H17.11.25 さいたま地方裁判所 平成16年(ワ)第988号・平成16年(ワ)第1337号 債務不存在確認請求事件(本訴事件)・反訴事件

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H17.11.25 さいたま地方裁判所 平成16年(ワ)第988号・平成16年(ワ)第1337号 債務不存在確認請求事件(本訴事件)・反訴事件」(2006/01/30 (月) 12:53:51) の最新版変更点

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1 第三者からされた上尾市設置のセクシュアル・ハラスメント苦情処理委員会に対する苦情相談の取下げを依頼するように強要したとの不法行為に基づく損害賠償請求権等の不存在確認を求める訴えについて,訴えの利益がないとされた事例 2 公務出張中の自動車内において手を握るなどのセクシュアル・ハラスメントを認定し,損害賠償を命じた事例 3 上記苦情相談の取下げを相談をした第三者に依頼するよう強要したとして,損害賠償を命じた事例 主文 1 本訴原告A及び本訴原告Bの訴えをいずれも却下する。 2(1)反訴被告Cは,反訴原告に対し,120万円及びこれに対する平成15年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を(ただしうち60万円及びこれに対する平成15年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で反訴被告Dと連帯して)支払え。  (2)反訴原告の反訴被告Cに対するその余の請求を棄却する。 3(1)反訴被告Dは,反訴被告Cと連帯して,反訴原告に対し,60万円及びこれに対する平成15年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  (2)反訴原告の反訴被告Dに対するその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,本訴事件及び反訴事件に生じた費用を通算し,これを15分し,その各2を本訴原告らの負担とし,その4を反訴被告Cの負担とし,その3を反訴被告Dの負担とし,その余を反訴原告の負担とする。 5 この判決は,第2(1)項及び第3(1)項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求  1 本訴 (1)本訴原告らが平成15年4月5日上尾市所在の喫茶店aにおいて反訴原告に対して義務なきことを強要したとする不法行為に基づく,反訴原告の本訴原告らに対する損害賠償請求権及び謝罪の作為請求権が存在しないことを確認する。 (2)訴訟費用は反訴原告の負担とする。  2 反訴 (1)反訴被告らは,反訴原告に対し,連帯して,300万円及びこれに対する平成15年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)訴訟費用は反訴被告らの負担とする。 (3)仮執行宣言 第2 事案の概要  本件の当事者は,いずれも上尾市の職員である。  本訴は,本訴原告らが反訴原告に対し,本訴原告らにおいて,反訴原告に対し,上尾市セクシュアル・ハラスメント苦情処理委員会(以下「セクハラ苦情処理委員会」という。)への苦情相談の取下げを強要したとの不法行為に基づく損害賠償請求権及び謝罪等名誉回復措置の請求権が存在しないことの確認を求めた事案である。  反訴は,反訴原告が反訴被告らに対し,①反訴被告Cからセクシュアル・ハラスメントを受けたこと及び②反訴被告らから,セクハラ苦情処理委員会への苦情相談の取下げを強要されたことについて,①については反訴被告Cの不法行為,②については反訴被告らの共同不法行為に基づき,連帯して慰謝料300万円及びこれに対する不法行為後の日である平成15年9月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。  (当初,反訴被告らは,本訴原告らとともに債務不存在確認の本訴を提起し,これに対し,反訴原告が本訴原告ら及び反訴被告らを相手方として損害賠償請求の反訴をいったん提起した。その後,反訴原告は本訴原告らに対する反訴を,反訴被告らは反訴原告に対する本訴をそれぞれ取り下げた。その結果,本訴原告らの本訴と反訴原告から反訴被告らに対する反訴が現在係属している。このような訴訟経緯により,本訴原告ら及び反訴被告らの証拠は甲号証として,反訴原告のそれは乙号証として提出されている。)  1 前提となる事実(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない。) (1)反訴原告は,昭和48年7月27日生まれの女性で,日本大学理工学部工学科を卒業後,平成9年4月,上尾市に技師(土木技師)として採用され,都市整備部都市計画課地域計画係,平成13年4月から同街路係を経て,平成14年4月,企画財政部自治振興課広聴・国際交流担当に異動となった。なお,反訴原告は平成16年4月1日,建設部土木課に異動している(弁論の全趣旨)。  反訴原告は婚姻しているが,職場では旧姓である「丙」を通称として使用しており,夫は同じく上尾市役所に勤めている。 (2)反訴被告C(昭和21年10月18日生まれ)は,平成14年4月当時,上尾市の反訴原告の所属する企画財政部参事兼次長の役職にあった。反訴被告Cは,平成15年9月18日,水道部に異動となった。 (3)反訴被告D(昭和23年5月6日生まれ)は,平成14年4月当時,上尾市の企画財政部自治振興課長の役職にあり,反訴原告の直属の上司であった。反訴被告Dは,平成15年9月18日,環境経済部西貝塚環境センターに異動となった。 (4)本訴原告Bは,平成14年4月当時,自治振興課主幹の役職にあり,その後,自治振興課が所管する原市支所の所長となった。 (5)本訴原告ら,反訴原告及び反訴被告らの職制上の地位は,平成14年4月1日当時,別紙職場関係図記載のとおりであった。官僚組織においては,いわゆる命令一元化の原則(命令は,命令系統を通じて1人の上司から行われなければならないという原則である。乙10)が存在しており,これによれば,反訴原告に対する職務上の命令は,主席主査のEからなされることになっていた。ただし,平成14年4月ころは,Eが長期研修中で不在のため,反訴被告D又はこれを補佐する地位にある本訴原告Bからなされることになる。 (6)上尾市には,職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止し,性的差別のない健全な職場環境を確保するため,セクハラ苦情処理委員会が設置されている。このセクハラ苦情処理委員会は,平成12年4月1日市長決裁,平成13年4月1日施行に係る上尾市職員のセクシュアル・ハラスメントの防止に関する要綱(甲13,14)に基づき,上尾市に設置された機関である。  セクハラ苦情処理委員会によるセクシュアル・ハラスメントの解決は次のような順序で行われるべきものとされている。①セクシュアル・ハラスメントの被害を受けた職員又はその他の職員は,セクシュアル・ハラスメント相談員として指定された職員に対し,苦情相談をする。②苦情相談を受けたセクシュアル・ハラスメント相談員は,相談票に苦情相談の内容を記録した上,職員課長に報告する。職員課長は,複数の職員に命じて事実関係を調査確認するか,セクハラ苦情処理委員会に処理を依頼する。(以上,上記要綱第8条及び第9条)③セクハラ苦情処理委員会は,職員課長から処理を依頼された苦情相談について,事実関係の調査,対応措置の審議,必要な指導・助言を行うものとされている(上記要綱第10条2項)。  また,セクハラ苦情処理委員会による事実関係の結果,セクシュアル・ハラスメントの事実が確認された場合は,市長その他の任命権者は,必要に応じ,加害者の職員及びその所属長に対し,懲戒処分その他必要な措置を講ずるものとされている(上記要綱第11条)。プライバシーの保護に関して,①相談員等は,当事者その他関係職員のプライバシーの保護に努めるとともに,当該事案に関し知り得た秘密を厳守しなければならない,②相談員等は,苦情相談の処理に当たっては,職員が相談をし,又は苦情を申し出たことを理由として,当該職員が不利益な取扱いを受けることのないよう特に留意しなければならないとされている(上記要綱第12条)。 (7)反訴被告Cが所有する乗用車は,トヨタ・クラウンアスリート2500㏄ターボである(以下「C車」という)。(反訴原告は,このC車内で反訴被告Cからセクシュアル・ハラスメントを受けたと主張している。)  2 争点 (本訴について) (1)本訴債務不存在確認の訴えについて確認の利益があるか否か。(争点(1)) (反訴について) (2)反訴原告は反訴被告Cからセクシュアル・ハラスメントを受けたか。(争点(2)) (3)反訴原告は反訴被告らからセクハラ苦情処理委員会への苦情相談の取下げを強要されたか。(争点(3)) (4)反訴原告の受けた損害はいくらか。(争点(4))  3 争点に関する当事者の主張 (1)争点(1)(確認の利益)について (本訴原告らの主張)  本訴原告らは,下記のとおり,反訴原告から公然と不法行為の疑いが掛けられており,公権的判断によって名誉の回復が計られるべきであるから,本訴については確認の利益がある。  ア 反訴原告は,平成15年9月4日,大宮簡易裁判所に対し,上尾市,F上尾市長(以下「F市長」という。),本訴原告ら,反訴被告及びG企画財政部長(当時)を相手方として,調停を申し立てた(大宮簡易裁判所平成15年(ノ)第187号)。反訴原告は,上記調停において,次のとおり主張して,謝罪を求めたが,平成16年3月24日,上記調停を取り下げた。(争いがない) (ア)反訴原告は,平成14年5月上旬以降,反訴被告Cから,C車の中で手を握られる,これに抗議したことを理由に担当業務から外される,技師であるのに一般女子事務職員と同様に制服の着用を求められるなどのセクシュアル・ハラスメントを受けた。 (イ)反訴原告の所属する自治労連埼玉県本部上尾市職員労働組合(以下「自治労連上尾市」という。)のH書記長及びI執行委員は,平成15年4月2日,セクハラ苦情処理委員会に対し,反訴原告が上記のセクシュアル・ハラスメントを受けたとして苦情相談をした(以下「本件苦情相談」という。)。反訴被告Cは,平成15年4月5日,上尾市所在の喫茶店aにおいて,反訴原告と面談し,H書記長に本件苦情相談の取下げを希望すると話すこと,反訴被告Cから,このような働きかけがあったことは秘匿するよう強く申し渡した。本訴原告らは,この面談に同席した。  イ 反訴原告は,上記調停取下げに先立つ平成16年2月26日,セクハラ苦情処理委員会に苦情相談をした。  ウ 反訴原告は,平成16年7月1日,本訴原告ら及び反訴被告らを相手方として,反訴を提起した(反訴事件)。反訴原告は,本訴原告ら及び反訴被告らに対し,上記調停と同旨の主張をし,連帯して300万円及び遅延損害金を支払うよう請求した。  反訴原告は,平成16年11月5日,本訴原告らに対する関係で反訴を取り下げ,本訴原告らもこれに同意した。(争いがない)  エ 反訴原告は,平成17年6月24日の本件口頭弁論期日に実施された本人尋問の際,本訴原告らからも,本件苦情相談の取下げを強要された旨の陳述をした。 (反訴原告の主張)  争う。 (2)争点(2)(反訴被告Cによるセクシュアル・ハラスメント)について (反訴原告の主張)  反訴被告Cによる下記各行為は,身体への接触によるセクシュアル・ハラスメントであり,不法行為に該当する。  ア 平成14年5月下旬の接触行為 (ア)反訴原告は,平成14年4月,都市整備部都市計画課から企画財政部自治振興課に異動となって間もなく,当時企画財政部参事兼次長の地位にあった反訴被告Cから,d地区にある公園のリニューアルのための準備作業を命じられた(争いがない)。 (イ)反訴原告は,同年5月ころから,反訴被告Cから命じられて,同人及び当時原市支所長の地位にあった本訴原告Bとともに頻繁にd地区に出張するようになった。 (ウ)反訴原告は,同年5月下旬,反訴被告Cから急に命じられて,二人でd地区に出張することとなった。反訴被告Cは,その際,公用車ではなくC車を使用し,自ら運転した。反訴原告は,往路,後部座席に座った。 (エ)反訴被告Cは,その帰路,反訴原告に対し,助手席に座るよう命じた。反訴原告は,これに従い,助手席に座った。反訴原告は,シートベルトを着用し,両手をひざの上に置いていた。 (オ)反訴被告Cは,帰路走行中のC車の中で,反訴原告に対し,次のように話した。  あ 反訴原告の平成13年度の異動先は,当初,反訴原告が希望先の一つとして挙げていた情報推進課に内定していたこと,それを反訴被告Cの権限で自治振興課に変更させたこと,したがって,反訴原告の異動人事は自分が決定したことなど,事実上,自らが職員の人事に関する決定権を握っていると思わせ振りな発言をした。  