東京簡易裁判所平成15年(ろ)第732号

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平成18年2月28日判決言渡  平成13年(行ウ)第150号 行政文書不開示処分取消請求事件            判          決      主       文 1 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省大臣官房において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等支出が分かる書類(ただし,別表1記載の通番18,36,221,255,397,521,538,614,637,716,879,887,987,1028 の各文書については,同各文書に記載された「文書作成者名」,「決裁者名」及び「取扱者名」のうち平成16年4月20日付け変更決定で不開示とされた部分を除き,別表1記載の通番458の文書については,同表「書面名」欄において「決裁書」とされる書面に記載された「支払予定額」の部分に限る。)についての不開示決定(ただし,同変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 2 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省在外公館である在米日本国大使館において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切(ただし,別表1記載の通番212,452,770,911の各文書については,同表「書面名」欄において「決裁書」とされる書面に記載された「支払予定額」の部分に限る。)についての不開示決定(ただし,平成16年4月20日付け変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 3 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省在外公館である在仏日本国大使館において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切(ただし,別表1記載の通番177,225,332,387,480,499,661,719,750,766,850,940,961,1003,1019の各文書については,同各文書に記載された「文書作成者名」,「決裁者名」及び「取扱者名」のうち平成16年4月20日付け変更決定で不開示とされた部分を,別表1記載の通番48,731,734の各文書については,同変更決定で不開示とされた部分全部を,それぞれ除く。)についての不開示決定(ただし,同変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 4 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省在外公館である在中国日本国大使館において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切(ただし,別表1記載の通番297,345,394,653,831の各文書については,同各文書に記載された「文書作成者名」,「決裁者名」及び「取扱者名」のうち平成16年4月20日付け変更決定で不開示とされた部分を,別表1記載の通番195,232,451の各文書については,同変更決定で不開示とされた部分全部を,それぞれ除く。)についての不開示決定(ただし,同変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 5 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省在外公館である在フィリピン日本国大使館において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切(ただし,別表1記載の通番187,275,810,815,822,906の各文書については,同各文書に記載された「文書作成者名」,「決裁者名」及び「取扱者名」のうち平成16年4月20日付け変更決定で不開示とされた部分を除き,別表1記載の通番209の文書については,同表「書面名」欄において「決裁書」とされる書面に記載された「支払予定額」の部分に限る。)についての不開示決定(ただし,同変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 6 原告のその余の請求をいずれも棄却する。    7 訴訟費用は,これを20分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。    事実及び理由 第1 請求 1 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省大臣官房において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等支出が分かる書類についての不開示決定(ただし,平成16年4月20日付け変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 2 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省在外公館である在米日本国大使館において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切についての不開示決定(ただし,平成16年4月20日付け変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 3 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省在外公館である在仏日本国大使館において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切についての不開示決定(ただし,平成16年4月20日付け変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 4 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省在外公館である在中国日本国大使館において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切についての不開示決定(ただし,平成16年4月20日付け変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 5 被告が,原告に対し,平成13年6月1日付けでした,外務省在外公館である在フィリピン日本国大使館において平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切についての不開示決定(ただし,平成16年4月20日付け変更決定により一部開示された後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要  本件は,原告が,被告に対し,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前のもの。