hanrei @Wiki H17. 8.24 名古屋高等裁判所 平成16年(行コ)第9号 損害賠償請求住民訴訟控訴事件



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主 文
      1 原判決中,1審被告A議員団敗訴部分を取り消す。
      2 1審原告らの1審被告A議員団に対する請求を棄却する。
      3 1審原告Bの控訴を棄却する。
      4 訴訟費用は,1審原告らと1審被告A議員団との関係では,第1,2審とも1審原告らの負担とし,1審原告Bと1審被告C連合及び1審被告Dとの関係では,控訴費用は1審原告Bの負担とする。
  事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 1審原告B
  (1) 原判決中1審原告Bの1審被告C連合及び1審被告Dに対する敗訴部分を取り消す。
  (2) 1審被告C連合は,三重県に対し,1審被告Dと連帯して,588万円及びこれに対する平成14年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (3) 1審被告Dは,三重県に対し,
   ア 1審被告A議員団と連帯して,1869万5172円及びこれに対する平成14年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を,
   イ 1審被告C連合と連帯して,588万円及びこれに対する平成14年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を,
   それぞれ支払え。
  (3) 1審被告A議員団の控訴を棄却する。
(4) 訴訟費用は第1,2審を通じて1審被告らの負担とする。
 2 1審原告E
  (1) 1審被告A議員団の控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は,1審被告A議員団の負担とする。
 3 1審被告A議員団
  (1) 主文第1ないし3項同旨
  (2) 訴訟費用は1審原告らの負担とする。
 4 1審被告C連合及び同D
  (1) 主文第3項同旨
  (2) 控訴費用は1審原告Bの負担とする。
第2 事案の概要
 1 本件は,三重県の住民である1審原告らのほかFが,県政に関する調査研究を行う目的で交付される調査研究費(以下「研究費」という。)が,本来の用途に使用されておらず,研究費の支出負担行為及び支出命令並びに概算払による交付後の確定手続が違法であるなどと主張して,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「地方自治法」という。)242条の2第1項4号に基づき,三重県に代位して,その交付を受けた三重県議会の会派である1審被告A議員団及び1審被告C連合,当時三重県知事であった1審被告D,並びに当時上記各会派の代表者又は経理責任者であったG,H,I及びJに対し,平成9年度に1審被告A議員団及び1審被告C連合にそれぞれ交付された研究費(以下「本件研究費」という。)の一部((1)1審被告A議員団,1審被告D,G及びHが連帯して2056万4689円(①事務費分のうちの1869万5172円(請求の趣旨変更前は,資料購入費分のうちの630万円)と②弁護士報酬相当額186万9517円(変更前は63万円)の合計額)及びこれに対する平成14年3月15日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金,(2)1審被告C連合,同D,I及びJが連帯して646万8000円(①会議費分のうちの588万円と②弁護士報酬相当額58万8000円の合計額)及びこれに対する平成14年3月15日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金)相当額を,以下のとおり(ただし,当審の当事者に係る部分のみ記載),不当利得又は損害賠償として支払うように求めた住民訴訟である。
   なお,以下,1審被告Dの支出負担行為及び支出命令,出納長又は収入役による支出(概算払),1審被告Dの精算手続を併せて「支出(広義)」といい,出納長又は収入役による支出のみを「支出(狭義)」ということがある。
  ア 1審被告A議員団
   (ア) 1審被告A議員団に対する本件研究費に関する支出(広義)は,事務費総額3739万0343円のうち適法と認められる1869万5171円(請求の趣旨変更前は,資料購入費総額1260万円のうち適法と認められる630万円)を超える部分1869万5172円が目的外支出(不正受給)であって違法無効であり,1審被告A議員団は,三重県に対し,当該行為の相手方として同額の不当利得返還義務を負う。
   (イ) 1審被告Dは,1審被告A議員団に対し,不正受給(不法行為)に基づく損害賠償請求権又は概算払後の精算をしないという債務不履行による損害賠償請求権の行使を故意又は過失により怠る事実があるところ,1審被告A議員団は,その相手方として,三重県に対し,損害賠償義務を負う。
