H17. 8.10 さいたま地方裁判所 本訴平成15年(ワ)第1866号,反訴平成17年(ワ)第1279号  不当利得金返還等請求事件,同反訴請求事件

主文
1 原告亡A訴訟承継人B、同C及び同Dの被告に対する請求をいずれも棄却する。
2 反訴被告亡A訴訟承継人Bは、反訴原告に対し、48万1200円及びこれに対する平成14年11月27日から支払済みまで年26.28パーセントの割合による金員を支払え。
3 反訴被告亡A訴訟承継人C及び同Dは、反訴原告に対し、それぞれ24万0600円及びこれに対する平成14年11月27日から支払済みまで年26.28パーセントの割合による金員を支払え。
4 被告は、原告Eに対し、163万2278円及び内154万9299円に対する平成15年8月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
5 被告は、原告Fに対し、163万5054円及び内156万1209円に対する平成15年8月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は、原告亡A訴訟承継人(反訴被告)B、同C及び同Dと被告(反訴原告)との間で生じたものは本訴反訴を通じて原告亡A訴訟承継人(反訴被告)B、同C及び同Dの負担とし、原告E及び同Fと被告との間に生じたものは被告の負担とする。
7 この判決は、第4項及び第5項に限り、仮に執行することができる。



事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 本訴請求の趣旨
(1) 被告は、原告亡A訴訟承継人Bに対し、81万5025円及び内77万7587円に対する平成15年8月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2) 被告は、原告亡A訴訟承継人C及び同Dに対し、それぞれ40万7512円及び内38万8793円に対する平成15年8月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(3) 主文第4項と同旨
(4) 主文第5項と同旨
(5) 訴訟費用は被告の負担とする。
(6) 仮執行宣言
2 本訴請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告らの負担とする。
3 反訴請求の趣旨
(1) 主文第2項及び第3項と同旨
(2) 反訴の訴訟費用は、反訴被告らの負担とする。
4 反訴請求に対する答弁
(1) 反訴原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は反訴原告の負担とする。
(3) 仮執行免脱の宣言
第2 事案の概要等
 1 事案の概要
本件は、原告(反訴被告。以下単に「原告」という。)A(Aは訴訟途中で死亡し、B、C、Dが原告の地位を当然承継した。以下、原告亡A訴訟承継人Bら3名を「原告Bら」という。)、原告E及び原告Fが平成10年8月以前から存在していた株式会社レイク(以下「旧レイク」という。)及び被告(反訴原告。以下単に「被告」という。)から金銭消費貸借取引を繰り返してきたが、利息制限法に引き直して計算をすると過払金が発生しているとして不当利得返還請求権に基づき返還を求めると共に被告は悪意の受益者であるとして年6分の割合による利息の支払を求めるものであり、他方、被告は、Aに対し、利息制限法に引き直して計算しても平成14年10月28日現在で96万2400円の貸金返還請求権があるとして同額及びこれに対す
る平成14年11月27日から支払済みに至るまで利息制限法所定の範囲内である26.28パーセントの割合による遅延損害金を反訴として請求するという事案である。
 2 当事者間に争いのない事実の一部及び証拠等により容易に認定できる事実
(1) 被告は、ゼネラルエレクトリックキャピタルコンシューマーローン株式会社として、平成6年10月28日に設立され、平成10年8月27日、株式会社レイクに商号変更され、この時点で、以前からあった旧レイクと同一商号の会社が二社併存することとなり、従前からあった旧レイクが株式会社エルと商号変更したが、株式会社レイク(被告)は、旧レイクから営業譲渡を受けた。その後、被告は、平成12年12月1日、ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社と商号変更し、平成14年12月1日、GEコンシューマー・クレジット有限会社に、平成15年10月1日、GEコンシューマー・ファイナンス株式会社となった(乙4、乙5、弁論の全趣旨)。また、被告は、登録貸金業者である。
  (2) Aは平成16年3月28日死亡し、同人の妻B、同人の子C及びDが民法所定の相続分の割合に従って原告の地位を承継した(当事者間に争いのない事実)。