以下「情報公開法」という。)に基づいて,外務省の大臣官房及び4か国の在外日本国大使館における平成12年2月及び3月中の「報償費」の費目による支出について,その支出内容が分かる文書の公開を請求したところ,全部不開示決定を受けたことから,その取消しを求めている事案である。なお,本訴提起後,被告が,不開示決定を一部変更し,請求対象文書の一部について開示をした(後記1(4))ことから,原告は,当該開示部分に対応する訴えを取り下げており,上記変更決定によってもなお不開示とされた文書に係る不開示決定の部分に限って,その取消しを求めている。 1 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)   (1) 本件訴訟提起までの経緯    ア 開示請求  原告は,平成13年4月2日,被告に対し,以下のとおり,行政文書の開示請求をした(以下の請求を併せて「本件開示請求」といい,下記(イ)から(オ)までで開示請求の対象とされた4か国の在外日本大使館を「在外4大使館」という。)。 (ア) 開示請求番号2001-00054   外務省大臣官房で支出された平成11年度中の平成12年2月及び3月に支出された「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等支出が分かる書類 (イ) 開示請求番号2001-00055   外務省在外公館である在米日本国大使館で,平成11年度中の平成12年2月及び3月に支出された「交際費」,「報償費」及び「諸謝金」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切 (ウ) 開示請求番号2001-00057   外務省在外公館である在仏日本国大使館で,平成11年度中の平成12年2月及び3月に支出された「交際費」,「報償費」及び「諸謝金」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切 (エ) 開示請求番号2001-00058   外務省在外公館である在中国日本国大使館で,平成11年度中の平成12年2月及び3月に支出された「交際費」,「報償費」及び「諸謝金」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切 (オ) 開示請求番号2001-00059   外務省在外公館である在フィリピン日本国大使館で,平成11年度中の平成12年2月及び3月に支出された「交際費」,「報償費」及び「諸謝金」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等一切    イ 不開示決定 (ア) 被告は,平成13年6月1日付けで,上記アの各開示請求に対し,以下のとおり決定をし,原告に開示決定通知書を送付した。 a 開示請求番号2001-00054    全部不開示決定を行った。 b 開示請求番号2001-00055,00057,00058,00059    「交際費」及び「諸謝金」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等については部分開示決定を行い,「報償費」に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等については,全部不開示決定を行った。 (イ) 上記各決定の通知書において示された報償費に関する文書不開示の理由は,次のような内容であった。  「報償費は,国が,国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため,当面の任務と状況に応じその都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費であり,外務省においては,情報収集及び諸外国との外交交渉ないしは外交関係を有利に展開するため使用する経費がこれに当たります。  このような報償費の支出証拠,計算証明等の文書が開示されることにより,報償費の具体的使途に関する内容が明らかになることで,情報収集や外交交渉における相手の権利や立場に影響し,あるいは他国若しくは国際機関との間で外交儀礼上問題が生ずるおそれがあります。この結果,国の安全が害されるおそれがあり,他国政府もしくは国際機関との信頼関係を損ね,またはこれらとの国際交渉上の不利益を被るおそれがあると認められます。  また,これらの内容が明らかになることで,相手の権利や立場に影響を与え,これらとの信頼関係を損ねる結果,その後の情報入手や外交工作が困難になると考えられます。これにより,外交に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあります。  したがって,本件請求に係る報償費の支出証拠,計算証明等の文書は,情報公開法第5条3号及び同条第6号の情報に該当します。」    ウ 本件訴訟  原告は,平成13年6月15日,上記イの各決定のうち,報償費に関する文書を不開示とした部分の取消しを求めて,本訴を提起した(以下,原告が本訴で当初取消しを求めていた不開示決定を「本件各不開示決定」といい,その対象とされた行政文書を「本件各行政文書」という。)。   (2) 会計検査院による処置要求  会計検査院は,外務本省及び在外公館(ヴェトナム日本国大使館ほか12箇所。なお,本件開示請求の対象とされた在外4大使館は含まれていない。)を対象として,主に平成12年度支出について,報償費の経理処理,監査,使途等の適正に着眼した検査を実施した上,平成13年9月27日,「報償費の執行について」との文書により,被告に対し,会計検査院法34条及び36条の規定に基づき,是正改善・改善の処置を要求した。  