  イ 1審被告C連合
   (ア) 1審被告C連合に対する本件研究費に関する支出(広義)は,会議費総額1176万円のうち適法と認められる588万円を超える部分588万円が目的外支出(不正受給)であって違法無効であり,1審被告C連合は,三重県に対し,当該行為の相手方として同額の不当利得返還義務を負う。
   (イ) 1審被告Dは,1審被告C連合に対し,不正受給(不法行為)に基づく損害賠償請求権又は概算払後の精算をしないという債務不履行による損害賠償請求権の行使を故意又は過失により怠る事実があるところ,1審被告C連合は,その相手方として,三重県に対し,損害賠償義務を負う。
  ウ 1審被告D
   (ア) 1審被告Dは,三重県知事として,研究費の交付を行い,実績報告及び精算報告を受け,必要であれば研究費の交付に係る要綱や要領等を改善し得る立場にあったにもかかわらず,交付申請書,報告書及び精算書の内容を改善し,その運用実態を点検することなどを怠り,平成9年度の交付申請書も,項目はわずかに4項目とあまりに包括的に過ぎ,それ自体として何らの判断材料も提供しないものであって,他に支出の必要性を基礎付ける資料(内訳書や見積書,帳簿等)の添付すら求めずに,交付申請を行わせて研究費を交付し(①概算交付に係る支出負担行為及び支出命令の違法性),報告(精算)を受けて,領収書等の提出も求めず,実績報告の内容が交付申請書記載の金額と大きく異なるものがあるにもかかわらず,何らのチェックも行わないまま概算交付額をそのまま確定させて,上記ア及びイ記載の各支出(不正受給)を行い,同確定後に1審被告A議員団から上記4項目間での流用を認めるがごとき訂正書(以下「本件訂正書」という。)が提出されているにもかかわらず,確定に何らの影響も及ぼさないとしているところ,これらは地方自治法に反し違法である(②精算(確定)の違法性)。したがって,1審被告Dは,当該職員として,三重県に対し,損害賠償義務を負う。
   (イ) 1審被告Dは,三重県の同人を除く1審被告らに対する不正受給(不法行為)に基づく損害賠償請求権又は概算払後の精算をしないという債務不履行による損害賠償請求権の行使を故意又は過失により怠っているから,三重県に対し,同怠る事実について損害賠償義務を負う。
 2(1) 原審は,概略以下のとおり判示して(ただし,当審の当事者に係る部分のみ),1審被告A議員団については,1869万5172円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと認めてこれを認容し,同1審被告に対するその余の請求及びその余の1審被告ら(G,H,I及びJを含む。)に対する請求をいずれも棄却した。
   ア 1審被告A議員団
    (ア) 概算交付の趣旨からして本件の概算交付に係る支出負担行為や支出命令に違法はない。
    (イ) 精算(確定)については,原則として領収書等によって支払うべき金額が確定されるべきものであるが,議会の会派への研究費の交付は,政治活動の自由とも密接に関連するため,各会派の代表者と経理責任者により適正に審査されて実績報告書が作成されている限りにおいて,精算に当たっての実績報告書に領収書等の添付を要しないとすることも許容され,そのような審査や実績報告書の作成が行われている以上,目的外使用をうかがわせる一般的,外形的な事情のない限り,精算(確定)は適法と推認されるべきである。
      本件では,①団長は領収書等を徴求せずに月額24万円(特に,事務費名目分は月額16万円にのぼる。)と高額な研究費を交付していたこと,②定額分の金額の算出経緯や根拠が不明であること,③実績報告書と本件訂正書とはその費目の数字に大きな隔たりがあり,④その隔たりについて,特に1審原告らが当初目的外支出の違法がある旨指摘していた資料購入費の額が5分の1程度に減少していることについての合理的な説明がないことなどから,実績報告書につき団長及び経理責任者による適正な審査があったとは認められないとして,少なくとも1審原告らが主張する事務費合計分3739万0343円中1869万5172円分については,精算(確定)が違法というべきであり,1審被告A議員団は,当該行為の相手方として同額の不当利得返還義務を負う。
    (ウ) 1審被告Dが,不正受給(不法行為)に基づく損害賠償請求権又は概算払後の精算をしないという債務不履行による損害賠償請求権の行使を故意又は過失により怠っている事実は認められないから,1審被告A議員団は,1審被告Dの相手方としての責任は認められない。
イ 1審被告C連合
    (ア) 上記ア(ア)同旨。
    (イ) 上記ア(イ)前段と同旨。本件において,1審被告C連合では,経理責任者(I)により適正な審査がなされ,他に1審原告らの主張する会議費分が目的外に使用されていることをうかがわせる事情はないから,1審原告らの請求は理由がない。
    (ウ) 上記ア(ウ)同旨。
   ウ 1審被告D
