※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

個人的に黒歴史のSS。
もう構想を練るだけでいっぱいいっぱい。文章が、文章の体をなしていない。
全力投球でSSを書くと、ロクな出来にならないです。
ちなみに、本スレを通過しています。これをWiKiへ載せた後、ちょくちょくと魔改造したのが事の発端

 ことの発端は、東風谷早苗が外の世界より持ち込んだ、一冊の新書本だった。
 書の名は、『バトルロワイアル』。大人の都合で殺し合う少年少女たちの極限を描いた、R指定のアクション小説である。
 その内容の余りの過激さゆえか、はたまた、ただ単に面白いかったからか。
 バトルロワイアルは、二〇〇一年に外の世界で、毀誉褒貶の話題を席巻しながらベストセラーを記録し、
 そして今、幻想郷でも、見当違いの絶賛を受けながら、ベストセラー記録を更新しつづけていた。

 * * *

「これがバトルロワイアルなのかー」
 魔が潜む暗い森の奥で、少女の形をした数匹の妖怪たちが、何やら怪しげに会話をしている。
 彼女たちの話題は、いま彼女たちの一匹に貸し出された『バトルロワイアル』についてだ。
「そうさ。生き残りを賭けて、人間たちが最後の一人になるまで、ロマンティックに殺し合うんだ」
 彼女たちの一匹が、うっとりと目を細めた。何故、この小説が彼女たちの心を引き付けたのか、人間には知るよしもない。
 いくら少女の形をしようと、彼女たち妖怪の思考は、人間たちのソレより遥かに残酷なのだ。
「私も、一度でいいから大勢で殺し合ってみたいわ」
 彼女たちの一匹が、手を合わせながら言った。他の少女たちも口々に同意を示す。
「それでね。今日は話があるの。わたし、この夏にバトルロワイアルを開催しようと思うんだ」
 彼女たちの一匹が、頃合いだとばかりに切り出した。皆も是非参加してよ、と彼女は軽口で誘う。
「いいわね。どうせなら、人間たちもたくさん捕まえてきて、皆で楽しく殺し合いましょう」
「いいわね。どうせなら、百人ぐらいで盛大に殺し合いましょう」
「いやいや。どうせなら、千人ぐらい―
 さて。そんなこんなで、少女たちは和気藹々と殺し合いごっこの計画を練りはじめた。

 * * *

 八坂神奈子は、自分自身にドン引きしていた。今回ばかりは、流石にやりすぎたかもしれない。
 ことの始まりは、早苗に勧められた一冊の新書本、バトルロワイアルだった。
 その本を手に取った時、神奈子はピンと閃いたのだ。
 山の河童たちに、外の世界と同等の大量印刷技術を授け、自分たちの布教活動の糧にしようと。
 そこで神奈子は、手始めに河童たちと八坂書房を立ち上げ、バトルロワイアルを出版した。
 ……それがこのザマである。

 いま神奈子は切り立つ崖の上に仁王立ちし、傍らで膝を付く、河童の会計報告に聞いていた。
「先月の出荷分ですが、先生のご指導のおかげで、めでたく完売のお運びとなりました。
つきましては、来月分の印刷数を倍とさせて頂きたいと思います」
「仔細、分かった。なるほど、嫌になるほど順調じゃないか!」
 と、豪気に言ってはみせたが、神奈子は内心で焦っている。
 ――やはり、この幻想郷に大衆メディアを持ち込んだのが不味かったか。
 バトルロワイアルを読んだ妖怪たちの反応は、神奈子の予想を遥かに飛躍したモノだった。
 まさか、あれに感化されて、妖怪たちが実際の殺し合いを望むようになるとは―
 神奈子は、下界を改めて睥睨した。この幻想郷のあらゆるところに、バトルロワイアルの開催を画策する妖怪たちが潜んでいるのだ。
 彼らのゲリラ的な活動は、やがて一本の大きな潮流となり、この幻想郷を崩壊に導く事だろう。もはや、これを止める術はない。
 いまさらバトルロワイアルの出版を差し止めたところで、既に回収不可能な量の初版が出回っているのだ。
 ならば、かくなる上は…

 と、そのとき、神奈子は気配を察して空を見上げた。太陽の眩しいところから、ひらひらと紙束が飛んでくる。
「号外! 号外だよ~!」
 そして、たったいま新聞を落としていった天狗は、黒い翼を広げて、もう空の向こうに遠ざかっていた。
「あれは、鴉天狗の射命丸でございます」隣の河童が事務的に述べた。
「名前は聞いてるよ。幻想郷で一番すばしっこい奴だとな」
 神奈子は落ちてきた新聞紙を拾い上げた。埃を払って、一面に目を向ける。
 途端、神奈子は目を剥いた。見出しにはこう書かれていた。
 ――バトロワごっこ開催決定!
 馬鹿なっ、と神奈子は紙面に食らいついた。いくらなんでも早すぎる。まだ一か月は猶予があったはずだ。
 だが、神奈子を真に驚愕させる言葉は、この記事の文中にあった。
 ――八雲紫、八坂神奈子、両名が主催者に名乗り出て、
「あの法螺吹き天狗めっ!」
 神奈子は、射命丸文を追って、その場から飛び立った。