会計検査院は,上記文書において,外務省では,報償費を「情報収集及び諸外国との外交交渉ないし外交関係を有利に展開するため」に使用することとされていること,想定し難い突発的な事態が生じ得る外交においては,特に柔軟な対応が求められることから,機動的な執行が可能な経費として報償費が配賦されているが,平成12年度に報償費で支出されたものの中には,定型化,定例化するなどしてきており,当面の任務と状況に応じ機動的に使用するとの報償費の趣旨からすると,報償費ではなく庁費等の他の費目で支出するよう改善する必要がある経費が含まれていたこと,その具体的内訳は,国内又は海外で開催される大規模レセプション経費6131万余円,酒類購入経費1536万余円,本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費1083万余円,在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費4720万余円,文化啓発用の日本画等購入経費7238万余円であること等を指摘し,こうした事態は適切とは認められないことから,報償費の使途について見直しを行い,庁費等の他の費目から支出するよう改善する必要がある経費については他の費目での予算措置を講ずるなどし,今後は報償費として真に支出する必要があるものに使用していくこと等の処置を講ずるよう要求した(甲11)。   (3) 別件開示請求に係る情報公開審査会の答申    ア 報償費関連文書についての別件開示請求と不開示決定  外務省における報償費の使用に関する文書については,本件開示請求以外にも,原告以外の者から情報公開法に基づく開示請求がされていたところ,被告は,これらに対しても,以下のとおり,不開示決定をした。  なお,本件各行政文書は,下記①の開示請求の対象とされた文書の範囲に含まれている。 ①「平成8年4月から同13年3月までの外務省本省及び在外公館の報償費の支出決定及び支払手続のために作成された文書等」についてされた合計20件の開示請求につき,平成13年6月1日付けでした不開示決定 ②「外務省本省の報償費の平成12年3月分及び同13年1月分の全支出に関する文書」についてされた合計2件の開示請求につき,平成13年6月1日付けでした不開示決定 ③「在フランス日本国大使館,在イタリア日本国大使館及び在ホノルル日本国総領事館の報償費(機密費)の平成12年度の支出に関する一切の資料」についてされた合計20件の開示請求につき,平成14年4月22日付けでした不開示決定    イ 異議申立てと情報公開審査会への諮問  上記アの各不開示決定に対しては,その請求者らから,いずれも行政不服審査法に基づく異議申立てがされていたことから,被告は,平成15年7月31日,情報公開法18条に基づき,情報公開審査会に諮問をした。    ウ 情報公開審査会の答申  情報公開審査会は,平成16年2月10日,上記諮問を受けて,上記アの①から③までの不開示決定に関し,後記(イ)aからeまでの支出に係る文書について,それぞれの箇所の「開示すべき部分」と掲記した部分等を開示すべきものとする答申をした(以下「本件答申」という。)。そこで示された判断の概要は以下のようなものであった。 (ア) 本件対象文書には,外務省報償費の使途に関し個別具体的かつ詳細な記載がされており,これらが容易に区分し難い状態で随所に記載されていることが認められる。これらの記載は,外務省報償費を,秘密を保持して機動的に運用することによって行われる情報収集活動等の個別具体的な内容を示す情報である。このような情報については,これらを公にすることにより,外務省報償費の秘密を保持した機動的な運用に支障を及ぼすことによって,情報収集活動等が困難となり,外交事務の円滑かつ効果的な遂行に支障を来すおそれがあり,ひいては,国の安全が害されるおそれ,他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められることから,情報公開法5条6号柱書き及び3号に該当する。 (イ) しかしながら,支出計算書の証拠書類については,会計検査院の平成12年度決算検査報告における指摘を踏まえて,精査すると,外務省報償費を的確に運用するために求められる機動性及び秘密保持という観点からみても,情報公開法5条3号及び6号に該当すると認め難いと考えられるものがあるので,以下検討する。      a 大規模レセプション経費       ? 開示すべき部分  定期的に又は慣例として開催される天皇誕生日祝賀レセプション,自衛隊記念日レセプション及び我が国の在外公館長の離着任レセプションについては,当該レセプションの件名,開催の日付,主催者,場所,経費の総額に係る情報については,これを公にしたとしても,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず,法5条6号及び3号に該当するとは認められないから,開示すべきである。       (b) 不開示とすべき部分  調達先,調達の具体的内容及び招待者氏名・肩書に係る情報については,当該レセプションを安全かつ効果的に開催する上で,秘密を保持することが必要と認められ,これを公にすると,当該レセプションの開催に関連して,安全上及び外交儀礼上の支障や問題を引き起こす可能性があると認められるので,情報収集活動等を困難にし,外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,ひいては,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ,法5条6号柱書き及び3号に該当する。      b 酒類購入経費       ? 開示すべき部分  酒類購入費に関する記述のうち,件名,日付,経費の総額については,これを公にしたとしても,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず,法5条6号及び3号に該当しないから,開示すべきである。       (b) 不開示とすべき部分  外務省及び各在外公館において,酒類を備えておく趣旨は,外交活動の一環である設宴や会食において,相手方を随時しかるべく接遇し,もって親交を深め情報収集活動等を効果的かつ円滑に行うことにあり,その際,外交儀礼にもとらないようにすることは当該設宴等ひいては情報収集活動等の成否を左右する要素である。また,酒類については,銘柄により優劣についての評価が明確であること等を考慮すると,外務省が保有する酒類の詳細をつまびらかにすることは,外交儀礼上の支障等を引き起こす可能性がある。  こうした点を考慮すると,酒類の調達先,購入本数,購入銘柄及び銘柄別金額については,外務省及び各在外公館が保有する酒類の詳細についてつまびらかになる情報であるので,これを公にすることにより,情報収集活動等を困難にし,外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,ひいては,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ,法5条6号柱書き及び3号に該当する。      c 在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費       ? 