H18. 1.11 静岡地方裁判所 平成17年(わ)第211号等 昏酔強盗,窃盗,昏酔強盗未遂

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H18. 1.11 静岡地方裁判所 平成17年(わ)第211号等 昏酔強盗,窃盗,昏酔強盗未遂」(2006/03/06 (月) 18:15:28) の最新版変更点

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 本件は,被告人が,平成17年2月末から同年3月中旬までの半月間にわたり,静岡市内等のパチンコ店において,被害者10名に対し,次々と睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて同人らを昏酔状態に陥らせ,被害者ら所有の現金等を盗取するなどした連続昏酔強盗(既遂7件,未遂3件)などの事案。 判 決 要 旨                        被告人  甲 主     文 被告人を懲役9年に処する。 未決勾留日数中210日をその刑に算入する。 理     由 (罪となるべき事実)  被告人は, 第1 平成17年2月28日午後3時30分ころ,静岡市a区b町c番地のd所在のパチンコ店「A」内において,B(当時75歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて同人を昏酔状態に陥らせた上,同人所有の現金約47万7000円及びクレジットカード1枚ほか1点在中の財布1個(時価合計約2010円相当)を盗取した 第2 同年3月2日午後4時ころ,同市a区e町f番地のg所在のパチンコ店「C」内において,D(当時52歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて同人を昏酔状態に陥らせた上,同人所有の現金約600円及びキャッシュカード1枚ほか4点在中の財布1個(時価合計約1万5000円相当)を盗取した 第3 同日午後5時1分ころ,同市a区e町h番地のi所在の株式会社E銀行F支店ATMコーナーにおいて,前記盗取にかかる前記D名義のキャッシュカードを使用し,同コーナーに設置された現金自動預払機から,2回にわたり,同支店長G管理にかかる現金合計32万円を窃取した 第4 同月5日午後9時ころ,同市a区e町j番地所在のパチンコ店「H」内において,I(当時41歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて同人を昏酔状態に陥らせた上,同人所有の現金約6万3500円及び郵便貯金キャッシュカード1枚ほか4点在中の財布1個(時価約2000円相当)を盗取した 第5 昏酔状態に陥らせて金品を盗取しようと企て,同月8日午後1時30分ころ,東京都渋谷区kl丁目m番n号所在のパチンコ店「J」1階パチンコホールにおいて,K(当時59歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させたが,同人の実兄であるLが前記Kに近付き同人の異変に気付いたため,その目的を遂げなかった 第6 同月9日午後6時20分ころ,前記「C」内において,M(当時69歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて同人を昏酔状態に陥らせた上,同人所有の現金約1万1400円及び財布1個ほか7点在中のバッグ1個並びに指輪2個(時価合計約9万2100円相当)を盗取した 第7 同月10日午前10時30分ころ,静岡市a区o町p番地所在のパチンコ店「N」南東側出入口前及び北側立体駐車場1階付近において,O(当時71歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて同人を昏酔状態に陥らせた上,同市a区o町q番地付近路上において,同人所有の現金5万円を盗取した 第8 同月11日午後1時8分ころ,同市r区st丁目u番v号所在のパチンコ店「P」内において,Q(当時56歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて同人を昏酔状態に陥らせた上,同人所有の現金約3万円ほかキャッシュカード等5点在中の財布1個(時価約2000円相当)及び現金約900円在中の小銭入れ1個(時価約1000円相当)を盗取した 第9 昏酔状態に陥らせて金品を盗取しようと企て,同日午後4時42分ころ,同市a区w町x番地所在のパチンコ店「R」内において,S(当時24歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させたが,同人が昏酔状態に陥らなかったため,その目的を遂げなかった 第10 昏酔状態に陥らせて金品を盗取しようと企て,同日午後5時34分ころ,前記「R」内において,T(当時51歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させたが,同人が昏酔状態に陥る前に席を立ち,被告人のそばから離れたため,その目的を遂げなかった 第11 同月13日午後1時9分ころ,同市r区y町z1番z2号所在のパチンコ店「U」内において,V(当時43歳)に対し,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて同人を昏酔状態に陥らせた上,同市r区y町z3番z4号所在のW酒店前路上において,同人所有の現金2万9000円在中の財布1個(時価約2000円相当)を盗取した ものである。 (量刑の理由)  本件は,被告人がパチンコ店において,被害者らを昏酔状態に陥らせて金品を盗取しようと企て,睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させて被害者らを昏酔させてその目的を遂げた昏酔強盗既遂7件(判示第1,第2,第4,第6ないし第8及び第11),睡眠導入剤等を混入したコーヒーを飲用させたものの,その目的を遂げなかった昏酔強盗未遂3件(判示第5,第9及び第10),昏酔強盗で盗取したキャッシュカードを使用して,現金自動預払機から金員を窃取した窃盗1件(判示第3)の事案である。  被告人は,軽度のうつ症状で精神科に通院していたものであるが,抗うつ剤に依存状態になり,複数の医院に通院するなどして,本来処方される以上の抗うつ剤を入手しては,これを多量に常用するなどしていたものであり,このような費用が欲しかったことや,実質的には無職で金銭に窮していたことなどから,他人から金品を奪うことを考えるに至り,本件各犯行に及んだものであって,自己中心的で短絡的な動機には酌量の余地がない。本件昏酔強盗既遂,同未遂の各犯行は,いずれも,あらかじめ睡眠導入剤等を溶けやすいように粉末状にして常備して携帯し,パチンコ店で相手を物色し,巧みに声をかけて,自動販売機で購入したコーヒーに同薬物を混入して,善意を装ってこれを飲用させるという極めて巧妙悪質なものであり,計画性が高く,合 計10件というこの種犯行においては異例なほどの多数回に及ぶものである。本件各犯行による被害総額は110万円弱と多額に上る上,薬物を飲用させられた被害者らの多くは現場付近で昏酔状態に陥って病院に搬送され,入院を余儀なくされるなどしており,また,いずれも記憶の一部を喪失しているのであって,被害者らに与えた苦痛は甚大であり,結果は重大である。さらに,場合によっては被害者らに重篤な身体的障害が生じたことも考えられる。また,比較的入手しやすい薬物を使用しての犯行は模倣性が高く,社会に与える悪影響も大きい。  これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は重いというほかない。  しかしながら,他方,被告人は,本件各犯行を認め,反省悔悟の態度を示していること,被告人は,昏酔強盗の被害者全員に対して謝罪文を書いた上で被害弁償を申し入れ,昏酔強盗既遂の被害者全員に対して,全額被害弁償をし,うち3名(判示第1,第2及び第3,第11の各被害者)との間で示談を成立させていること(なお,このうち2名〔判示第1,第2及び第3の各被害者〕からは宥恕を得ている。),被害品の一部が被害者に返還されていること,被告人には窃盗の前歴1回のほかには前科前歴がないこと,その生い立ちには同情すべき事情もあること,情状証人2名が公判で,被告人のために証言し,うち1名は被告人の社会復帰後,被告人の更生に協力する旨証言していることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。 そこで,以上の事情を総合考慮し,被告人を主文の刑に処するのを相当と判断した。 (求刑 懲役10年)   平成18年1月11日     静岡地方裁判所刑事第1部           裁判長裁判官    竹  花  俊  德         裁判官   友  重  雅  裕 裁判官   荒  井  智  也

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