    (ア) 上記ア(イ)のとおり,各会派の代表者と経理責任者により適正に審査されて実績報告書が作成されている限りにおいて,精算に当たっての実績報告書に領収書等の添付を要しないとすることも許容され,本件では,1審被告Dにおいて,精算(確定)に際し1審被告A議員団の団長及び経理責任者において適正に審査されていないことをうかがわせる事情があったとは認められないから,1審被告Dに,精算(確定)について故意又は過失があったとは認められない。
   (イ) 上記ア(ウ)記載のとおり,1審被告Dについて怠る事実は認められない。
  (2) そこで,これを不服とする1審被告A議員団が1審原告らに対して,また,1審原告B及びFが,1審被告C連合及び1審被告Dに対する敗訴部分を不服として同1審被告らに対して,それぞれ控訴に及んだ。
    なお,1審原告Bは,1審被告C連合に対する不服の範囲を,前記「第1 当事者の求めた裁判」1(2)記載のとおり,三重県に対し588万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度に限定し,また1審被告Dに対する不服の範囲を,同1(2),(3)記載のとおり,三重県に対し,1審被告A議員団と連帯して1869万5172円及びこれに対する遅延損害金,並びに1審被告C連合と連帯して588万円及びこれに対する遅延損害金の各支払を求める限度に限定した。また,Fは,平成17年2月10日に死亡し,同人に係る訴訟は当然に終了した。
 3 本件の前提となる事実(争いのない事実等),争点,争点に関する当事者双方の主張は,以下のとおり付加訂正するほかは,原判決「第2 事案の概要」の1ないし5に記載のとおりであるからこれを引用する(ただし,F,G,H,I,Jに係る部分を除く。)。なお,以下,略称等は原判決に準じて用いることとする。  
  (1) 原判決8頁20行目冒頭から21行目末尾までを次のとおり改める。
「(6) 本件要綱は,平成10年5月8日に,本件要領は,平成9年10月8日に,それぞれ次のとおり改正された(甲1,2,乙17,130の1ないし6,131の1ないし5。以下それぞれ「本件改正要綱」,「本件改正要領」という。)。」
  (2) 同9頁2行目「別表(省略)」を「別表(別紙平成10年改正要領別表)」と改める。
  (3) 同20頁3行目冒頭に次のとおり付加する。
「原判決は,会派代表者と経理責任者による適正な審査による実績報告書の作成がなされている場合には,領収書の添付を不要とするが,適正な審査の有無の立証は会派関係者の供述に頼らざるを得ないのであるから,このように解したのでは,領収書の添付を求めるべきであるとする原則の実質的な意味が失われることになるし,予定される三重県知事による研究費の使途に関するチェックを実質的に省略するのと同じであって,民主的基礎が失われることになる。精算(確定)には,例外なく領収書の添付を要すると解すべきであり,これなしに行った精算(確定)は違法というべきである。」
  (4) 同20頁22行目末尾に次のとおり付加する。
「1審被告らは,原判決が領収書の保管について過重な義務を負担させるかのように論難するが,原判決は会派の代表者や経理責任者により適正な審査を経て実績報告書が作成されたと認められない場合について,領収書等による適正な支出の立証が必要とするものに過ぎず,1審被告らの主張は失当である。」
  (5) 同21頁4行目と5行目の間に次のとおり付加する。
「(イ) 1審被告らは,研究費は補助金(使途を限定した贈与)として交付されるものであるから,各会派等における管理の方法(使途の特定や証拠の提出)は各会派の裁量に属するかのごとく主張するが,失当である。補助金の交付であれば,その公益上の必要性を検討すべきこととなるから,その判断に必要となる,①会派における支出基準や手続,検査体制,②情報公開に備える体制が整備されていることが必要ということになる。」
  (6) 同21頁5行目「(イ)」を「(ウ)」と改める。
  (7) 同24頁21行目冒頭から25頁3行目末尾までを次のとおり改める。
   「ア 当該行為についての責任
     (ア) 1審被告Dは,三重県知事として,法令上以下のような権限及び責務を有していた。
      ① 三重県を統轄し,これを代表してその事務を処理すべき立場にあり(地方自治法147条,148条),これを自らの責任と判断で誠実に管理・執行すべき義務を有していた(同法138条の2)。そして,日常的な事務の管理執行権限のほかに,議会への議案提出権(同法149条1号)や予算の調製・提出及び執行に係る権限(同法149条2号,112条1項但書)を有していた。
      ② また,補助事業等に関しては,
       a)同事業等の完了時等及び補助金交付決定に係る県の会計年度の終了時に,補助事業者等から実績報告を受ける権限(三重県補助金等交付規則(以下「補助金等交付規則」という。)12条),
       b)補助事業等の完了時等に成果の報告を受けた場合において,報告書等の書類審査及び必要に応じて行う現地調査等により,補助事業等の成果が補助金交付決定の内容及び条件に適合するか否かを調査し,適合すると認めたときは交付すべき補助金等の額を確定する権限(同規則13条),
