H17.12.16 大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第9980号 損害賠償等請求事件

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原告の経営する病院においてなされた異型輸血と患者の死亡との間に因果関係があるかのような印象を与える記事を執筆し新聞紙上に掲載した行為について,当該病院の名誉を毀損するものとして不法行為が成立するとした事案 主   文 1 被告らは,原告に対し,連帯して,100万円及びこれに対する平成15年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し,その19を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 被告毎日新聞は,その発行する日刊紙「毎日新聞」に,別紙記載1の謝罪広告を,別紙記載2の条件で掲載せよ。 2 被告らは,原告に対し,連帯して2000万円及びこれに対する平成15年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告Aが原告の経営する病院である乙病院(以下「本件病院」という。)において異型血液を輸血するミスにより女性患者が死亡したかのような印象を読者に与える真実に反する記事を執筆し,被告毎日新聞がその発行する「毎日新聞」にこれを掲載することによって,原告の名誉を毀損したとして,原告が,不法行為(民法709条,710条,723条)に基づき,①被告毎日新聞に対し,毎日新聞紙上への謝罪広告の掲載を,②被告らに対し,損害賠償金2000万円及びこれに対する平成15年4月2日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。)  (1) 当事者等   ア 原告は,病院経営を行う医療法人であり,奈良県香芝市において,本件病院を開設経営している。     Bは,平成12年4月当時原告の理事長であった者,Cは,平成10年12月当時本件病院の院長で,後記の本件患者の主治医でもあった者,Dは,同月当時本件病院の勤務医で,Cが本件病院を辞めた後に本件病院の院長になった者である。   イ 被告毎日新聞は,時事に関する報道,論説を掲載する日刊新聞(「毎日新聞」等)の制作,発行及び販売等を業とする会社である。     被告Aは,被告毎日新聞に勤務し,同社の発行する新聞の記事を執筆する記者である。  (2) 本件病院における異型輸血    本件病院において,平成10年12月4日,血液型O型の入院患者であるE(当時76歳。以下「本件患者」という。)に対し,異型であるA型血液が輸血された(以下「本件異型輸血」という。)。  (3) 本件病院に関する記事の掲載とその内容    被告毎日新聞は,平成12年4月24日,毎日新聞全国版夕刊の10頁に,被告A執筆に係る「点滴・輸血,連続ミス」との4段抜きの見出しに「奈良の病院 1年後に患者死亡」との小見出しを付した記事(以下「本件記事1」という。)を掲載した(甲1)。本件記事1には,本件異型輸血について「…一時,血尿が出るなどしたため,腎不全や血圧低下を防ぐ緊急措置をした。患者は敗血症などで1年後に亡くなったが,D院長は『輸血ミスは死因とは直接関係ない』としている。しかし,輸血ミスの4日前にもこの女性患者に別の患者用の点滴が注入されるミスがあったことが分かり,県は近く病院から事情を聞く。/病院などによると,女性患者は98年11月16日,重症のくも膜下出血で入院。…ところが,同年12月4日午後1時ごろ,見舞いの家族が,A型の血液パックから輸血されているのを見つけ,看護婦に知らせた。女性患者には既に約40ml輸血され,血尿が出始めたため,腎不全や血圧低下を防ぐ薬剤を投与した。この患者は99年12月4日に亡くなった。…/病院側はミスの原因として…。/女性患者の遺族は『直前の11月30日に点滴ミスがあり,別の患者用の栄養剤を点滴された。病状に影響はないとの説明だったが,気になっていたので輸血ミスが発見できた。』/甲のB・理事長は『ミスによる容体悪化はなかった。しかし管理上のミスは重大で万全の対策をとった』と話している。県医務課は…。」との本文が記載されている。    また,被告毎日新聞は,同日,毎日新聞奈良版朝刊の26頁に,被告A執筆に係る「集中治療室で輸血ミス」との3段抜きの見出しに「1年後に患者死亡 4日前は点滴間違う 奈良の病院」との小見出しを付した記事(以下「本件記事2」という。)を掲載した(甲2)。本件記事2は,本件記事1とほぼ同一内容の本文が記載されている。(以下,本件記事1及び本件記事2を併せて「本件記事」という。) 