い 「人事は,市長と自分が握っており,誰をどこに配置するかはすべて事実上,自分が決めている。新栄会は,自分を慕っているメンバーが作っている会であり,この会に入っている者の人事は,自分の裁量で,希望どおりにしている。B主幹も今年から,メンバーになりたいと言ってきたので,取り立てているが,最近人数が増えたのでだんだん調整が大変になってきている。」と話した。  う 「いずれは,慕ってくれる女性を愛人にしたいと思っている。」「市役所の幹部職員になれば,愛人を複数人持つことくらいは普通に行っている。」と言い,複数の幹部職員の名前や女性職員の名前を挙げた。 (カ)反訴被告Cは,上記のとおり話した上で,反訴原告の意見を執ように求めた。反訴原告は,「私には,そういったことは良く分かりません。」と答えた。反訴被告Cは,右手でハンドルを握ったまま,左手でいきなり反訴原告の手を上から握り,反訴原告に対し,「これは友情だ。」と言った。  イ 平成14年6月4日の接触行為 (ア)反訴原告は,平成14年6月4日,反訴被告Cから急に命じられて,反訴被告Cと二人でe地区に出張した。反訴被告Cは,株式会社c社長のLと会談するため,C車を自ら運転して,e地区所在の株式会社cに出張し,Lと会談した。(争いがない) (イ)反訴被告Cと反訴原告とは,その帰路,北本駅ビル内の公共施設に立ち寄り,これを見学した(争いがない)。 (ウ)反訴原告は,北本駅からの帰路,助手席にシートベルトをし,両手をひざの上に置いて座っていた。反訴被告Cは,自然学習館近くの人気のない林に囲まれた道を走行中,右手でハンドルをつかんだまま,左手でいきなり反訴原告の右手を上から握ってきた。反訴原告は,緊張して体がこわばった。反訴被告Cは,次いで,左手で反訴原告の右手を握ったまま反訴原告の右太ももの内側に持っていき,反訴原告の右太ももの上に置いた。車がカーブにさしかかったため,反訴被告Cは反訴原告の右手から自分の左手を離し,ハンドルに戻した。 (エ)この日の出張の目的は,反訴被告CとLとの会見に同席することであり,北本駅ビルへの立ち寄りも含め,反訴原告の本来の仕事とは全く関連がなかった。  ウ 平成14年6月下旬の接触行為 (ア)反訴原告は,平成14年6月下旬,反訴被告Cから急に命じられて,反訴被告Cと二人でd地区に出張した。反訴被告Cはこの時もC車を利用した。 (イ)反訴原告は,助手席にシートベルトを着用し,両手をひざの上に置いて座っていた。反訴被告Cは,往路走行中,右手でハンドルをつかんだまま,左手でいきなり反訴原告の右手を上から握った。反訴原告は,緊張して体がこわばった。  反訴被告Cは,引き続き,左手で反訴原告の右手を握ったまま,自分の方に引き寄せ,コンソールボックスの上に置き,さらに,反訴原告の右太ももの内側に持っていき,反訴原告の右手ごと反訴原告の右太ももの上に自分の左手を置いた。反訴原告は,無言で反訴被告Cの左手を軽く払った。反訴被告Cは,払われた左手をすかさず反訴原告の右太ももに直接置いた。反訴原告は,反訴被告Cの行為をやめさせるため,右手で反訴被告Cの左手をつかんだ上押し返し,「やめてください。」と明確に言った。 (反訴被告らの主張)  ア 平成14年5月下旬の接触行為について  否認する。反訴被告Cは,平成14年5月下旬に反訴原告と二人で,d地区に赴いたことはないし,反訴原告主張の発言をしたこともない。  イ 平成14年6月4日の接触行為について  反訴原告主張のとおり,反訴被告Cが反訴原告と二人で出張した事実は認める。ただし,反訴原告の仕事と無関係に出張したわけではなく,Lからe地区の街づくりの計画図を見せてもらうために出張した。  反訴被告Cが,帰路,一時停車中に,「頑張ってください。」という意味で,右手を出し,反訴原告も,これに応じてその右手を自分から差し出して握手をしたことはあるが,反訴被告Cが左手を反訴原告の右手の上に置いて握ったり,その手を反訴原告の右太もものほうに持っていこうとしたりしたことはない。  ウ 平成14年6月下旬の接触行為について  否認する。反訴被告Cは,平成14年6月14日以降,反訴原告とd地区に出張したことはない。  エ 反訴原告のセクシュアル・ハラスメントに関する陳述は,虚偽であり,信用性に欠ける。すなわち,①反訴原告の陳述は,当初,概括的であり,反訴被告らが反論するや後になるほど詳細になる傾向がある。また,②反訴原告は平成15年の正月に反訴被告Cに対し,手書きの挨拶文を添え書きした年賀状を差し出したこと,平成15年4月の異動期に企画財政部自治振興課からの異動を希望していないことから,反訴原告が反訴被告Cに対し,嫌悪感を持っていなかったことは明らかである。それゆえ,反訴被告Cによるセクシュアル・ハラスメントは存在しなかったといえる。③反訴原告が虚偽の陳述をするのは,反訴原告が,平成16年2月5日に実施された上尾市長選挙に関し,F市長の対立候補となったN上尾市議会議員との面識があり,同人 に対しセクシュアル・ハラスメント被害を訴えて善処を依頼したこと,その後,N議員が,市長選挙中に,F市長において本件苦情相談の取下げ強要に関与したとF市長の批判をしたためである。 (3)争点(3)(セクハラ苦情処理委員会への苦情相談の取下げ強要)について (反訴原告の主張)  反訴被告らによる本件苦情相談の取下げ強要などの下記の一連の行為は,反訴原告に対する不当な行為の強要であり,また,それ自体,セクシュアル・ハラスメントの一内容となり,共同不法行為に当たる。  ア 平成15年1月9日の行為  反訴被告Dは,平成15年1月9日午後7時ころ,車で,反訴原告を自宅まで迎えに来て,与野市(当時)所在のレストランb(なお,上尾市にも同名のレストランがあり,後者は,以下「上尾市所在のレストランb」という。)に連れていった。  反訴被告Dは,反訴原告に対し,「セクシュアル・ハラスメントについて騒ぐと,今後仕事をする上で不利益を受けることになるのでやめた方がよい。」などと発言した。  イ 平成15年4月5日の行為 (ア)反訴原告は,平成14年6月下旬にC車内での接触行為に対し抗議して以降,同月28日,内部で担当職務の交替を命じられ,d地区の公園リニューアルに関する業務やNPO共同推進計画の策定の担当から外されたり,いったん上司の決裁を受けた仕事について反訴被告Cから不必要なやり直しをさせられたりしていた。 (イ)反訴原告は,平成14年8月ころから,自治労連上尾市に,セクシュアル・ハラスメントの被害に遭っている旨相談した。