H17. 8.10 松山地方裁判所 平成16年(ワ)第218号 損害賠償請求事件

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判        決 主        文 1 被告Dは,原告Aに対し,4246万3033円及びこれに対する平成15年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,4242万9816円及びこれに対する平成15年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で被告Eと連帯して)を支払え。 2 被告Eは,原告Aに対し,被告Dと連帯して4242万9816円及びこれに対する平成15年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告Aのその余の請求をいずれも棄却する。 4 原告Bの請求をいずれも棄却する。 5 原告Cの請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告Aに生じた費用の3分の2と,被告らに生じた費用の3分の2を被告らの負担とし,被告らに生じた費用の3分の1を原告らの負担とし,原告Aに生じた費用の3分の1を同人の負担とし,原告Bに生じた費用は同人の負担とし,原告Cに生じた費用は同人の負担とする。 7 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨 (1) 原告A  被告らは,原告Aに対し,連帯して7226万9963円並びに内6576万9963円に対する平成15年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内650万円に対する平成11年12月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 原告B  被告らは,原告Bに対し,連帯して550万円及びこれに対する平成11年12月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  (3) 原告C  被告らは,原告Cに対し,連帯して550万円及びこれに対する平成11年12月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (5) 仮執行宣言  2 請求の趣旨に対する答弁 (1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因 (1) 原告Aの請求 ア 本件事故の発生 (ア) 発生日時 平成11年12月9日午前7時47分ころ (イ) 発生場所 愛媛県東予市(現在の西条市)ab番地c先路上 (以下,「本件現場」という。) (ウ) 事故当事者及び運転車両 a 被害車両 原告Aが運転する自転車(以下「原告自転車」という。) b 加害車両 被告Dが運転する軽乗用自動車(以下「被告自動車」という。) c 加害車両の所有者 被告E (エ) 事故態様 a 本件事故発生時,原告Aは,原告自転車を運転し,東予市道に向けて路地を進行し,本件現場である路地と東予市道との交差点で右折した後,東予市道をd方面に進行しようとしていた。 b 本件事故発生時,被告Dは,被告自動車を運転し,国道196号線から東予市道に入り,最高制限速度(時速30キロメートル)を上回る時速約65キロメートルで,東予市道をd方面に進行していた。被告Dは,路地から東予市道に入ってきた原告Aを認め,急制動の措置をとったが,間に合わず,被告自動車を原告Aに衝突させた。 イ 責任原因 (ア) 被告D  被告Dは,制限速度規制を遵守し,かつ,交差点の手前では交差点に進入してくる車両などの有無及びその安全を十分に確認して走行すべき注意義務があるのにこれを怠り,漫然と被告自動車を走行させて原告Aに衝突させ,原告Aに傷害を負わせたのであるから,民法709条に基づき,本件事故により原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。 (イ) 被告E  被告Eは,本件事故発生時,被告自動車の所有者であり,同車の運行供用者であったから,自動車損害賠償保障法3条に基づき,本件事故により原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。 ウ 傷害,治療の状況 (ア) 本件事故により,原告Aは,以下の傷病を負った。  急性硬膜下血腫,脳挫傷,左腓骨骨折,症候性てんかん,遷延性意識障害,顔面瘢痕及び両下肢瘢痕 (イ) 入通院状況  (ア)の傷病のため,本件事故後,原告Aは,症状固定日である平成15年3月31日まで,以下のとおり入通院治療を受けた。 入院日数  122日 実通院日数 252日 エ 後遺症  本件事故によって,原告Aは以下の後遺障害を負った。 (ア) 神経系統の機能又は精神の障害(自賠法施行令2条後遺障害別等級表別表第2,第9級10号) a 高次脳機能障害  原告Aには,性格変化,会話能力の低下,記憶力の低下,及び理解力の低下が見られ,高次脳機能障害が存在する。  原告Aは,本件事故により,頭部に強い衝撃を受け,急性硬膜下血腫,脳挫傷,頭部打撲,挫創などの重度の頭部外傷を負った。受傷直後の頭部CTによって右硬膜下血腫と診断されていることからも,原告Aが高次脳機能障害を残しかねないほど重度な頭部外傷を負ったことは明らかである。  また,原告Aは,救急車の現場到着時及び病院搬送時(午前8時5分ころ)に,ジャパン・コーマ・スケール(JCS)で「300(痛み刺激に反応しない。)」に該当する最も重篤な意識レベルであった。その後,午前10時30分から午後12時まで手術が行われ,入院しICUに入ったが,入院時でも「200(痛み刺激で手足を少し動かしたり顔をしかめる。)」の意識レベルであった。呼名にてゆっくり開眼(JCSレベルⅡ10)したのは,平成11年12月17日になってのことである。結局,深昏睡は約1時間,昏睡は1日以上,意識障害は最短でも9日間は継続した。このような状態であったことからして原告Aには永続的な高次脳機能障害が残る可能性が高いというべきである。  上記の程度からすると,原告Aの高次脳機能障害は,後遺障害等級9級に該当するというべきである。 b てんかん 原告Aには,本件事故後,意識消失発作が起こるようになり,最近では,平成16年5月26日に意識消失発作が起こっており,現在も,意識消失とまでならなくても目の前が真っ白になる発作は月に2,3回のペースで起きている。原告Aは,現在,抗てんかん薬としてデパケンを服用しており,これによりてんかん発作の発生を相当程度抑制できている状態である。  