       c)補助事業者等が,同規則の規定(9条)に反して補助金等を他の用途に使用したとき等は,補助金等の交付決定の全部又は一部を取り消す権限(同規則16条1項2,3号)
       を有していた。
      ③ 本件要綱に基づく権限は,以下のとおりである。
a) 研究費を各会派に交付する権限
b) 交付申請書の提出を受ける権限
c) 実績報告を受ける権限
e) 実績報告書に基づき研究費を確定させる権限
  (イ) そして,一般に地方公共団体は,最少の支出で最大の効果を挙げるようにしなければならず(地方自治法2条14項),補助金の支出は,公益上の必要が客観的に明らかであることが必要である(同法232条の2)。
     (ウ) 以上を総合すると,1審被告Dは,補助金として研究費を支出するに際しては,各会派の申請額の必要性を客観的に判断するため,①申請書の記載内容をより詳細なものにする,見積書,内訳書等を添付させる等によって,また②精算の際の実績報告書についても,記載内容をより詳細なものとし,領収証等を提出させ,これを実績報告書に添付させる等の方法によって,交付の必要性を厳しく吟味すべき必要があり,かつ可能であった。
       しかるに,1審被告Dは,交付申請書,報告書及び精算書の内容を改善したり,運用実態を点検することを怠り,わずか4項目とあまりに包括的に過ぎる費目内訳のみで,見積書,領収書及び帳簿の添付すら要求せずに交付申請を行わせて研究費を交付し,実績報告書記載金額を鵜呑みにして,交付金額を確定(精算)させた。
       したがって,1審被告Dは,1審被告A議員団及び同C連合への本件研究費に関する支出(広義)(当該行為)について過失があるというべきである。」
  (8) 同28頁7行目冒頭から9行目「していた。」までを次のとおり改める。
「(ウ) 各議員は,毎月,実費支給分については領収書等の証拠書類及び明細書等を添付して,会派の代表者である団長あてに請求し,団長及び経理責任者は,上記申合せに従い,請求内容項目等をチェックし,研究費交付申出書,領収書等の証拠書類及び明細書等を確認した上で支出し,上記領収書等については,各議員に返還していた。」
  (9) 同30頁1行目と2行目の間に次のとおり付加する。
「オ また,そもそも研究費は,平成12年改正において地方自治法100条13,14項が規定される以前は直接の法令上の根拠はなく,同法232条の2に規定する補助金の交付に該当するもので,使途を限定した金銭の贈与であったと考えられるところ,これは地方自治法203条3項の「職務を行うため要する費用の弁償」(実費弁償)とは異なるから,精算に当たっての使途の特定や提出を求める証拠の程度については,政治活動の自由の保障に鑑み,各会派の自由裁量に属するというべきである。要綱や要領は,内部的な事務手続を定めたものに過ぎない。
      したがって,費用積算の簡素化や合理化の観点から,定額分を定めたり,領収書を徴求しない運用も裁量の範囲内として許されるというべきである。そして,研究費が目的外に使用されたか否かについては,三重県の1審被告A議員団に対する不当利得返還請求権の有無という訴訟物の範囲で,1審原告らが立証責任を有するものとして審理判断すべきであるから,これを超えて精算義務について審理判断している原判決は違法であり,事実誤認である。」
  (10) 同30頁2行目の「オ」を「カ」と改める。
  (11) 同30頁5行目と6行目の間に,次のとおり付加する。
「キ 原判決は,精算には原則として領収書が必要であるとした上,会派の代表者と経理責任者により適正に審査された実績報告書が作成されている限りにおいて,領収書は不要であり,目的外支出をうかがわせる一般的,外形的な事情のない限り,目的内支出を推認させるとするが,これは,1審被告A議員団に,保存義務もない領収書等を長期間保存することを強い,加重な立証責任を課すことになるのであって,公平な判断基準とは言えない。平成11年4月に要綱が改正される以前は,帳簿証票等の保存を義務付ける規定はなかったのであるから,上記基準に基づく原判決の判断は誤りというべきである。
    ク 原判決が研究費の目的外使用をうかがわせる一般的,外形的な事情として指摘する事情等についての反論は,以下のとおりである。
     (ア) 原判決は,①議員1名当たりに交付されていた研究費の金額が高額(領収書等を徴求せずに月額24万円,特に,事務費名目分は月額16万円)であった旨指摘するが,失当である。実際にはより多額の費用がかかっているところ,予算上の制約もあり,議員間の申合せによって自発的に規制したものであって,原判決は,各議員の活動実態(経費についての実情)を無視している。
       また,他都道府県の交付額等との対比からしても,各都道府県とも概ね議員一人当たり30万円程度が交付されており,領収書の添付も義務付けられていない。原判決はこのような各都道府県での運用をも無視したものである。
     (イ) 原判決は,②定額分の金額の算出経緯や根拠が不明であるとするが,この金額(事務費月額16万円(通信費5万円,消耗品費・印刷代その他3万円,その他事務諸費8万円)及び管内調査費8万円の合計24万円)は,細かく積算すれば実際にはこれらの額をはるかに超えるところ,予算上の制約から自制したもので,平成8年6月の議員総会において,これだけは最低限必要な額として共通認識が得られた金額である。