3 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨   本件の争点は,(1)本件記事は読者に本件異型輸血により本件患者が死亡したとの印象を与えるものか,(2)本件記事の執筆・掲載が,公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあるか,(3)本件記事により摘示された事実は真実であるか,また,本件記事により摘示された事実が真実であることが証明されない場合,被告らにおいてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるか,(4)被告らの行為と原告の損害との間の因果関係の有無及び原告の損害額である。  (1) 本件記事は読者に本件異型輸血により本件患者が死亡したとの印象を与えるものか。(争点(1))   (原告の主張)    本件記事は,平均的な一般読者が有する通常の読書能力と注意と読み方を基準とすれば,全体として,あるいは,少なくとも見出しのみをみた場合,本件病院における本件異型輸血により本件患者が死亡したという印象を与えるものである。    すなわち,毎日新聞は,平均的・一般的な国民を対象読者とした全国的一般紙であり,掲載された記事が人の社会的評価を低下させるか否かについては,平均的・一般的国民の通常の読書能力と注意と読み方を基準として,その記事から受ける印象が当該人の社会的評価を低下させるものであるか否かを判断すべきである。    そして,本件についてこれをみると,本件記事は,真実ではない血尿が出始めたとの事実,本件異型輸血と因果関係のない本件患者死亡の事実を摘示し,また,「輸血ミスは死因と直接関係ない」との本件病院の院長のコメントの後に「しかし」との接続詞で始まる文章を続けて院長の主張を否定するなど,本件異型輸血と本件患者の死亡との間に因果関係があると読みとれるよう作為的に構成され,平成10年11月30日の点滴ミス,平成10年12月4日の本件異型輸血及び平成11年12月4日の本件患者の死亡という各事実を渾然一体のものとして記載することにより,短期間のうちにこれらが連続的に発生したかのように構成されている。また,他社の発行する新聞記事とは異なり,取材源不明の事実,病院側の説明,患者の遺族や第三者の説明などが混在している上,繰り返し本件異型輸血についての文章の直後に本件患者の死亡の事実が掲載されている。加えて,本件記事の見出しについてみれば,本文に使用されている文字の4倍ないし5倍以上の太大文字を使用して「点滴・輸血,連続ミス」,「1年後に患者死亡」などと記載されており,異型輸血により患者が死亡したと読みとれる内容となっている。以上から,本件記事は,平均的な一般読者が有する通常の読書能力と注意と読み方を基準にすれば,見出しや本文の内容,構成とあいまって全体として,あるいは,見出しのみをみた場合,本件病院における本件異型輸血により本件患者が死亡したという印象を与え,原告の社会的評価を低下させるものであることは明らかである。  (被告らの主張)    本件記事は,読者に本件異型輸血により本件患者が死亡したとの印象を与えるものではない。    本件異型輸血と本件患者の死亡との間の因果関係について,本件記事においては,「1年後に患者死亡」,「99年12月4日に亡くなった」,「患者は敗血症などで1年後に亡くなった」などと明記している。本件異型輸血と本件患者の死亡との間の因果関係は不明であり,本件記事はこれに言及したものではない。また,「患者は敗血症などで…亡くなった。」,「D院長は『輸血ミスは死因とは直接,関係ない』としている。」,「B・理事長は『ミスによる容態悪化はなかった。…』と話している。」などと,原告に対する取材の結果も記載している。  (2) 本件記事の執筆・掲載が,公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあるか。(争点(2))   (被告らの主張)    病院における輸血ミス・点滴ミスは,人の生命にかかわる重大な過失であり,これを広く報道することにより,医療関係者に対しては注意喚起を促し,社会一般の人々に対して警鐘を鳴らすことは,報道機関である新聞の使命とするところである。    本件記事の執筆・掲載は,公共の利害に関する事実に係り,公益に資することは明らかであって,本件記事の執筆・掲載の目的は専ら公益を図ることにある。   (原告の主張)    本件記事は,各見出しや本文の構成とあいまって,あたかも本件異型輸血により,本件患者が死亡したかのような印象を読者に抱かせるよう作為的に構成されており,被告らに,公益を図る目的などなく,毎日新聞の発行部数を増やして収益をあげるという営利目的で,単に読み手が興味を引かれるであろう刺激的な記事で日刊紙を埋めるため,本件記事を掲載したことは明らかである。    さらに,一般紙の場合,問題となる記事のうち,当該事項を含めなければ記事として成り立たない主要な要素と認められる事項が公共性・公益性を有していないときには,当該記事全体としても公共性・公益性を欠くというべきである。この点,本件記事の構成,内容からみて,本件患者の死亡の部分は,それを記事として含めなければ,記事として成立しない主要な要素と認められる部分である。よって,本件記事は全体として,公共性・公益性が認められない。  (3) 本件記事により摘示された事実が真実であるか,また,摘示事実が真実であることが証明されない場合,被告らにおいてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるか。(争点(3))   (被告らの主張)   ア 摘示事実の真実性    (ア) 本件記事の主要部分      本件病院において,血液型O型の本件患者にA型血液を輸血するミスがあったこと,本件異型輸血の数日前にも本件患者に対する点滴ミスがあったことという本件記事の主要部分は真実である。    (イ) 輸血量及び血尿に関する記載について     a 本件記事では,本件異型輸血について,「女性患者には,…約40ml輸血され,血尿が出始めた」旨記載している。     b この点,本件患者の診療録(乙7。以下「本件診療録」という。)の平成11年12月4日の欄には異型血液を約40ml輸血した旨の記載がある。また,本件異型輸血の事故直後に,当時本件病院の病院長であったCが作成した「事故調査報告書」(乙2。以下「本件事故調査報告書」という。)にも,約40mlの異型輸血を行った旨記載されており,また,被告Aが,平成12年4月21日,当時原告理事長であったB,病院長であったDに面談した際,Dは,本件患者に対する異型輸血の量について,輸血用パックの重さは決まっていることからその残量を量ったと思うこと,おそらく引き算をして40mlという数字が出たと思う旨説明した。       以上から,本件患者に約40mlの異型輸血がされたことは明らかである。     c また,本件異型輸血により認められたのが,医学的には「血尿」ではなかったとしても,新聞記事においては必ずしも医学的な用語が用いられるものではなく,赤い尿であれば,一般人はこれを含め「血尿」というのであって,本件記事は虚偽を記載したものではない。       本件診療録には血尿が出た旨の記載があり,また,Bらは,被告Aとの面談の際,同診療録を見ながら,「1時間ぐらい血尿っぽいのが見えたが,1時間たてばもう消えた。」,「約1時間で血尿は肉眼的には消失す」等の記載がある旨の説明をした。       以上から,本件患者に血尿が見られたことは明らかである。     d なお,仮に,輸血量,血尿についての記載事実が真実と認められなかったとしても,輸血ミスがあったという本件記事の主要部分に対し,輸血量や血尿の医学的意義は,本件記事の主要部分ではない。新聞の迅速性に照らし,このような主要部分以外の点についてまで真実性が要求されるものではない。    (ウ) 小括      以上から,本件記事により摘示された事実は真実であると認められる。   イ 摘示事実を真実と信ずるにつき相当の理由があること      被告Aは,平成12年春ころ,本件病院の措置につき取材を開始し,同年4月16日ころ,本件患者の夫,長男の嫁など3,4人から事情を聴取した。被告Aは,本件患者の遺族からは,本件患者の次女の日記並びに同人,長男の嫁及び長女3名の日記をまとめた文書の提示を受け,Cが作成した「お詫び」と題する文書(乙1)及び本件事故調査報告書の各写しを入手した。      被告Aは,平成12年4月16日ころから同月23日ころにかけ,病院関係者を含む関係者に対する取材を行った。被告Aは,同月21日には,当時原告の理事長であったB,院長であったDに対し取材を行い,同じころ奈良県医務課に対しても取材を行った。      前述のとおり,本件事故調査報告書には,本件患者に対し約40mlの異型輸血をした旨の記載があり,また,B及びDは,平成12年4月21日の面談の際,被告Aに対し,本件診療録には,輸血量が約40mlであるとの記載,本件異型輸血後血尿が認められたとの記載がある旨の説明をした。      以上から,仮に本件記事により摘示された事実が真実と認められなかったとしても,被告Aによる本件記事の執筆は,信ずるに足る本件病院の責任者ら及び本件患者の家族その他に対する取材に基づくものであり,本件記事により摘示された事実について,これを真実と信ずるにつき相当の理由がある。   (原告の主張)   ア 摘示事実が真実でないこと     本件病院では,本件異型輸血により本件患者には何らの影響もなかったことから,本件異型輸血直後には,輸血量等の厳密な調査を実施していなかったが,本件記事掲載後厳密な調査をした結果,本件記事掲載の4か月後には,本件記事の内容が真実でないことが明らかとなった。     すなわち,本件患者に輸血された血液量は,平均的な輸血パックを使用していたとすれば数滴から数ml,最大でも16mlであり,たとえ16mlの異型血液を輸血したとしても,医学的ないし疫学的には,ヘモグロビン尿,ビリルビン血尿が出ることはあり得ないし,DIC(disseminated intravascular coagulation 播種性血管内血液凝固症候群)の徴候を経て血尿が出ることもあり得ない。また,本件異型輸血により,被告のいう「赤い尿」が出たとの証拠もない。     したがって,本件患者に対し約40mlの異型輸血がなされ,その結果本件患者に血尿が見られた事実はない。     