H書記長及びI執行委員は,平成15年4月2日,セクハラ苦情処理委員会に対し,反訴原告が反訴被告Cから受けたセクシュアル・ハラスメント等について,第三者からの苦情相談をした(本件苦情相談)。 (ウ)反訴被告Dは,平成15年4月5日(土曜日)午後7時ころ,反訴原告を,自宅に迎えに来て,レストランbに連れていき,その場で次のように話した。  あ 反訴被告Dは,レストランbにおいて,反訴原告に対し,「委員会が招集されたら終わりだ。」などと言い,本件苦情相談をすぐに取り下げさせるよう強く求めた。反訴被告Dは,反訴原告に対し,もし取り下げないならば今後,事実上,市役所で仕事ができなくなるような人事的制裁若しくは嫌がらせをされることになると告げ,重ねて,直ちにH書記長に連絡し,本件苦情相談を取り下げさせるよう迫った。反訴原告は,これ以上人事的制裁や嫌がらせを受けるのを恐れ,その場でH書記長に電話をし,本件苦情相談を取り下げてもらいたい旨を伝えた。  い 反訴被告Dは,反訴原告に対し,今度は,「C参事やG部長が非常に立腹しているので,今後嫌がらせを受けないためにも,これからすぐに謝りに行った方がよい。」と告げた。反訴原告は,何ら謝罪する理由はない旨反論したものの,これ以上の嫌がらせを受けることをおそれ,自分が本件苦情相談をしたのではない旨説明するために,反訴被告Dとともに反訴被告Cに会いに行かざるを得なかった。反訴被告Dは,反訴原告を連れて,反訴被告Cが待機する喫茶店aに移動した。 (エ)反訴被告Cは,喫茶店aにおいて,反訴原告に対し,「みんな仲間だから。」と述べた上で,「何もなかっただろう。」と,暗にセクシュアル・ハラスメントの事実を否定するよう執ように迫った。反訴原告は,その場の雰囲気から,「お話しできるようなことはありません。」と答えるのが精一杯であった。  さらに,反訴被告Cは,反訴原告に対し,H書記長に対しては反訴被告Cらの働きかけがあったことを秘し,あくまで反訴原告自身が本件苦情相談の取下げを希望していると話すよう強く申し渡した。  ウ 平成15年4月7日の行為 (ア)反訴被告らは,平成15年4月7日(月曜日)午前8時40分ころ,反訴原告を上尾市庁舎議会棟の議員控室(以下「議員控室」という。)に呼び出した上,次のような行為に及んだ。  あ 反訴被告らは,議員控室において,再度,反訴原告に対し,本件苦情相談の取下げを念押しした上,セクシュアル・ハラスメントの被害にあったこと,本件苦情相談の取下げについて申し渡されたことを秘匿するよう求めた。  その後,G企画財政部長が,議員控室に現れた。反訴原告は,反訴被告ら同席のもと,G企画財政部長に対し,本件苦情相談の取下げを希望する旨の意思表示を強いられた。反訴被告Cは,G企画財政部長に対し,「この件が漏れたことについては,黙っていろと強く言い含めてありますので,大丈夫です。」と報告した。  い 反訴被告C及びG企画財政部長が退席した後,反訴被告Dは,今度は,J総務部長兼セクシュアル・ハラスメント防止推進委員会委員長(以下「J総務部長」という。)及びK職員課長に議員控室に来てもらった。反訴被告Dは,反訴原告に対し,H書記長に本件苦情相談の取下げを依頼したことをJ総務部長及びK職員課長に対し報告させた。  K職員課長は,反訴原告に対し,セクシュアル・ハラスメントを受けたのか,受けなかったのかを尋ねた。反訴原告は,反訴被告Dがそばにいて監視していることや午前9時から会議に出席する予定であったのにその時刻を過ぎていることもあり,「お話しできるようなことは何もない。」と答えるしかなかった。 (イ)反訴被告Dは,同日午前11時40分ころ,反訴原告に対し,F市長の時間が取れたので課に戻るように命じた。反訴原告が課に戻ると,反訴被告Dは,反訴原告に対し,「至急,市役所裏の駐車場に私服で来るように。」と命じた。反訴原告が駐車場に行くと,反訴被告らは,反訴原告を上尾市所在のレストランbに連れていった。反訴被告らは,上記レストランにおいて,反訴原告に対し,F市長と面会して,セクシュアル・ハラスメントの事実はなかった旨話すよう申し渡した。 (ウ)反訴原告は,同日午後1時ころ,反訴被告らとともに,上尾駅前のF市長の選挙事務所に行った。F市長は,反訴原告に対し,「入職数年で将来があるのだから,セクハラを受けたなどということで将来をつぶすな。」と述べた。 (反訴被告らの主張)  ア 平成15年1月9日の行為について  反訴被告Dが,反訴原告主張の日時に,反訴原告を自宅まで迎えに行き,レストランbに連れていったことは認めるが,セクシュアル・ハラスメントについて騒ぐのはやめた方がよいなどと発言した事実はない。  イ 平成15年4月5日の行為について  本訴原告ら及び反訴被告らが,反訴原告に対し,H書記長に連絡し,本件苦情相談を取り下げさせるよう迫ったり,このような働きかけを行ったりしたことを秘匿するよう求めた事実はない。当日の事実経過は次のとおりである。 (ア)反訴被告Dは,反訴原告主張の日時に,反訴原告を自宅まで迎えに行き,レストランbに連れていった。反訴被告Dは,反訴原告に対し,本件苦情相談がなされたことを伝えた。反訴原告は,自主的に,H書記長に電話を掛け,本件苦情相談を取り下げるよう求めた。 (イ)反訴原告は,反訴被告Dと二人で食事をした後,反訴被告Cに対しても説明をしたいと申し出た。反訴被告Dは,反訴被告Cに対し電話で連絡して,喫茶店aで会うことを約束した上で,反訴原告を喫茶店aに連れていった。 (ウ)反訴原告は,喫茶店aにおいて,反訴被告ら及び本訴原告らと面談し,セクハラ苦情処理委員会への本件苦情相談が,自分の意思によるものではないことを説明した。反訴被告Cが,反訴原告に対し,脅迫や強要を行ったことはない。 (エ)反訴被告Dは,反訴原告を自宅まで送っていった。反訴原告は,その際,反訴被告Dに対し,事務服を取りに行くため上尾市役所に立ち寄ることを求め,反訴被告Dはこれに応じた。  ウ 平成15年4月7日の行為について  反訴原告は,G企画財政部長及びK職員課長に対し,本件苦情相談が自分の意思によるものではないことを説明した。反訴被告らが,反訴原告に対し,このような説明を強要した事実はない。  また,反訴原告は,F市長と面談したが,セクシュアル・ハラスメントに関する話はしなかった。 (4)争点(4)(損害)について (反訴原告の主張)  反訴原告が反訴被告らの上記不法行為によって被った精神的苦痛を慰謝する金額としては,少なくとも300万円を下ることはない。 (反訴被告らの主張)  争う。 第3 争点に対する判断  1 争点(1)について (1)前記前提となる事実,証拠(甲1,11,12の1から3まで,13,14)及び弁論の全趣旨によって認められる事実は次のとおりである。  