   (ウ) さらに,各費目の別については,研究費が費用弁償ではなく補助金(使途限定の贈与)の性質を持つことから,県政調査研究の目的で使用する限りその間の流用は問題とならず,その内訳もおおよその積算を示すに過ぎない。同年の県の予算においても,研究費の積算基礎は,「1人当たり月額33万円×53人×12か月」というものであって,人頭割で細かい費目ごとの限定もしていない。また,他県の例においては,精算自体を求めていないものもある。
     (エ) ③実績報告書と本件訂正書の数字に隔たりがあること,④特に資料購入費が本件訂正書において当初実績報告書記載の金額の5分の1程度に減少していることについては,次のとおりの事情によるものである。
       すなわち,平成9年当時,本件要領が年度途中である10月に改正され,各費目ごとの内訳(同項目で支出可能な経費と不可能な経費)が具体的に明記され,それ以前は,特定の経費をいずれの費目に分類するかは各会派の判断に委ねられていたものが,統一されることとなった。しかし,これに伴い,各議員の交付申請における費目分類を新要領に準拠したものに徹底させるには一定の時間を要し,年度途中の改正であったこともあって,同年度の費目分類については運用が一定しない状態となった(例えば,会議に使用する消耗品費を会議費と事務費のいずれに区分するのか,研究研修のための教材購入費を研究研修費と資料購入費のいずれに区分するのか等)。翌平成10年5月に,新団長(H)が就任し,本件要領改正前も含めて,平成9年分の費目分類を新要領に準拠して精査したところ,費目間の分類に不適切なものがあることが判明したことから,これを訂正して提出したのが,本件訂正書である。
       しかも,各議員が提出する研究費の交付申出書記載の費目は,平成8年8月の議員総会における申合せ施行以降,a)事務費(通信費,消耗品印刷費,その他),b)管内調査費,c)管外会議費,d)資料購入費,e)管外研究研修費,f)県外旅費,g)その他とされ,他方,本件要綱に基づく実績報告の費目は,ⅰ)会議費,ⅱ)研究研修費,ⅲ)資料購入費,ⅳ)事務費であって,両者は一致していないところ,H団長による上記の再計算の際には,交付申出書のc)管外会議費を,実績報告のⅰ)会議費に,同様にb)管内調査費,e)管外研究研修費,f)県外旅費及びg)その他を,ⅱ)研究研修費に,d)資料購入費をⅲ)資料購入費に,a)事務費をⅳ)事務費と対応させて積算されている。
       訂正前の実績報告書は,上記のような事情を受けて,過渡期にあって分類が定まらなかったことから,やむを得ず,次のような計算によって精算していたものと考えられる。
      ・会議費    3万円×12月×21人=756万円
      ・研究研修費 17万円×12月×21人=4284万円
      ・資料購入費  5万円×12月×21人=1260万円
      ・事務費    8万円×12月×21人=2016万円
       したがって,これらの金額の隔たり(混乱)にはやむを得ない事情があるというべきであり,これによって目的外支出を推認すべき事情には当たらない。むしろ,上記のような再計算・実績報告書の訂正といった経過をみれば,1審被告A議員団において,研究費は適正に管理されていたものというべきである。
   (オ) 上記のとおり,原判決の指摘する①ないし④はいずれも研究費の目的外使用を推認させる事情とは言えない。
       目的外使用を推認させる事情としては,例えば会派として一切研究費の管理がなされていない等の事情が必要というべきであるところ,1審被告A議員団は,平成8年6月の議員総会で研究費の支出の方針や内容を取り決め,適正使用についての共通認識の形成に努めてきており,団長及び経理責任者は,各議員から毎月提出される研究費の請求について,同申合せに従い,請求内容や項目等をチェックの上で支出していた。そして,その際,慶弔費,飲食遊興費,レクリエーション等雑費,後援会援助費等使途不相当と判断される場合には,研究費から排除することとなっていたほか,本来使途としては問題のない海外旅費もあえて対象から除外する等,他会派以上に厳格な運用を行っていたこと等からすると,本件では会派として研究費の管理が行われていなかったといった事情は認められないのであって,目的外使用を推認することはできず,精算の違法性は認められないというべきである。」
  (12) 同32頁13行目の「オ」を「キ」と改める。
  (13) 同32頁13行目と14行目の間に次のとおり付加する。
「(3) 1審被告Dの責任
ア 1審原告Bは,1審被告Dは研究費の交付申請には見積書及び内訳書等を,実績報告には領収書等をそれぞれ添付して行わせるべきである旨主張する。
