H18. 1.20 松山地方裁判所 平成17年(ワ)第439号 建物明渡等請求事件

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判         決 主         文 1 被告は,原告らに対し,別紙物件目録記載の建物を明け渡せ。 2 被告は,原告Aに対し,100万円及び平成17年9月19日から上記明渡済みまで1か月4万円の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要  本件は,原告らが,原告らと被告との間における別紙物件目録記載の建物の賃貸借契約を賃料不払により解除したとして,被告に対し,賃貸借契約の終了に基づいて本件建物の明渡しを求めるとともに,賃貸人の1人である原告Aが,被告に対し,上記賃貸借契約及びその終了に基づいて,平成15年8月分から平成17年8月分までの未払賃料100万円及び賃貸借契約終了の日の翌日である平成17年9月19日から本件建物の明渡済みまで相当賃料額1か月4万円の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのある事実は,末尾掲記の証拠により認定した。) (1) 賃貸借契約の成立 Bは,昭和62年5月26日,被告に対して,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を,以下の約定で賃貸し(以下,この賃貸借契約を「本件賃貸借契約」という。),本件賃貸借契約に基づき被告に本件建物を引き渡した。 ア 賃貸期間  昭和62年5月26日から昭和63年5月30日まで イ 賃料及びその支払方法 1か月4万円をその月の5日までに支払う。 (2) 原告らによる本件賃貸借契約の承継 Bは,平成9年4月29日に死亡し,遺産分割協議の結果,原告らが本件建物を相続し,本件賃貸借契約も承継した(略)。 (3) 解除の意思表示  原告らは,被告に対し,平成17年9月18日到達の本件訴状をもって本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をした(以下,この解除の意思表示を「本件解除」という。)。 2 争点(本件解除の有効性) (原告らの主張) (1) 原告Aは,平成15年1月,被告に対し,原告Aの夫が80歳と高齢になって2階への昇降も危険になったため本件建物を利用したいとして,同年夏頃までに本件建物を明け渡して欲しい旨を申し入れたところ,被告は,これを承諾した。ところが,被告は,同年夏頃になっても一向に転居の動きを見せなかった。そこで,原告A夫婦らは,被告夫婦と協議し,その結果,① 本件建物の未払賃料である平成15年4月分から6月分までの賃料を同年7月末に支払う,② 本件建物を同年内に明け渡すことなどを内容とする合意が成立した。 (2) しかし,被告は,上記合意に反し,平成15年7月末に未払賃料を支払わず,同年8月5日に同年4月分,同年9月3日に同年5月分,同年10月8日に同年6月分,同年11月27日に同年7月分の本件建物の未払賃料を支払った。そして,被告は,平成15年8月分以降の本件建物の賃料を支払っておらず,平成16年6月16日には,当時の未払賃料額44万円の支払を求める請求書に署名するなど支払に応ずる旨の姿勢は示すものの,結局,支払わない。また,被告は,上記合意に反し,平成15年末になっても本件建物を明け渡そうとせず,その後,平成16年2月末日までには明け渡すことを確約したものの,これも履行しなかった。そして,被告は,その後も数度にわたって本件建物の明渡しを約するが,これを履行しない。 (3) 以上のような事情に照らすと,被告の賃料支払義務の不履行の程度は著しく,もはや被告に最終的な考慮の機会を与えることも既に無意味であって,本件賃貸借契約における信頼関係は完全に破壊されたといえるから,本件解除は有効である。 (被告の主張)  被告が,平成15年8月5日に同年4月分,同年9月3日に同年5月分,同年10月8日に同年6月分,同年11月27日に同年7月分の本件建物の未払賃料を支払ったことは認め,その余の事実は否認ないし争う。 第3 判断 1 事実経過 前提事実に証拠(略)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) Bは,昭和62年5月26日,被告との間で本件賃貸借契約を締結し,本件賃貸借契約に基づいて本件建物を被告に引き渡したが,平成9年4月29日に死亡した。Bの相続人による遺産分割協議の結果,原告らが本件建物を相続することとなり,これに伴って,本件賃貸借契約の賃貸人たる地位も原告らに承継された。 (2) 原告Aは,平成15年1月,被告と同居している妻のCに対し,原告Aの夫が80歳と高齢になって2階への昇降も危険になったため本件建物を利用したいとして,同年夏頃までに本件建物を明け渡して欲しい旨を申し入れたところ,Cの承諾を得た。しかし,同年夏頃になっても本件建物が明け渡される様子が見られなかったため,原告A夫婦らは,平成15年7月9日,C及び息子のDと協議し,① 本件建物の未払賃料である平成15年4月分から6月分までの賃料を同年7月末に支払う,② 本件建物を同年内に明け渡すことなどを合意した(略)。 (3) 上記合意にかかわらず,平成15年末になっても本件建物が明け渡されなかったことから,原告Aが本件建物の明渡しを求めたところ,Cは,平成16年2月1日,本件建物を同月末日までに明け渡すことなどを約し,その旨の文書を差し入れたが(略),同月末日になっても本件建物は明け渡されなかった。その後,原告Aは,平成17年5月までの間に,少なくとも6回にわたり,Cらに対して本件建物の明渡しを求めたが,Cは,原告Aに対して,一定の期限を定めて本件建物を明け渡すことを約し,その旨の文書を差し入れるものの,約定の期限までに本件建物を明け渡さなかった。 (4) また,上記(2)の合意にもかかわらず,平成15年4月分から6月分までの未払賃料が同年7月末に支払われることはなく,同年8月5日に同年4月分,同年9月3日に同年5月分,同年10月8日に同年6月分,同年11月27日に同年7月分の本件建物の未払賃料がそれぞれ支払われた。しかし,平成15年8月分以降は本件建物の賃料が支払われなくなったため,原告らは,平成16年6月16日,被告に対し,当時の未払賃料額44万円の支払を求め,その旨の請求書を交付したところ,Cは,上記請求書に署名してその支払を約したものの,現在に至るまで上記未払家賃の支払をしていない(略)。 2 検討 (1) 以上の認定事実を下に本件解除の有効性につき検討するに,前記認定事実によれば,被告は,平成15年8月分から約2年間の長期にわたって本件建物の賃料を支払っていないばかりか,これ以前にも平成15年4月分ないし7月分の賃料の支払が遅滞するとともに,上記のうち同年4月分から同年6月分までの賃料についてはこれを同年7月末までに支払う旨を約したにもかかわらず,一方的にこの約定を反故にして上記約定の期限後に分割して支払い,さらに,平成16年6月16日にも当時の未払賃料44万円を支払う旨を約したにもかかわらず,何らの説明もしないままこれを支払わないのであって,このような被告の賃料支払に関する態度に照らすと,被告は,賃借人の最も重要かつ基本的な義務である賃料支払義務の履行を期待し得ない状況にあるといわざるを得ない。  また,前記認定事実によれば,被告は,原告Aからの本件建物の明渡しの求めを了承し,平成15年7月9日には同年内の明渡しを約してその旨の文書の作成にも応じながら約定の期日までに本件建物を明け渡さず,その後,平成17年5月までに少なくとも7回にわたり原告Aから本件建物の明渡しを求められたのに対しても,その都度,一定の期限を定めて本件建物を明け渡す旨を約し,その旨の文書を差し入れるものの,何らの説明もしないまま一方的に約定の期限を徒過し本件建物の明渡しを履行していないことが認められるのであって,このような被告の対応は,自らの言動により原告らに本件建物の明渡しが約定の期限までに確実に行われるとの期待を抱かせながら,これを一方的に裏切るものであるというべきものである(なお,前記認定事実によると,被告側の本件賃貸借契約に関する原告Aとの対応はCによって行われているが,Cが被告と同居する妻であること〔前記認定事実〕,被告が原告Aと対応した際には本件建物の明渡しにつき特段の異議を述べる様子がなかったこと〔略〕に照らすと,Cは被告の使者ないし代理人として原告Aとの対応を行っていたと認めるのが相当である。)。 (2) 以上の諸点を総合すると,上記のような被告の行為は,本件賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめる不信行為と評価すべきものであるから,原告らは,催告を要することなく本件賃貸借契約を解除することができるというべきであり,本件解除は有効である。 (3) なお,被告は,原告らが,取り壊したブロック塀の破片を速やかに除去しなかったこと,物置を放置していること,被告の居住する本件建物の簾及び網戸を撤去したことなどを主張するが,これらの事情から直ちに原告らの本件請求が権利濫用等によって許されないということはできないし,他に原告らの本件請求を許容すべきでない事由を認めるに足りる証拠はない(かえって,証拠〔略〕及び弁論の全趣旨によれば,原告Aが本件建物の簾や網戸を撤去したのは,Cが平成17年1月末日までに本件建物を明け渡すことを約するとともに同月末には本件建物を改装する作業を開始することを了承したことを受けて行われたものであることが認められる。) (4) 以上によると,原告らは,被告に対し,本件賃貸借契約の終了に基づき,本件建物の明渡しとともに,未払賃料100万円(平成15年8月分から平成16年8月分までの合計額)の支払を求めることができ,さらに,前提事実及び弁論の全趣旨によれば,本件建物の相当賃料額は1か月4万円であると認められるから,原告らは,被告に対し,本件解除の翌日である平成17年9月19日から明渡済みに至るまで相当賃料額である1か月4万円の割合による損害金の支払を求めることができることになる。 3 結論 以上の次第で,原告らの本件請求は,理由があるから認容し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。     松山地方裁判所民事第2部                裁 判 官   角 谷 昌 毅

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