 * * *

「失礼します」
 八雲亭の応接間に戻った文は、直角にお辞儀し、最大限の敬意を示した。
 部屋の中央の長テーブルに、レミリア・スカーレットや西行寺幽々子など、そうそうたる顔ぶれが列席している。
 そして、彼らをもてなす役目は、端の席に座るこの家の主、八雲紫のものだ。
 紫は文に尋ねた。「お帰りなさい。で、首尾の方は?」
「はい。ご依頼された新聞広告につきましては、まずは半分ほど、幻想郷の西に配布させて頂きました」
「流石に仕事が早いわね。それと、もう一つばかり無理言ったけど?」
「はい。客人のご案内ですね」文は、ふうっと溜息を付いた。「そちらの方もなんとかんとか」
「いやー、まんまと釣られちゃったようだね」そう豪気に言って、文の背後から、神奈子が応接間に入ってきた。
「ようこそ」紫は底知れぬ笑みを浮かべた。「主賓としてもてなすわ。さあ、座って頂戴」
 神奈子は端の席に座り、手持ちの記事をばんっとテーブルに叩きつけた。「それで、何故こんなことをしたのか理由を話してもらおうか」
「あら、私と大会を共催するのは不満かしら?」
「その前に、私はバトロワごっこの事など何も聞いてないぞ」神奈子はさも苛立たしげに言った。
「フフフ、つまりはこういう事よ」紫は神奈子の顔面を指差した。「あなたに、自分が仕出かした事の落とし前をつけて欲しいのよ」
「ふん」神奈子はふてぶてしく両腕を組んだ。「何のことだ。まったく心当たりがないぞ」
 途端、列席した者たちの冷たい視線が、神奈子の元に殺到した。そして、彼らは口々に神奈子を非難しはじめた。
「あなたは、この幻想郷に本来あってはならない技術を持ち込んだ」
「あなたは、幻想郷の秩序を乱した」
「このままでは、力なき妖怪たちが無益に殺し合い、幻想郷はたちまち不毛の大地となってしまう」
「そうだ。殺し合いごっこの開催など、我々は断じて許せない」
「だが、もはやバトルロワイアルの開催自体は、避けられぬ状況にある」
「ならば、あえて我々がバトルロワイアルの運営側に回ることで、このイベントを制御し、無害化しか対処法はない」
「八坂神奈子。あなたには、この事態を招いた責任を取り、八雲紫と共に我々が推奨するバトロワごっこの主催者を引き受けてほしい」
 などなどと議論百出。神奈子は目を閉じて、列席者たちの声を、最後まで黙々と聞いていた。
 そして、全ての声が出揃ったところで、彼女はおもむろに目を開いた。
「なるほど、もはや是非もないな」
「分かってくれたかしら」紫の笑みが更に怪しさを増した。「私たちは、何もあなたに土下座させたいわけじゃないわ。欲しいのは落とし前よ」
「ふん、いまいち乗り気にはなれないがな」
「何もネガティブに捉える事はないわ」紫は宥めるように言った。「あなたの罪なんて、今大会の主催を引き受けた時点で完全にチャラよ」
「つまり?」
「つまり、今大会を成功に導ければ、その名声は私とあなたのモノになるわ。信仰の足しとしては、十分すぎるでしょ?」
「……こりゃ、まいったなー」神奈子は聞きたかった言葉を聞けて、口元をにかりと綻ばせた。「あんたには敵わないわ」
「今大会の主催、引き受けて頂けるかしら?」
 神奈子は首肯して、真顔になった。「この八坂神奈子、己が神徳の全てを賭けて、バトロワごっこの主催を引き受けよう!」
 おおっ、と列席者たちから歓声が昇り、続いて拍手が巻き起こった。なんと調子のいいこと。すぐさま宴会の準備がはじまる。
 神奈子も、彼らの喜色に合わせて、邪悪に口端を吊り上げる。過程はどうあれ、結局は、この八坂の計画通りになったわけだ。

 * * *

「号外! 号外だよ~!」
「寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい! 幻想郷中を巻き込んで、バトロワごっこが開催されるよ~!」
 夕暮れ時、霊夢が境内を箒で掃いていると、いま掃き終わったばかりのところに、文が新聞紙を落としていった。
 溜息をひとつ吐いて、緩慢な動作で新聞紙を拾う。と、文の新聞にしては、面白そうな見出しが踊っていた。
 ――バトロワごっこ開催決定!
 霊夢は、この記事のサブタイトルに目をやった。
 ――幻想郷中を巻き込んだ総勢三十二名によるサバイバルゲーム!
 なんだこれ?
 ――優勝賞品はなんと「願い事をひとつ叶える権利」
「なんだこれ?」霊夢ははてなと首をひねった。「新手の異変かしら?」
|