開示すべき部分 贈呈品の購入経費に関する記述のうち,件名,日付,支出要旨・説明,経費の総額については,その記載内容から対象国名,贈呈対象者及び贈呈品の具体的品目等に係る情報を除けば,これを公にしたとしても,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず,その記載内容から対象国名,贈呈対象者及び贈呈品の具体的品目等に係る情報を除いた当該情報については,法5条6号及び3号に該当するとは認められないから,開示すべきである。       (b) 不開示とすべき部分  在外公館長が赴任する際や我が国政府要人が外国を訪問する際に,本邦において購入する贈呈品に係るものについては,贈呈対象者,購入贈呈品の具体的内訳,贈呈品ごとの金額・数量,調達先に係る情報及び対象国名を推測させ得る情報を公にした場合,当該国に対する我が国の評価や位置付けなどが容易に推定され,外交儀礼上の支障を生じ,我が国と当該国との関係に悪影響を及ぼすおそれがあると認められるので,情報収集活動等を困難にし,外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,ひいては,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ,法5条6号柱書き及び3号に該当する。      d 文化啓発用の日本画等購入経費  在外公館において,我が国の文化を啓発するなどの目的で使用される日本画等の絵画を本邦において購入する経費に係るものについては,百貨店等の店舗から購入した場合とそれ以外の場合がある。       ? 店舗から購入した日本画等について  日本画等を百貨店等の店舗から購入した場合には,当該日本画等の販売価格は既に公になっているものと認められるので,件名,支出要旨・説明,経費の総額,調達先及び購入した品目ごとの金額等すべての情報を公にしたとしても,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず,法5条6号及び3号に該当しないため,開示すべきである。       (b) 制作者から直接購入した日本画等について          開示すべき部分  件名,日付,支出要旨・説明,経費の総額,調達の数量については,その記載内容から品目ごとの金額,調達先及び購入に至った経緯等に係る情報を除けば,これを公にしたとしても,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず,その記載内容から品目ごとの金額,調達先及び購入に至った経緯等に係る情報を除いた当該情報については,法5条6号及び3号に該当するとは認められないから,開示すべきである。   不開示とすべき部分  芸術家等特定の個人の紹介等を通して画家等制作者から直接購入する場合等においては,購入した品目ごとの金額,調達先及び購入に至った経緯等当該制作者及び紹介者に係る情報及びそれらが類推される情報については,これを公にすることにより,画家等制作者に対する評価に影響を及ぼすばかりでなく,紹介者と諮問庁(外務大臣)との関係についても影響を及ぼすおそれがあると認められ,将来的に同様の方法での調達が困難になり,我が国の文化啓発のための資料の調達の方途が画一化されることになり,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになるので,法5条6号に該当する。      e 本邦関係者が外国訪問した際の車両の借り上げ等の事務経費       ? 開示すべき部分  我が国の政財界の要人等,本邦関係者が諸外国を訪問する際に,その接遇に遺漏なきを期するため,当該国等にある我が国在外公館が同国の業者から車両を借り上げ,また,当該本邦関係者の宿泊するホテル等に事務連絡室等を設けることがあるが,このような場合の件名(法5条1号に該当する個人に関する情報は除く。),日付,経費の総額に係るものは,これを公にしたとしても,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず,法5条6号及び3号に該当するとは認められないから,開示すべきである。       (b) 不開示とすべき部分  車両の調達先や車種等及び事務連絡室の所在等の具体的内容に係る情報については,これらを公にした場合,今後,本邦関係者が当該国を訪問する際に,突発的な事態を未然に防止し,その安全を確保することが困難になり,仮に,そのような事態が起きた場合には,我が国と当該国との関係に悪影響を及ぼすおそれがあると認められるので,これを公にすることにより,情報収集活動等を困難にし,外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,ひいては,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ,法5条6号柱書き及び3号に該当する。   (4) 不開示決定の変更決定  被告は,本件答申が本件各行政文書のうちの一部について部分開示が適当であるとの判断を示したことを受けて,平成16年4月20日付けで,別紙2「部分開示目録」において「対象となる行政文書」欄に掲記された各文書のうち,同目録において「開示する部分」として掲記された部分を開示する旨の本件各不開示決定の変更決定をした(以下「本件変更決定」という。)(乙18の1から4まで,19の1,2)。  同決定は,原則として,本件答申の示した開示・不開示の判断に従い,本件各行政文書のうちの前記(3)ウ(イ)a,b,d及びeの支出に係る各文書の一部(「開示すべき部分」)について開示を行ったものである。ただし,特定の個人を識別できる記述のうち,公表慣行のないものについては,本件答申において開示すべき部分とされた箇所についても,情報公開法5条1号に基づいて開示しないものとしている。  同決定の通知書には,同決定で部分開示の対象とされた各文書において,なお不開示とした情報及びそれらを不開示とした理由が,以下のとおり,示されている。なお,本件各行政文書には,前記(3)ウ(イ)cの類型の支出(在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費)に係る文書は含まれていない。 