以上から,本件記事において摘示された前記の事実が真実でないことは明らかである。   イ 摘示事実を真実と信ずるにつき相当の理由がないこと     (ア) 今日の社会における被告毎日新聞のような大新聞社の発行する新聞に対する一般読者の信用を考慮すれば,新聞社が,人の名誉・信用を毀損するおそれのある記事を掲載するに当たっては,報道の自由や迅速性の要請を考慮に入れても,慎重な取材を行い,裏付け調査をする義務があるというべきである。    (イ) これを本件についてみるに,被告Aは,本件患者の遺族が本件病院に対し害意を有していることを認識していたにもかかわらず,遺族の供述の信用性を裏付ける取材をしていない。本件患者の遺族が作成した日記等(乙3,4)はその内容からみて,本件訴訟を目的として後日作成された可能性が高く,被告Aが本件記事執筆の際これを参照したことはあり得ない。       また,本件事故調査報告書には,経営主体である原告の名義も,本件病院の名義もなく,当時原告と雇用関係において対立していたCが,個人的に本件患者の心情を考慮して作成したものにすぎず,被告Aは,Cに対する取材の必要性を認めていたにもかかわらず,しなかった。       さらに,被告AがB及びDに対し取材を行った際,Bらは,本件診療録には輸血量が約40mlであり,血尿が見られた旨の記載があるもののそれが真実かどうかはわからないこと,検尿のデータによれば血尿が出た事実はないこと,本件異型輸血が原因で血尿が出ることはありえないこと,被告らが記事にするのであれば正確に調査するのでもう一度病院に来てほしい旨述べたにもかかわらず,被告Aは再度の取材をせずに,本件記事を掲載した。被告Aは,Bらに取材する以前から,本件異型輸血を記事にすることを決めており,調査義務を尽くすためにBらに面談したわけではなく,また,本件記事を執筆するに十分な専門的知識も有していなかった。被告Aが,Bらに対し行った取材をもって,新聞社として調査義務を尽くしたとは到底いえない。       本件記事が掲載されたのは,本件異型輸血から1年5か月近く経過した後であったのであるから,本件記事の掲載に新聞の迅速性・速報性の要請がないことは明らかであって,そうであれば,本件記事を掲載するに当たってはより正確性を重視すべきであった。     (ウ) 以上から,被告らが,本件記事に摘示した事実について真実であると信ずるにつき相当な理由があるとはいえない。  (4) 被告らの行為と原告の損害との因果関係の有無及び原告の損害額(争点(4))   (原告の主張)    本件記事の掲載後,本件病院のほか,原告の経営する丙病院及び丁病院においても,多数の受診のキャンセルが発生し,外来患者数はもちろん,入院予約,通院予約の数も減少した。本件記事の掲載により原告が被った損害は,金銭に換算すれば2億円を下らない。    また,被告らの主張に係るBの逮捕の記事は,本件記事掲載の約7か月後に掲載されたものであるところ,その間,外来,入院,紹介及び転院患者数の減少するなどし,また,本件病院においては,平成12年10月に増床計画が許認可される予定であったが,本件記事掲載により大幅に延期を強いられることとなった。B逮捕の記事は,原告の損害賠償請求権に消長を来さない。    さらに,原告の名誉を回復するのに適当な処分として,上記損害賠償とともに謝罪広告の掲載が認められるべきである。   (被告らの主張)   ア 原告主張に係る損害額は否認ないし争う。   イ 仮に,原告主張の損害があったとしても,本件記事と同旨の記事は産経新聞,共同通信,日経新聞,朝日新聞及び読売新聞に掲載されており,各社のテレビ局においても同内容の報道がなされたこと,さらに,本件記事掲載後の平成12年11月ころ,当時,本件病院の理事長であったBが,戊医科大学の医師派遣をめぐり同大学の名誉教授に賄賂を贈った事実により逮捕されたこと等が,各社新聞,テレビ局により報道されたことに照らせば,被告らによる本件記事の執筆・掲載と,原告の損害との間にどの程度因果関係が認められるかは全く不分明であるというべきである。 第3 当裁判所の判断  1 認定事実    前記第2の2の認定事実のほか,証拠(甲4,5,乙2,3,7,8,証人B,同D,被告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。   (1) 本件異型輸血の経緯等    ア 異型輸血による副作用      一般に,異型輸血による副作用として,免疫抗A,抗B抗体により血管内溶血が生じる。この場合,もっとも一般的に認められる症状は,輸血されている血管に沿った熱感,疼痛と顔面の紅潮であるが,胸部絞扼感,呼吸困難,腰背部痛なども認められる。輸血開始後数mlで症状が認められることもあるが,通常溶血の症状に気付くのは50mlあるいはそれ以下の輸血後が多いとされている。反応の激しいときには,急速な血圧低下を伴いショック状態に陥りそのまま死亡する症例も認められている。また,悪寒,戦慄,発熱,頭痛,腹痛,下痢,嘔吐,じんましんなどが認められ,次いで24時間以内に黄疸が認められ,DICによる血尿などの出血傾向,乏尿,無尿を来して,急性腎不全となることがある。      