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偽りのフォークの修正前のバージョン。後の人が繋ぎにくいという事で没になった。
執筆時、エディタを変えたばかりだったので、行の区切り方が一々おかしい
元は霊夢も登場させる予定だったが、紙幅の都合で、そのパートはばっさり削除されている。
早苗と霊夢のどちらがマミゾウなのかを魔理沙に識別させる予定もあったが、その叙述トリックのシーンも全面カットされている(デキガワルカッタンダヨ)
魔理沙の一人称のパートなどはその名残

『アイデンティティー』

 気が付くと、東風谷早苗は鬱蒼と生い茂る木立ちの中に立っていた。白みがかった木漏れ日が、腐葉土を薄く照らしている。
 早苗は、すぐさま周囲を見回した。近くの大木の下に、おそらくは自分へ支給されたデイパックを発見した。近くに他の参加者の気配がない事を確認してから、デイパックに近寄り、ランダムアイテムに期待を抱しながら、中身を確認する。
 早苗は落胆した。彼女の支給品は、なんの変哲もないただのフォークだったのだ。
 こんなものでどう戦えと言うですか、と早苗は嘆いた。嘆いて、そして苦笑した。これはこてこての大ハズレだ。原作『バトルロワイアル』から出典を予想される支給品の中でも、このフォークが一番のハズレくじだろう。
 だが、ならばこそ、ここに一つ確かな事がある。要するに、早苗は主催者の八坂神奈子から依怙贔屓を受けていないのだ。もしかしたら、神奈子は家族だからこそ早苗に厳しく当たり、こうして支給品で冷遇したのかもしれない。否、きっとそうだろう。
 これは信頼の裏返しですね、と早苗は好意的に解釈した。彼女もまた、神奈子と同じ決意を固めていたのだ。

 バトロワごっこにおける通常の勝利条件は、参加者全員で疑似的に殺し合い、最後にひとりになる事だ。だが、早苗はこれを望まない。主催者を身内に持つ自分が、この方法で勝利しても不名誉にしかならないだろう。
 ならば、もはや目指すべき道は一つしかない。大会進行役、八坂神奈子の打倒による隠し勝利条件の成立だ。他の参加者たちと糾合し、彼らと共に、神奈子のいる紅魔館を攻城する。家族だらこそ容赦はすまい、と早苗は心に決めていた。
 ――バーンッ!
と、不意に重い銃声が鳴った。早苗は急いでデイパックを拾い上げて、近くの物陰に身をひそめた。挙動不審ぎみに辺りを見回すも、着弾の気配や追撃の銃声はない。
早苗は強く、フォークを握りしめた。神奈子の厳しい信頼が、彼女に勇気を与えてくれた。

* *


ディパックからショットガン(レミントンM31RS)を引き当てた霧雨魔理沙は、まず最初に頭上の虚空を撃った。周囲の参加者たちに、自分の居場所を教えるためだ。
 このゲームにおいて、先立つ物は一にも二にもまず仲間だ。少なくとも、魔理沙はそう考えている。仲間はいい。敵を大勢で袋叩きにするのにも使えるし、いざ定時放送の前にオーブ不足とあらば、非常食(裏切ってオーブを奪取)にも出来る。
 だが、そんな仲間が欲しければ、まず他の参加者と出会わなければならない。リスクは絶大だ。出会って、さあ交渉しましょうと事を運べる相手が何割いるか。好戦的なヴァンパイアや、鬼と出くわして、悪い方向に転がった日には目も当てられない。
ゆえに、仕掛けるならば敢えて今だ。今ならば、たとえデカい面した月人だろうが、このショットガンひとつで対抗できる。無論、相手が自分より強力な武装を有していないければの話だが。

ほどなくして、魔理沙の目前の草陰がざわめいた。銃口を構えると、向こうから願ってもない人物が現れた。この支給品にして、この巡り合わせ。いくらなんでも、初っ端から出来過ぎというものだろう。口元が綻ぶ。

「――霊夢!」
「あー、あんただったのね。魔理沙」

 彼女は背にデイパックを担ぎ、脇にサブマシンガン(イングラムM10)を抱えていた。原作バトルロワイアルの描写によれば、イングラムはこちらのレミントンよりも強力な銃器だ。だが、魔理沙は一切警戒しなかった。相手が親友の姿をしていたからだ。
 魔理沙はレミントンの銃口を下げて、彼女に気安く近づいた。言葉など要らない。力強く右手を差し出す。
彼女は、はあと溜息をついた。「いつ裏切ろうと恨みっこなしよ」
一瞬で握手が成立した。

