだから」
「へっへ、まァそうなんだがよ、今回はそれなりに大物だからなァ。
 万が一の間違いがあっちゃ困るンだよ」
「……どっちみち、やるのはきずなだから。私に言ったってしょうがないよ」
「ちゃんと写真見たのかって確認だよ。そんなプリプリすんなってェ、お肌に悪ィぞ」

ひひひ、という下品な笑い声を無視して、ちずなはパーカーのフードを被ると
ドアウィンドウの溝に肘を置き、頬杖を付いて目を閉じた。
意識がゆっくりとまどろみ、闇へ沈んでいく。
胸の奥底から、もう一人の自分がこちらを見上げていた。

「……悪いな」

相馬の呟きは、既にちずなの耳には届いていなかった。





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浅い眠りから目を覚ますと、車は既に目的地に到着していた。
歩道越しにやや古ぼけた風貌のビルが明滅する電灯に照らされ、夜闇の中に佇んでいる。

「起きたな、準備良いか?」
「……はい」

少女はフードを脱ぎ、眠気を覚ますように二、三度顔を振った。
その声は先程までよりも僅かに高い。

「ま、やる事ァいつもと同じだ。標的とよろしくやる必要は無い、が」
「楽しみの一つですから」
「だろうな。だがイチャコラすんのはオヤジだけにしとけよ。
 邪魔が入ると面倒だからな」

相馬は解り切った風に肩を竦めて忠告した。

「じゃあ、気をつけてな」
「はい、行ってきます」

登校前の親子じみた緊張感の無い受け答えを交わし、少女は車外へ降りた。
涼やかな夜風が通りを吹き抜け、肩まで伸びた白髪を揺らす。
どことなく不気味な雰囲気を纏うビルを一瞥すると、
きずなは迷いの無い足取りでその入り口へ向かった。
自動ドアを通ってエントランスに入ると、黒服の男達が一斉に視線を向けた。
その内の1人がおもむろに進み出て、

「何の御用でしょう」

と威圧的に質問した。
当然、標的は今夜この少女が尋ねて来る事を知っている。自分で呼んだのだ。
よってこの質問は『関係者』である事を確認する為の形式的なものである。
きずなは僅かに殺気を孕んだ男達の視線に動じる事も無く、
緩やかな笑みを浮かべて言った。

「チェリーパイをお届けに参りました」

その言葉を聞いた黒服は頷くと、断りを入れてからボディチェックを始めた。
ふとスカートの裾から覗く素足が目に入り、男は僅かに眉を顰めた。
衣服に隠れていない部分の肌には大小無数の傷跡が刻まれていて、
その種類も切創、裂創、刺創、熱傷等と数え切れぬ程だ。
男の胸中に一瞬沸き起こった不快感はその傷の酷さによるものでは無く、
己が雇い主の性癖に対して抱いたものであった。

「お兄さん達も一緒に遊びますか?」

少女の悪戯っぽい問いかけを、黒服は完全に無視した。
危険物を所持していない事を確かめると、黒服は立ち上がって少女を奥の廊下へ促す。

「あ、そうだ」

それに従って歩きかけたきずなは、ふと思い出したように足を止めた。
男達が訝しげな視線を送る。
きずなはくるりと身を翻すと、唐突にぺこりとお辞儀した。
その正面に立つ黒服の眉根が不審げに寄る。
「そういえば寄り道しちゃダメって言われてたんでした。
 だからどの道お兄さん達とは遊べなかったですね、ごめんなさい」

直角に体を折り曲げたまま訳の解らぬ言葉を吐く少女を見つめる黒服。
垂れ下がる白髪と頭頂部の小さな旋毛。
それが彼の見た最後の光景となった。





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フィルターが焦げそうな程短くなった煙草を灰皿に押し付けると、
相馬はパワーウィンドウを上げ、よれた上着の内ポケットから携帯電話を取り出した。
どこへダイヤルする事も無くそのまま耳に当て、話を切り出す。