ア 公にする法令又は慣行のない個人の氏名,住所,電話番号等,個人を識別できる情報及び公にすることにより個人の権利利益を侵害するおそれがある情報(情報公開法5条1号) イ 大規模レセプション経費に係る対象文書中,公にすることにより,当該レセプションの開催に関連して安全上及び外交儀礼上の支障や問題を引き起こすことで情報収集活動等を困難にし,外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼし,ひいては,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれのある情報(同法5条6号及び3号) ウ 酒類購入経費に係る対象文書中,公にすることにより,外交儀礼上の問題を生じ,情報収集活動等を困難にし,外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼし,ひいては,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれのある情報(同法5条6号及び3号) エ 本邦関係者が外国訪問した際の車両の借り上げ等の事務経費に係る対象文書中,公にすることにより,今後,本邦関係者が当該国を訪問する際に,突発的な事態を未然に防止し,その安全を確保することが困難になり,仮にそのような事態が起きた場合には,我が国と当該国との関係に悪影響を及ぼし,情報収集活動等を困難にし,外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,ひいては,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれのある情報(同法5条6号及び3号) オ 文化啓発用の日本画購入経費に係る対象文書中,公にすることにより,画家等制作者に対する評価に影響を及ぼすばかりでなく,紹介者と当省との関係についても影響を及ぼすおそれがあると認められ,将来的に同様の方法での調達が困難になり,我が国の文化啓発のための物品の調達の方途が画一化されることになり,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(同法5条6号) (5) 本件各行政文書及びこのうち本件変更決定で開示された文書の特定とこれらの記載事項  被告の整理・分類によれば,本件各行政文書は合計1069件であり,そのそれぞれの作成部署,標目,作成者,書面名,通数(上記1069件とは,ある使用目的に充てられるための支出ごとに作成された文書をまとめて1件と整理したものであって,外形としては,別表1の書面名欄及び通数欄記載のとおり,1件ごとに複数の文書から構成されている。),外形的事実等,科目名は,別表1のそれぞれの項目に対応した欄記載のとおりである。このうち,本件変更決定により部分的に開示された文書は合計52件であり,部分的に開示された文書の部署別の内訳及び別表1記載の各文書の通番との対応関係は以下のとおりである。また,そこで開示された項目は,別表1の対応する通番の文書の「外形的事実等」欄の該当項目の箇所に,その項目全部が開示されたものには丸(○)印が,その項目の一部のみが開示されたものには三角(△)印が,それぞれ付されている。    ア 大臣官房分(209件中) 15件  18,36,221,255,397,458,521,538,614,637,716,879,887,987,1028    イ 在米大使館分(390件中) 4件      212,452,770,911    ウ 在仏大使館分(196件中) 18件  48,177,225,332,387,480,499,661,719,731,734,750,766,850,940,961,1003,1019    エ 在中国大使館分(201件中) 8件      195,232,297,345,394,451,653,831    オ 在比大使館分(73件中) 7件      187,209,275,810,815,822,906    (被告による文書の特定の経緯等に関する補足説明)  被告は,平成14年4月24日付けの準備書面(4)の段階でも,本件各行政文書の大臣官房分及び在外4大使館ごとの文書数の内訳すら明らかにせず,文書数全部の合計と情報収集等の事務,外交交渉等の事務及び国際会議への参加等の事務(後記第3の1(1)参照)それぞれに関するものに分類した場合の内訳のみを明らかにしていた。その後,第6回口頭弁論期日(同年6月5日)における裁判所による求釈明等を経て,平成15年6月17日付けの準備書面(7)では,本件各行政文書の作成部署(大臣官房分及び在外4大使館のいずれか)の別,記載内容の「外形的事実等」(記載されている情報の類型・項目)を明らかにし,さらに,平成17年4月8日付けの準備書面(14)において,上記のとおり,本件各行政文書について別表1記載の情報をようやく明らかにするに至ったもので,被告において,本件各行政文書に係る外形的事実その他の情報を,別表1の記載以上に個別具体的に明らかにしようとはしなかった。  2 争点(争点に対する当事者の主張は別紙1のとおりである。) (1) 本件各行政文書(本件変更決定により開示された部分を除く。)に記載された情報は,情報公開法5条3号又は6号の不開示情報に該当するか。 (2) 本件各行政文書のうち,別紙2「部分開示目録」において「対象となる行政文書」として掲記された各文書に記載された「文書作成者名」,「決裁者名」及び「取扱者名」であって,本件変更決定において開示されなかったものは,情報公開法5条1号の不開示情報に該当するか。 第3 争点に対する判断  1 外務省における報償費の使途について  本件各行政文書は,いずれも報償費(予算科目上「報償費」及び「政府開発援助報償費」とされているものの両方を含んでいる。)に関する支出を証する書類として特定されたものであるため,本件における争点,すなわち,本件各行政文書に記載された情報がどのようなものであり,情報公開法上の不開示事由に当たるかを判断する前提として,まず,予算費目である報償費が外務省(本省大臣官房及び在外公館)において,実際にどのような使途に充てられているかについて検討を加えることにする。 (1) 報償費の使途に関する被告の主張  報償費は,予算区分上の「目」に分類されるものであって,「国が,国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため,当面の任務と状況に応じその都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費」であると説明されている(乙1の1及び2)。被告は,外務省においては,報償費を「外務省の公にしないことを前提とする外交活動において,情報収集及び諸外国との外交交渉ないしは外交関係を有利に展開するための活動」に支出しており,その使用目的については,以下のAからCまでの3区分に分類でき,それぞれが更に「情報提供又は協力の対価として使用されたもの」,「会合の経費として使用されたもの」及び「定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの」の区分に分類できることから,結局のところ,全体で以下の9区分に分類できると主張している(文書ごとについての被告の主張は,別表1の対応する使用目的欄記載のとおりである。)。    