H17. 6.30 松山地方裁判所 平成17年(わ)第54号,第83号 収賄被告事件

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主文 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 松山地方検察庁で保管中のパーソナルコンピューター1台及び段ボール箱1箱を没収する。 被告人から金29万円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)  被告人は,平成13年4月1日から平成14年3月31日までの間,当時の愛媛県越智郡A町B係主事として,同年4月1日から同年6月30日までの間,同係主査として庁内のOA化等に関する事務を担当し,上司の命を受け,担当事務に関する事業の企画立案,補助金交付申請,同事業に関する工事の業者選定作業等の職務に従事していたものであるが, 第1 平成14年3月18日ころ,愛媛県越智郡A町(現愛媛県今治市A町)a番地の自宅において,文房具及び事務機の販売等を目的とする有限会社Cの実質的経営者である分離前相被告人Dから,前記事業に関する工事の受注等に関し,同社のために有利かつ便宜な取り計らいを受けたことの謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら,パーソナルコンピューター1台(時価29万円相当)の供与を受け 第2 平成14年5月1日ころ,松山市a丁目b番c号の株式会社E駐車場において,コンピューターのネットワークシステムの企画,設計等を目的とする株式会社Eに所属し,各種システムの提案及びネットワーク構築業務等に従事する分離前相被告人Fから,前記事業に関する工事の受注等に関し,同社のために有利かつ便宜な取り計らいを受けたことの謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら,パーソナルコンピューター1台(時価19万8883円相当)の供与を受け もって,自己の前記職務に関し各賄賂を収受したものである。 (証拠の標目)省略 (法令の適用)省略 (量刑の理由) 第1 事案の概要等  1 被告人は,当時の愛媛県越智郡A町,G町及びH町が共同して進めていた広域的地域情報通信ネットワーク基盤施設整備事業(以下「広域イントラ事業」という。)において,代表町であるA町のB係職員として,上司の指示のもと,同事業の企画立案,他町との連絡調整,補助金交付申請,指名業者選定等の職務にあたっていたが,実際にはその事業内容の専門性から事実上上司から一任されていた。一方,分離前相被告人Dは,有限会社Cの実質的経営者であるが,広域イントラ事業の前身ともいえる地域インターネット事業に食い込もうと考え,被告人に対し,営業活動を積極的に行うなどしていた。被告人は,平成13年8月ころ,広域イントラ事業の関連事業の一つであるA町役場のサーバー室床工事につき,企画立案,指名業者選定等の職務を担当することとなったが,同工事において,Cを優遇した。ところで,被告人は,当初Dから紹介を受けた会社に,同事業の仕切役をさせることとしていたが,被告人は同社の情報力等に不満を覚え,平成13年11月ころには,同社を事業から外して,株式会社Eの社員である分離前相被告人Fに仕切役を委ね,同事業の設計,指名業者選定等をさせることとした。そのため,Dは,Cもまた事業から外されるのではないかとの危機感を抱き,被告人に対し,Cを見捨てないようにと懇請した。このような状況の下,平成14年2月18日,Fの仕切により広域イントラ事業を構成するセンター設備構築工事,ネットワーク機器構築工事,光ケーブル敷設工事及び出先施設等LAN配線敷設工事(以下「LAN工事」という。)の入札が行われた。被告人は,Fに対し,広域イントラ事業のうちパーソナルコンピューター(以下「パソコン」という。)についてはCに発注するよう指示するなどしたことにより,Cは受注した。Dは,平成14年3月ころ,被告人からパソコンの修理を依頼されたことを契機として,上記の取り計らいを受けたことの謝礼等の趣旨で,平成14年3月18日ころ,被告人に対し,パソコン1台を交付した。被告人は,Dの意図を知りながら,一旦は断ったもののそのパソコンを受け取り,判示第1の犯行に及んだ。  2 被告人は,Fが広域イントラ事業を仕切ることができたのは自分のおかげだなどの気持ちになり,平成14年3月ころ,Fの前でパソコンのカタログ等を見ながら,「こんなの欲しいなぁ。」などと暗にねだったところ,Fは,被告人の意を察し,同年5月1日ころ,Eの駐車場において,上記の取り計らいを受けたことの謝礼等の趣旨で被告人に対しパソコンを交付した。被告人は,Fの意図を知りながら,躊躇なくそのパソコンを受け取り,判示第2の犯行に及んだ。 第2 特に考慮した事情    本件各犯行は,被告人が,公共事業の担当者として事実上一任された地位を利用して,合計約50万円もの利益を得たというものであり,特に,判示第2の犯行は,その賄賂が多額の公金が投じられた広域イントラ事業全体の仕切役をFに委ねるなどしたことに対して供与されたものであって,その犯行内容は重大であり,また,被告人の方から暗に賄賂としてパソコンの供与を要求し,躊躇なくこれを収受したことに照らせば,その犯行態様は悪質であり,被告人の規範意識の鈍麻は明らかである。そして,本件各犯行は,被告人と特定業者との癒着ぶりを顕著に示すものであり,旧A町職員の公正かつ廉潔な職務執行に対する住民の期待と信頼のみならず行政に対する社会一般の期待と信頼を損なうものであり,その犯情も悪質である。また,被告人は,新しいパソコンが欲しいという利欲的な動機から本件各犯行に及んだものであり,その動機に酌むべき事情はない。    他方,被告人が本件各犯行を反省していること,本件により懲戒免職処分を受けるなど社会的制裁を受けたこと,再就職先を確保するなど更生意欲も認められること,被告人の父親が公判廷において今後の監督を誓約したこと,養うべき妻子がいること,保釈されるまで相当期間身柄拘束を受けたこと,前科前歴がないことなど被告人のために酌むべき事情も認められる。    以上の諸事情を総合考慮して,被告人に対し主文掲記の刑を科した上,その刑の執行を猶予することとした。 (求刑 懲役1年6月,パーソナルコンピューター1台及び段ボール箱1箱の没収,追徴29万円) 平成17年6月30日 松山地方裁判所刑事部 裁判長裁判官   前田昌宏 裁判官   武田義德 裁判官   酒井英臣

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