ア 反訴原告は,平成15年9月4日,大宮簡易裁判所に対し,上尾市,F市長,本訴原告ら,反訴被告ら及びG企画財政部長を相手方として,謝罪等を求める調停を申し立てたが(大宮簡易裁判所平成15年(ノ)第187号),平成16年3月24日,これを取り下げた。反訴原告は,上記調停において,本訴原告らに対し,次のとおり主張して謝罪を求めた。すなわち,反訴原告は,反訴被告Cから,平成15年4月5日,喫茶店aにおいて,H書記長に連絡をして本件苦情相談の取下げを希望すると話すことを強く言いつけられるとともに,反訴被告Cからこのような働きかけがあったことを秘匿するよう求められ,本訴原告らにおいてもこの面談に同席して働きかけを行った,と主張した。(争いがない)  イ 反訴原告は,平成16年2月26日,セクハラ苦情処理委員会に対し,上記調停において主張した事実と同様の事実を主張して,セクシュアル・ハラスメントに関する苦情を申し立てた。なお,セクハラ苦情処理委員会の調査は,本件訴訟が係属中であることを理由にして,本訴原告ら及び反訴被告らが事情聴取を拒んでいることから,現在,中断している。(甲11,12の1から3まで,乙1,弁論の全趣旨)  ウ 本訴原告ら及び反訴被告らは,平成16年5月11日及び同年6月11日,反訴原告を相手方として,反訴被告Cのセクシュアル・ハラスメントの不法行為及び本訴原告ら及び反訴被告らのセクハラ苦情処理委員会への苦情相談の取下げ強要の不法行為に基づく謝罪等名誉回復措置を行う義務が存在しないことの確認を求める訴えを,さいたま地方裁判所に提起した(本訴事件)。  エ 反訴原告は,平成16年7月1日,反訴被告らのほか,本訴原告らを相手方として,反訴を提起した(反訴事件)。反訴原告は,本訴原告ら及び反訴被告らに対し,上記調停と同旨の主張をし,連帯して300万円を支払うよう請求した。  反訴原告は,平成16年11月2日,本訴原告らに対する関係で反訴を取り下げ,同月5日,本訴原告らもこれに同意した。  オ セクハラ苦情処理委員会は,平成12年4月1日市長決裁に係る上尾市職員のセクシュアル・ハラスメントの防止に関する要綱に基づき,上尾市に設置された機関である。上記要綱の目的は,職場におけるセクシュアル・ハラスメントの防止に関し必要な事項を定めることにより,性的差別のない健全な職場環境を確保することにあるとされている(上記要綱第1条)。セクハラ苦情処理委員会は,職員課長から処理を依頼された事案に関して,事実関係の調査,対応措置の審議,必要な指導・助言を行うものとされている(上記要綱第10条2項)。また,セクハラ苦情処理委員会による事実関係の結果,セクシュアル・ハラスメントの事実が確認された場合は,市長その他の任命権者は,必要に応じ,加害者の職員及びその所属長に対し,懲戒処分そ の他必要な措置を講ずるものとされている(上記要綱第11条)。(甲13,14) (2)上記認定事実によれば,反訴原告は,本訴原告らに対する調停及び訴訟をいずれも取り下げており,ほかに,反訴原告が本訴原告らに対し何らかの民事上の請求をしていると認めるに足りる証拠はない。  また,反訴原告の苦情相談に関するセクハラ苦情処理委員会の調査は継続中であるが,セクハラ苦情処理委員会の調査は,専ら,職場としての上尾市におけるセクシュアル・ハラスメントの防止を目的としており,その調査結果も職場における指導,助言及び任命権者による懲戒処分の根拠として用いられるにとどまり,本訴原告らと反訴原告間の民事上の権利関係とは直接的な結び付きを有するものとは認められない。  本訴原告らは,本件訴訟において,本訴原告らの名誉の回復が計られるべきであると主張するが,上記検討のとおり,本訴原告らの求める確認の訴えは,ひっきょう,権利関係の存否や法的地位の問題ではなく,事実の存否についての確認を求めることに帰するから,理由がない。  以上によれば,本訴原告らと反訴原告との間には,現時点において,民事上の権利関係の存否に関する争いがあるとは認められず,本訴原告らの訴えは確認の利益を欠くものと言わざるを得ない。よって,本訴原告らの訴えは不適法であり,却下を免れない。  2 反訴(争点(2)から(4)まで)について判断するに先立ち,本件の経緯を見ると,前記前提となる事実のほか,当該認定箇所に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりである。 (1)反訴被告ら及び反訴原告の職歴等  ア 反訴被告Cは,平成14年4月当時,企画財政部参事兼次長の役職にあった。参事兼次長は,部長の次席であり,部の事務の調整及び部長から指示された事務をつかさどるものとされている。反訴被告Cの所属する企画財政部には,自治振興課のほか,総合政策課,財政課,広報課及び男女共同参画課が設置されている。なお,反訴被告Cの妻は,F市長と親せき関係にある。  イ 反訴被告Dは,平成14年4月当時,自治振興課長の役職にあった。自治振興課は,自治活動の推進,支所,広聴,NPO及びボランティアに関する事柄などを分掌している。本訴原告Bは,当時,自治振興課主幹(いわゆる課長補佐に相当する。)の役職にあった。  ウ 反訴原告は,日本大学理工学部工学科を卒業後,平成9年4月,上尾市に技師として採用された。反訴原告は,採用後,都市整備部都市計画課地域計画係,同街路係での勤務を経て,平成14年4月,企画財政部自治振興課へ異動した。反訴原告は,同課において広聴及び国際交流を担当したほか,NPOの担当となった。当時,広聴及び国際交流担当の部署には,反訴原告のほか3名の正職員及び1名の非常勤職員が配属されており,反訴原告は,正職員としては末席であった。なお,反訴原告は,平成16年4月1日,建設部土木課に異動した。  エ 平成14年4月当時,企画財政部自治振興課の職制上,反訴原告の直属の上司である主席主査のEは研修中で不在であったため,反訴原告は反訴被告D又は本訴原告Bの命令を受ける関係にあった。 (以上,前記前提となる事実(1)から(5)まで,甲15,19,63,乙7,弁論の全趣旨) (2)反訴原告は,平成14年4月の異動後間もなく,反訴被告Cから,d地区にある公園の改修工事について,準備作業を行うよう命じられた。反訴原告は,その後,反訴被告C及び本訴原告Bとともに,複数回,d地区に出張し,地域住民と打合せを行った。反訴被告Cは,その車中で,自らが職員人事に関与しているかのような発言を繰り返した。(乙7,反訴原告本人)。 (3)平成14年5月下旬の反訴被告Cの行為  ア 反訴原告は,平成14年5月下旬ころの午前中,反訴被告Cから,出張に行く旨を突然告げられた。反訴原告は,反訴被告Cと二人だけで,d地区に出張した。反訴被告Cは,公用車ではなく,C車を自ら運転して,d地区に赴いた。  反訴被告Cは,その帰路,反訴原告に対し,助手席に座るよう申し向けた。反訴原告はやむなくこれに従った。反訴被告Cは,車中,反訴原告に対し,新栄会という上尾市職員有志の集まりがあること,自分は,その構成員を人事上優遇していると話した(なお,新栄会は,これに属さない職員から,F市長を囲む私的な親ぼく団体であり,反訴被告Cは,その会の中心的人物であると認識されている。)。また,反訴被告Cは,平成14年4月の反訴原告の異動について自らが関与して,自治振興課への異動を決定させたかのようにも受け取れる話をした。(乙7,証人M,反訴原告本人)  イ 反訴原告は,両手をひざの上において座って話を聞いていたが,反訴被告Cは,突然,反訴原告の右手を,自らの左手で上から重ねるようにして握った。反訴原告は,手を払いのけたり,手を握るのをやめるように言ったりはしなかった。反訴被告Cは,しばらくして,手を離した。(乙7,13,14の1及び2,反訴原告本人) (4)平成14年6月4日の反訴被告Cの行為  ア 反訴被告Cは,平成14年6月4日午前10時ころ,反訴原告に対し,e地区へ出張する旨を告げ,反訴原告と二人でe地区に出張した。反訴原告は,この出張の予定を事前に聞いていなかった。反訴被告Cは,出張に当たり,C車を使用した。このとき,自治振興課の公用車(2台あり,いずれも軽自動車である。)は少なくとも1台使用されずに残っており,反訴被告Cは,職場の規律からは公用で出張する以上,当然にこれを使用しなければならなかった。  反訴被告Cは,e地区所在の株式会社cに赴き,L(e地区区長会前副会長,地区コミュニティ協会会長ほかの役職がある。)と会談した。反訴被告CとLは,e地区の街道整備の計画図案について話をした。反訴原告は,このとき初めて,e地区の街道整備の話を聞いた。反訴原告は,この街道整備に興味を持ち,Lに対し,街道整備についての会合に出席させてほしいと話し,計画図案を1部譲り受けた。反訴被告Cと反訴原告は,昼ころ,株式会社cを辞した。(甲70,乙7,16,17の4,証人L,反訴原告本人)  イ 反訴被告Cは,その後,反訴原告とともに,北本市(桶川市を挟んで上尾市の北に位置し,通常の帰路からは反対方向になる。)所在の北本駅の駅ビルに行き,駅ビル内にある公共施設などを見学した。反訴被告Cは,反訴原告に対し,自然学習館という施設があるので,見学してから市庁舎に戻ると話し,北本市f所在の自然学習センター方面に向かった。反訴原告は,助手席に座っていた。(乙7,12,13,14の1及び2,16,反訴原告本人,)  ウ 反訴被告Cは,北本市f所在の自然学習センター横の道路を進行中,5月下旬の行為と同様に,助手席に座っている反訴原告の右手を,自らの左手で上から重ねるようにして握った。反訴原告は,足を触られないように手に力を入れた。反訴被告Cは,車がT字路に差し掛かったところで反訴原告の右手から自らの左手を離し,ハンドルを両手で握った。(乙12,13,反訴原告本人) (5)平成14年6月下旬の行為  ア 反訴被告Cは,平成14年6月17日,22日,24日又は25日のいずれかの日の午前中,反訴原告とともに,上尾市内の公園に出張した。反訴被告Cは,このときも,C車を使用した。反訴原告は,後部座席に座ることを申し出たが,反訴被告Cは,助手席に座るように申し向けた。(乙7,13,16,反訴原告本人)  イ 反訴被告Cは,車中において,5月下旬及び6月4日と同様に,反訴原告の右手を,自らの左手で上から重ねるようにして握った。反訴被告Cは,反訴原告の右手を握ったまま,左手をコンソールボックスの上に置き,次いで,反訴原告の太ももに置き,そのまま反訴原告のひざの方に手を伸ばした。反訴原告は,反訴被告Cの左手を払いのけたが,反訴被告Cは,左手を反訴原告の右太ももに置いた。反訴原告は,反訴被告Cに対し,やめてくださいと言った。反訴被告Cは,反訴原告の身体から手を離した。(乙7,13,14の1及び2,反訴原告本人) (6)平成14年6月以降の経過  ア 反訴被告Cは,その後,反訴原告に対し,二人だけの出張を命ずることはなかった。(乙7,弁論の全趣旨)  イ 反訴原告は,平成14年6月28日,反訴被告Dから,NPO担当から外れるよう命じられた。(争いがない)  ウ 反訴原告は,この命令に納得がいかず,同年7月ころ,自らが所属する自治労連上尾市のH書記長に相談した。反訴原告は,その際,H書記長に対し,反訴被告Cからセクシュアル・ハラスメントを受け,やめるように言ったことが原因になっているかもしれないと話した。  また,反訴原告は,異動前の上司(都市計画課課長補佐)であるM(以下「M課長補佐」という。)に対し,反訴被告Cから,仕事を取り上げられた,セクシュアル・ハラスメントの被害に遭ったと相談した。M課長補佐は,後日,相談の内容をJ総務部長に伝えた。J総務部長は,M課長補佐に対し,被害者に対して被害にあった日時等の記録を指示するように命じた。M課長補佐は,反訴原告に対し,その旨指示した。(乙6,7,証人H,証人M,反訴原告本人) (7)平成15年1月9日の反訴被告Dの行為  ア 差出人不明の手紙が,平成14年12月31日,K職員課長の自宅に配達された。その手紙には,反訴被告Cが自治振興課の女性職員に対しセクシュアル・ハラスメントを行っている旨が記載されていた。  K職員課長は,平成15年1月7日(火曜日),J総務部長に対し,上記手紙が郵送されてきたことを報告した。J総務部長は,同日,反訴被告Cから事情聴取を行った。反訴被告Cは,セクシュアル・ハラスメントの事実はないと回答した。(甲40,58の3及び4)  イ 反訴被告Cは,平成15年1月7日,反訴被告Dに対し,上記差出人不明の手紙に関し,事情聴取を受けた旨を話した。(反訴被告D本人)  ウ 反訴被告Dは,平成15年1月8日(水曜日)午前7時ころ,反訴原告の自宅に電話をかけ,その日の夜に時間を取って会ってほしいと言った。反訴原告は,勤務時間では駄目なのかと尋ねたが,反訴被告Dから夜に会ってほしいと言われたため,反訴原告は,翌9日に反訴被告Dと会う約束をした。(乙7,反訴被告D本人)  エ 反訴被告Dは,平成15年1月9日(木曜日)午後7時ころ,反訴原告の自宅まで迎えに来て,反訴原告をレストランbに連れていった。