hanrei @Wiki H17. 5.26 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第1186号 売買代金請求



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平成17年5月26日判決言渡 
平成17年(少コ)第1186号 売買代金請求事件
口頭弁論終結日 平成17年5月19日
     少額訴訟判決
          主    文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
 1 請   求
被告は,原告に対し,18万円及びこれに対する平成17年4月16日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
 2 請求原因の要旨
原告は,平成17年1月10日,被告に売り渡した「A」1セット(以下「本件商品」という。)の売買代金18万円及びこれに対する訴状送達日の翌日から商事法定利率による遅延損害金の支払いを求める。
 3 理   由
(1) 被告はこの事件の口頭弁論期日に出席しないので,請求原因事実を自白したものとみなされるが,本件商品の受注から現在に至る経緯については,原告が訴状添付の「受注から現在に至る経緯」で認めている事実であり,更に原告代表者,甲1,甲2の1及び2,甲3の1及び2並びに弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。
原告は高齢者を対象とした電話勧誘販売をしており,原告の担当者Bは,平成16年12月21日,被告に電話で本件商品の購入を勧誘し,その翌日に契約発注確認書(甲2の2)を送付し,平成17年1月7日に本件商品を発送し,同月10日に被告が受け取った。しかし,上記契約発注確認書には,販売業者である原告の法人名と異なる「C」と記載され,かつ,原告の代表者名と異なる「代表D」と記載されている。また,管理発注書(甲1)に記載されている被告の家族との電話によるやりとりによると,同月11日には被告の娘婿から電話があり,被告は81歳の高齢でぼけており,支払能力はないので,本件商品を返品したいと伝えて返品したところ,原告はその受領を拒否した。そして,同月24日と同年2月7日に再び返品されたが,原告はいずれもその受領を拒否した。すなわち,原告は,上記契約発注確認書を被告に送付した後に,クーリング・オフの期間が経過したとして本件商品を被告に送付しており,被告の娘婿からクーリング・オフをする趣旨の電話を受け,本件商品が少なくとも3回は返品されているのに,いずれもその受領を拒否している。
(2) 特定商取引に関する法律18条の書面には,同条5号の「経済産業省令で定める事項」として「販売業者の氏名又は名称,住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名」を記載しなければならない(特定商取引に関する法律施行規則17条1号)のに,上記契約発注確認書には販売業者である原告の正しい法人名及び代表者名が記載されていない。したがって,原告が上記契約発注確認書を被告に交付したとしても,クーリング・オフの期間が進行していないのであるから,次の(3)で判断するように,被告はクーリング・オフを適法に行使したと解するのが相当である。
(3) クーリング・オフの制度趣旨は,電話勧誘販売は業者主導の不意打ち的で攻撃的な販売方法であり,消費者が契約意思不確定なままに契約を締結しがちであることから,書面により正確な情報を提供した後一定期間は冷静に考え直す機会(熟慮期間)を与えようとするところにある。原告は,上記契約発注確認書を被告に送付したことによりクーリング・オフの期間が開始すると考えているようであるが,クーリング・オフの制度趣旨にかんがみれば,同時に販売する商品を送付しなければ,消費者としてはクーリング・オフをすべきかどうか判断することは困難である。つまり,上記契約発注確認書の「品目」欄の「A」という記載及び「備考」欄の「セット内容(ビデオ2巻・写真集1冊・純金箔額縁1点・テレビデオ1点)」という記載を見ただけでは,被告が本件商品を見てそれが18万円相当の商品であるかどうかを冷静に考え直す機会(熟慮期間)が与えられたとはいえないのである。また,クーリング・オフは書面によってする必要があるが,その趣旨は,後日紛争が生じないように明確にしておくためであり,電話によるその意思表示の存在が証拠上認定できれば足り,ましてやその意思表示が継続しているうちに被告は少なくとも3回は本件商品を返品したのであるから,クーリング・オフの行使があったと認めるのが相当である。
よって,上記(2)又は(3)のいずれの理由によっても,原告の請求は理由がない。
東京簡易裁判所少額訴訟1係
裁 判 官 横  田  康  祐