法帖 紅(ほうじょう くれない)


『現世への執着』

もう一度会いたい人が居る

キャラクター設定

◯外見
年齢19歳(2010年末死亡。享年15歳)
肩甲骨辺りまで伸ばした髪をひとつに纏めて垂らしている。
細身の中背。タレ目の八重歯っ子。
学生服(セーラー服)。

◯人物
基本、自分のことしか考えていない独善的な性格。義も勇も、彼女の前には木っ端同然。
他人の願いを踏みつけることに躊躇いはない。
目的のために邁進する。猪突猛進。研究者体質。
戦闘技術を修めているわけではないが、魔人の家系の恒として、障害となる対象を排除することに忌避感もない。しかしそれは非情であるとか冷徹であるということを意味しない。当たり前だと思っているということ。普通であるということ。

◯生前
法帖の業を後世に残すという使命に取り憑かれた父親の手によって幽閉され、幼少の時代をすべて修練に費やす。それは彼女が11歳の誕生日を迎え、魔人覚醒の儀を前にして法帖家を出奔するまで続いた。
その後、死を迎えるまでの4年と数カ月。彼女は、とある書道家の屋敷に身を寄せる。法帖 紅の人間的常識はこの4年と数ヶ月の間に培われた。それまで学校に通ったこともなかった彼女の、その短い日常の中で新たに手に入れたもの。大切な人、代え難き友達、弟。

◯法帖家
数百年前まで大陸にて国を陰から操っていた、祈祷師の流れを汲む家柄。
その家長は代々、人を操る能力に秀でた魔人であったという。
政変により追い落とされ島国に逃げ延び、今の世に隠れ潜む。
都落ち五家と蔑まれる姓のうちのひとつ。
法帖 紅は自分の本名を他人に名乗らない。特に法帖という姓を外で使うことは父親から固く禁じられており、彼女は今もそれを守っている。

◯大切な記憶
羨むほどに暖かい、外から見る親子の絆。
法帖 紅が手を止めることがあるとするなら、それは家族の絆を目の当たりにしたとき。
それがたとえ自分のものにならないとしても。

◯ステータス
「身体スキル」:【魔人の家系lv.3】【達筆/速筆lv.3】
「知的スキル」:【知識欲/好奇心lv.3】【遺伝子学lv.4】
「固有スキル」:【永劫逢魔が刻[魔]】【ナイフダンスlv.1】
「オプション」:【裁縫セット】【蛍火】

【魔人の家系lv.3】…より深い妄執によって成り立つ、生来の魔人。意図的な覚醒。
【達筆/速筆lv.3】…書道家の先生が将来を有望視するほどの達筆。正確で速い筆運び。
【知識欲/好奇心lv.3】…より多くを学び、吸収しようとする強固な意思。猫は死んだ。
【遺伝子学lv.4】…これまで学んで来た成果。その道の第一人者。
【ナイフダンスlv.1】…そこらへんに居る非行少女程度のナイフ捌き。
【裁縫セット】…針、糸、裁ちハサミから、ポケットに入る範囲まで。女の子の嗜み。
【蛍火】…いつも連れ歩いている喋る蛍。とても仲良し。ツンデレな間柄。ランタン。


特殊能力『永劫逢魔が刻<クレナイ>』

効果:オリジナル魔獣召喚
範囲:至近
同時召喚可能数:1体
時間:対象による
消費制約:精神(条件支払い:魔獣が撃破された場合のみ)

能力詳細/原理:
召喚者の精神の一部を、獣の姿に顕在化させる。
自己存在情報をカット・アンド・ペーストし、他の生命体の遺伝情報に交ぜ合わせる。そうして出来上がったキメラの設計図を召喚契約者の血で書き留めることで、一個の魔獣として固定してある。下記3体の遺伝子設計図の本体は、生前書かれた姿のまま今も現世に存在し、地獄に持ち込まれているわけではない。しかしその抄訳が法帖 紅の左腕に刻まれており、それを通じて自由に具現/顕在化可能であると彼女は認識している。
魔獣は召喚者の精神構造を参照/反映してはいるが、召喚者とは別個の意思を持った独立した存在である。魔獣の第一義は召喚者の守護。法帖 紅の精神/感情/魂は、彼女の意思とは無関係に彼女のために進んで戦いに挑む。