「あーもしもし、聞こえてるか?」
『アイアイ、聞こえてるヨ』

何かを咀嚼する音と共に、若い女の声が聞こえてきた。

「お前このタイミングで飯食ってンなよ……あいつの方はどうなってる?」
『エー、もう接触してるヨ。オーソドックスに鞭でビシバシされてから、今ご奉仕中』
「へいへい、じゃあそろそろだな。くれぐれも人払いには気ィ使ってくれな」
『オーライ、明日はシーだからさっさと終わらせようネ。お土産はソーマ持ちネ』
「お前の方が金持ってンだろうがボケ。取り合えず俺も出るから今から話しかけンなよ」
『ラッジャー、ケチンボ』

陽気な悪態を聞き流して携帯をしまうと、相馬は車を降りてキーをロックした。
新しい煙草を一本取り出して咥え、鼻歌を唄いながらホテルのドアを潜った。
煙草の芳香に紛れて、鉄と汚物の臭いが鼻を突く。

「おーおーこれはまた……派手にやりやがった」

白い煙を吐き出しながら独りごちる。エントランスは血の海と化していた。
犠牲となったのは待機していた黒服達だ。
ある者は壁に叩き付けられて染みとなり、ある者は横薙ぎに腹を抉られ、
またある者は胸骨ごと心臓を握り潰されている。
いずれも人の原型を留めぬ程に破壊し尽くされていた。
当然、標的に怪しまれない為には返り血を浴びる事など許されない。

「あのガキもやるようになったなァ」

彼は革靴が汚れるのも気に留めず、
散乱した臓物を踏みつけながらエレベーターへ向かう。
階数を表示するランプは5階を示している。
三角印のボタンを押し、1階に呼び出されたエレベーターに乗り込んだ。
その中には血の付着したパーカーが無造作に脱ぎ捨てられていた。
恐らく靴裏の血を拭ったのだろう、幾筋かの擦れた血痕が見て取れた。
相馬は満足気に笑いながらそれを拾い上げる。
それと同時に、先程と同じ若い女の声が相馬の耳に飛び込んで来た。

『動いたヨ』
「あいよ、時間通りだな」

エレベーターの扉が開いた。





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少女は終ぞ知る事が無かったが、その男の名は金田と言った。
地味なスーツの下に醜い脂肪と性欲を溜め込んだ中年だが、
彼の権力と影響力は様々な方面に及ぶ……今回の標的である。
数秒前まで下劣な情欲を燃やしていたその男は今、夥しく出血する股間を両手で押さえ、
酸欠の金魚のようにぱくぱくと口を動かしながら悶絶していた。
その様子を呆けたような笑みを浮かべて見下ろすのは半裸の少女である。
肩甲骨から腰にかけての背面と口元が鮮血で赤く染まり、
右手人差し指の腹から鎌の先端を思わせる小さな刃先が突き出ていた。

「先生!」

色めきたって室内に踏み込んできたのは廊下で待機していた黒服だ。
彼は悶え苦しむ己が主人と血濡れの少女を交互に見た。
瞬時の判断で拳銃を抜き、薄笑いを浮かべて指から生えた刃物を抜き出している
少女の胸に狙いを定める。

「こ……殺せ……そのガキを殺せッ!」

息も絶え絶えに金田が叫ぶ。男は躊躇する事無く引き金を絞った。
発射された銃弾は狙いから僅かに逸れ、少女の左肩を撃ち抜いた。
衝撃できずなの体が反転する。
銃身から排出された空薬莢が床へ到達するよりも速く、男は2発目の弾丸を撃ち込まんと
狙いを定めた。照準は曝け出された後頭部。男は冷静に人差し指の力を込めた。
銃声、閃光、反動。仕留めた―――幾多の場数を踏み越えてきた経験がそう告げていた。
同時に、男の両手首から先が消し飛んだ。眼前に少女の裸体。
揺れる髪から覗く瞳が嗤っている。
男が何一つ状況を理解する事の無いまま、
きずなの反動を付けた左虎爪が下顎を削ぎ飛ばしていた。
べしゃり、と嫌な音を立てて下顎が壁に張り付くと同時に、男も膝を付いていた。
赤黒い血溜りが毛足の長い絨毯に染み込み、広がって行く。