(3) 原告Eは、平成元年6月以降の旧レイクとの取引も含め、金銭消費貸借取引に係る契約書面(貸金業法17条に基づく書面)、業務に関する帳簿(同法19条に定める帳簿)又はこれに代わる同法施行規則16条3項・17条2項に定める書面のうち、原告Eとの間の平成元年6月から平成5年10月25日までの金銭消費貸借取引に関する事項(貸付年月日、貸付金額及び返済年月日、返済金額)が記載された文書について、文書提出命令の申立てをし、当裁判所は、被告に対し、申立てに係る契約書面及び文書の提出を命じたが、被告においてこれを提出しなかった(当裁判所に顕著な事実)。
 (4) 原告Fは、平成元年9月以降の旧レイクとの取引も含め、金銭消費貸借取引に係る契約書面(貸金業法17条に基づく書面)、業務に関する帳簿(同法19条に定める帳簿)又はこれに代わる同法施行規則16条3項・17条2項に定める書面のうち、原告Fとの間の平成元年9月から平成7年5月8日までの金銭消費貸借取引に関する事項(貸付年月日、貸付金額及び返済年月日、返済金額)が記載された文書について、文書提出命令の申立てをし、当裁判所は、被告に対し、申立てに係る契約書面及び文書の提出を命じたが、被告においてこれを提出しなかった(当裁判所に顕著な事実)。
3 争点
(1) 免責(被告は、旧レイクの債務を承継しないか)について
 ア 被告の主張
  旧レイクは、平成10年11月2日、被告に営業譲渡したが、債務は承継しないものとされ、その旨の登記もした。
イ 原告らの反論
 営業譲渡がされた場合にも、営業譲受人は、債務を営業譲渡の対象から除外したことを立証しない限り請求を拒めないというべきであり、本件においては、約定利息を利息制限法に引き直して初めてその存在及び額が判明するものであり、営業譲渡の当事者間においてかかる債務を除外するとの特約がされたものとは考えられない。仮にかかる特約があるとしても、被告は、平成10年8月27日、旧レイクから営業譲渡を受けたにもかかわらず、同年11月2日まで債務免責の登記を懈怠していたことから、商法26条2項の適用はない。被告は、上記営業譲渡により旧レイクの商号や「ほのぼのレイク」という通称、顧客関係、本店所在地、営業所その他の一切の営業を引き継ぎ、旧レイクと同様の消費者金融を営んでいたもので、このような事情
からすれば、過払金返還債務の免責を主張することは、商法26条の趣旨や信義則に違反し、許されないものである。
(2) 各返還請求権の額について
ア 本訴請求に係る当事者の主張
 (ア) 原告Bらの主張
① Aは、昭和59年7月以降、旧レイクとの間で、金銭消費貸借取引を開始し、Aと旧レイク及び被告との間の取引経過は、別紙1の計算書のとおりである。
② 被告は、貸金業の登録業者であり、利息制限法を越える利率で貸付けをしていることを知りながら貸付けを行って、Aより返済を受けた。
③ よって、原告Bらは、被告に対し、不当利得返還請求権に基づいて、各請求の趣旨記載の不当利得金及び平成15年7月31日までの商事法定利率年6分の割合による確定利息並びに各請求の趣旨記載の不当利得金に対する平成15年8月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による利息の支払いを請求する。
(イ) 原告Eの主張
① 原告Eは、平成元年6月以降、旧レイクとの間で、金銭消費貸借取引を開始し、原告Eと旧レイク及び被告との間の取引経過は、別紙2の計算書のとおりである。
② 被告は、貸金業の登録業者であり、利息制限法を越える利率で貸付けをしていることを知りながら貸付けを行って、原告Eより返済を受けた。
③ よって、原告Eは、被告に対し、不当利得返還請求権に基づいて、請求の趣旨記載の不当利得金及び平成15年7月31日までの商事法定利率年6分の割合による確定利息並びに請求の趣旨記載の不当利得金に対する平成15年8月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による利息の支払いを請求する。
(ウ) 原告Fの主張
① 原告Fは、平成元年9月以降、旧レイクとの間で、金銭消費貸借取引を開始し、原告Fと旧レイク及び被告との間の取引経過は、別紙3の計算書のとおりである。
② 被告は、貸金業の登録業者であり、利息制限法を越える利率で貸付けをしていることを知りながら貸付けを行って、原告Fより返済を受けた。
③ よって、原告Fは、被告に対し、不当利得返還請求権に基づいて、請求の趣旨記載の不当利得金及び平成15年7月31日までの商事法定利率年6分の割合による確定利息並びに請求の趣旨記載の不当利得金に対する平成15年8月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による利息の支払いを請求する。
(エ) 被告の主張
