H17.11.10 松山地方裁判所 平成17年(わ)第176号,平成17年(わ)第212号,平成17年(わ)第278号 通貨偽造(変更後の訴因通貨偽造,同行使)被告事件,偽造通貨行使被告事件,通貨及証券模造取締法違反被告事件

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H17.11.10 松山地方裁判所 平成17年(わ)第176号,平成17年(わ)第212号,平成17年(わ)第278号 通貨偽造(変更後の訴因通貨偽造,同行使)被告事件,偽造通貨行使被告事件,通貨及証券模造取締法違反被告事件」(2005/12/16 (金) 16:07:57) の最新版変更点

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判    決 主       文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 押収してある五千円札様のもの15枚及び一万円札様のもの2枚を没収する。 理       由 【犯罪事実】  被告人は, 第1 平成16年12月中旬ころ,松山市甲a丁目b番c号乙d号の当時の被告人方において,行使の目的をもって,ほしいままに,スキャナーを用いて真正な金額5千円の日本銀行券の表面及び裏面の画像をパーソナルコンピューターに取り込み,色調などを補正した上,カラープリンターで上記各画像を白紙に両面印刷して刷り上げ,これをはさみを用いて裁断するなどして,通用する金額5千円の日本銀行券約18枚を偽造した上,平成17年1月1日ころ,別表(省略)記載のとおり,前後2回にわたり,香川県仲多度郡丙町e番地f東側路上に設置のたこばん焼き露店ほか1か所において,商品購入代金を支払うに際し,同店露天商Aほか1名に対し,同代金の支払として,上記偽造に係る金額5千円の日本銀行券各1枚をそれぞれ真正なもののように装い,手渡して行使した 第2 平成16年11月14日,高松市丁町g番地h株式会社Bにおいて,両替をするに際し,同店店員Cに対し,両替名下に偽造に係る金額1万円の日本銀行券1枚を真正なもののように装い,手渡して行使した 第3 前同日,同市戊町i番地j株式会社Dにおいて,たばこ代を支払うに際し,同店店員Eに対し,同代金の支払として偽造に係る金額1万円の日本銀行券1枚を真正なもののように装い,手渡して行使した 第4 平成16年11月13日ころ,前記被告人方において,スキャナーを用いて真正な金額1万円の日本銀行券の表面及び裏面の画像をパーソナルコンピューターに取り込み,色調などを補正した上,カラープリンターで上記各画像を白紙に両面印刷して刷り上げ,これをはさみを用いて裁断し,もって,金額1万円の日本銀行券に紛らわしい外観を有するもの約2枚を製造した ものである。 【証拠の標目】(省略) 【法令の適用】(省略) 【量刑の理由】 1 事案の概要   被告人が,①平成16年11月13日ころ,行使の目的なく,金額1万円の通貨の外観を有するもの(以下「偽1万円札」という。)約2枚を偽造した通貨及証券模造取締法違反(判示第4),②翌14日,高松市丁町内及び同市戊町内で,前記偽1万円札各1枚(合計2枚)を行使した偽造通貨行使(判示第2及び第3),③平成16年12月中旬ころ,金額5千円の通貨の外観を有するもの(以下「偽5千円札」という)約18枚を偽造した上,平成17年1月1日ころ,香川県仲多度郡丙町内の2か所のたこばん焼きの露天において,前記偽5千円札各1枚(合計2枚)を行使した通貨偽造・同行使(判示第1)の事案である。 2 動機など   被告人は,パーソナルコンピューター(以下「パソコン」という。)やプリンターを所有し,インターネットでの情報を通じて偽札にも興味を持っていたものである。その後,当時勤務していた小学校の教材作成のためスキャナーを購入した。その購入後,興味本位という動機から偽札の作成を思いつき,偽1万円札を作成した。偽1万円札は,作成時に行使の目的を有していたことは認定できないが,その後結局は偽1万円札2枚を行使している。偽5千円札については,行使の目的で偽造し,うち2枚を行使している。また,偽1万円札及び偽5千円札の行使の態様は,両替や少額の商品を購入し多額の釣り銭を得るというものであった。したがって,偽1万円札の行使,偽5千円札の偽造及び行使には,利欲的動機も認められる。   なお,被告人が,パソコン,プリンターだけでなく,スキャナーについても当初より偽造するために購入したと認める証拠はない。 3 犯行状況 (1) 偽造・行使の枚数   行使の目的なく偽造した偽1万円札は約2枚,うち2枚を使用している。行使の目的で偽造した偽5千円札は約18枚,うち2枚を使用している。 (2) 偽造の態様・偽札の完成度   紙幣の画像をスキャナーでパソコンに読み取り,これを印刷してなされたものである。色調を補正したり印刷位置を調整するなどもしている。偽札としての完成度については,偽1万円札及び偽5千円札は一般人に真正な通貨と誤認させる程度のものであることは明白である。さらにその程度について考える。この場合,現実に偽札を受け取るなどした者の供述などが参考になる。判示第2の偽1万円札について,店員は,受領した際は偽札と気づかなかったが,レジに入れようとした際には「色合いがおかしい。という感じがしました。それで手に持って,よくそのお札を見たのですがやはりその紙幣は色が若干ぼやけた感じで,手に持った紙質もなにか普通の紙幣と違う感じがしたのです。そしてその紙幣の透かしも見たのですが,透かしもないことから私は,これは偽札ではないかと思い」と供述している。判示第3の偽1万円札について,店員は受領及びレジに入れる際には偽札とは気づかなかったが,売上金確認のためレジを閉める際に「3枚あった1万円札のうち1枚が見た目が赤っぽいことに気づいたのです。それでおかしいと思ってよく見るとその1万円札は透かしがないと分かり手触りも違って識別の凸凹がないことも確認できた」と供述している。判示第1の偽5千円札について,偽札とは知らずに被告人から偽5千円札を盗んだ者は,当初は15枚の5千円札の記号と番号が同じであったことに気付き,「さらにじっくり確認してみると,札の右側に印刷されている新渡戸稲造の人物画像が濃くて滲んでおり,普通とは違うものでした」と供述している。この盗んだ者は偽札と気づいたにもかかわらず,5枚を5店舗で行使しているが,そのうちの2店舗分の2枚は二次流通し,他の3店舗分3枚は受領後,行使先の店員が偽札と気づくなどしている。判示第1の偽5千円札を,被告人から受領した露天商2名は,繁忙であったことなどからいずれも偽5千円札であることに気づかず,二次流通しているが,いずれも二次流通先では「一見して手触りや色合いに違和感がある」ことや「色が違う。」ことから偽札であることを見破られている。以上によれば,偽1万円札及び偽5千円札は,相当程度の精巧さを有するが,非常に精巧なものであるとまではいえない。 (3) 行使の態様   県外に赴き,逃走が容易であるとの考えから,店舗の商店街の通りに面した場所で行使したり,繁忙な初詣の時期の露天を選んで行使したりしている。これにより合計3万円の被害が生じている。 4 犯行後の情状   被告人は,自己に捜査が及んだことを察知するやパソコンのデータを消去するなど証拠隠滅を図っていること,捜査段階において当初素直に事実を全て認めようとはしなかったこと,その後,本件各犯行を認めたものの,公判廷において,偽5千円札の行使目的での偽造を認める内容の捜査段階の自白調書が捜査官との再逮捕しない旨の約束により作成されたものであるなどと証拠に照らして全く不合理な供述を繰り返したことなどが認められる。 5 評価など (1) 動機は安易かつ短絡的であること,犯行を繰り返していること,犯行態様は身近な道具を用いた模倣性の極めて高いものであること,被告人の犯罪により経済社会の基礎となる通貨に対する一般の信頼が害されたのみならず,現実に偽札が社会内に流通し,財産的被害が生じたこと,犯行後の情状にも芳しくないものがあること,児童に模範を示すべき小学校教師であった被告人が本件各犯行を犯したことによる社会的影響は大きいことなどに照らせば被告人の刑事責任は重大である。 (2) 他方,前記のとおり,本件各犯行は組織的,職業的なものでないこと,偽札の完成度も非常に精巧とまではいえないこと,偽造枚数,行使枚数は非常に多いとまではいえないこと,犯行によって得た現金などは多額とまでは言えないことなどが認められる。さらに,被告人の父親が判示第2及び第3の各被害者に被害弁償をし,判示第1の偽造通貨行使の各被害者についても被害弁償の申出をしていること,被告人は懲戒免職処分などを受けたのみならず,本件各犯行が広く報道されるなど社会的制裁を受けていること,一応本件各犯行を認め反省していること,父親が公判廷で監督を誓約したこと,前科前歴がないこと,相当期間勾留されたことなどの事情も認められる。 (3) そこで,上記諸事情を総合考慮の上,被告人を主文の刑に処してその刑事責任を明らかにし,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。   よって,主文のとおり判決する。 平成17年11月10日 松山地方裁判所刑事部 裁判長裁判官   前田昌宏 裁判官   武田義德 裁判官   酒井英臣

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