H17. 5.25 東京簡易裁判所 平成16年(ハ)第16596号 取立金請求

平成17年5月25日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官 
平成16年(ハ)第16596号 取立金請求事件
口頭弁論終結日 平成17年4月20日
判    決
主    文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請   求 
被告は,原告に対し,金140万円及びこれに対する平成16年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 請求原因の要旨
別紙「請求の原因」記載のとおり
2 被告の主張
(1) 請求棄却申立て
(2) 「請求の原因」のうち,A(以下「A」という。)が被告の代表取締役であることは認めるが,その余の事実については,知らないまたは争う。
(3) 被告のAに対する役員報酬は,無報酬である。
3 被告の主張に対する原告の反論
(1) 被告が提出した被告の確定申告書には,Aの居住先について虚偽の報告をしており,その信頼性は乏しい。
(2) Aは,東京都港区白金台にある高級賃貸マンションに居住しているが,借主は同人ではなく被告で,敷金及び賃借料の支払は被告がAに代わって行っている。この行為は,Aに対する被告からの現物支給にあたる。
(3) Aは,妻と幼い子ども4人の6人家族であって,妻は働いておらずAの収入で生活していると思われるが,その生活費は被告からの現物支給もしくは別の目的で支給されていると推量できる。
(4) 被告は,Aに対し,被告が購入した高級車を使用して運転手に送り迎えをさせているが,その費用の一部は通勤交通費等の現物支給にあたる。
(5) 株式会社B銀行等を第三債務者とするAに対する別件の債権差押命令事件の第三債務者の陳述書によれば,Aには,215万円余の銀行預金があり,口座にこのような大金が残っていたということは,被告からAに対し何らかの名目で金員が支払われていたと推量できる。
(6) Aが主に仕事をしていたという株式会社Cに対する取立訴訟において,同社はAに対し給与等は一切支払っていないと答弁しており,このことからすれば,Aの収入源はAが代表者となっている被告しかいないと推量できる。
4 争点
(1) 被差押債権である被告のAに対する役員報酬が支払われているか。
(2) 仮に,役員報酬そのものは支払われていないとしても,これに代わる現物支給等も被差押債権に含まれるか。
第3 争点に対する判断
1 被差押債権である被告のAに対する役員報酬が支払われているか。
原告は,平成16年6月4日,東京地方裁判所において,Aを債務者,被告を第三債務者とする債権差押命令を得,同命令が被告には同月7日に,Aには同月13日にそれぞれ送達され,同人に対する送達後1週間が経過したことにより被差押債権について取立権を取得したとして,被告からAに支払われる平成16年6月分から同年10月分までの役員報酬を被差押債権として本件訴訟を提起したものである。
しかし,乙第1号証(被告の平成15年10月1日から同16年9月30日までの事業年度分の確定申告書及びこれに添付された決算報告書)によれば,役員報酬手当は零となっており,そうすると,被告からAに支払われた平成16年6月分から同年10月分までの役員報酬手当は零である可能性が高い。
原告は,被告が同申告書のAの住所について,住民票の移動手続をしない虚偽の報告をしていることからも同申告書の信頼性は乏しいと主張しているが,同申告書は確定申告用に税理士によって作成されたものであり,仮にAの住所が転居前の住所になっていたとしても,そのことで申告内容まで虚偽であるとは言い難い。
2 仮に,役員報酬そのものは支払われていないとしても,これに代わる現物支給等も被差押債権に含まれるか。
原告は,前記のように被告によるマンションの家賃の支払や自動車の貸与等の現物支給も被差押債権に含まれると主張をしている。
しかし,原告が前記債権差押事件で差押えたのは,役員報酬及び賞与といったAの被告に対する「金銭債権」であるから,現物支給が本件の被差押債権に含まれないことは明らかである。また,仮に,Aが被告に対し,マンションの賃料を自分に代わって借主に支払うよう求める権利や自動車の使用を求める権利を有していたとしても,これらの権利もAの被告に対する「金銭債権」ではない。
なお,原告は,Aの生活費として,被告からAに対し何らかの金員が支払われていると推量できると主張しているが,推量の域を出ていない。
3 以上によれば,結局,本件の被差押債権の存在については,これを認めるに足りる証拠はないから,原告の請求には理由がない。

東京簡易裁判所民事第1室
裁 判 官 深 田 英 夫

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最終更新:2005年10月03日 14:02
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