   原告らの主張のうち、Aと被告との間で平成14年2月20以降別紙1の計算書に記載のとおりの取引があったこと、原告Eと被告との間で平成5年10月26日以降別紙2の計算書に記載のとおりの取引があったこと及び原告Fと被告との間で平成7年5月9日以降別紙3の計算書の記載のとおり取引があったことは認める。
イ 反訴請求にかかる当事者の主張
(ア) 被告の主張
① 被告は、Aに対し、平成14年2月20日、借入金は借入高に応じ毎月26日に一定額の元利金の支払いをし、限度額内で再度借入れをすることができ、利息は年22パーセント、遅延損害金は年29.20パーセント、一回でも分割金の返済を怠ったときは期限の利益を失うとの約定で、70万円を貸し付け、その後の被告とAとの取引は別紙4の計算書のとおりであった。
② Aは、平成14年11月26日、同日支払うべき分割金の支払いを怠った。
③ よって、被告は、原告Bらに対し、金銭消費貸借契約に基づき、反訴請求の趣旨記載の貸金元本並びにこれに対する平成14年11月27日から支払済みにいたるまで、年26.28パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
(イ) 原告Bらの主張
 本訴請求のとおり、平成14年2月20日以前から借入を繰り返していたが、原告Bらが主張する取引経過を認められないとすると、平成14年2月20日の70万円の借入、同年3月4日の12万円及び5万円の借入並びに同月11日の10万円の借入については、認めない。
第3 当裁判所の判断
1 免責の主張について
被告は、旧レイクの債務については承継していないと主張しているので、まず、この点について判断をする。
 乙4及び弁論の全趣旨によれば、平成10年11月2日に旧レイクから営業譲渡を受けたこと及び譲渡会社である旧レイクの債務については責に任じない旨の登記がされていることが認められるものの、他方、甲6ないし8、甲14、15及び弁論の全趣旨によれば、被告は、ゼネラルエレクトリックキャピタルコンシューマーローン株式会社から株式会社レイクと名称を変更し、旧レイクから営業譲渡を受けたのち、旧レイクから「ほのぼのレイク」との通称、顧客関係、本店所在地、営業所等を引き継ぎ、旧レイクと同様の消費者金融業を営んでいたこと、さらに、平成12年12月1日にジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社と商号変更した後にも、「ほのぼのレイク」との通称を使用し、今日に至っていることを認めることができる
。そして、継続してされている金銭消費貸借取引にかかる過払金債務について旧レイクと被告との間で明確に合意されたと認めるに足りる証拠が無く、むしろ、継続してされている金銭消費貸借取引にかかる過払金債務は、その都度増減していく性質のものであり、取引終了によってその金額が確定されるものであるから、これを登記事項で公示している債務として除外したものとは考えられない。したがって、被告は、少なくとも継続してされている金銭消費貸借取引にかかる過払金債務について旧レイクを承継したものと認めることができる。
2 原告Bらにかかる本訴及び反訴の各請求について
(1) Aと被告との間で平成14年3月25日以降、別紙1の計算書記載の金銭消費貸借取引(貸付年月日、貸付金額、返済年月日、返済金額)があった事実について、当事者間に争いがない(上記第2の3(2)ア(ア)及び第2の3(2)イ(ア))。同計算書記載の昭和59年(1984年)7月30日から平成14年3月11日までの金銭消費貸借取引については認めるに足りない。
 確かに、甲6及び9からすれば、Aは、旧レイクとの間で、昭和59年ころ、50万円の借入をしたのが最初であり、平成2年か3年ころに一旦完済し、その後、10年以上を経て再び取引を再開したことを認めることができるが、時間経過からすると、不当利得返還請求権としても二つの請求権と考えられ、平成2、3年ころに発生した不当利得返還請求権については、被告が承継しているか否か、また、Aがいつ、いくらの借入及び弁済をしてきたかについて原告Bらの主張を認めるに足りる証拠は存在しない。
(2) Aの平成14年2月20日以降の取引については当事者間に争いがないが、原告Bらは、平成17年6月17日付け第3準備書面において原告Bらが主張する取引経過が認定されない場合の仮定的な主張として、平成14年2月20日の70万円の借入、同年3月4日の12万円及び5万円の借入並びに同月11日の10万円の借入については、否認する主張をしており、これが自白の撤回に該当するかについて検討しておく。このような仮定的な自白の撤回が許されるか否かはおくとしても、自白の撤回を認めるためには自白の内容が真実に反することの立証がなければならないところ、乙1の1及び2によれば、同年2月20日の70万円の借入、同年3月4日の12万円及び5万円の借入並びに同月11日の10万円の借入を認めることができの