「ひ、ひッ、あああああッ!!」

掠れた悲鳴を上げたのは金田である。
未だ出血の止まらない股間を押さえながら、よたよたと出口へ駆け出す。
きずなは呆然とした男の顔を両手で包み、じっと見つめていた。
開け放しのドアから廊下へ出ようとしたその時、痩せたスーツの男が行く手を遮った。

「だっ、誰だ!?いや誰でもいい、俺を助けろ!金ならいくらでも……」
「残念ながらセンセイ、それは出来かねますな」

相馬は両手をポケットに突っ込んだまま全裸の中年を見下ろした。
そして首を巡らせ、男を抱えているきずなに

「おい、俺はちょっとこのオッサンと話してるから、そいつと遊んでて良いぞ」

と鷹揚に言った。うん、と小さくと返事をするきずな。
相馬は無造作にドアを蹴って閉めると、懐から煙草を取り出して咥え、
おもむろに火を付けた。
直後、耳を覆いたくなるような黒服の絶叫が室内に響いたが、
反応を示したのは金田1人である。
深々と吸い込んだ煙を緩やかに吐き出すと、
相馬は何事も無かったかのように話を進めた。
「まぁ、簡単に言えばですね、アンタは首突っ込み過ぎたんですよ。
 裏方に唆されて高みの見物を決め込んでたおつもりでしょうが、
 自分でも気づかない内に虎の尾を踏んでたって訳ですねぇ。お陰でホラ」

そう言って相馬は煙草の先端を黒服へ向けたが、わざわざ指し示すまでも無く、
金田の視線は完全にそちらへ固定されていた。
黒服はきずなの手によって現在進行形で解体されていた。
先端を失った両腕が振り回される度に傷口から血液が飛び散り、
きずなの小さな体を赤く染めて行く。
血泡を撒き散らしながらも発せられ続けていた叫びは、
今や弱弱しい呻き声と成り果てていた。
それでも尚きずなは苛む手を止めず、
先刻よりも球体に近づいた男の顔を皮ごと剥がすにはどうすれば良いかと首を捻っていた。
相馬は携帯灰皿を取り出して灰を落とし、脂汗に塗れた金田にへらへらと話しかける。

「可哀相に、まったく心が痛みますなァ。
 センセイもちょっとは責任取ろうって気にならんですかな?」
「貴様……貴様らがあの裸繰埜か?この俺に手を出してただで済むとでも……」
「へっへっへ!」

鋭い犬歯を剥き出しにして相馬は嗤った。

「まさかまさか、センセイともあろうお方が『機関』の援助を御期待で?
 我々は正にその『機関』に対して警告しようとしているのですよ」
「相馬さん」

きずなが黒服を引き摺りながら相馬に向かってきた。
反対の手には無理矢理に引き剥がされた顔面の皮が握られている。
金田の呼吸は殆ど窒息しそうな程に早まっていた。

「この人ママじゃなかった」
「……あァ、そっか。お前のママは折檻に拳銃使ってたか?」
「せっかん?」

少女が首を傾げる。

「アレだ、お仕置きだ」
「ママはお仕置きなんてした事ないよ」
「あー、めんどくせェな……取り合えず拳銃は無かったンだろ?じゃあ違うじゃねェか」
「うん、そうだね」

頷くと、きずなは顔面蒼白の中年を見下ろした。
その瞳には得体の知れない光が宿っている。

「でも、この人はさっき鞭でぶってくれたからママかもしれない」
「そぉか!じゃあ試してみるか?」
「うん」

水を向けられたきずなは即答し、咄嗟に逃げようとした金田の足首を掴むと、
骨ごと握り潰した。
踏み潰された蟇蛙のような悲鳴が豪奢な室内に響く。
激痛に足掻く男の体を強引に裏返し、太った腹の上に馬乗りになった。
金田は臍の辺りに湿り気を帯びた熱を感じていた。