A 情報収集等の事務 A1:情報提供に対する対価として使用されたもの A2:情報収集のための会合の経費(会食,場所代,会議への参加)として使用されたもの A3:情報収集のために定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの    B 外交交渉等の事務 B1:二国間の外交交渉等を進めるに当たり,協力の対価として使用されたもの B2:二国間の外交交渉等を進めるに当たり,相手方との会合の経費(会食,場所代,会議への参加)として使用されたもの B3:二国間の外交交渉等を進めるに当たり定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの    C 国際会議への参加等の事務 C1:国際会議等において多国間交渉を進めるに当たり,協力の対価として使用されたもの C2:国際会議等において多国間交渉を進めるに当たり,相手方との会合の経費(会食,場所代,会議への参加)として使用されたもの C3:国際会議等において多国間交渉を進めるに当たり定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの  なお,被告は,外務省における報償費を「外務省の公にしないことを前提とする外交活動において,情報収集及び諸外国との外交交渉ないしは外交関係を有利に展開するための活動」に充てるという取扱いは,成文化した規範等によるものではなく,運用上のものであるとしている(もっとも,被告は,本訴における主張上,当初,外務省の報償費は,「外交交渉の有利な展開を期するための情報収集等」に充てるための経費であるとし,その分類についても,上記A,B及びCの3分類についてのみ言及していたところ,平成15年9月1日付けの準備書面(8)において,初めて,報償費が「公にしないことを前提とした外交活動」に支出されるものであるという説明をしたものであり,上記A,B及びCの3分類をそれぞれ更に3つに細分するという分類は,平成17年4月8日付けの準備書面(14)に至って,初めて言及したものである。)。 (2) 会計検査院の処置要求で指摘された経費に係る文書に記載された報償費の支出とその評価  被告は,本件各行政文書について,「別表1に記載された『外形的事実等』」の限度でしか本件各行政文書の内容を明らかにしないところ,外務省における報償費の執行についてされた会計検査院の処置要求(前記前提事実(第2の1)(2))をみると,平成12年度中,①国内又は海外で開催される大規模レセプション経費,②酒類購入経費,③本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費,④在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,⑤文化啓発用の日本画等購入経費(以下①から⑤までの経費の類型を併せて「五類型」という。)が報償費から支出されたことが指摘されている。そして,本件各行政文書中には,これらのうち上記①,②,③及び⑤に対応する支出に関する文書が含まれているところ,情報公開審査会において本件各行政文書をも対象とした本件答申がされ(前記前提事実(3)ウ),さらに,これを受けて本件変更決定がされ(事実(4)),上記①,②,③及び⑤に対応する支出に関する文書が部分開示の対象とされている。  なお,本件各行政文書中,五類型の支出に関する文書に当たるものは,前記前提事実(5)のアからオまでに掲げてあるとおりである。  そこで,検討の手懸かりとするため,会計検査院の前記処置要求,本件答申,本件変更決定における部分開示を通じて,その具体的内容が相当程度明らかにされている五類型に係る経費(本件各行政文書にあっては,上記①,②,③及び⑤に対応する支出)につき,被告が主張する報償費の使用目的に合致しているかどうかについてみていくこととする。まず,上記①の支出は,天皇誕生日祝賀レセプション,自衛隊記念日レセプション及び在外公館長の離着任レセプション開催のための支出であり,上記②は,外交活動として行われる設宴や会食における接遇のために,外務省及び在外公館で酒類を購入した際の支出,上記⑤は,文化啓発用とあるものの,本件変更決定により部分開示された文書(甲19,20等)の記載からすると,主として,在外公館やその職員公邸の装飾用に用いる日本画を購入した際の支出と認めることができる。しかし,上記の各使途のいずれをみても,部外に明らかにしないなどの条件を付して行われたとみることはできないのであって,「公にしないことを前提とする外交活動」のための経費であるとは認め難いというべきである。なお,上記①に対応する支出に関する文書については,後記3(1)アのとおり,料理等の調達先や招待者の氏名等の不開示情報を含むものであるが,その目的・名目に照らせば,レセプションの開催自体を「公にしないことを前提とする外交活動」に当たるとみるのは困難というほかない。上記②については,購入した酒類を「公にしないことを前提とする外交活動」に当たる設宴や会食に用いられる場合が全くないとまではいい切れないが,同じく本件変更決定により部分開示された文書(甲21,29等)の記載をみても,そうした使途の限定をうかがわせる記載は見当たらないのであるから,酒類の購入行為自体をとらえて,「公にしないことを前提とする外交活動」のための経費支出であると認めるのは困難である。他方,上記③については,本邦関係者が外国訪問をした目的,車を借り上げて移動するなどした目的が明らかではないが,車の借り上げ等は外国訪問の都度行われるものと考えられるから,その目的によっては,「公にしないことを前提とする外交活動」の経費に充てられたと解する余地もないわけではない。  上で検討したところによれば,本件変更決定において部分的に開示された五類型に係る文書に記載された報償費の具体的な使途には,「公にしないことを前提とする外交活動」に当たらないものが含まれている。すなわち,平成12年2月及び3月の外務省大臣官房及び在外4大使館の予算執行において,報償費は,被告が「本来の使途」として説明する「公にしないことを前提とする外交活動」以外の事項にも使用されていたことが指摘できる。 (3) 報償費が充てられた五類型以外の経費の性質について   次に,報償費が「公にしないことを前提とする外交活動」に該当しないものに充てられた例は,五類型の経費支出に限定されるのか,すなわち,五類型以外にも,報償費が「公にしないことを前提とする外交活動」に該当しないものに充てられた例が存するのかが問題となる。   この点に関し,情報公開審査会は,本件答申において,五類型に係る文書以外の文書の情報公開法5条3号又は6号該当性について,前記前提事実(3)ウ(ア)のとおり,報償費の使途に関し個別具体的なかつ詳細な記載があること,その記載は,報償費を,秘密を保持して機動的に運用することによって行われる情報収集活動等の個別具体的な内容を示す情報であること,これらを公にすることにより,報償費の秘密を保持した機動的な運用に支障を及ぼすことによって,情報収集活動等が困難となり,外交事務の円滑かつ効果的な遂行に支障を来すおそれがあり,ひいては,国の安全が害されるおそれ,他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であること等の判断を示した上,情報公開法5条各号の不開示事由に該当せず,部分的にせよ開示すべきものと結論付けた文書を,五類型に係る文書に限定している。