       しかし,各会派の議員は,知事をはじめとする執行機関から独立して活動し,執行機関の干渉を受けることなく,県民の意思を条例の制定や予算の議決等を通じて県政に反映していく責務を負っているのであるから,各会派にその具体的な活動(調査,研修等)内容を明らかにするような領収書等の証票類の提出を求め,知事のチェックを受けさせることは,上記のような議員の執行機関から独立した活動に支障を生じるおそれがないとはいえない。したがって,かかる研究費の支出の在り方については,上記のような観点から一定の裁量が認められることは明らかである。
       そして,上記のところからすれば,議会各派の具体的活動が実績報告書等に記載のとおり行われたか否かは,同各派内部の検査体制の整備による規制に委ねるのが相当であって,本件当時,各会派において団長及び経理責任者による審査・検査体制が整備され,研究費が例えば議員個人の私的な海外旅行に費消された等の目的外使用を推認させる特段の事情も存在しなかったのであるから,本件の精算(確定)が違法とされる余地はなく,1審被告Dに,1審原告Bの主張するような故意又は過失も認められない。
     イ また,1審原告Bは,1審被告Dに,1審被告A議員団及び1審被告C連合に対する損害賠償請求等を怠る事実がある旨主張する。
       しかし,1審被告A議員団及び1審被告C連合は,三重県に対し,不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償債務を負わないことは,前記のとおりであるから,1審被告Dが同債務の履行請求を怠る事実も認められない。
       また,仮に同1審被告らが上記責任を負うとしても,前記ア記載のとおり,本件研究費について目的外使用を推認させるような特段の事情は存在しないから,1審被告Dに故意又は過失はなく,いずれにせよ,上記請求を違法に怠る事実は認められない。」
  (14) 同32頁14行目「(3) 被告らの責任」を「(4) 被告ら(1審被告Dを除く。)の責任」と改める。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所は,1審原告らの本件請求は,いずれも理由がないからこれを棄却すべきものと判断するが,その理由は,以下のとおり原判決を付加訂正するほか,原判決「第3 当裁判所の判断」の1ないし6に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,F,G,H,I及びJに係る部分を除く。)。
  (1) 原判決33頁4行目「権利能力」を「権利能力なき社団」と改める。
  (2) 同33頁15行目冒頭から21行目末尾までを次のとおり改める。
「しかるに,1審原告らは,当初,1審被告A議員団の本件研究費のうち資料購入費が著しく高額であるとして目的外支出の違法があると主張し,その後,事務費1869万5172円が目的外支出であると主張して,これらに相当する額の不当利得返還ないし損害賠償を求めているのであるが,ここにいう目的外支出とは,要するに県政に関する調査研究の推進に資することという研究費の交付目的以外の費目に支出することをいうのであって,その意味で,資料購入費も事務費も研究費の一費目であり,いわば損害ないし損失額の内訳を示すものに過ぎないと考えられる。また,怠る事実に係る不法行為又は債務不履行による損害賠償請求においても,実質は上記と同様に考えることができる。」
(3) 同34頁15行目末尾に行を改め,次のとおり付加する。
「なお,本件の対象となり得る財務会計上の行為又は怠る事実は,上記のうち概算交付後の確定に係るもののみであると解すべきことは,次項に記載のとおりである。
2 本件の財務会計上の行為又は怠る事実について
 ア 前記のとおり,1審原告らは,本訴において,1審被告Dに対し,1審被告A議員団及び1審被告C連合に対する各本件研究費交付に係る1審被告Dの①支出負担行為及び概算払による支出命令,並びに②精算(確定)(交付金額の確定及び概算払の精算)という2つの財務会計上の行為を当該行為としてその違法を主張する。
しかし,1審原告らが主張する上記各行為は,それぞれ独立した財務会計上の行為であって,それぞれが独立して監査請求の対象となると解すべきであるから(最高裁平成7年2月21日判決(判例時報1524号31頁)参照),支出負担行為に係る監査請求は,当該支出負担行為がなされた平成9年4月1日から,概算払による公金の支出命令に係る監査請求は,当該公金の各支出命令がされた日(平成9年4月16日,同年7月1日,同年10月7日及び平成10年1月7日)からそれぞれ1年を経過したときはこれをすることができないと解するのが相当である。ところで,前記のとおり,1審原告らによる第1回監査請求(平成10年10月6日)及び第2回監査請求(同年11月20日)は,いずれも1審被告A議員団及び1審被告C連合による本件研究費の不適正な支出に係る違法・不当をいうものであって,当該行為としては,1審被告Dが概算払により交付した本件研究費の精算(確定)(上記②)したことを対象とするものである。そして,本件に関し上記以外の監査請求はなされていないのであるから,結局,1審原告らの主張のうち,①上記支出負担行為及び各支出命令については,監査請求を経ていないことになる。