てんかんでは,「数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの」は,後遺障害等級9級に該当するとされ,原告Aのてんかんは後遺障害9級に該当することは明らかである。 c 頭痛  現在,原告Aは,2日に1回の割合で激しい頭痛に襲われており,鎮痛剤(テルネリン,ロキソニン)を服用しなければ授業や勉学ができなくなる状態である。  頭痛では,「通常の労務に服することはできるが激しい頭痛により,ときには労働に従事することができなくなる場合があるため就労可能な職種の範囲が相当程度制限されるもの」は,後遺障害等級9級に該当するものとされているが,原告Aの頭痛は後遺障害9級に該当することは明らかである。 (イ) 外貌醜状(後遺障害別等級表 第7級12号)  原告Aには,前頭部から右頭頂部・右側頭部に欠けての手術創,左後頭部の瘢痕,右眉内側部の裂創痕,左下腿部及び右膝部の手術痕及び瘢痕が残存する。  (ウ) 身体的障害(後遺障害別等級表非該当)  原告Aには以下のような身体的障害が残っている。 a 関節の可動域制限 股関節,膝関節及び足関節に軽度の可動域制限が存在する。 b 右片麻痺  原告Aは,右半身に軽度の麻痺を残している。 c 感覚障害  原告Aは,右半身の温痛覚が鈍麻しており,左右差が生じている。 d 上下肢周径の非対 大腿 下腿最大 下腿最小  上腕  前腕 足の甲 左 41.0cm 34.0cm 20.5cm 25.0cm 21.0cm 22.0cm 右 41.0cm 32.0cm 19.5cm 23.5cm 21.0cm 20.5cm 原告Aは,左下肢,特に下腿から足の周径は右に比べ大きい。骨折による慢性的な腫脹と右片麻痺による機能低下による差と考えられる。現状では一目で分かるほどの下肢周径の左右差が存在している。 e 下肢筋力低下(徒手筋力検査)  股関節 膝関節 足関節 屈曲 伸展 外転 屈曲 伸展 背屈 底屈 右 4 5 4+ 5 4 4+ 4+ 左 5 4+ 5 4+ 5 5 5 徒手筋力検査においては,正常値が「5」であり,筋力が低下するほど値が小さくなる。原告Aの下肢筋力は,大きく低下しているわけではないが,低下が明らかである。 f 右上肢の筋力低下  原告Aの利き手は右であるが,右側の握力の数値が16kgで左側の数値19kgよりも低い値になっている。右片麻痺による機能低下により,右上肢の筋力が低下していると思われる。 g 両下肢の安静時肢位の非対称  両下肢の安静時肢位は,右下肢が外旋で左下肢が内旋である。これは左下腿骨を骨折し,一時的に腓骨に偽関節が残っていたことの影響と思われる。 h 歩行異常  遊脚時に右下肢外旋,左下肢は内旋する。これも,左下腿骨を骨折し,一時的に腓骨に偽関節が残っていたことの影響と思われる。 オ 原告Aの損害  原告Aは,本件事故によって,以下の損害を負った。 (ア) 治療関係費 495万8154円 a 治療費 236万9074円  原告Aは症状固定日までの治療費として,236万9074円を支出した。 b 入院雑費 18万3000円  原告Aは,上記のとおり122日間入院し,一日あたり1500円,計18万3000円の入院雑費を支出した。 c 近親者付添費 173万2000円 (a) 原告Aは,入院期間中,付添看護を要し,毎日,原告Aの両親である原告B及び同Cが付き添った。 (b) 通院時は原告B又は同Cが必ず原告Aに付き添った。 (c) 入院期間中は日額8000円,通院時は日額3000円が近親者の付添看護料として相当であり,次のとおり,計173万2000円が,原告Aの損害として相当である。 8,000×122+3000×252=1,732,000 d 交通費 18万7000円 (a) 付添交通費  原告B及び同Cは,原告Aの入院期間中,原告Aに付き添うため,毎日,車で自宅からF病院に行った。  自宅からF病院までの往復のバス運賃は500円であり,原告B及び同Cが付添いのために要した交通費としては日額500円が相当であり,次のとおり,計6万1000円が原告Aの損害として相当である。 500×122=61,000 (b) 通院交通費  原告Aは,原告B又は同Cに車で送り迎えされて,F病院に252日間通院した。原告Aが通院のために要した交通費としては日額500円,計12万6000円が相当である。 500×252=126,000 e 装具代 9万2030円  原告Aは,本件事故による障害のため,代金合計9万2030円の短下肢装具を作成・購入した。 15,244+61,954+14,832=92,030 f 医師への謝礼 3万3965円 (a) 原告Aは,G医師に対して,謝礼として,1万3965円のペアのコーヒーカップを贈った。 (b) 原告Aは,脳神経外科の医師3人及び整形外科の医師1人に対し謝礼として,5000円のボールペンをそれぞれ1本贈った。 13,965+5,000×4=33,965 g 症状固定時からの4年間の治療費  10万5781円 (a) 原告Aは,症状固定時から4年後の大学卒業時まで,抗けいれん剤,及び頭痛のための鎮痛剤の服用を続ける必要があり,また,抗けいれん剤や鎮痛剤の服用の前提として,脳神経外科及び整形外科の受診が必要である。 (b) 上記治療のために,診療費が月額平均1105円,薬代が月額平均1381円が必要である。 (c) 年5分の割合の中間利息をライプニッツ方式で控除した結果,症状固定時である18歳時から大学卒業までの4年間の治療費として,計10万5781円が相当である。 (1,105+1,381)×12×3.5459=105,781 h 症状固定時からの4年間の通院交通費  25万5304円 (a) 原告Aは,症状固定後,上記gの治療のため,平均年10回,H大学のある広島からF病院に通院している。 (b) 広島から今治までの交通費は片道3600円である。 (c) 年5分の割合の中間利息をライプニッツ方式で控除した結果,症状固定時から4年間の通院交通費として,計25万5304円が相当である。 3,600×2×10=72,000 72,000×3.5459=255,304 (イ) 通学関係費 300万5780円 a 通学交通費 60万0340円  原告Aは,本件事故による障害により自転車通学が不可能となったため,原告B又は同Cの車での送り迎えで,実日数で,I中学校に26日間,J高校に749日間通学した。  自宅からI中学までのバス運賃は片道310円,自宅からJ高校までのバス運賃は片道390円である。  よって,原告Aが通学のために要した交通費としては計60万0340円が相当である。 310×2×26+390×2×749=600,340 b 部活動のための移動費 8万0440円 (a) K文化会館までの移動費 3万3280円  原告Aは,J高校でブラスバンド部に所属しており,練習や発表会のためK文化会館に原告B又は同Cの車での送り迎えで,32回行った。  