H17.10. 3 千葉地方裁判所 平成17年(わ)第820号等 収賄被告事件

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判示事項の要旨:  君津郡市中央病院組合が管理設置する国保直営総合病院君津中央病院の事務局長職にあって,組合が発注する各種工事の入札参加業者資格要件の設定等の職務に従事していた被告人が,地元企業の代表者から,この企業を代表構成員とする特定建設工事共同企業体が病院旧施設解体工事を落札受注するに当たり有利かつ便宜な取り計らいを受けたことの謝礼等として,4回にわたり現金合計2250万円の交付を受けた収賄の事案につき,懲役2年6月の実刑を言い渡した事例 平成17年10月3日宣告 平成17年(わ)第820号等 収賄被告事件 判     決             主     文      被告人を懲役2年6月に処する。      未決勾留日数中60日をその刑に算入する。      押収してある1万円銀行券41枚(平成17年押第59号符号1)を没収する。      被告人から金2209万円を追徴する。             理     由 (罪となるべき事実)  被告人は,千葉県木更津市,君津市,富津市及び袖ケ浦市で組織する一部事務組合であるA病院組合が管理設置する国保直営総合病院B病院に勤務し,同病院の事務局長として,同組合が発注する各種工事の契約方法の選定等の職務に従事するとともに,同組合の入札参加資格審査委員会の委員として,同組合が発注する各種工事の入札参加業者資格要件の設定等の職務に従事していた者であるが,建築工事,土木工事等の請負事業を営む株式会社C建設の代表取締役であるDから,その職務に関し,同組合が発注し,上記C建設を代表構成員とするC建設・E建設・F建設興業特定建設工事共同企業体が落札受注したB病院旧施設解体工事につき,入札参加業者資格要件の設定及び同工事の設計金額の教示等,上記Dのため有利かつ便宜な取り計らいを受けたことの謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら, 第1 平成16年9月21日ころ,千葉県袖ケ浦市ab番地c所在のG方敷地内において,同人を介し,現金1000万円の交付を受け, 第2 同年11月19日ころ,同県木更津市de番f先路上において,現金1000万円の交付を受け, 第3 平成17年2月10日ころ,千葉市中央区gh丁目i番j号所在のk駐車場において,現金200万円の交付を受け, 第4 同年3月16日ころ,同県君津市lm丁目n番地o所在のぱちんこ店「p」駐車場において,現金50万円(主文記載の1万円銀行券はその一部である。)の交付を受け, もってそれぞれ自己の職務に関し賄賂を収受したものである。 (法令の適用)  1 罰条    判示の各所為 いずれも刑法197条1項前段  2 併合罪の処理    判示の各罪 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重)  3 未決勾留日数の本刑算入 刑法21条  4 没収    主文記載の1万円銀行券 刑法197条の5前段(被告人が判示第4の犯行により収受した賄賂)  5 追徴 刑法197条の5後段(被告人が判示第1から第3までの各犯行により収受した賄賂の全部及び判示第4の犯行により収受した賄賂の一部は没収することができないから,その価額合計金2209万円を被告人から追徴) (量刑の理由)  本件は,特別地方公共団体であるA病院組合が管理設置する国保直営総合病院B病院の事務局長職にあって,組合が発注する各種工事の契約方法の選定,入札参加業者資格要件の設定等の職務に従事していた被告人が,株式会社C建設の代表者であるDから,C建設を代表構成員とする特定建設工事共同企業体(C建設JV)がB病院旧施設解体工事を落札受注するに当たり有利かつ便宜な取り計らいを受けたことの謝礼等として,4回にわたり合計2250万円の現金の交付を受けた収賄の事案である。  被告人は,病院建物の新築,解体撤去等の設備整備事業が進行中であった平成12年4月,事務局長職に就任したが,平成13年以降,C建設の設備整備事業への参入を意図するDから,韓国クラブでの飲食,6回にわたる韓国旅行等の接待を受け続けるなどしていた。さらに,被告人は,先物取引の失敗等によって数千万円の借金を抱えていたところ,平成16年8月以降,Dから賄賂金の準備がある旨伝えられていた。このため,旧施設解体工事に関し,被告人は,地元業者間での談合を前提として,確実かつ可能な限り高額での落札受注をもくろむDに,入札参加業者資格要件の設定等に関する内部資料を交付したほか,設計図書を交付して設計金額を教示している。また,被告人は,多数の組合議会議員らの意向に沿うものでもあったとはいえ,入札参加業者資格を地元業者に限定すべく,強固な反対意見を有していた組合議会議長であるGに,Dには賄賂金の準備がある旨ほのめかすなどして翻意を促している。被告人は,これらを含めDに様々な取り計らいをして,C建設JVが旧施設解体工事を予定価額の約99.76パーセントで落札受注する傍ら,本件に及んでいる。このような経緯から明らかなように,本件は,特別地方公共団体の事務方要職にあった被告人が,立場を顧みない長期間にわたる特定業者との根深い癒着を背景として,借金返済原資等欲しさから敢行したものであって,経緯に酌むべき事情などなく,利欲的かつ身勝手極まりない動機は厳しい非難に値する。そして,被告人の地位や本件の賄賂金が極めて多額であること,本件の回数はもちろん,被告人の取り計らいと業者間の談合とがあいまって,入札による公正な価額形成等が著しく歪められた結果,実際にも多額の公金が流出して組合に相当損害が発生したと考えられることなどからすれば,本件によって公務の公正廉潔性に対する信頼が著しく損なわれるとともに,入札制度が形骸化させられたことは明らかであって,結果は重大である。これに加え,被告人は,当初2回にわたり賄賂金の交付を受けた後,捜査機関の動向を見守っていたものの,捜査対象とはされていないなどと判断し,明に暗にDに要求するなどした上,更に2回にわたり賄賂金の交付を受け,また,発覚に備えて適宜GやDと口裏合わせをしているほか,Gに翻意を促すに際して別途Gが収賄の犯行を敢行する契機を作出するなど,本件に付随する事情も悪質である。なお,被告人は,判示第4に関し,公判廷ではDに要求したことはないなどと供述しているが,信用性に疑いを差し挟む事情が特段うかがわれない被告人の検察官調書及び警察官調書並びにDの検察官調書及び警察官調書の各内容等によれば,被告人の上記供述を採用することはできない。  以上によれば,被告人の刑事責任は重い。そうすると,被告人は,4か月余りにわたる身柄拘束を受けて一応の反省の機会を得たとも考えられ,公判廷で反省悔悟の言葉と更生の決意を供述していること,被告人には禁錮刑以上の前科が見当たらないこと,被告人は,これまで組合等に少なくない貢献をしてきたことがうかがわれる一方,本件によって組合から懲戒免職処分を受けたこと,元同僚らが被告人の刑の軽減を求める趣旨の意思表明をしていることなど,本件で被告人にとって酌むべき事情を併せて考慮しても,被告人に対しては主文の実刑を科すのが相当である。 (求刑 懲役4年並びに1万円銀行券の没収及び追徴)    平成17年10月3日     千葉地方裁判所刑事第2部              裁判官    鈴   木   尚   久

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