血管内溶血の検査所見のひとつとして,症状発現後の尿につき,ヘモグロビン尿の有無をみることが参考になるとされている。      なお,重篤な溶血性反応であっても,多くの患者は治療することなく回復するとされており,輸血量と死亡率との関係については,100ml以下の輸血量でも死亡する場合があるが,一般には200ml以内の輸血量では死亡することはないといわれている。      前記のような急性反応のほか,輸血2日ないし8日後に現れる副作用として,遅発性溶血性反応(通常は血管外溶血)がある。一般的には,貧血,発熱等の症状を伴うが,全体としては良好に経過するとされている。もっとも,腎不全やDICで死亡した例もある。    イ 本件異型輸血とその後の本件患者の状況など      本件患者は,平成10年11月16日,くも膜下出血を発症し,本件病院に入院の上,同月18日,3か所の脳動脈瘤につき,クリッピング術を受け,手術は成功したが,その後脳血管攣縮を発症した。      本件病院では,以後,本件患者について脳血管攣縮の治療に当たり,平成10年12月4日,貧血改善のため輸血を行うこととしたが,適合試験の際,本件患者の血液検体(O型)をA型の他の患者のものと取り違え,さらに,輸血前に行うべき照合を怠った結果,本件患者に対しA型の血液を輸血した(本件異型輸血)。輸血開始後,見舞いに訪れた本件患者の家族が,本件異型輸血を発見し,看護師に指摘したことから輸血は中止された。当時本件患者の主治医であったCは,DIC,急性腎不全の発症を防ぐため,薬剤を投与するなどの予防的処置を行った。      本件異型輸血後約1週間の間,本件患者には前記のような急性反応としての溶血反応,遅発性溶血反応の目立った症状はいずれも認められず,Cは,平成10年12月10日ころ,本件患者について,本件異型輸血による影響はないと判断した。      本件患者は,その後,本件病院において,引き続きクリッピング術後の治療を受け,意識は戻らないものの症状は次第に安定していたが,平成11年11月下旬ころ感染症により全身状態が悪化し,敗血症を併発して同年12月4日死亡した。    ウ 本件異型輸血に関する診療録等の記載内容      本件診療録(乙7)には,平成10年12月4日の欄に,「P.M 1:30すぎ anemia〔貧血〕の為 Blood transfusion〔輸血〕 transfuse A to pt (mismatched blood〔ミスマッチ血液〕) about 40ml 〔約40ml〕 30minute later bloody urine〔30分後血尿〕 Blood pressure〔血圧〕 60mmHg」,「直ちにblood transfusion中止 輸液量 total4000** ラシークス使用しwash outを試みる ハプトグロビン使用 ウロキナーゼ使用(肺** 腎不全予防) F.O.Y ヘパリン使用」,「約1時間で血尿は肉眼的には消失す 尿検では潜血2+ 呼吸状態悪化を想定し呼吸器装着す」との記載がある(〔〕内は訳語。*は判読不能部分。以下同様。)。      また,平成10年12月4日の本件患者のICUチャート(乙8)にも,「13:20 MAP開始するが*0CCで抜去 13:30 **輸血による処置開始する」との記載が認められ,また,本件異型輸血後,ヘパリン等の投薬が行われたことが記載されている。   (2) 被告Aによる取材内容    ア 被告Aは,平成11年ころから本件病院の主に会計面について取材するうち,本件異型輸血について情報を得て取材を開始することとした。    イ 被告Aは,平成12年4月ころ,本件患者の夫,娘及び長男の嫁と面談し,同人らから,本件患者のベッドには血液型の表示がなされていたにもかかわらず輸血ミスがあったこと,夫の感覚では70ないし80ccの異型輸血があったと思われること,看護師はただちに輸血を止めなかったこと,異型輸血により血尿が見られた旨医師から説明があったこと,異型輸血のほか点滴ミスなどがあり,家族として不満は多々あったが,治療を委ねている以上不満が言えなかったことなどの話を聞き,また,本件患者の入院中,娘等が書き記していたメモ用紙の入った袋,メモの内容を集めまとめた「闘病日記」と題する書面(乙3),C作成に係る「お詫び」と題する書面(乙1)及び本件事故調査報告書(乙2)を受け取った。    ウ 被告Aは,平成12年4月21日,本件病院を訪れ,B及びDに対し取材を行った。B及びDは,被告Aの取材を受けるに当たり,本件患者の診療録,ICUチャート等を参照しながら説明した。    エ 被告Aが,奈良県医務課に対応を取材したところ,「事実であるとすれば,事実経過を確認して,原因や対策を聞いていく必要がある。」との答えであった。    オ このほか,被告Aは,本件について,3人の病院関係者に対し取材を行った。  2 争点に対する判断    本件記事が読者にどのような印象を与えるものであるか(争点(1))は当事者間に争いはあるものの,この点をひとまず措いて,本件記事の執筆・掲載が,原告の社会的評価を低下させる行為であることは当事者間に争いがない。    