であって、自白の内容が真実に反するとの立証がないというべきである。したがって、原告Bらの上記主張は失当である。なお、原告Bらは、平成14年10月28日に1万円弁済したと主張するが、被告は、同日、2万8000円弁済されたと主張し、乙1の2にもこれに沿う記載がある。これらのことからすれば、2万8000円の弁済があったと認めることができ、結局、原告Bらにかかる貸付金及び弁済金の金額及び日時は、別紙4の計算書記載のとおりとなる。
 そして、被告は、貸金業法17条、18条書面について何等立証をしていないから、利息制限法に従って計算することになるところ、原告Bらについては、過払金は発生しておらず、別紙4の計算書記載のとおり残元金96万2400円及び利息については11万7400円が発生していることになるから、被告の反訴請求は理由があるからこれを認容することとする。
 さらに、乙1の1及び2によれば、平成14年11月27日から遅滞に陥り、同日から支払済みまで利息制限法所定の割合による遅延損害金が発生していることを認めることができる。
3 原告Eの請求について
(1) 平成5年10月26日以降の原告Eと旧レイク及び被告との取引経過(貸付年月日、貸付金額、返済年月日、返済金額)が別紙2の計算書記載のとおりであったことについては当事者間に争いがない。
(2) 上記第2の2(3)のとおり、被告が、原告Eと旧レイク及び被告との間の平成元年6月から平成5年10月25日までの金銭消費貸借取引に関する貸付年月日、貸付金額、返済年月日、返済金額が記載された、貸金業の規制等に関する法律19条の帳簿またはこれに代わる同法施行規則16条3項・17条2項所定の書面を提出するように当裁判所から命じられたにもかかわらずそれに従わなかったことは、当裁判所に顕著な事実である。したがって、上記文書の記載に関する原告Eの主張を真実と認め、平成元年6月から平成5年10月25日までの間における貸付けと弁済が別紙2の計算書記載のとおりであったと認める。そして、前記認定のとおり、連続して金銭消費貸借取引が重ねられていることから、この旧レイクの債務についても被告が承継
しているものというべきである。
(3) 被告が17条書面等を一切提出していないなどの弁論の全趣旨からすれば、利息制限法を超える利率の約定で貸付けを行ったこと及び利息制限法を超える金利の利息を受け取っていたことについて、被告が悪意であったと認めることができ、被告は商人であり(商法52条2項、4条)、過払金の受領も営業のためにするものと推定されので(同法503条2項)、商行為により生じたる債務として年6分の利率が適用されると解される(同法514条)。
(4) 以上によれば、原告Eの請求は理由がある。
4 原告Fの請求について
(1) 平成7年5月9日以降の原告Fと旧レイク及び被告との取引経過(貸付年月日、貸付金額、返済年月日、返済金額)が別紙3の計算書記載のとおりであったことについては当事者間に争いがない。
(2) 上記第2の2(4)のとおり、被告が、原告Fと旧レイク及び被告との間の平成元年10月から平成7年5月8日までの金銭消費貸借取引に関する貸付年月日、貸付金額、返済年月日、返済金額が記載された、貸金業の規制等に関する法律19条の帳簿またはこれに代わる同法施行規則16条3項・17条2項所定の書面を提出するように当裁判所から命じられたにもかかわらずそれに従わなかったことは、当裁判所に顕著な事実である。したがって、上記文書の記載に関する原告Fの主張を真実と認め、平成元年6月から平成5年10月25日までの間における貸付けと弁済が別紙3の計算書記載のとおりであったと認める。そして、前記認定のとおり、連続して金銭消費貸借取引が重ねられていることから、この旧レイクの債務についても被告が承継し
ているものというべきである。
(3) 被告が悪意の受益者であること及び商事法定利率が適用になることについては、3(3)と同じであるから、これを引用する。
5 以上によれば、原告Bらの被告に対する本訴請求は理由がないからこれを棄却し、被告の反訴請求は理由があるからこれを認容し、同E及び同Fの本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担について民訴法61条及び65条1項本文を適用し、仮執行宣言については、同法259条1項を適用して本訴請求を認容する限度で必要があると認め、反訴請求については必要がないので付さないこととして、主文のとおり判決する。
さいたま地方裁判所第1民事部

裁判官 近藤昌昭

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最終更新:2005年10月25日 15:00
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