自宅からK文化会館までのバス運賃は片道520円であり,原告AがK文化会館までの移動のために要した交通費としては,一回当たり1040円が相当であり,計3万3280円である。 1,040×32=33,280 (b) その他移動費 4万7160円  原告Aは,ブラスバンド部の活動のため,松山市に4回,今治市に3回,e町に2回,新居浜市に1回,Lまで1回行った。  原告Aの最寄り駅である,M駅から,N駅までの運賃は片道2900円,O駅までの運賃は440円,P駅までの運賃は160円,Q駅までの運賃は440円,Lまでの運賃は9900円であり,原告Aが前記移動に要した交通費は計4万7160円である。 2,900×2×4+440×2×3+160×2×2+440×2×1+9,900×2×1 =47,160 c 通学付添費 232万5000円  原告Aの通学に,原告B又は同Cは,実日数で775日(I中学校への通学日数は26日間,J高校への通学日数は749日間)付き添った。通学付添費としては,1日3000円が相当であり,計232万5000円が原告Aの損害として相当である。 3,000×775=2,325,000 (ウ) 後遺症による逸失利益 4438万2640円 a 原告Aは,エの後遺症により,後遺障害別等級表6級(併合)の認定を受けたもので,その労働能力の67パーセントを喪失した。 b 原告Aは,症状固定時18才で,現在大学に在学している女子であり,大学卒業が見込まれる22才から67才まで45年間就労が可能である。原告Aは,症状固定時満18歳であり,就労開始時期は22歳であるから,18.1687(49年間のライプニッツ係数)から大学在学中の4年間のライプニッツ係数(3.5459)を控除すると,次のとおり,ライプニッツ係数は14.6228となる。 18.1687-3.5459=14.6228 c 平成13年賃金センサスによると女性大卒者の平均年収は453万0100円である。以上によれば,本件事故による逸失利益としては,4438万2640円が相当である。 4,530,100×0.67×14.6228=44,382,640 (エ) 慰謝料 1700万円 a 傷害慰謝料 400万円  原告Aは,本件事故によって,ウ(ア)の意識障害を伴う極めて重篤な傷害を負ったこと,ウ(イ)のとおり入通院治療をしたことによって精神的苦痛を負い,これを慰謝するための慰謝料は400万円が相当である。 b 後遺障害慰謝料 1300万円 原告Aは,本件事故によって,エの後遺障害を負ったことによって精神的苦痛を負い,これを慰謝するための慰謝料は1300万円が相当である。 (オ) 眼鏡代 5万円  本件事故により,原告Aの眼鏡が破損し,使用不能となった。  原告Aの眼鏡のフレーム代は2万2000円,レンズ代は2万8000円であった。 (カ) 制服代 2万8000円  本件事故直後,原告Aに緊急処置を行う際,医師が,原告Aが身につけていた制服及びブラウスを切って脱がせ,バッグの紐を切って外したため,制服,ブラウス,バッグは使用不能となった。  原告Aの制服は2万3400円,ブラウスは2350円,バッグは2250円であった。 (キ) 文書料 6530円  原告Aは,本件事故後,以下の書面を入手し,このために以下の文書料を支出した。 a 事故証明書 1800円 b 診断書 4730円 (ク) 自転車代 6万2000円  本件事故により,原告Aが使用していた原告自転車が使用不能になった。本件事故の後,原告Aは,新たな自転車を6万2000円で購入した。 カ 既受領額 (ア) 治療費  症状固定までの治療費236万9074円は,既に受領済みである。 (イ) 自賠責保険金  原告Aは,平成15年9月30日,自賠責保険金として1296万円を受領した。 (ウ) 内払金  原告Aは,被告らから,内払金として,平成12年5月29日付けで6万円,平成14年6月6日付けで92万9260円,平成15年5月6日付けで20万円の支払を受けている。   内払金合計額 118万9260円 キ オの損害については,抗弁(2)アないしウのとおり填補されている。オ(ア)ないし(ク)の損害に対し,抗弁(2)の既払額のうち治療費の236万9074円を損害額の元本に充当し,自賠責保険金及び内払金は法定充当の方法により充当する。このように充当した結果,未払損害額は6576万9963円となる。 ク 原告Aは,原告ら訴訟代理人に対し,損害額6576万9963円の約10%に当たる650万円の弁護士報酬を支払う旨約した。 ケ よって,原告Aは,被告らに対し,民法709条(被告D),自賠法3条(被告E)に基づく損害賠償請求として連帯して7226万9963円並びに内金6576万9963円に対する最終弁済日の翌日である平成15年10月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金及び内金650万円に対する不法行為の日である平成11年12月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 原告Bの請求  原告Bは,本件事故により以下のような損害を被った。 ア 損害 (ア) 慰謝料  本件事故によって,原告Aが上記傷害,後遺症を負ったことにより,原告Aの親である原告Bは,精神的苦痛を負い,これを慰謝するための慰謝料は,500万円が相当である。 (イ) 弁護士費用  原告Bは,原告ら訴訟代理人に対し,本件訴訟の提起,追行を委任し,50万円の報酬を支払うことを約した。 イ よって,原告Bは,被告らに対し,民法709条(被告D),自賠法3条(被告E)に基づく損害賠償請求として,連帯して550万及びこれに対する不法行為の日である平成11年12月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (3) 原告C  原告Cは本件事故により,以下のような損害を被った。 ア 損害 (ア) 慰謝料  本件事故によって,原告Aが上記の傷害,後遺症を負ったことにより,原告Aの親である原告Cは,精神的苦痛を負い,これを慰謝するための慰謝料は,500万円が相当である。 (イ) 弁護士費用  原告Cは,原告ら訴訟代理人に対し,本件訴訟の提起,追行を委任し,50万円の報酬を支払うことを約した。 イ よって,原告Cは,被告らに対し,民法709条(被告D),自賠法3条(被告E)に基づく損害賠償請求として,連帯して550万及びこれに対する不法行為の日である平成11年12月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否(被告D及び被告E) (1) 請求原因(1)ア,イ及びウ(ア)は認める。 (2) 請求原因(1)ウ(イ)のうち,入院日数が122日であること及び通院の事実は認め,実通院日数は否認する。実通院日数は243日である。 (3) 請求原因(1)エ(ア)aは否認する。  