「センセイ、きずなが許すって言うなら助けてあげんでも無いですよ」

相馬が軽薄な笑みを浮かべながら言った。
その言葉は即ち、少女が己を逃す事は絶対に無いという証左に他ならない。
金田は絶望に溺れかけながら、僅かな可能性に賭けて
ぼんやりと自分を見下ろす少女に話しかけた。

「……なぁお嬢ちゃん、さっきはぶったりして本当にすまなかったよ……
 おじさんにも子供が居るんだ、丁度君ぐらいの齢で……」

そこまで話した所で、金田の表情が凍りついた。
きずなが左肩に負った銃創を右手で弄くり始めたのだ。
鮮血が右手を伝わり、肘から金田の肥えた鳩尾に落ちる。
その表情は苦痛に歪むどころかむしろ陶然たる面持ちで、
漏れ出る吐息には年齢不相応の甘やかな色が含まれていた。
そして、傷口から徐々に棒のような物が抜き出されて来た。
ずるずると3本の指で15センチ程抜き出されたそれを、少女はしっかりと五指で握り直した。
棒状のそれを上下に激しく動かす。血が飛び散り、ぶちぶちと嫌な音が聞こえた。

「ああ……ッ!」

一際大きな水音と嬌声が上がり、それが引き抜かれた。
ネイルハンマーである。
先端部分が肉に引っ掛かり、摘出を困難にしていたのだ。
しかしきずなにとってはその痛みも快楽のスパイスでしかない。
釘抜きの部分に残った己の肉を摘むと、おもむろに口の中へ運び、
ゆっくりと咀嚼するきずな。

「い……イカレてるのかこのガキ……!」
「へっへ、少女性愛で加虐趣味のセンセイが言えたこっちゃないでしょう」

相馬の嘲りと同時に、きずながハンマーを無造作に振り下ろした。
槌ではなく釘抜き部分を下にした打撃は金田の右眼に突き立った。

「がッ、ぎィ、あがぁあああああ!!」
「……なんで叫ぶの?」

心の底から不思議そうに少女が問うた。勿論金田の耳には入っていない。
ぶちゅ、と不快な音と共にハンマーが引き抜かれる。
爪は視神経ごと眼球を抉り取っていた。
間を置かず、今度は槌の部分を鼻先に叩きつける。肉と骨の潰れる鈍い音。
ごつ、ごつ、ごつと、一定の間隔でハンマーを振るい、その度に悲鳴が轟く。

きずなの膂力をもってすれば、一撃で人間の頭を砕く事など
熟れた西瓜を叩き割るよりも容易である。
あえてそうしなかったのは、きずなの純粋な好意によるものであった。
恍惚たる時間を少しでも長める為の、彼女なりの作法である。
きずなは苦痛を快楽と捉える己の感性が、他人にも備わっていると信じて疑わない。
それは最早信仰に等しいものであった。

「ママ、ママ」とか細い声でうわ言を繰り返していたきずなの手を相馬が握った。
いつしか男の悲鳴は止んでいた。

「撤収だ。シャワー浴びてきな」

相馬は灰皿に煙草を押し込んで言った。きずなは頷き、ふらふらと立ち上がる。

「……ママじゃなかった」
「……そォだな」

相槌を打ちながら灰皿を懐にしまった相馬は、同時に指先に触れた感触で、
ある事をきずなに伝え忘れていた事に気が付いた。

「ちゃっちゃと帰って寝るぞ。明日は早ェからな」
「?」
「へっへ、控えおろう!」

きずなの鼻先に3枚のチケットを突き付ける。きずなの瞳がにわかに輝いた。

「明日はフランとシーだ!らちかは学校で来れねェから俺が特別に付き合ってやる。
 解ったらさっさと準備しな!」

少女はこの日一番の笑顔で大きく頷いた。

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最終更新:2012年06月02日 15:40