反訴被告Dは,反訴原告に対し,制服を着用するように話した後,セクシュアル・ハラスメントについて騒ぐと今後仕事をする上で不利益を受けることになるからやめた方がよいと話した。(甲35の1及び2,乙7,反訴被告D本人) (8)平成15年4月4日から同月7日までの反訴被告らの行為  ア K職員課長に送付されたものと同旨の差出人不明の手紙は,平成14年12月末に,自治労連上尾市の委員長の自宅にも配達された。自治労連上尾市は,平成15年1月17日,反訴原告から,事情聴取をした。反訴原告は,事情聴取を行ったH書記長らに対し,反訴被告Cから仕事のことで嫌がらせを受けており,嫌がらせがひどくなっては困るので,自分から訴え出るつもりはないが,組合でできることがあればしてほしいと話した。(甲58の1から4まで,乙2,7,証人H,反訴原告本人)  イ 自治労連上尾市は,その後も,反訴原告から複数回相談を受けた。自治労連上尾市の執行部は,上尾市職員のセクシュアル・ハラスメントの防止に関する要綱に基づく調査を行うことで問題の解決が図れるとの協議結果を出し,平成15年4月2日,セクシュアル・ハラスメント相談員に対し本件苦情相談を行った。自治労連上尾市は,このとき,苦情相談を行うことを反訴原告に伝えなかった。  相談員は,同月4日,K職員課長に対し相談内容を報告した。K職員課長は,同日午後,反訴原告及び反訴被告Cに対し,事実確認をしたい旨を連絡した。しかし,反訴原告は休暇中のため,週明けの7日(月曜日)に連絡を取ることとした。(甲58の1から4まで,乙2,7)  ウ 反訴被告Cは,平成15年4月4日(金曜日)午後,反訴被告Dに対し,セクシュアル・ハラスメントについての苦情相談がなされたので,反訴原告に確認してほしいと依頼した。  反訴被告Dは,同日午後7時ころ,反訴原告の自宅に電話を掛け,今から会ってほしいと言った。反訴原告は,時間が夜遅いのでと言って断った。反訴被告Dは,その後,もう一度電話を掛けてきて,明日中に話したいことがあるので是非会ってほしいと話した。反訴原告は,翌日に,友人の結婚披露宴に出席する予定であったので,月曜日に会うことにしたいと申し出た。しかし,反訴被告Dが月曜日では駄目だと言ったため,反訴原告は,翌日の夜に会う約束をした。反訴被告Dは,いずれの電話の際も,反訴原告に対し,会う目的を告げなかった。(甲36,乙7,反訴原告本人,反訴被告D本人)  エ 反訴被告Dは,平成15年4月5日(土曜日)午後6時半ころ,反訴原告を自宅まで迎えに行き,レストランbに連れていった。反訴被告Dは,レストランbにおいて,反訴原告に対し,セクシュアル・ハラスメント相談窓口に反訴原告の名前で本件苦情相談がなされたこと,本件苦情相談をしたのはH書記長であることを教えた。反訴被告Dは,その上で,反訴原告に対し,セクハラ苦情処理委員会が招集されたら終わりだ,市役所で事実上仕事ができなくなるような嫌がらせをされるかもしれないと告げた。反訴被告Dは,反訴原告に対し,いま本件苦情相談を取り下げないと,あなたは大変なことになると言って,本件苦情相談の取下げを依頼するように言った。  反訴原告は,その場で自分の携帯電話からH書記長に電話を掛け,本件苦情相談を取り下げるよう依頼した。H書記長は,反訴原告に対し,だれから聞いたのか繰り返し尋ねるなどしたが,最後には,反訴原告の申出を容れて,月曜日に本件苦情相談を取り下げると約束した。(甲35の1及び2,乙7,証人H,反訴原告本人,反訴被告D本人)  オ 反訴被告Dは,その後,反訴原告に対し,反訴被告Cも怒っているから,これからすぐ謝りに行った方がよいと言った。反訴原告は,反訴被告Dの話に従い,反訴被告Cと会うことにした。反訴被告Dは,反訴被告Cに対し,電話を掛け,喫茶店aで会うことにした。反訴被告Dは,反訴原告を,喫茶店aに連れていった。  反訴原告は,同日午後7時半ころ,喫茶店aに着いた。反訴被告Cは,反訴原告が到着したとき既に着席していた。その後,反訴被告Cから話合いに立ち会ってほしいと依頼された本訴原告Bと本訴原告Aが来店した。  反訴被告Cは,反訴原告に対し,何もなかっただろうと尋ね,セクシュアル・ハラスメントの事実がないことを認めさせようとした。反訴原告は,お話しできるようなことはありませんと答えた。また,反訴被告Cは,反訴原告に対し,H書記長には今日の事実は話さず,自分が取下げを希望していると話すようにと言った。(甲35の1及び3,乙7,本訴原告B本人,反訴原告本人)  カ 反訴原告は,喫茶店aを出た後,反訴被告Dの運転する自動車で送ってもらって帰宅した。反訴原告は,帰路,制服を取りに行くため市役所に立ち寄った。(乙7,反訴被告D本人) (9)平成15年4月7日の反訴被告らの行為  ア 反訴被告Cは,平成15年4月7日(月曜日)午前8時ころ,反訴被告Dに対し,反訴原告を上尾市役所議会棟の議員控室に連れてくるように言った。反訴被告Dは,反訴原告を議員控室に連れていった。  反訴被告Cは,議員控室において,反訴原告に対し,本件苦情相談を取り下げるように言った。また,セクシュアル・ハラスメントに遭ったこと,4月5日に反訴被告らから本件苦情相談を取り下げるよう言われたことは黙っているように指示した。(乙7,反訴原告本人)  イ その後,G企画財政部長が議員控室を訪れた。反訴原告は,反訴被告らが同席している中で,本件苦情相談の取下げを希望すると報告した。G企画財政部長及び反訴被告Cは,その報告の後,議員控室を出た。(乙7,反訴原告本人)  ウ 反訴被告Dは,反訴被告Cらが議員控室を出た後,K職員課長を議員控室に呼んだ。反訴原告は,反訴被告Dが同席している中で,K職員課長に対し,H書記長に本件苦情相談の取下げを希望すると伝えたことを報告した。K職員課長は,反訴原告に対し,セクシュアル・ハラスメントの事実があったか,なかったか尋ねた。反訴原告は,本件苦情相談については,私の知らないところでなされており,相談者には本件苦情相談を取り下げるよう電話で依頼した,委員会等が開かれ発言を求められてもお話しできることはないと答えた。(甲40,乙7,反訴原告本人)  エ 反訴被告らは,同日午前11時40分ころ,反訴原告を上尾市役所の駐車場に呼び出した。反訴被告らは,その後,反訴原告を上尾市所在のレストランbに連れていった。反訴被告らは,上尾市所在のレストランbにおいて,反訴原告に対し,午後1時にF市長の後援会事務所に行くので,セクシュアル・ハラスメントの事実はなかったと報告するように申し渡した。  反訴被告らは,午後1時ころ,反訴原告をF市長の後援会事務所に連れていった。