したがって,本件において財務会計上の行為として対象となり得るのは,②研究費の精算(確定)に係るもののみであって,①支出負担行為及び各支出命令の違法をいう部分については,その余の点について判断するまでもなく失当というべきである。
イ なお,1審原告らが上記②精算(確定)に係る1審被告Dの財務会計上の行為として主張するところは,必ずしもその趣旨が明らかでない部分があるが,実質的には以下のとおりの趣旨をいうものと解される。
補助金交付規則(乙12)によれば,補助金(本件では研究費)等が概算払によってされた場合について,知事は,補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において,既にその額を超える補助金等が交付されているときは,期限を定めて,その返還を命ずるものとされている(17条2項)。また,知事は,補助事業者等が同規則の定めに違反して補助金等を他の用途に使用したとき等は,補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができ(補助金等の確定があった後においても同様。16条1項2号,同条3項),その取消に係る部分に関し既に補助金等が交付されているときは,期限を定めて,その返還を命ずるものとするとされている(17条1項)。概算払された資金は,その交付の時点で公金から私金に移行し,概算払を受けた者が既にこれを保有しているのであるから,1審原告らの主張するような目的外支出があり知事がこれを看過して概算額と同額の研究費を確定したという場合には,上記の規定に従い知事は改めてその返還を命ずべきこととなるのである。このように考えると,確定自体は,新たな支出に係る行為でないことはもちろんであるが,審査の結果研究費として交付すべき金額を確定したという以上に,積極的に確定額以外の研究費の返還義務を免除し,それによって三重県に同額の損害を生じさせたものとまで認めることは困難と言わざるを得ない。したがって,上記損害は,知事が概算額と同額という過大な研究費の金額を確定して返還を求めないことによって生じるものと解すべきであって,上記確定に係る違法の主張も,すなわち研究費を過大に確定しその返還を求めないということが違法に公金の賦課を怠る事実であると主張するものであると解するほかない。
1審原告らは,1審被告Dの精算(確定)に係る財務会計上の行為を当該行為として主張している以上,これに基づく主張はそれ自体として失当と解すべき余地もないではない。しかし,本件においては,このような齟齬は,主として概算払及びこれに伴う精算手続全体を一つの財務会計上の行為と考えるか否かに由来するものであるから,本件では以下1審原告らの主張を上記のとおり理解した上で検討することとする。
ウ 以上述べたところは,1審原告らが,1審被告A議員団及び1審被告C連合に対し,1審被告Dの当該行為の相手方として不当利得返還を求める部分についても該当することになる。」
(4) 同34頁16行目の「2」を「3」と改める。
 (5) 同34頁26行目の「被告H本人」を以下のとおり改める。
「乙117の1及び2,118の1及び2,122ないし124,129ないし138,149,151,157,158の1ないし244,167ないし170,183の1及び2,184の1及び2,原審における1審被告H本人,当審における証人K」
 (6) 同36頁13行目末尾に行を改め,次のとおり付加する。
「上記の作業は,前記申合せにしたがって,所属各議員から,「事務費」,「管内調査費」,「管外会議費」,「資料購入費」,「管外研究研修費」,「県外旅費」及び「その他」の別によって交付申出がなされ,経理担当者等によって確認されていたものを,本件改正要領別表の趣旨を踏まえて,①上記「管外会議費」を本件改正要領の定める「会議費」に,②「管内調査費」,「管外研究研修費」,「県外旅費」及び「その他」を「研究研修費」に,③「資料購入費」を「資料購入費」に,④「事務費」を「事務費」に,それぞれ対応させて再度計算し直したものである。」
 (7) 同36頁14行目冒頭から24行目末尾までを削除する。
 (8) 同36頁25行目の「(3) 次に,」を「(2) そこで,」と改め,26行目冒頭に「ア」を付加する。
 (9) 同37頁14行目冒頭から38頁14行目末尾までを次のとおり改める。
「この点につき,1審原告らは,領収書の添付を不要として精算(確定)を行うことは,知事による研究費の使途に関するチェックを実質的に省略するのと同じであり,民主的基礎を失わせるものとして違法である旨主張するが,研究費についての精算(確定)の在り方については,上記(引用に係る原判決)のような観点から知事に一定の裁量が認められると解すべきであって,1審原告らの指摘するところは,上記判断を左右しない。
他方,1審被告A議員団は,この点について,①研究費は,使途を限定した金銭の贈与であり,実費弁償とは異なるから,精算の在り方は各会派の自由裁量に属すると解すべきであって,本件精算(確定)は違法とは言えない,②上記は,平成9年当時,研究費に係る領収書の保存について何らの義務も定められていなかったにもかかわらず,実質的にこれを課し,過重な立証責任を負わせるものであって,公平な判断基準とは言えない,③三重県の1審被告A議員団に対する不当利得返還請求権の有無(目的外支出の有無)という観点を超えて,精算義務の内容について審理判断することは違法であるなどと主張する。