「いやー、この出会いは幸先がいいな」魔理沙は彼女の肩に腕を絡めた。「お互い支給品にも恵まれたみたいだし。むしろ、順調すぎて先が怖いぜ」
彼女は、へーっと抜けた声を返した。「そいつは、羨ましいわ」

魔理沙は違和感を感じた。いつもの能天気な霊夢は、こんなシニカルな表情をしない。「――霊夢、何かあったのか?」

「何かも何も」彼女は、これ見よがしに深く溜息をついた。「開始早々、オーブを失くしちゃったのよ、二つとも」
魔理沙は絶句しかけた。辛うじて、疑問符を吐き出す。「え?」

「失くした、というより消されたんだわ、きっと」彼女は、やり場のない怒りで地面を睨んだ。「神奈子の奴よ。アイツ、セレモニーで銃を撃ってきたでしょ。私、ふざけるなって啖呵を切っちゃってさ」
 魔理沙には話が見えなかった。「それが?」
「それが、反逆行為と見做されたのね。私のオーブ、デイパックを開封した時にはすべて没収されていたわ」

「そんなまさか」魔理沙は鵜呑みにしかなった。
おそらく、霊夢の勘違いだろう。神奈子は、さきの壇上で主催者介入の自制を宣言したのだ。あの神様にも色々と問題はあるが、少なくとも、あれの言動には重みがある。たかだか罵声を受けたぐらいで、己の前言を覆したりはしないだろう。

「まさか、じゃないわよ」だが、彼女は食らいついた。「なら、私のデイパックには、どうしてオーブがなかったの!」
「いや、それは―」
 主催者陣営の事務方の手違いだろう、と言いかけて魔理沙は止めた。根本的な解決策にならない以上、霊夢の気持ちを逆なでするだけだ。
 ……。
「……分かったよ」魔理沙は溜息をついた。
 自分のポケットからオーブを一つ取り出して、彼女に差し出す。
「え?」彼女は、オーブと魔理沙の顔を交互に見比べた。「これは何?」

魔理沙は重ねて溜息をついた。「見てのまんまさ。仲間内で、オーブの保有数に格差があったら、火種の元だろ」
 彼女は遠慮がちに手を伸ばした。「礼は、言わないわよ」
「要らないさ。何しろ譲ったわけじゃないぜ。貸しただけだ」
「あら、私が返すと思うの?」
 彼女は、一変して不敵に笑った。

* *


私は、ひとまず元気を取り戻した親友の顔に満足した。これで良かったんだ、と己に言い聞かせる。オーブを譲るなんて、私と霊夢の間柄でもない気がするが、平静とは違う彼女の様子にすっかり感化されてしまったのだ。
まあいい。引っかかる物はあるが、くよくよしてても始まらない。折角のゲームだ。もっともっと楽しまなくてわ。
……。
 と、そう頭を切り替えようとした矢先、向かい合った私と霊夢の横合いから、葉擦れの音が聞こえてきた。私は霊夢に目くばせした。彼女も首肯する。
 私はレミントンを、霊夢はイングラムを構えて、迫りくる気配からジリジリと後ずさりした。やがて、目の前の茂みが大きく揺れて、向こうから今の私たちにとって、限りなく理想的な人物が現れる。
 途端、場の緊張感が一気にほどけた気がした。否、壊れた。あまりにご都合主義な展開に、バトルロワイアルの峻厳なイメージが音を立てて決壊する。果たして、こんなものなのだろうか?
「――早苗」
 早苗もこちらの姿を確かめて、ほっと安堵の息を付いた。「あー、やっぱり魔理沙さんだったんですね。それに霊夢さんまで!」

早苗は親愛の笑みを浮かべた。が、さすがに二つの銃口が怖いのだろう。不用意には近づいてこない。私は、友人からすぐに銃を降ろした。霊夢の方に笑顔で振り返る。
「いやー、よかったな。このパーティーなら、向かうところ敵なしだぜ!」
 と言って、我ながらマヌケな台詞だと思った。棒読み感が半端ない。きっと脚本が酷いんだ。……ところで、霊夢から返事が返ってこない。
「霊夢?」
 霊夢は険しい目付きで、リアサイトから早苗を睨んでいた。霊夢に対する理解よりも先に、不穏な空気を察してしまう。慌てて、早苗の方に振り向いた。早苗は、銃口を下げない霊夢にしびれを切らしたのだろう。無防備な足取りで、こちらに近づいてくる。
「ま、待て。早苗!」