補足:
”消費制約を支払うことが出来る限り”、万全状態の魔獣を再召喚可能。

制約:
召喚は一度に1体ずつ。消してからでないと次の魔獣は呼び出せない。
召喚/再召喚時の位置は召喚者の手元となる。消す場合も対象に手で触れる必要がある。
魔獣が撃破された場合も、魔獣の死体に触れねばそれは消えない。
魔獣にダメージが入ると、核となった精神/感情にフィードバックがある。
魔獣が傷付くたびに、召喚者の心は壊れていく。


◯オリジナル魔獣
【ジミニー=ルチオラ】(蛍火)
核となった精神→良心
モチーフ→蛍
■召喚持続時間:永続
■設定
「火属性の精霊」の模造品。良心から生まれた喋る蛍。数少ない話相手。悲しい自作自演。
非力で体は小さいが頼れる相棒。ほんのり光っている。
法帖 紅が最初に召喚した魔獣。
■能力名『死を語る佯りの火垂』
火葬され、現世との楔から解き放たれ、シガラミ無く軽くなった魂を捕食する。
死因が焼死、あるいは死後の葬儀で火葬された存在に対するクリティカルアタック。

【オフィオファガス】(服毒)
核となった精神→虚栄心
モチーフ→蛇
■召喚持続時間:一瞬
■設定
体長3mほど。自らを殺し続ける蛇。自分しか害さない毒。しかし、いくらでも殻を脱ぎ捨て新生する、終わることなき一瞬の生命。輪廻さえない完全なる円。
■能力名『虚栄身命』
一瞬に介入する能力。瞬間防御と同時の瞬間崩壊。虚栄による防御。自ら砕け落ちて本心を守る。砕けても砕けても次の虚栄が現れては敵の攻撃を受け止め続ける。ただ、能力は無限であっても虚栄心が無限であるわけではない。

**シークレット**														
													
【道之崎 オンセ】(百獣)
核となった精神→生存本能
モチーフ→雌ライオン
■召喚持続時間:五分
■設定
この魔獣は、他キャラクターが知り得ない情報として扱われる。
法帖 紅が持つ最終手段。奥の手。なんとしても生き続けるという意思の表れ。この魔獣が敗北した場合、召喚者は現世への執着すらすり潰され戦闘不能になる。この魔獣自体の戦闘力は現実の雌ライオンの戦闘力に準ずる。
■能力名『帰還の遺志』
エナジードレイン。召喚者が完全回復するまで敵対者の体力を吸い続ける。