高次脳機能障害については,原告Aの事故後の生活状況等を精査して判断されるべきである。  原告Aは,本件事故後,事故による休学のため卒業が一年遅れたことはあったものの,J高校を卒業し,4年制のH大学に合格している。  原告Aは,現在,同大学に就学しているが,2人部屋の寮に入り,授業も概ね理解でき,ノートも自分でとり,パソコンも使いこなせており,成績も中程度で吹奏楽部に入りトランペットを演奏し,さらには,平成16年6月8日には担当医師から水泳実習もやっていいとの診断がされている。また,原告AはJ高校卒業時に自動車の運転免許を取得し,現在も帰省した際に助手席に母親を乗せて車の運転をしている。  原告Aは,平成17年3月28日に行われた本人尋問にも各質問に対して即座に的確な回答をした。  以上のように,原告Aの本件事故後の状況を見ると,脳機能障害は相当程度回復しており,9級の労働能力喪失率35%で労働能力喪失期間を67歳まで認定するのは妥当でなく,労働能力喪失率を20%程度とするか,労働能力喪失期間を45年ではなく30年程度に制限すべきである。 (4) 請求原因(1)エ(ア)bは否認する。  原告Aには,平成13年に数回てんかん発作が認められたものの,平成14年3月以降,失神発作は消失しており,F病院のR医師も平成17年2月21日の診断で,「大学卒業前に薬中止。2005年夏から薬減量していく。」と判断している。脳波検査についても平成13年5月31日の検査と平成15年1月28日の検査とを比較すると後者の検査結果のほうが良くなっている。原告Aがてんかん発作があったと主張している平成16年5月26日の意識喪失については,主治医のR医師もてんかん発作ではなく貧血と診断している。 (5) 請求原因(1)エ(ア)cは否認する。 (6) 請求原因(1)エ(イ)は否認する。  原告Aには,① 前頭部から右頭頂部,右側頭部にかけての手術痕,② 左後頭部の瘢痕,③ 右眉内側部の裂創痕,④ 左下腿部及び右膝部の手術痕及び瘢痕がある。このうち,①及び②の頭部の手術創,瘢痕については髪の毛で隠すことができ,③の右眉の裂創痕については化粧で隠すことができる。左下腿部及び右膝部の手術痕及び瘢痕についてはズボンやハイソックスで隠すことができる。  原告Aは,4年制の大学に進学し,小学校の教員を目指しており,原告Aが通っている大学では,小学校教員1種,幼稚園保健士1種,図書館司書,学校図書館教諭,学芸員,保育士,認定心理士の資格がとれるなど選択肢がかなりある。  以上のとおり,原告Aの外貌醜状の部位,程度は形状及び変色の程度がそれほど人目につくものではない上,化粧や髪等で隠すことが可能であり,原告Aが現在希望している小学校の教員に採用されると現実的には減収は生じない。仮に小学校の教員以外に就職するとしても就職する職種が制限されるほどの程度ではない。 (7) 請求原因(1)エ(ウ)は否認する。 (8) 請求原因(1)オ(ア)aは認める。 (9) 請求原因(1)オ(ア)bは,入院雑費が日額1500円が相当であるとの点は争い,その余は認める。日額1100円が相当である。 (10) 請求原因(1)オ(ア)cのうち,入院時の69日間,通院時の243日間の付添いの事実は認め,その余は否認ないし争う。入院付添看護料については,日額4000円,通院付添料については日額2000円が相当である。 (11) 請求原因(1)オ(ア)dは知らない。 (12) 請求原因(1)オ(ア)eは認める。 (13) 請求原因(1)オ(ア)fは知らない。 (14) 請求原因(1)オ(ア)g及びhは否認する。 (15) 請求原因(1)オ(イ)は知らない。 (16) 請求原因(1)オ(ウ)は,後遺障害別等級表6級(併合)の認定を受けたことは認め,その余は否認する。基礎収入345万3500円,労働能力喪失率20パーセント,労働能力喪失期間30年を基礎として計算するのが相当である。 (17) 請求原因(1)オ(エ)は損害の額について争う。 (18) 請求原因(1)オ(オ)ないし(ク)は知らない。 (19) 請求原因(1)カは認める。 (20) 請求原因(1)キは争い,同クは否認する。 (21) 請求原因(2)アは否認する。 (22) 請求原因(3)アは否認する。 3 抗弁(被告D及び被告E) (1) 過失相殺(請求原因(1)に対して)  本件現場は,被告Dが走行していた道路の幅員が4.4メートルから5.5メートル,原告Aが走行してきた路地の幅員が約1.8メートルの信号機のない交差点であり,原告Aは,本件現場の交差点に進入する際に一時停止することなく左側の安全確認を十分にしないで交差点に進入した。道路は,被告Dが走行していた方が明らかに広い道路であり,過失の基本割合は,原告Aが3割,被告Dが7割である。被告Dに速度超過の減算要因があったとしても1割は過失相殺されるべきである。 (2) 弁済(請求原因(1)に対して) ア 治療費分 (ア) 被告らが契約するS損害保険株式会社(以下,「S損保」という。)は,請求原因(1)ウ(イ)の原告Aの入通院後,F病院及びT病院に対し,合計236万9074円を支払った。 (イ) 元本充当の合意  (ア)の支払において,原告A,被告ら及びS損保は,請求原因(1)オの損害の元本に充当するとの合意をした。   イ 自賠責保険  原告Aは,平成15年9月30日,オの損害について,自賠責保険金として,1296万円を受領した。   ウ 内払金  S損保は,原告Aに対し,オの損害について,内払金として平成12年5月29日に6万円,平成14年6月6日に92万9260円,平成15年5月6日に20万円をそれぞれ支払った。 エ 装具代 S損保は,請求原因(1)オ(ア)eの装具代として,U義肢製作所に対し,平成12年5月31日に6万1954円,同年8月4日に1万5244円,平成15年2月18日に1万4832円をそれぞれ支払った。 4 抗弁に対する認否(原告A) (1) 抗弁(1)は否認する。 (2) 抗弁(2)アないしウは認める。 (3) 抗弁(2)エは争うことを明らかにしない。 理由 第1 原告Aの請求について 1 本件事故の発生,責任原因 (1) 請求原因(1)アは当事者間に争いがない。 (2)(ア) 請求原因(1)イ(ア)の被告Dの運転態様については当事者間に争いがなく,前記認定の本件事故態様に照らし,本件事故は,被告Dの過失によって惹起されたものであると認められる。 (イ) 請求原因(1)イ(イ)のうち被告Eが,本件事故発生時,被告自動車の所有者であったことは当事者間に争いはなく,同人が同車の運行供用者であったことが認められる。 2 被害,治療の状況 (1) 請求原因(1)ウ(ア)は当事者間に争いがない。 (2) 請求原因(1)ウ(イ)のうち,原告Aの入院日数が122日であることは当事者間に争いがなく,甲25号証によれば,原告Aの実通院日数は247日間であると認められる。   