――パンッ!
 銃声が鳴った。撃ったのは霊夢だ。銃弾は早苗のこめかみを掠めていった。
「霊夢?」
「……霊夢さん?」
「近寄るならないで。手を挙げなさい」霊夢はイングラムを構え直した。そして、一番言ってはならない事を言った。「神奈子の手下とは手を組めないわ」
 早苗は、呆然と訊いた。「……な、なんで?」
 銃声。完全に怯えあがった早苗が、急いで両手を挙げる。

 途端、魔理沙は絶句した。霊夢の豹変にも驚かされたが、それ以上に、手を挙げた早苗の背中にマウントされていた装備品こそが問題だったのだ。
「……ウージー」
原作『バトルロワイアル』に登場する支給品の中で、おそらくは最強の分類に入るサブマシンガンだ。それが早苗の手に渡っている。つまり霊夢、魔理沙、早苗はたまたま近い場所に飛ばされて、たまたま最強クラスの銃器を揃えたのだ。
だが、偶然もこうまで重なれば必然となる。
……ああ、霊夢の言い分にもスジがある事が分かってしまった。つまり、あの大会進行役は、表向きには平等を喧伝しつつ、裏では身内の早苗を優遇しているのだ。そして、その恩恵の一端が早苗の友人である自分たちにも回ってきた…。
畜生、余計なお世話だ。神奈子の奴が心底と憎くて憎くてしょうがない。折角、お前のゲームとやらを楽しんでやろうというのに、こういうやり口はないんじゃないか? 早苗はお前の人形じゃないんだぜ。
怯えあがった早苗の様子を見て、同情の念がこみ上げてくる。
彼女に銃口を向ける霊夢を見て、酷く虚しい気分になった。
――ああ、神奈子が許せない。

* *


本大会の経過は、フィールドの至る所に設置された監視スキマにより、幻想郷でも実況放送されていた。人妖を問わず、幻想郷中の住民たちが、刻一刻と変化する参加者たちの盛衰に熱狂していた。
中でも、最も多くの注目を浴びているのが東風谷早苗だ。今回の騒動の元凶にして、主催者を身内に持つ依怙贔屓。バトロワごっこの起源は、負の感情の捌け口だ。モニターの前の一定数の視聴者たちは、憎々しい早苗が無様な姿を晒すところをじっと待った。
そして、その時はゲームの開始早々に訪れた。
 あの霧雨魔理沙からオーブを一つ騙し取った者の元に、早苗が無防備で現れたのだ。そして早苗は、「依怙贔屓」や「神奈子の手下」などと、視聴者の思いを代弁するような罵声を浴びせられ、銃口に脅されながら、半べそをかいて諸手を挙げた。
 ざまあみろ、と溜飲を下げた視聴者が何人いたか。神奈子に対する民草の不満が、早苗に投影されていたのだ。だが、そんな視聴者たちもすぐにドン引きする事になる。
 霊夢の姿身を借りた者は、早苗に対して尚も暴言を止めず、装備品と二つのオーブの放棄を強要しはじめたのだ。その余りにもドスの利いた仕草は、プロレスの範疇をゆうに超えていた。にわかに、早苗に対する同情が募りはじめた。
 ……。
 ……それが、二ッ岩マミゾウの真の狙いだった。
 さきほど銃声を聞きつけたマミゾウは、博麗霊夢の姿に変身し、支給されたブローニング・ハイパワーをイングラムに取り繕って、霧雨魔理沙の前に姿を現した。
 霊夢の巫女の姿を纏うたのは、彼女の顔が幻想郷で一番広いから。ブローニング・ハイパワーをイングラムに見せかけたのは、武力を盛った方が交渉で優位に立てるから。まるで、ヤクザのごときハッタリ交渉術だが、二ッ岩とは元よりそういう口の者である。
 果たして、彼女の作戦は大いにハマった。戦わずして、ショットガンを持つ魔理沙からオーブをくすねる事に成功し、返す刀で早苗からオーブを二つ剥ぎ取ろうとしている。
マミゾウの勝算は、早苗のポケットの中身だ。化け学を専門とする彼女には、あれの正体がよく分かる。
魔理沙にサブマシンガン(ウージー)と認識された支給品の正体は、封獣ぬえに由来する正体不明の種、その劣化版だ。見る者の欲を反映して姿を変える魔術的効果を持つ。
あれのもたらす認識の祖語が、魔理沙の疑心暗鬼を煽っているらしい。
マミゾウにとっては、まさに好機だった。このまま早苗と神奈子の関係性を盾に魔理沙を制し、その隙に、パニックに陥った早苗から身ぐるみ剥いでしまおう。そうすれば、自分の手元にはいきなり五個のオーブが揃うのだ。
もはや、注意すべきは時間だけだ。能力制限下、変身したまま時が立つにつれて、自分の体力は消耗していく。また、魔理沙が冷静さを取り戻したら、それだけで計画は破たんするだろう。事は拙速で運ばねばならない。。
だが、それでも勢いは私にある、とマミゾウは思った。このまま一気呵成と戦力を増強し、来るべき八雲藍との決戦に備えたい。今日という今日こそ、狸と狐の三千年に渡る死闘に蹴りを付けてやるのだ。
そのためには手段を選ばない。極道で培った権謀術数の限りを尽くして、並み居る強豪たちの血と肉を奪いつくそう。しゃぶり尽くす事こそ、我が性よ。
……と、いう外道めいたノリで振舞ってはいるが、マミゾウの真意は存外に優しい。
今大会は、幻想郷中にモニター配信されている。自分が早苗をいじめている姿が衆目に映り、彼女に対する同情の機運が高まれば、結果的に彼女も事件の元凶のレッテルから救われるだろう、というマミゾウなりの遠謀なのだ。いや、本当。