反訴原告は,F市長に対し,本件苦情相談を取り下げるよう依頼したことなどを報告した。(乙7,反訴原告本人)  3 上記認定に反し,反訴被告らは,セクシュアル・ハラスメントの事実は存在しない,反訴原告に対し本件苦情相談を取り下げるよう強要した事実はないと主張している。また,反訴原告の陳述ないし供述と反訴被告らの供述は,内容において大きく食い違いがある。そこで,以下,双方の陳述ないし供述を対比した上で,その信用性について検討し,上記認定に至った理由を詳説する。 (1)平成14年6月4日の反訴被告Cによるセクシュアル・ハラスメント  反訴原告が,平成14年6月4日,反訴被告Cから命じられて,反訴被告Cの運転するC車を使用して,二人で出張した事実は当事者間に争いがなく,その間の経緯について,反訴被告らが争っているので,この点から検討する。  ア 反訴原告が,この日,反訴被告Cから受けたとされるセクシュアル・ハラスメントに関する反訴原告本人尋問の結果は,大要,次のとおりである。 (ア)平成14年6月4日午前10時ころ,自治振興課に反訴被告Cがやってきて,突然,今から出るからと告げられた。事情を聞くと,Lと会うから急いで準備をするように言われた。 (イ)C車に同乗して,株式会社cに着くと,社長室のようなところに通された。お茶を出してもらってしばらく雑談をした。そのときにLさんがこういった図面なんだよと言って,街づくりに関する図面を見せられた。この図面は許しを得て持ち帰ることにした。 (ウ)株式会社cを辞した後,北に向かい,北本駅の駅ビルの公共施設を見に行った。その後,反訴被告Cから,自然学習館のような施設が公園のところにあるので,そこを見て帰ろうと言われた。実際には,この施設には寄らずに,そばの道を通って帰っただけだった。 (エ)変なことをして自分や上尾市役所に勤務する夫の仕事に影響が出たら嫌だと思って助手席に座るのを断れなかった。 (オ)自然学習センター近くの道路を走行中,反訴被告Cは,左手で私の右手を上から握ってきた。そして,反訴被告Cは,その左手を私の右太ももの内側に置いた。足を触られるのは嫌だったので,手に力を入れたが,それ以上の抵抗はできなかった。手や足を触られて怖くなったが,周りに民家もないようなところなので,声を出してしまって何か起きたときにどうしようと考えて,声を出すことはできなかった。手で防ぐので精一杯だった。付近に民家はなく,病院のようなものがあるだけだったので,更にもっと進んでしまうんじゃないかと怖かった。道路がT字路のようになっており,反訴被告Cは,ハンドルを切るのに両手を使い,そのときに手を放してもらった。  イ これに対し,反訴被告Cは次のとおり供述する。 (ア)平成14年5月28日に実施された国際交流関係の懇親会の席上,Lから反訴原告に対し,e地区の街づくりに関する話があり,反訴原告は興味を示した。Lは,反訴原告に対し,図面を見に来てはどうかと話した。その後,同年6月4日,反訴被告CがLと電話をしているとき,偶然,今日の午前中は予定が空いているという話になり,急いで行くことになった。 (イ)株式会社cを辞してから,反訴原告と二人で北本駅の駅ビルに行き,北本駅前の食堂で昼食をとった。 (ウ)その後,自然学習館を車内から見て,T字路に出るまでの間に,反訴原告に対し,仕事において縦と横の人間関係をしっかり自分なりに築きあげていくことが大事だと思うと言った。そして,一時停止をした際に,左手でハンドルを握ったまま,握手をしようと言って,右手を差し出し,反訴原告もこれに応じた。反訴原告は,分かりました,頑張りますということだった。  ウ 反訴被告Cが反訴原告を出張に同行させた理由について  反訴原告を出張に同行させる必要があるかないかとの点について,双方の供述は対立している。しかしながら,反訴被告Cにおいても自認しているとおり,前記認定の上尾市企画財政部自治振興課における職制上,平成14年4月当時,反訴原告が出張するとすれば,直属の上司である自治振興課長である反訴被告D又は主幹の本訴原告Bから,出張命令がなされるはずであり,反訴被告Cが反訴原告に対し,直接,出張を命ずること自体が通常ではない。また,訪問を受けたLの証言によれば,Lは5月28日に実施された懇親会当日,反訴原告とあいさつを交わしたことがなく,詳しく話をしたのは6月4日に訪問を受けたときであったこと,反訴原告がどのような立場で訪問しているのか認識していなかったこと,さらには,反訴原告をこのような出張 にわざわざ同行させた理由として述べる反訴原告においてe地区の街づくりに興味を示していたという反訴被告Cの前記供述がL証言と合致せず,ひいては同行させる必要性に乏しいことが認められ,これらの事実はいずれも反訴被告Cの前記供述とは一致していない。また,反訴被告Cは,株式会社cを辞した後,反訴原告を助手席に乗せたまま,反訴原告とともに通常の帰路とは反対方向となる北本駅まで行き,駅ビルを見学し,次に北本市の自然学習センター前の道路を経由しながら,自然学習センターは見学しないという出張経路をたどっているが,公務出張中であるにもかかわらず,通常とるべき最短かつ経済的な帰庁経路をとらず,わざわざ,このような遠回りで合理性を欠く経路を取ったことについて,反訴被告Cはいかなる理由や必要があった か明らかにしていない。  エ 次に,車中における接触行為に関する双方の供述を検討する。  反訴原告は,上記のとおり,C車の中で,反訴被告Cから手を握られた状況について,写真を用いての再現(乙13)に拠ってはいるが,その際の心理状況も含めて,具体的かつ詳細に陳述している。  これに対し,反訴被告Cは,車中で握手をしたに止まると供述する。しかし,その態様は左手でハンドルを持ちながら,それと交差させるように右手を助手席に座る反訴原告に差し出すという奇妙な姿勢であり,通常では取り難い体勢である。そもそも,反訴原告に対し,握手をして激励をするに至った具体的なきっかけとして,反訴被告Cは,職場での人間関係の重要性を説いているうちに,握手をしたと説明するが,公用で出張中の二人だけの車中において,配偶者のある相当年齢の離れた女性で,かつ,採用されて数年も経たない所属の末席の部下の1人にすぎない反訴原告に対し,握手をして激励をするに至るきっかけとしては,必要性の点も含めて,およそ理解し難いものといわざるをえない。また,反訴被告Cが供述するように右手を差し出され ,反訴原告が直ちにこれ

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