**********														
													

プロローグSS



22Dec2010-02:29AM 紅

「そこで大人しくしていろ。人を呼んで治療させる」
倒れこんだわたしを前にして、それだけを言って葉雪おじさんは階段を上がっていく。
地上へ戻り、医者か何かに連絡を入れるのだろう。
負けた。これは、敗北。
それは”今”が終わるということ。4年間の短い平穏が終わるということ。
このつまらない些細な反逆が、失敗したということを意味していた。
傷口から血が流れ出す。意識が遠くなっていく。
『おい、ちょっと待て紅。動くな! 動くなって!』
煩い羽虫の声がする。動く? 動くとはなんのことだろう。
わたしのこと? わたしの身体はまだ動く。
幸い、骨に異常はなさそうだ。
結局負傷と言えるものは、肌を切り裂き、肉を開き、血を流し続ける胸のこの一撃だけらしい。
それならなんとかなる。
出来ないことはない。出来ることをしないでいる理由が、わたしにはない。
肉体に不具合があろうとも、意思に傷が付かない限りわたしが止まる道理がない。
「ここを出よう、ルチオラ」
傍らを飛び回る蛍火に呼びかけたつもりだったが、意思とは裏腹に呼気は掠れ、声は声にならなかった。
傷口を押さえる。強く締め付け抑えこむと、流血は止まった気がした。
この家を出ようと、そう決めた。
たとえ道之の当代がわたしの行ないをすべて許すのだとしても、もはやわたしは魔人としての法帖 紅の毒を否定できない。
道之家での暮らしは、一言で言えば安らぎだった。
法帖という名前を忘れ、人間の生活を送れるようになるのだと夢見ることができた。
だけどそれも今夜で終わり。
自分自身の手でぶち壊してしまった。そして、それをまったく後悔していないのだ。
毒。これは毒だ。
呪いと言い換えてもいい。
すべてを知りたい。自分のものにしたい。
だってわたしにはそれが出来るのだから。
それが出来るわたしは、それをしなければならない。
『なぁ紅。そんな無理をする必要はないんだ。ここで医者を待とう。紅が何か決断するのは、傷が癒えてからでも遅くないだろうが』
「うるさいわ、喋るだけの能無しが」
言いながら左手に力を込める。血に濡れる床に滑らないよう気をつけながら身体を持ち上げ、上半身を起こす。右手は傷口を押さえるため塞がったまま。
目の前を蛍火が飛び回る。
この蛍火にはわたしを止め得るだけの力がない。ただ煩わしいだけの羽虫でしかない。
一言「消えろ」と言えば消え去る魔獣なのに、何故かわたしはそうしなかった。
壁に手を付き、立ち上がる。
思っていた以上に身体は重く、半ば壁に重さを預けながら這うようにして地下を出る。
ここを訪れてから、まだ30分も経っていないはずだ。
周囲に灯りはなく、空も暗い。道之の屋敷は静まり返ったままだった。
見える範囲に葉雪おじさんの姿はない。
『チッ、親父さんどこまで行きやがったんだ』
「こんな、時間だから、ね。みん、な。寝ているだろうし」
『喋るな紅、傷が開いちまうだろうが!』
「へっへっへ」と力無い笑いが出る。
ここを出るなら、今がいい。月の綺麗な夜に、誰にも見送られることなく往くのだ。
「荷物、どうしようか、なぁ」
『そんなことはどうでもいい。なんとか治療を』
「そういうのは、離れにひと通り揃ってるよ」
身体を引き摺り歩き出す。来た道を帰っていく。
中庭を横切り、離れへと続く通路を行く。
一歩踏み出すたびに、そのあしあとがスタンプのように残るのが滑稽で仕方なかった。
這々の体で離れにたどり着く。
自分の荷物と言えるものは、この屋敷の中でここにしかない。
部屋を漁る。怪我の治療に使えそうなものを探す。
左手一本しか使いようがなかったので、それこそすべてひっくり返す勢いで。
気休めにしかならないだろうが、傷口をタオルで締め付けテープで止めるくらいのことはできそうだった。
ふと、右手に目を向けると、流れ落ちた血に濡れて滴り落ちるほど真っ赤に染まっている。
「ああ、こんなに血を流すなら、それで魔獣が呼べただろうにね」
そんな言葉が自分の口から出るということが、もう笑い話だ。
今のわたしにはそれが出来る。出来ることをしないでいる理由がわたしにはない。
そんな自分のサガに笑いが止まらなかった。
4年間の生活の中で密かに書き上げてきた魔獣の設計図たちも、すべて置いて行くしかないだろう。これは持ち運ぶには重すぎる。
ああ、何もかもが重い。
紙切れ一枚、この身体、この生命さえ今のわたしには重荷にしかならない。
そんなに傷は深かっただろうか。
それとも血を流し過ぎたか。
部屋を出る。
『紅、もうダメだ。これ以上はもう、動けないはずだ。どこにも行けない。どこにもたどり着かない。道すがら倒れるだけだ』
いいや、身体は動くよ。意思に傷が付かない限りわたしが止まる道理がない。
『紅! おい、紅ッ』
うるさい。あんまり大きな声を出さないでよ。
「――ちゃん!」
そう。きっとあの子が起きてしまうから。
「お姉ちゃん!」
『紅……後ろに』
ええ、わかっている。
誰かがわたしを呼ぶ声がする。
ああ、なんて重いんだろう。
絆なんて、記憶なんて、そんなものわたしのものでもなんでもないのに。
それがあるだけでわたしは足を止めてしまう。重い、足枷。
振り返る。
真っ暗闇の中、足元の血溜まりを追って、わたしを追いかけて来る人が居る。
セン君。
大切な。わたしの大切な弟。
わたし、キミにお別れを言わなきゃいけないみたいだよ。
「お姉ちゃん、行かないで! ――ッ、お姉ちゃん!」
『紅! おい、どうした。紅ッ』

意識が暗転する。わたしの歩みは止まる。
こんなつまらない足枷に躓くだけで、法帖 紅の心は泣き出してしまうのだ。



MPおよびGKスタンス

キャラ 能力 SS ボーナス 増減 仕様
2 2 2 6 ドM


最終更新:2012年05月29日 22:06