H17.11.22 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第884号 (通常訴訟手続移行)売買代金返還請求

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H17.11.22 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第884号 (通常訴訟手続移行)売買代金返還請求」(2006/01/10 (火) 17:51:07) の最新版変更点

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平成17年11月22日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成17年(少コ)第884号 売買代金返還請求事件(通常手続移行) 口頭弁論終結日 平成17年11月1日 司法委員○○立会 判         決 主         文 1 被告は,原告に対し,46万6800円及びこれに対する平成16年6月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請   求  主文と同旨 第2 事案の概要 原告と被告の従業員だったAは,平成16年4月27日,被告を売主,原告を買主として美容健康衣料品である商品名B770個の売買契約(以下「本件契約」という)を締結した。原告は代金64万6800円を支払ったが,Aの方で商品を入手できなかったので本件契約は合意解約され,Aは原告に対し代金の返還を約束した。本件は,その約束に基づき原告が被告に対し,一部弁済を受けた分を除く代金46万6800円の返還及びそれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。 1 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実 (1)原告は,平成15年11月9日,△△駅ビルにあった被告店舗で被告との最初の取引をし,このときの代金はクレジットカードで決済した。店頭対応したのは被告従業員Cだった。(以上,甲9,13,原告本人) (2)その翌日に,Cから原告に電話があったので商品購入の申込みをし,商品は同月17日に代金引換で送付された。2回目の取引である。(以上,甲9,13,原告本人) (3)3回目は,同年中の電話注文による取引で,Aが対応し,そのときの代金は○○銀行××通り支店の被告の口座に振り込んだ(甲13,原告本人)。Aは,当時,被告の△△駅ビル店舗の責任者だった(被告代表者)。 (4)同年中に,原告は被告に対し,商品の不良品の交換を依頼しているが,そのとき対応したのはAだった(甲13)。 (5)同年中に,原告はAよりマイナスイオンドライヤー等の商品紹介をされたが,取引には至らなかった(甲13)。 (6)被告の△△駅ビル店舗閉鎖に伴い,平成16年2月20日,Aは被告の会社を退職した(乙1,被告代表者)。 (7)同年4月に,Aから,B,D,Eの3種類の商品(いずれも機能性下着)提案があり,代金振込先は商品により異なりその都度連絡するという説明があった。その内,D257個については同月15日,B770個については同月27日,E267個については同年5月6日にいずれも売買契約が成立した。(以上,甲1,2,3,4,5,10,13,原告本人) (8)DとEについては,商品の引渡し及び代金の支払いは終了している。原告が代金を振り込んだのは,Aから指定された○○銀行××通り支店の被告の預金口座だった。(以上,甲6,13,原告本人) (9)同月7日に,原告は,Aに指定された□□信用金庫のAの個人口座にBの代金64万6800円を振り込んだ(甲6,13,原告本人)。 (10)同月19日,原告とAは両国で会い,Aから「Bの在庫がなく,問屋が夜逃げした」との説明があり,Aは原告に対し,支払済みの代金を同月31日限り返還すると約束した。同月26日,原告とAは銀座で会い, 原告はAから「5月19日付で取引が無効となったB770個分の代金64万6800円を5月31日限り返還する」という趣旨の確約書を受け取った。(以上,甲7,13) (11)同年6月ころ,原告は被告代表者Fに連絡を取って,代金返還を求めた。 (12)同月30日,被告から原告の口座に15万円が振り込まれた。 (13)同年10月ころ,被告代表者から「Bの取引は,Aが退職後に勝手にやったもので,被告には責任がない」と言われる。 (14)被告は原告に対し,平成17年11月1日の第4回口頭弁論期日において,Aから預かってきた3万円を支払った。 2 争点 原告と被告との間の本件契約及びその合意解約の成否,特に次の点が争点である。 (1)有権代理 (原告の主張) 本件契約及びその合意解約は,被告から代理権を与えられたAが被告の営業行為としてしたものである。 (被告の主張) 本件契約は,Aが被告を退職後に原告と締結した。またBは被告が取り扱ってない商品である。被告が原告に15万円支払ったのは,被告代表者の厚意によるものである。 (2)民法110条,112条の表見代理 (原告の主張) 原告はAが被告を退職していたことを知らなかったし,被告がBを扱っていないということも知らなかった。本件契約に至る経緯からして,原告がAに代理権があると信じたのはやむをえないことだった。 (被告の主張) 原告がAからAの個人名義の口座に商品代金を振り込むように指示されたのに,被告に確認しなかったのは原告の過失である。 第3 争点に対する判断 1 有権代理か 平成16年4月27日の本件契約と同じ頃になされた他商品(D及びE)の取引については,Aから代金を被告の○○銀行××通り支店の口座に振り込むように指示され,原告がその指示通りに支払ったという事実からすると,Aが本件契約について被告から代理権を授与されていたのではないかという疑問は残る。 しかしながら,Aは本件契約当時,被告を退職していたこと,A本人が被告とは関係なく勝手に本件契約を締結したことを認めていること(乙2),以上の事実によれば本件契約はAによる無権代理行為であるといわざるをえない。 2 表見代理が成立するか 本件契約は,Aが被告を退職した後に締結されているという意味で代理権消滅後の無権代理行為によりなされたものであり,またBという商品を被告が扱っていなかった(弁論の全趣旨)という意味では代理権限外の無権代理行為によってなされたものである。 しかし,原告がAの退職の事実を知らなかったこと(甲13),Aが退職する前に,原告はAを担当者あるいは窓口として何回か連絡を取り合い,Aと商品購入の契約を締結したこともあったこと(甲13),Aが本件契約についての連絡をするために「発信元株式会社G」と記載された用紙を使用し,そのうち甲2号証(平成16年4月16日15時37分発信)と甲3号証(同年5月6日8時52分発信)の通信文は被告の事務所のファクシミリ送信機によって送信されていること(甲1,2,3),原告が平成16年4月中に被告事務所に電話をしたとき,A本人が電話口に出たことがあり(原告本人),またAが不在のとき電話口に出た他の社員にAへの伝言を依頼したことがあったこと(原告本人)等の事実が認められるので,原告がAに本件契約についての代理権があると信ずべき正当の理由があったといえる。 したがって,民法110条及び112条を適用し,被告をしてAが代理人としてなした本件契約及びその解約について責に任ずるものと解すべきである。 なお,本件契約についてだけAの個人口座への代金振込みを指示されたことについて,原告が不審の念を抱き被告に問い合わせるべきでなかったかという点については,これまで認定した本件契約に至る経緯からすれば,わざわざ被告に確認をしなかったのもやむをえないと考えられ,原告の過失とはならないというべきである。 3 結論 本件契約の締結及びその解約について,被告の代理人としてAのした代理行為が表見代理となるので,被告は原告に対して売買代金の返還及びそれに対する遅延損害金の支払義務を免れることはできない。 よって,原告の請求は理由がある。 東京簡易裁判所少額訴訟5係 裁 判 官  篠 田  隆 夫

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