したがって,本件答申にあっては,五類型に係る文書以外の文書については,すべて「公にしないことを前提とする外交活動」の経費支出に関するものであるという前提に立っているようにも受け取れる。  しかし,会計検査院の指摘は,専ら会計経理に関する法令違反の有無や当不当という観点からされたもの(会計検査院法34条参照)であって,情報公開法上の不開示事由の有無,開示すべきものかどうかについての判断とは視点が異なり,直接の関連はないことから,本件答申において,本件各行政文書中に不開示事由を含んでいないとされたものが,なにゆえ五類型に係る文書の範囲に限定されるのか,真実,五類型に係る文書以外に不開示事由を含んでいない情報は存在しないのか,更に慎重な吟味を要するものと考えられる。  この点を判断するに当たっては,情報公開法27条により,情報公開審査会には,諮問庁以外の者に開示することなく,諮問に付された開示決定等に係る行政文書の提示を求めることができるものとされており(いわゆるインカメラ手続),本件答申に係る審査手続においても,実際にこれを見分して審査した事実が認められる(乙17の2)こと,一方で,裁判所における判断に当たっては,本件各行政文書の記載内容を実際に見分する機会がなく,被告主張の外形的事実のみから,実際の具体的な記載内容を推認するほかないという大きな制約があることにかんがみると,五類型に係る文書以外の文書の情報公開法5条3号及び6号該当性について,本件答申が示した判断の過程について検討を加えておく必要があると考えられる。  報償費の使用目的に関する被告の前記分類のうち,「定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの」(A3,B3,C3)については,すべて本件変更決定により部分開示の対象とされたものとしており(ただし,被告の分類によれば,本件各行政文書中,C3に相当するものはないとする。),五類型に係る文書以外の文書であって,全部不開示が維持されているものとしては,「情報提供又は協力の対価として使用されたもの」(A1,B1,C1),「会合の経費として使用されたもの」(A2,B2,C2)に関する文書のみがこれに当たることになる(ただし,被告の分類によれば,本件各行政文書中,C1に相当するものはないとする。)。さらに,被告は,本件各行政文書,すなわち,報償費の支出負担行為に係る文書は,決裁書,見積書,予定価格書,契約書又は請書,検査調書,請求書,領収書,支出依頼書,支払明細書,支払証拠台紙から構成されており,そこには,文書作成者名・決裁者名・取扱者名,起案・決済日・支払手続日,支払予定先・支払先,支払予定額・支払額・支払方法,目的・内容が記載されているとする。  被告の主張によれば,本件各行政文書の構成,記載内容は上記のようなものであり,特に,上記「目的」の記載においては,報償費の目的にそった使用の目的,事務の必要性に関して具体的な記述がされていること,上記「内容」の記載においても,報償費を使用して行う「情報収集の事務」等の具体的な内容,方法,態様に関する記述がされていること,さらに,当該内容の適正さを示す積算等の根拠や事情,事務を行う職員等の氏名,会合の場合は同席者の氏名等の記載が含まれていること等からすれば,いわゆるインカメラ手続を経ている情報公開審査会においては,そうした具体的な記載を逐一検討し,それを根拠にして,情報公開法5条3号及び6号該当性についての判断が加えられたものと解する余地がある。  しかしながら,本件答申における説示をみると,前記のとおり,外務省報償費の使途に関する文書上の記載について,「秘密を保持して機動的に運用することによって行われる情報収集活動等の個別具体的内容を示す情報である」と述べていることからも明らかなとおり,いわば「秘密を保持した運用がされている」という外務省における取扱いの実態を述べるにとどまり,情報収集活動等の内容・実質において,秘密の保持を必要とするものか,さらには,それが「公にしないことを前提とする外交活動」に当たるのかといった点に個別具体的な検討を加えたことが読み取れない。また,当該情報を公にした場合の弊害についても,「外務省報償費の秘密を保持した機動的な運用に支障を及ぼすことによって,情報収集活動等が困難となり」としか述べておらず,いわば秘密を保持した経費支出の方途が閉ざされることそれ自体を外交事務遂行上の支障ととらえていると見受けられ,情報収集活動等の内容・実質に対応して,公にした場合の具体的な弊害について検討を加えたことをみて取ることはできない。このように,本件答申の情報公開法5条3号及び6号該当性についての判断は,いわゆるインカメラ手続で見分した文書の具体的な記載内容に即して行われたものとはいい難いのであって,本件各行政文書上に,情報公開法5条3号及び6号該当性を直接基礎付けるような記載,あるいは,「公にしないことを前提とする外交活動」に関する経費支出であることを基礎付けるような記載があることの推認を働かせることはできないというべきである。  結局,本件答申で示された判断の内容を踏まえたとしても,報償費が専ら「公にしないことを前提とする外交活動」の経費に充てられているということを推認させるに足りないといわざるを得ない。 (4) 被告の主張態様からみた報償費の支払対象に関する基準・運用について  ところで,会計検査院による処置要求,本件答申,本件変更決定を通じて,五類型に係る文書が部分開示され,その記載内容が相当程度明らかになった段階においても,被告は,それが「公にしないことを前提とする外交活動」に関するものであるという主張を変更していない(これも前記A,B,Cの3分類のいずれかに該当するとの主張を維持している。)。すなわち,五類型に係る文書につき,本件答申において,不開示事由がないものとされ,本件変更決定において,部分開示したのは,その支出が定型化,定例化してしまっていることから,当該経費の具体的使途やその支出の行われた時期,支出の総額等が公になったとしても,そこから我が国の外交方針等が推知され,我が国の外交工作活動等に支障を及ぼすおそれがあるとはもはや考え難くなっていること,いわば,事後的に不開示事由が消滅したことによるとしており,これらの経費を報償費から支出すること自体は,報償費の使途の基準に反するものではないし,本来充てられるべき経費以外のものに充てられていたことにもならないとの立場をとっている。  しかし,既に前記(2)でみたとおり,五類型には,そもそもその客観的性質からみて「公にしないことを前提とする外交活動」に分類するのがおよそ不適切と思われるものが含まれているのであるから,それにもかかわらず,なにゆえ,五類型を「公にしないことを前提とする外交活動」に含ましめ,その経費を報償費から支出するという運用がされていたのかについて,被告から合理的な説明が加えられていない。