したがって,まず,本件記事の内容について,読者に本件異型輸血により本件患者が死亡したとの印象を与えるものか(争点(1))を検討し,次に,本件記事の執筆・掲載につき違法性又は故意もしくは過失がないとされるかどうか(争点(2),(3))を検討し,違法性又は故意もしくは過失がないとされない場合には,さらに争点(4)を検討することとする。   (1) 争点(1)(本件記事が読者に本件異型輸血により本件患者が死亡したとの印象を与えるものか)     一定の新聞記事の内容が名誉を毀損すべき意味のものかどうかは,一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集22巻987号参照)。     これを本件についてみるに,本件記事は,これを精読すれば,本件病院において本件異型輸血がなされたことを内容とするものであって,本件患者が本件異型輸血によって死亡したか否か,すなわち,本件異型輸血と本件患者の死亡との間の因果関係の有無について直接の記載はなされていない。しかしながら,前記認定に係る本件記事の各見出しの内容のほか,本件記事の本文の内容が本件異型輸血にかなりの部分をさいていながら本件異型輸血とは本来は無関係なのに情報提供の意味で本件患者の死亡の事実を記載したものの,本件記事の文章の構成が本件異型輸血と本件患者の死亡を明確に区別することなく漫然と事実経過を記載したものとなっている。異型輸血をすれば死に至るかもしれないとの考えを持つ新聞読者も多数いると思われることからすると,本件記事は,一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,全体として,本件異型輸血により本件患者が死亡したとの印象を読者に与える内容になっているものといえる。   (2) 争点(2)(本件記事の執筆・掲載が,公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあるか)について    ア 本件記事の執筆・掲載が公共の利害に関する事実に係るものであるか。      本件記事は,本件病院において入院患者(本件患者)に対し異型輸血がなされたことを内容とするものであって,このような事実は社会の正当な関心事であり,公共の利害に関する事実に当たるということができる。    イ 本件記事の執筆・掲載の目的が専ら公益を図ることにあるか。     (ア) 前記のように,本件記事の執筆・掲載が公共の利害に関する事実に係ること,また,被告Aは,本件患者の遺族から本件異型輸血の事実を含め本件病院に対し不満があったこと等を聞かされた結果,本件異型輸血について取材を行うこととし,B等を含む本件病院の関係者に対しても取材を行った上,本件記事を執筆するに至ったという本件記事の執筆・掲載の経緯等前記認定に係る事実に照らせば,被告らは,本件異型輸血の事実を報道することにより国民に対して必要ないし有用な情報を提供することを目的として本件記事を執筆・掲載したものと認められ,その目的は専ら公益を図ることにあったということができる。     (イ) この点,原告は,本件記事は,あたかも本件異型輸血により本件患者が死亡したかのような印象を読者に抱かせるよう作為的に構成されているから,被告らは,公益目的ではなく,刺激的記事により読者の興味を引き発行部数を増やして収益をあげるという営利目的で本件記事を執筆・掲載したものであると主張する。       確かに,上記判示したように,本件記事は,精読すれば,本件異型輸血と本件患者との間に因果関係がないとされていることは分かるものの,一般読者の注意と読み方を基準として解釈すれば,因果関係があるかのような誤った印象を与える構成となっている。しかしながら,本件全証拠によっても,被告Aが,本件病院を害する目的で,殊更に事実をわい曲する意図をもって,本件異型輸血によって本件患者が死亡したとの事実を報道すべく本件記事を執筆したことを認めるに足りる的確な証拠はない。よって,被告らの上記主張は採用できない。    ウ また,原告は,本件記事において,本件患者の死亡部分は,これを記事の内容としなければ本件記事自体が成立しない本件記事の主要な要素と認められ,当該部分に公共性・公益性が認められないことを前提に,本件記事は全体として公共性・公益性が認められないと主張する。      しかしながら,本件患者の死亡部分がなくとも本件異型輸血の事実の摘示のみをもって本件記事は十分成立し得るものであり,本件患者の死亡部分は単なる情報提供の意味しか持たず,本件記事の主要な要素とはいえない。原告の上記主張は理由がない。   (3) 争点(3)(本件記事により摘示された事実が真実であるか,また,本件記事により摘示された事実が真実であることが証明されない場合,被告らにおいてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるか)について    ア 本件摘示事実の真実性      上記認定したところから,本件記事のうち,平成10年12月4日に本件異型輸血が行われたことは真実といえる。