* *


 早苗は深い哀しみに包まれていた。
銃に脅され、逃げることも敵わず、支給品を全て寄こせと強要される。早苗は成すがままにされながら、巨大な絶望を感じていた。弱音を吐けば、自分はそもそもこのゲームに参加したくなかったのだ。
バトロワごっこの開催が決定された時、自分は神奈子様の推薦により、真っ先に大会へのエントリーが決定した。これは八坂神奈子を発端とする洩矢家への怒りの矛先を、自分が参加者として引き受けることが期待されたからだ。
要するに、神奈子は自分を生贄に選ばれたのである。
好意で貸した本を幻想郷中に出版されて、勝手に事件の元凶に祭り上げられて、その揚句にこの扱いだ。流石に怒りが沸点を超えた。初めて、家族で喧嘩をした。
以来、神奈子様とは口も利いていない。自分も神奈子様の人形じゃないのだ。諏訪子様には負担をかけるが、やすやすと神奈子様と仲直りしようとは思わない。口先の謝罪ではなく、神奈子様のけじめを見たかった。
果たして、それから大会開催の二週間前に大会ルール規定の改正が発表された。勝利条件の複雑化だ。名言こそされていないが、これにより、大会進行役の打倒による複数参加者の勝利が可能になった。
早苗は、神奈子の意図を汲んだ。お互いに後腐れのないやり方で、正々堂々と対決しようというわけだ。神奈子は、はじめて早苗のことを対等と見做したのである。
アイデンティティーの独立を賭けて、早苗は今大会に臨んだ。
……。
……だが。
依怙贔屓、神奈子の手下、アンフェア、七光り―
霊夢、の姿をしたマミゾウに浴びせかけられた言葉の数々は、そんな早苗の意気を木端微塵に打ち砕いた。これが、自分に対する他の参加者たちの共通認識だと言うのなら、とても主催者の打倒など叶いそうにない。
他の参加者たちから信頼を得られなければ、単独で主催者に挑むなど不可能だ。自分と神奈子様の関係性だけに注目し、
霊夢に恐喝され、涙を流しながら、早苗は自問を繰り返した。
――私は、どうしてこんなところにいるんだろう?



【B-5・魔法の森・朝】
【東風谷早苗】
[状態]:身体は万全、精神衰弱
残り体力(100/100)
[装備]:得体のしれない種(正体不明の種の劣化版)
※見る者の欲を反映して姿を変える魔術的効果を持ちます。
[道具]:オーブ×2、支給品一式
[思考・状況]
基本方針:八坂神奈子と対等になる
1:他の参加者と糾合し、神奈子様を打倒したい
2:……やっぱり、他の参加者の理解を得られないかも


【B-5・魔法の森・朝】
【霧雨魔理沙】
[状態]:心身万全
残り体力(100/100)
[装備]:レミントン M870
[道具]:オーブ×2、支給品一式
[思考・状況]
基本方針:ゲームを楽しむ
1:自分たちに余計な肩入れをした、神奈子が許せない(誤解)
2:神奈子の非を早苗に被せては可哀そう(誤解)
3:だが、霊夢の言い分ももっともだ(誤解)


【B-5・魔法の森・朝】
【二ッ岩マミゾウ】
[状態]:心身万全
残り体力(75/100)
[装備]:ブローニング・ハイパワー
[道具]:オーブ×2、支給品一式
[思考・状況]
基本方針:狐と化け狸の長き戦いに、今日こそは蹴りを付ける!
1:八雲藍を打ち倒す
2:早苗に対しては外道に振舞う
3:一先ずはオーブを集めて、戦力を増強する


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