3 後遺症 (1) 神経系統の機能又は精神の障害 ア 原告Aが,自賠責保険の後遺障害等級認定において,頭部外傷後の症状につき,後遺障害等級表の9級10号と認定されたことは当事者間に争いはない。 イ 原告Aの高次脳機能障害の有無その程度について判断する。 (ア) 甲38号証によれば,高次脳機能障害については,一般に以下のとおり考えられていることが認められる。 a 発症の原因としては,主として脳外傷によるびまん性脳損傷を原因として発症するものではあるが,局在性脳損傷(脳挫傷,頭蓋内血腫等)との関わりも否定できず,高次脳機能障害は,意識消失を伴うような頭部外傷後に起こりやすい。特に,脳外傷において,外傷直後,昏睡から半昏睡で,刺激により開眼しない程度の意識障害がおよそ6時間以上継続するケースでは,永続的な高次脳機能障害が起こりやすい。 b 典型的な症状としては,全般的な認知障害(記憶・記銘力障害,集中力障害,遂行機能障害,判断力低下等)と,人格変化である。 c 外傷後,症状の快復が急速に進み,それ以降は目立った快復が見られなくなるため,等級認定に際しては,一般には1年程度を目処に認定すべきである。幼児や児童は,回復力が強いため,より経過観察が必要である。 (イ) 証拠(甲4号証1及び2,甲39,乙10)及び弁論の全趣旨によると,本件事故により,原告Aは頭部外傷を負い,外傷性急性硬膜下血腫,脳挫傷等の脳外傷を負ったこと,本件事故直後は,痛み刺激にも反応しない深昏睡状態が1時間ほど続き,その後も,刺激によって開眼しない程度の意識障害が,平成11年12月17日までの8日間にわたって継続したことが認められる。 (ウ) また,証拠(甲8,9,10,43,44,原告A,原告B)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 a 原告Aは,本件事故前においては,会話の中心となってテキパキと話をしていたが,本件事故後には,思考にも会話にも時間がかかるようになり,緊張状況におかれるとどもったり,結論にたどりつくまで時間がかかるようになった。 b 原告Aは,本件事故後,記憶力が低下し,試験勉強に支障が生じており,日常生活においても昨日の夕食の献立を忘れたり,昨日会った人をだいぶ前に会った人と思ったりなどの記憶力の低下が生じている。 c 以上によれば,現在,原告Aには,本件事故後,性格の変化,記憶力の低下,会話能力の低下,集中力低下,判断能力低下の症状があるということができる。 (エ) 以上の事実によると,原告Aには,本件事故の後遺症として,高次脳機能障害が存するということができる。 (オ) これに対し,被告らは,原告Aは,本件事故後,高校を卒業し,4年制のH大学に合格し,同大学に就学し,2人部屋の寮に入り,授業も概ね理解でき,ノートも自分でとり,パソコンも使いこなせており,成績も中程度で吹奏楽部に入りトランペットを演奏し,さらには,平成16年6月8日には担当医師から水泳実習もやっていいとの診断がされていること,また,原告AはJ高校卒業時に自動車の運転免許を取得し,現在も帰省した際に助手席に母親を乗せて車の運転をしていることなどを述べ,脳機能障害は相当程度回復しており,労働能力喪失率を9級の35%,労働能力喪失期間を67歳までの45年間と認定するべきでなく,労働能力喪失率を20%程度とするか,労働能力喪失期間を30年程度に制限すべきであると主張する。  しかしながら,被告ら主張の事実は存するとしても,原告Aには上記認定のような症状が残存し,高次脳機能障害の性質上,これは今後も続くものと考えられるのであって,被告らが主張するような制限を付するのは相当でない。 ウ 原告Aのてんかんについて判断する。  証拠(甲8,9,13,40号証の3,43,44,乙10,原告A,原告B,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (ア) 原告Aは,平成13年4月7日に自転車に乗っていたところ,失神発作を起こし,田に転落した。 (イ) 平成13年5月29日にF病院の診察を受けた際,原告Aは,G医師に,5月25日,27日,28日にフーとなる状態となったことを告げた。同月31日に同病院の診察を受けた際も,原告Aは同医師に対し,同日,フーとなったことを申告した。同年7月26日に,同病院の診察を受けた際,原告Aは,同医師に対し,右手に持っているものを落とすことがあると申告した。同年12月12日にも,一瞬フーとなることがあるとか,物を取り落とすことがあるなどと申告した。平成14年2月12日の診察の際には,授業中,黒板のピントが合わずフワーとなり,天井が回って目が回ったと申告した。同年6月18日の診察の際には,物を落としたり,つまずいたりすると申告している。 (ウ) 原告Aは,現在でも意識が完全に消失するほどの発作はないが,目の前が真っ白になるなどの発作が多いときで月に2,3回ある状態である。 (エ) 原告Aは,症状固定後の現在も,てんかん指導,投薬を受けているが,服薬によって意識消失発作は起きていない。なお,調査嘱託の回答書において,R医師は,平成14年3月以降,失神発作は消失と記載しているが,これが意識の完全消失といえる発作以外のものも消失したという趣旨か判然としないのであり,この記載をもって原告A本人尋問の結果による前記認定を覆すものとはいえない。 (オ) てんかんの投薬治療期間について,以前には「成人になるまで」と診断されたが,それが延びて,現在は,大学卒業までと診断されている。  以上の事実によれば,原告Aには,本件事故の後遺障害として症候性てんかんが存在し,服薬継続によりてんかん発作が完全に消失してはいないが,ほぼ抑制されている状態であるということができる。 エ 頭痛について判断する。  証拠(甲8,9,13,40号証の1及び2,43,44,47,調査嘱託の結果,原告A,原告B)によれば,原告Aには,本件事故の後遺障害として,現在も継続して,およそ2日に1回の割合で激しい頭痛が存在し,症状がひどい場合には何もできず,休む状態にあること,頭痛薬が投薬されているが,投薬治療期間は現在のところ特に区切られておらず,一生服薬を続ける必要があると医師から告げられていることが認められる。 オ 以上の事実によれば,原告Aに認められる上記イないしエの症状については,自賠責等級表の9級10号「神経系統の機能又は精神的に障害を残し,服することが出来る労務が相当な程度に制限されるもの」に該当し,9級相当の35%の労働能力喪失が認められる。 (2) 外貌醜状について判断する。 ア 原告Aが,自賠責保険の後遺障害等級認定において,外貌醜状につき,後遺障害等級表の7級12号と認定されたことは争いがない。 イ 証拠(甲8,10,31,32,乙10,原告A)によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 原告Aには,本件事故の結果,① 前頭部から右頭頂部・右側頭部にかけての手術創,② 左後頭部の瘢痕(円形脱毛症),③ 右眉内側部の裂創痕,④ 左下腿部及び右膝部の手術痕及び瘢痕が残存してしまった。 (イ) 原告Aは,上記①及び②の頭部の手術創及び瘢痕を隠すために,髪の毛全体をヘアピンでとめなければならず,必然的に髪型も限られてしまう状態である。また,同様に,上記③の右眉の裂創痕を隠すために,時間をかけて化粧をしなければならない。このような髪をくくる作業と化粧の作業とで1時間程度かかってしまう。 (ウ) 原告Aは,上記④の手術痕及び瘢痕を隠すためにズボン又はハイソックスを着用せざるを得ない状態である。  以上のことからすると,原告Aには,上記瘢痕等により,作業能率の低下が生じるおそれがあり,服装について厳格な定めのある職場での稼働が困難となるおそれがあることは否めない。そして,このことによる労働能力喪失率は,15%とみるのが相当である。 (3) 身体的障害について 証拠(甲4,8,43)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aには,請求原因(1)エ(ウ)の身体的障害が認められるが,これをもって労働能力が喪失したとまでは認定できない。 (4) 以上の事実を総合すると,原告Aは,本件事故の後遺障害として,50%の労働能力を喪失し,その喪失期間は,大学卒業時の22才から67才までの45年間とみることができる。 4 損害とその数額 (1) 治療費   236万9074円  原告Aが症状固定日までの治療費として236万9074円を支払ったことは,当事者間に争いはない。 (2) 入院雑費   18万3000円  入院雑費に関し,原告Aの入院期間が122日間であることは当事者間に争いはなく,入院雑費の日額は1500円とするのが相当であるから,本件事故による入院雑費は18万3000円であると認めるのが相当である。 1,500×122=183,000 (3) 付添看護料  118万9500円 ア 近親者付添費については,入院期間中の69日間,通院期間中の243日間については,原告B又は同Cが原告Aに付き添ったことについては当事者間に争いはない。 イ 上記のとおり,原告Aの入院日数は122日間,実通院日数は247日間と認められ,甲43号証及び弁論の全趣旨によれば,平成11年12月9日から原告Aが開眼するまでの同月17日までの入院期間(9日間)は原告B及び同Cが,その後の入院期間(113日間)及び通院時(247日間)には原告B又は同Cが毎日付き添ったことが認められる。 ウ 前記認定のとおり,原告Aは,本件事故により,意識不明の重体に陥るような頭部外傷等を負ったのであり,当初の平成11年12月9日から平成12年2月15日までの69日間の入院につき,家族の付添看護が必要であったと認めることができる。それ以外の入院については,病院の看護に加え,特に家族の付添看護が必要であるとの事情を認めるに足りない。通院については,前記認定のとおり,原告Aのてんかん発作による意識消失や身体障害に照らすと,全通院期間(247日間)付添看護の必要性は認められる。そして,入院期間中の付添看護料については,日額6500円が,通院期間中の付添看護料については日額3000円とするのが相当であり,本件事故による付添看護料は118万9500円と認められる。  入院付添費  6,500×69=448,500  通院付添費 3,000×247=741,000  付添費合計 448,500+741,000=1,189,500 (4) 通院交通費  3万9500円 ア 上記認定のとおり,原告Aの入院日数は122日であり,原告B又は同Cは毎日付き添った。また,原告Aの実通院日数は247日である。 イ 証拠(甲16,43,原告B)及び弁論の全趣旨によれば,入通院時,原告らの自宅からF病院までは,原告らの自家用車で移動したこと,入院時,原告B又は同Cは同病院と自宅を一日に複数回往復することがあったこと,自宅から同病院までの1人あたりのバス料金が往復500円であることが認められる。 ウ 自家用車での移動に要する実費は,通常,バス料金よりも低額であるが,少なくともバス料金の4分の1程度の額は必要になると考えられる。原告Aの入院時に付添看護のため要した交通費としては,日額バス料金の4分の1の125円,原告Aの通院時の通院交通費としては,日額バス料金の4分の1の125円とするのが相当であり,本件事故のため入通院に要した交通費は,3万9500円と認められる。   入院の際の交通費 125×69=8,625 通院の際の交通費 125×247=30,875    合計 8,625+30,875=39,500 (5) 装具代    9万2030円  原告Aが本件事故の障害のため,短下肢装具を作成,購入したこと,その代金の合計額が9万2030円であることは当事者間に争いはない。 (6) 医師への謝礼 3万3965円  証拠(甲12号証の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aが担当医師であったG医師が転勤した際に謝礼としてペアのコーヒーカップ(1万3965円)を贈ったこと,脳神経外科の医師3名及び整形外科の医師1名に対し,謝礼としてボールペン(5000円×4本)を贈った事実が認められ,医師への謝礼として相当な範囲内の金額であるので,これを損害として認めることができる。 (7) 症状固定後の治療費,通院交通費  33万9809円 ア 上記認定によれば,原告Aには,高次脳機能障害,症候性てんかん,頭痛等の後遺症が認められる。また,証拠(甲8,13,14号証の1ないし17,15号証の1ないし8,17,19,第40号証の1ないし3,調査嘱託の結果,原告A,原告B)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (ア) 原告Aは,症候性てんかん及び頭痛のため,少なくとも,症状固定時(平成15年3月31日)から,大学卒業までの4年間は通院治療を受ける必要がある。そして,症候性てんかんの抑制及び頭痛の抑制のため,この通院治療は不可欠のものということができるから,症状固定後のものではあるが,相当因果関係内のものというべきである。 (イ) 原告Aは,平成15年4月から平成16年1月までの10か月間に以下のとおり,治療費を支出した。 a 診察料(脳神経外科分)  6050円 1,320+960+550+1,300+210+960+750=6,050 b 薬品代          1万3810円 1,460+1,370+1,440+2,470+500+3,280+2,880+410=13,810  この投薬は,抗てんかん剤であるデパケン,頭痛鎮痛剤であるテルネリン及びロキソニンが主なものである。 (ウ) 原告Aは,(ア),(イ)の治療のため,平成15年3月以降,平均して1年10回,H大学からF病院に通院している。 (オ) 広島市から愛媛県今治市までのバス料金は片道3600円である。 イ(ア) 治療費  8万4505円  以上の事実から,症状固定時からの4年間のてんかん及び頭痛の治療費を損害として認める。  1月当たりの診療費として,脳神経外科分(てんかん・頭痛)が605円である。  1月当たりの薬品代としては,脳神経外科分として1381円が相当である。  以上の結果をもとに,年5分の割合の中間利息をライプニッツ方式で控除した結果,症状固定後の4年間の通院治療費につき8万4505円とするのが相当である。 (605+1,381円)×12×3.5459=84,505 (イ) 通院交通費  25万5304円  アの事実から,原告Aは,年間10回は,通院のために広島市から愛媛県今治市まで移動する必要があると認められ,その際に少なくとも片道3600円の交通費を要すると認められるから,以上の結果をもとに,年5分の割合の中間利息をライプニッツ方式で控除した結果,症状固定後の4年間の通院交通費は25万3144円とするのが相当である。  3,600×2×10×3.5459=255,304 (8) 通学交通費及び通学付添費  42万6800円 ア 証拠(甲4号証の1ないし8,9号証,16,25,43,44,原告A,原告B)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 原告Aは,本件事故当時,I中学校の3年生であって,本件事故後平成12年2月15日に退院し,同校に通学し,高校を受験し,同中学校を卒業した。 (イ) 原告Aは,平成12年4月,県立のJ高校に入学し,平成15年3月に卒業するまで,同校に通学した。同校在学中,原告Aは入院治療や,頭痛などのために,欠席をすることがあった。 (ウ) 原告Aは,本件事故以前は自転車通学を行っていたが,本件事故後(ア)(イ)の通学は,ほぼ毎日,往復とも,原告B又は同C運転の自家用車で行った。(J高校への自転車通学を試みたが,意識消失発作を起こして断念し,その後は,自転車通学は行わなかった。) (エ) 原告Aは,本件事故により足を骨折し,原告Cは,I中学校及びJ高校(松葉杖なしで歩行できるようになった平成12年7月12日まで)への通学の際,校内に入って,階段の移動など付添看護を行った。 (オ) 原告らの自宅から,I中学校までの往復のバス料金は620円,J高校までの往復のバス料金は780円である。 イ 通学交通費  21万6800円 (ア) 以上の事実に照らすと,本件事故後,原告Aは少なくとも20日は,I中学校に通学したと推認できる。 (イ) 以上の事実に照らし,原告AのJ高校への通学日数を検討すると,同校が県立高校であり,週に2日間は休みがあり,祝日及び春期・夏期・冬季休暇があることを検討した結果,年間に200日は,出席を求められると考えられる。 原告Aは,上記のとおり欠席をしていること,3年間で卒業していることを考え合わせると,年間に少なくとも200日間の9割の180日間は,J高校に自家用車で通学したと推認できる。 (ウ) 自家用車での通学に要する実費は,通常,バス料金よりも低額であるが,少なくともバス料金の4分の1程度の額は必要になると考えられ,1日2往復が必要となると考えられるから,I中学校通学時は日額310円,J高校通学時は日額390円とするのが相当である。 (エ) そうすると,本件事故による通学交通費は21万6800円が必要かつ相当な損害と認められる。   310×20+390×180×3=216,800 ウ 通学付添費  21万円  アの事実に照らすと,I中学校においては少なくとも20日間,J高校において,平成12年7月12日まで少なくとも70日間は,原告Cは,原告Aの付添看護をしたと認められる。  通学付添費は1日当たり3000円が相当であると認められ,本件事故による通学付添費は21万円であり,必要かつ相当な損害であると認められる。     3,000×70=210,000 (9) 部活動のための移動費  部活動のための移動費(請求原因(1)オ(イ)b(a)及び(b))の事実は,本件全証拠によっても,これを認めるに足りない。  なお,ブラスバンド部の活動のために費用を支出した事実(請求原因(1)オ(イ)b(b))が認められたとしても,これらの移動に伴う交通費の支出については,本件事故との相当因果関係の主張立証が不十分であり,本件事故による損害としては認められない。 (10) 後遺症による逸失利益   3260万0801円 ア 本件事故により,原告Aは,上記3で認定したとおりの後遺障害を負った。 イ 証拠(甲19,43,44,乙1,原告A,原告B)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,昭和59年○月△△日生まれで,症状固定日(平成15年3月31日)後,H大学V学部W学科に入学し,現在も在学中であること,卒業後は,小学校教諭になることを目指して,実習等を受けていることが認められる。 ウ 以上の事実を前提に,原告Aの後遺症による逸失利益について判断する。 (ア) 基礎収入 445万8900円  現在原告Aは大学に在学しており,逸失利益算定の基礎収入としては,女子大学卒業者の全年齢平均年収を基礎とするのが相当であり,平成15年賃金センサスによるとこれは445万8900円である。 (イ) 労働能力喪失率  50% (ウ) 労働能力喪失期間 45年間 (エ) 以上をもとに,年5分の割合の中間利息をライプニッツ方式で控除して算出した結果,本件事故の後遺症による原告Aの逸失利益は,3260万0801円となる。  4,458,900×0.50×(18.1687-3.5459)=32,600,801 (11) 慰謝料 1350万円 ア 傷害慰謝料 350万円  原告Aが本件事故により,請求原因(1)ウ(ア)の傷害を負ったこと,これにより開眼しない意識障害が8日間も続いたこと及び122日間の入院,247日間の通院を余儀なくされたことは上記認定のとおりである。また,証拠(甲44,乙2)によれば,原告Aは,本件傷害によって,平成11年12月9日,平成12年1月6日,平成14年11月と長期に渡って複数回の手術を受けていることが認められる。  以上の事情から,原告Aが本件事故で受けた傷害によって,精神的苦痛を負ったことは容易に推認され,これを慰謝するための慰謝料としては,350万円が相当であると認める。 イ 後遺障害慰謝料 1000万円  本件事故により,原告Aは,上記3で認定したとおりの後遺障害を負ったこと,本件事故当時,原告Aが中学3年生であったことは上記認定のとおりである。  原告Aが本件事故で負った後遺障害により,精神的苦痛を負ったことは容易に認められ,これを慰謝するための慰謝料としては,原告Aが一般に自らの外貌について強い関心をもつ年代であると考えられること,学生であって高次脳機能障害等によって学業や希望する教員採用試験の準備に支障があることなど本件の一切の事情を考慮すると,1000万円が相当であると認める。 (12) 眼鏡代 4万4000円  証拠(甲21号証の1及び2,35号証の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故によって,原告Aの着用していた眼鏡が折れ曲がるなどして損傷したこと,原告Aが開眼した後の平成12年12月18日,新しい4万4000円(フレーム及びレンズ代)の眼鏡を作り直したことが認められる。  以上の事実によれば,眼鏡の購入価格として4万4000円を本件故による損害として相当と認める。 (13) 制服 2万8000円  証拠(甲22,36号証の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故及びその後の救急活動によって,原告Aが着用していた制服上下,ブラウス,体育用バッグが損傷し,使用不可能となったこと,前記制服の購入価格は少なくとも2万3400円,同ブラウスの購入価格は少なくとも2350円,同体育用バッグの購入価格は2250円であることが認められる。また,原告Aが本件事故当時中学3年生であったこと,本件事故後,平成12年2月からI中学校に通学したことは上記認定のとおりであり,原告Aが再びこれら制服等を購入したと推認できる。  以上によれば,本件事故によって,上記制服,ブラウス,体育用バッグの損害が発生したというべきであり,合計すると,2万8000円が,本件事故と因果関係のある損害といえる。 (14) 文書料 6530円 証拠(甲1,5号証の1及び56,23,24号証の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,事故証明書及び診断書を記載してもらった事実が認められ,それらの文書料合計6530円は相当な損害と認める。 (15) 自転車代   3万1000円  証拠(甲3号証の1及び2,20,34号証の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故によって原告自転車が前後輪間のパイプが曲損するなどし,使用不可能となったこと,原告Aが平成12年5月25日,原告自転車に換えて新しい自転車を6万2000円で購入したことが認められる。  以上の事実によれば,原告自転車の修理は不可能であり,再購入はやむを得ないと考えらえるが,購入価格が一般の自転車から見て高額であることから,再購入価格の6万2000円の全額について本件事故による損害と認めることは相当でなく,再購入価格の半額の3万1000円が相当である。 (16) 小計 ア 被告D分 (1)ないし(15)の損害額の合計は5088万4009円である。 イ 被告E分  (1)ないし(14)の損害額の合計は5085万3009円である。  自転車代((15))は,生命又は身体を害したことによる損害とは言えず,自賠法3条による損害賠償の範囲に含まれない。 5 過失相殺 (1) 本件事故態様(請求原因(1)ア及びイ)については,当事者間に争いがない。 (2) (1)の事実に,証拠(甲3号証の1ないし5,30号証の1ないし12,被告D)を総合すると以下の事実が認められる。 ア 本件現場交差点に進入する道路の道幅は,被告Dが走行していた東予市道が約4.4m,原告Aが走行してきた路地が幅員が約1.8mであり,本件事故現場交差点には信号機が設置されていなかった。 イ 本件現場交差点の北西側の角にはX店倉庫が存在し,本件交差点に進入する際の原告A側から左手,被告D側から右手の見通しはそれぞれ悪く,カーブミラーが設置されている。 ウ 本件事故発生時,本件現場交差点付近の東予市道上を走行する自動車は被告自動車しかなかった。 エ 被告Dは,東予市道に入っても時速65kmを超える速度で走行していた。標識等の見落としはあるものの,脇見等はしておらず,前方を見ていた。被告Dは,本件現場交差点手前約20mの地点で,路地からゆっくりと進入してきた原告Aに初めて気付いた。上記発見地点から本件現場交差点の衝突地点までは22mである。  以上の事実からは,原告Aが本件現場交差点の手前で一時停止し,目視による安全確認をしていたならば,約20m以上先に東予市道上を65kmを超える速度で近付いてくる被告自動車に気付き,本件事故を回避し得たと言える。  よって,原告Aには,路地から左手の見通しの悪い本件交差点に右折進入するに際し,一時停止した上で目視による左右の安全確認をしなかった過失が存在する。 (3)ア この点について,原告ら代理人は,原告Aは本件交差点に進入する際,一時停止し,左右の安全確認をしたが,その際には被告車両は国道上にあった,その後,原告Aが本件交差点に進入し,右折したところ本件事故にあったと主張するので,この点について判断する。 イ 証拠(甲3号証の1,30号証の1ないし12)によると,以下の事実が認められる。 (ア) 本件現場交差点の衝突地点手前約74.8mの地点は,東予市道の延長上であり,東予市道と国道の本線とが合流する場所(以下「国道との合流点」という。)である。 (イ) 上記国道との合流点から,被告Dが原告Aを発見した地点(上記認定の通り本件現場交差点の衝突地点の手前22mの地点)までは,52.8mであり,時速65km(秒速約18.05m)で走行した場合,約2.9秒間かかる。 ウ 原告代理人の主張は,原告Aが最終の安全確認をした際には,被告Dの運転する自動車は上記国道との合流点にいて,東予市道に入っていないというものである。原告主張の事実関係を前提とすると,上記のとおり被告Dが原告Aを発見した時点で,原告Aは右折を開始しているのであるから,交差点で一時停止して東予市道上に車がいないことを確認をした原告Aは,約2.9秒後,右折を開始したところ,本件事故が発生したということになる。  自転車の運転者が交差点手前で一時停止し,左右の安全の確認をした上で右折する場合に,最終の安全確認から2.9秒間もたってから右折を開始するとは考えられないから,結局,原告の主張は採用できないというほかない。 (4) 以上の事実を前提とすると,原告Aの損害については,公平の観点から,原告Aの上記過失を斟酌するのを相当と認め,被告側に制限速度を35キロも超過して交差点に進入したなど重大な過失があることに照らすと,その割合は10%とするのが相当である。 (5) 過失相殺後の残額 ア 被告D分  4(16)アの損害額から10%を控除して,4579万5608円 50,884,009×(1-0.1)=45,795,608 イ 被告E分  4(16)イの損害額から10%を控除して,4576万7708円   50,853,009×(1-0.1)=45,767,708 6 弁護士費用  本件訴訟の審理経過,損害額,後記自賠責

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