また,本件異型輸血の数日前にも本件患者に対する点滴ミスがあったこと,本件患者が本件異型輸血後1年を経過した平成11年12月4日に死亡したことは真実である(乙3,4,弁論の全趣旨)。      問題は,①輸血量はどのくらいあったのか,②血尿は出たのかである。以下順に検討する。      まず,①について,本件記事には,異型輸血の量が40mlであったとしている。本件診療録には輸血量約40mlとの記載があり,また,本件異型輸血後,Cは本件患者に対し,輸血量は40ccくらいである旨説明した(乙3,4)。輸血量の算出方法について,証人Dは,血液パックの容量が通常200mlであることから,残っている血液の量を計って差し引き,40mlとしたでのはないかと証言している。      他方,原告は,一般に輸血パック内の血液容量は108mlないし180mlであり,他方,本件において,輸血パック内の残量血液量が160ml,延長チューブ内の残留血液量が4mlであったことから,本件において輸血された量は最大限でも16mlである旨主張し,これに沿う証人Bの供述があるほか,Bが本件記事掲載後に奈良県等に提出した書面(甲4)には,「奈良日赤に確認したところM・A・Pの1袋は155gm~230gmで,パイロットチューブを含めたM・A・Pの空袋が約40gm。製剤血液の比重(1.06)を考えると,M・A・Pの容量は108~180mlとなる。」と記載されている。以上によれば,本件異型輸血の輸血量は,血液パック内の血液の総量から輸血中止後に残っていた血液の量を引くことにより算出され,輸血中止後に残っていた血液量は160ないし164mlとされているところ,本件患者に対する輸血量は結局のところ血液パック内の当初の血液量に係るものと認められるが,本件において当初血液パック内にどのくらいの血液があったのかは証拠上不分明である。結局,本件異型輸血の輸血量が約40mlであるとの事実が真実であると認めることはできない。      次に,②について,本件記事には,輸血後に血尿が出始めたとの事実の摘示がある。本件診療録には,前述のように,輸血の30分後に血尿が見えたこと,約1時間後に肉眼的には血尿が消失した旨の記載がある。また,Cは,本件異型輸血後,本件患者に対し,輸血量は40ccくらいである旨説明した(乙3,4)。前記認定のように,異型輸血の副作用として血管内溶血が生じる。溶血(反応)とは,赤血球膜が変性・破壊し,ヘモグロビンが赤血球から遊離する反応をいい,ヘモグロビンが尿に混入した結果ヘモグロビン尿が出ることがある。これに対し,血尿とは,尿中に赤血球が混入することをいい,ヘモグロビン尿とは異なる。異型輸血による溶血反応が激しいときには,DICを発症し血尿が出ることがあるが,DICを発症せずに血尿が出ることは通常ない(弁論の全趣旨)。本件では,前記認定のように,本件患者には,異型輸血の結果目立った症状は見られず,DICも発症していない。したがって,本件患者において血尿が出たとは考えにくい。むしろ,溶血反応の所見であるヘモグロビン尿が出ると尿が赤くなること(証人D)に照らすと,Cは,本件患者にヘモグロビン尿が見られたことをもって,診療録に血尿が見られた旨記載し,また本件患者の家族にその旨説明したことが推認される。以上から,本件患者において血尿が出た事実が真実であると認めることはできない。      以上によれば,本件記事内容のうち,本件異型輸血がなされたこと,本件異型輸血の数日前に本件患者に対する点滴ミスがあったこと,本件患者が死亡したことの各事実については真実であると認められるが,①輸血量の点及び②血尿の点はいずれも真実であると認めることはできない。    イ 被告らにおいて本件記事により摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるか      前記認定したところによれば,被告Aは,平成12年4月ころ,本件患者の遺族に対する取材を行った際,本件患者の入院中に家族が記したメモをまとめた「闘病日記」(乙3)及びC作成に係る「事故調査報告書」と題する書面(乙2)等を受け取った。「闘病日記」には,本件異型輸血後に「血尿が出てきたらしい」,Cからの説明として,「入ったのは40ccくらいです。」などとの記載があり,また「事故調査報告書」にも,輸血量は約40mlであった旨の記載がある(乙2,3)。また,被告Aが,平成12年4月21日,B及びDに取材した際,同人らは,本件患者の診療録及びICUチャートを参照しながら,輸血量40ml,1時間くらい血尿っぽいのが見えたが1時間経過後消えたとの記載がある旨説明した(乙6)。一般に,診療録,ICUチャート等は,その性格からして,当時の患者の症状,治療内容等が正確に記載されているものであると考えるのが通常であることからすれば,被告Aが,これらの取材の結果,本件異型輸血の際の主治医であるC等による本件異型輸血当時の記録や家族に対する説明内容を信用して,本件異型輸血量が40mlであり,また,輸血後本件患者に血尿が見られたことが真実であると信じたことには,相当の理由があるというべきである。      