さらに,本件における報償費の使途に関する被告の主張の変遷等(前記(1)参照)をも勘案すると,報償費の支出対象に関する基準や実際の運用のあいまいさへの疑念を払拭することはできない。  この主張の変遷等につき主要な点をより具体的にいうと,報償費が「公にしないことを前提とする外交活動」に充てられることは,不開示事由を基礎付ける最も重要な要素として被告が主張するもの(後記2(2)参照)と考えられるところ,本件訴訟係属当初,被告は,少なくとも明示的には,そうした主張をしていなかったことがまず指摘できる。また,被告は,報償費の使途に関する前記9分類において,「定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費」を独立した分類(A3,B3,C3)とするが,「定例的に必要とされた」ものではない「物品の購入や役務の経費」に相当する分類が設けられておらず,被告は,本件各行政文書中に,これに充てられた支出に関する文書が存在しないとの前提に立っていると見受けられる。しかし,本来の予算区分上の定義からすれば,報償費は,「定例的に必要とされたもの」ではなく,むしろ,「定例的に必要とされたものではないもの」に充てられることが予定されていることは,ここで繰り返すまでもないことであり,前者のみが存在し,後者が存在しないとするのは不自然である。なお,念のため付言すると,被告からは,上記「定例的に必要とされたものではないもの」は,「情報提供又は協力の対価として使用されたもの」(A1,B1,C1)や「会合の経費として使用されたもの」(A2,B2,C2)に含まれているとの反論もあり得よう。とはいえ,部分開示された五類型をみる限り,A3,B3及びC3には,A1,B1及びC1,A2,B2及びC2のいずれにも分類できないものが含まれている。そうであるとすれば,「定例的に必要とされたものではない物品の購入や役務の経費」すべてがA1,B1及びC1,A2,B2及びC2のいずれかに分類できるとの説明を採用することはできない。 (5) 在外公館交流諸費との対比について  原告は,被告に対し,米,英,仏,中,比の5か国にある日本国大使館において,平成11年1月から同12年3月までに支出された「在外公館交流諸費」の支出証拠書類の開示請求を行い,そのかなりの部分について開示を受けているが,そこに記載された内容,開示された情報との対比からいっても,報償費に関する本件各行政文書の不開示には理由がなく,不当である旨主張している。上記の点は,報償費が「公にしないことを前提とする外交活動」に充てられていたといえるか否かの判断と関連性を有することから,以下,この点についても検討を加えることとする。  原告が被告から上記のとおり開示を受けた文書のうち,在米日本国大使館における平成11年1月から同年3月までの「在外公館交流諸費」の支出証拠書類においては,同期間中に開催された164件の会合それぞれについて,「目的」,「設宴日」,「昼・夜の別」,「金額」,「場所(店名)」,「館側出席者」,「客側出席者」,「起案者」といった情報が具体的に明らかにされていることが認められる。「目的」については,一部開示されていないものがあるものの,例えば,「日米貿易問題(板ガラス)についての意見交換」(客側出席者・USTR(アメリカ通商代表部。以下同じ。)),「コメ特例措置等についての意見交換」(客側出席者「USTR」),「懇談(日米鉄鋼問題)」(客側出席者「弁護士」),「鉄鋼問題,中国のWTO加盟等最近の通商問題についての意見交換」(客側出席者「US TRADE誌」),「日米貿易問題(鉄鋼等)についての意見交換」(客側出席者「商務省」),「鉄鋼AD問題等日米通商問題についての意見交換」(客側出席者「Rogers & Wells LLP 弁護士」),「米中関係に関する意見交換」(客側出席者「ブルッキングス研究所研究員」),「国際テロ情勢等意見交換」(客側出席者「国務省2名」),「中東情勢に関する意見交換」(客側出席者「議会調査局」)というように,「客側出席者」の記載と併せて,個別的かつ具体的な記載内容が開示されている。このほか,「館側出席者」,「起案者」についても,大使館内の所属部署等について個別具体的な記載が開示されている事実が認められる(もっとも,「客側出席者」,「館側出席者」,「起案者」の記載については,個人名が開示されていない場合の方が多い。)。(以上について弁論の全趣旨)  このような在外公館交流諸費に係る支出証拠書類の記載内容,開示された情報をみると,報償費使用目的に関する被告分類による「情報収集のための会合の経費として使用されたもの」,「二国間の外交交渉等を進めるに当たり,相手方との会合の経費として使用されたもの」又は「国際会議等において多国間交渉を進めるに当たり,相手方との会合の経費として使用されたもの」に報償費が充てられ,そのための決裁書が作成された場合の記載内容との間にいかなる差異があるのか,被告が主張する本件各行政文書の外形的事実との比較からは判別し難く,ほとんど差異がないようにも見受けられる。そして,在外公館交流諸費が充てられた活動も在外公館が行う外交事務や外交交渉の一環であると考えられるところ,その目的,内容や関係者に関する情報が相当程度具体的かつ詳細にわたり開示されている状況をみると,被告においては,そうした情報は,「公にしないことを前提とする外交活動」に関するものには当たらない(更にいえば,原則として,情報公開法5条3号又は6号の不開示事由に当たらず,これを開示したとしても,将来の外交活動や外交交渉に支障を来すおそれが生ずることもない)と判断しているものと認めることができる。  翻って,報償費の使途のうち,被告分類による「情報収集のための会合の経費として使用されたもの」,「二国間の外交交渉等を進めるに当たり,相手方との会合の経費として使用されたもの」又は「国際会議等において多国間交渉を進めるに当たり,相手方との会合の経費として使用されたもの」に充てられた場合を考えてみると,在外公館交流諸費の開示の場合とは事情が一変し,その使途がすべて「公にしないことを前提とする外交活動」に関するものである(更にいえば,その際に作成された決裁書すべてについて,その記載内容が開示されると,将来の外交活動や外交交渉に支障を来すおそれが生ずる)などと考えるのは,必ずしも合理的とはいえない。  この点に関して,在外公館交流諸費と報償費の異同について,被告は次のように述べる。すなわち,「在外公館交流諸費」は,在外公館において,当該任国の要人,政府関係者,外交団等との間で交流を通じた意見交換や良好な人的関係の育成等を促進するための経費であり,公にしたとしても基本的には支障を来さない活動に用いられるのに対し,報償費は,公にしないことを前提にした情報収集及び諸外国との外交交渉ないしは外交関係を有利に展開するための活動に使用する

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