この点,原告は,本件患者の家族が作成した闘病日記(乙3)は後日作成されたものであり信用できない旨主張するが,その内容は,その内容自体からみても,約1年にわたり,本件患者の毎日の病状,出来事等を詳細に記録したものと認められ,前記「闘病日記」はこれらの記録を後日まとめたというにすぎず,信用できないものではない。     また,原告は,Bらが取材の際,被告Aに対し,診療録等の記載が真実かは分からないこと,血尿が出た事実はなく,血尿が出ることはあり得ないこと等述べた旨主張する。確かに,乙6によれば,本件取材の際,Bらは,輸血量について「40かどうかはわかりませんけども」「こぼしますし,40も入ったかどうかも決めつけるのも多少問題だと思うんですね。」,血尿について「潜血だけじゃわからんもんな。」「色が濃いかったからそれがすぐ血尿というふうには言えないんですよ。」「1時間で消えたようなのが本当に溶血だったかどうか。」「潜血±,沈査で赤血球が1視野に5か6個,これは僕らでも出ますのでね。」「血尿と言われへん,そんなん。」「溶血もそう書いてますけども,それが問題になったというような形で起きたとは僕は聞いてなかったんです。」などと述べた。しかし,他方で,輸血量については「考えられるとしたら,こういうパックの重さは決まってますよね。だから,はかったと思いますよ。たぶん引き算して40という数字が出たんだと思います。」「主治医はそういうふうに書いてますけど。」「これはもう40ccしか書いてませんね。だから,それは40という数字がここで出てるのは-家族の方は見た感じでしょう。たぶんこちらの方ははかってると思います。」「自分たちの今後のあれにもかかわってきますので,それは正確な数字を。でも,一応40と書いてあるからこれを信じるしかないんじゃないですかね。」,血尿については「それ1時間の間に血尿あったの。」とのBの問いに対し,Dが「いやだって,記載はこうして書いてあるからさ。主治医がたぶん記載したと思うんですが,これがうそか本当かわかりませんけど,主治医がこういうふうに書いてると。これだけは事実です。うそか本当かわかりませんよ。」などと述べている。このようなやり取りを全体としてみれば,Bらは,本件診療録等の記載内容が虚偽であるとして否定するまでには至っておらず,むしろ,真実かどうかわからない,記載内容を信じるしかないなどと述べていることに照らしてみれば,被告Aが診療録等の記載内容の真実性に疑問を抱くに十分な説明がなされたとは言えない。      また,原告は,被告Aが調査義務を尽くしていない旨主張するが,前述したように,診療録等の記載内容には通常高度の信用性が認められることに照らしてみれば,被告Aは,輸血量及び血尿の点について,本件診療録等の記載を確認したことにより,調査を尽くしたというべきである。      原告の主張は理由がない。    ウ 本件異型輸血と本件患者の死亡との間の因果関係について      なお,本件異型輸血と本件患者の死亡との間の因果関係について,上記の争点(1)で判示したように,本件記事の記述自体において上記因果関係があるとの事実が摘示されているものではなく,被告A自身本件記事を執筆する際上記因果関係はないとの認識に至っており,被告らは,上記因果関係があるとの事実について真実であること又は真実であると信ずるにつき相当の理由があることを主張するものではない。    エ 以上から,被告らが本件記事のうち,本件異型輸血がなされた事実,その輸血量及び血尿の有無の点については,この点を記事の内容として執筆掲載したことについて,違法性又は故意若しくは過失が否定され,原告に対する不法行為は成立しないが,本件異型輸血と本件患者の死亡との間に因果関係があるかのような印象を与える記事を執筆・掲載した点については,不法行為が成立するというべきである。   (4) 争点(4)(被告らの行為と原告の損害との因果関係の有無及び原告の損害額)について     被告らによる本件異型輸血と本件患者の死亡との間に因果関係があるかのような印象を与える本件記事の執筆・掲載により,原告の名誉権は侵害され,生じた無形の損害は,100万円とみるのが相当である。     原告は,このほか,受診のキャンセルなどにより多大な財産的損害を被った旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。     また,原告は被告に対し謝罪広告の掲載を求めているが,前記認定の各事実に照らすと,さらに,謝罪広告を掲載する必要があるとまでは認められない。 第4 結語    以上のとおりであるから,原告の請求は,主文第1項記載の限度で理由があるので,これを認容し,その余の請求を棄却して,主文のとおり判決する。    大阪地方裁判所第16民事部         裁判長裁判官   横   山   光   雄 裁判官   鈴   木   幸   男 裁判官   佐   伯   良   子

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