しかし,上記①については,概算払は,債務の金額が確定した段階で精算手続を行うことを本質とするものであり,また,概算払によって交付された研究費について翌年度の4月30日までに精算すべきこと及び研究費は各会派に交付するものであり各議員に対して交付するものではないことは本件要綱上も明記されているところである。ここに言う精算は,会派として支出した研究費を事後に審査し,研究費の目的に適合したものを積算の上金額を確定し清算することを内容とするものであることは明らかであるから,そのために必要な手続が整備されるべきことは当然であって,その在り方がすべて各会派の自由裁量に委ねられるべきであるとする1審被告A議員団の主張は失当と言わざるを得ない。
また,上記基準は,各会派の代表者と経理責任者により適正に審査及び実績報告書の作成が行われている限りは,領収書等の添付を要しないことを許容するものであり,他に目的外に使用されていることをうかがわせる一般的,外形的な事情がない限りは,本来の目的に使用されたことを推認できるとするものである。したがって,1審被告A議員団としては,上記のとおり,基本的に適正な審査及び実績報告書の作成が行われていたことを主張・立証すれば足りるのであり,また一般的,外形的にこれが目的外に使用されていることをうかがわせるような事情が認められた場合には,上記の審査の過程においてこれを精査し,疑義を払拭した上で精算が行われていることが通常であると考えられるから,そのような適正な審査が行われているのであれば,その過程を明らかにすることによって,もはやそのような事情は,「目的外に使用されていることをうかがわせる一般的,外形的な事情」に該当しないことを主張・立証することができる筋合いである。そのような主張立証が行い得ない場合には,もはや上記のような趣旨における自律的かつ適切な精算が行われたものと認めることはできないから,領収書等の提示によって直接その支出目的の適正を明らかにするほかないのはむしろ当然であって,上記基準は無条件に領収書の保存義務を課すものとは到底言えないし,1審被告A議員団に過重な負担を強いるものでもないことは明らかである。
1審被告A議員団の上記③の主張は,必ずしもその趣旨が明らかではないが,1審被告Dの精算(確定)に係る行為の違法が問題となる以上,本件の審理が,1審被告A議員団の三重県に対する不当利得返還請求権の有無に限られないことは当然である。
イ 前記認定事実によれば,1審被告A議員団においては,三重県から概算交付を受ける研究費につき,議員1人について,1か月当たり,事務費として16万円(調査研究に要する通信費を月額5万円,消耗品・印刷代その他を月額3万円,その他事務諸費を月額8万円),管内(選挙区内)調査費として8万円の合計24万円とし,管外会議費,資料購入費,管外研究研修費,県外旅費は必要に応じて実績に基づき,各議員が団長あてに請求する旨の申合せがあり,これによって,団長は,概算交付を受けた研究費につき,定額分24万円については領収書等を徴求することなく各議員に交付していたことが認められる。上記については,①団長が領収書等を徴求せずに1審被告A議員団の各議員に交付する研究費が月額24万円にのぼり,そのうち事務費名目が月額16万円と,一般に「事務費」が意味するところからすると相当程度高額といわざるを得ないこと,及び②当初1審被告A議員団が提出し,三重県知事により精算(確定)を受ける前提となった実績報告書と本件訂正書とでは,その費目の数字に大きな隔たりがあること(特に,当初1審原告らが目的外支出の違法があると指摘していた資料購入費の額が5分の1程度に減少したこと)が認められ,これらの事情は,1審被告A議員団において,①については,定額部分が事務費として通常要すべき費用として過大とは言えない理由や根拠,同金額の算出の経緯等,また②については,上記のような大きな隔たりが生じることとなった合理的な理由(経緯)等を主張・立証しない限り,「目的外に使用されていることをうかがわせる一般的,外形的な事情」に当たるというべきである。
そこで検討すると,まず①については,上記各金額の具体的な算出経緯や明確な根拠を認めるに足りる客観的な証拠は存在しないと言わざるを得ず,それ自体は決して望ましいことではない。しかしながら,証拠(乙151,原審における1審被告H本人,当審証人K)によれば,上記金額を定めるに当たっては,各所属議員に対して個別アンケート等まではなされていないものの,当時日常的に開催されていた1審被告A議員団の議員総会において,各自,従前の研究費の請求実績から概ね把握している自らの選挙区の特殊性(広狭や交通の便による旅費・ガソリン代等の需要や,都市部で高額となる事務所等の維持経費や人件費等)及びこれを踏まえて恒常的に必要となる経費の概算額等を勘案しながら,意見を述べ,協議の上,各議員の最大公約数を採るという形で定められたことが認められる。そして,前記申合せによれば,事務費(その他事務諸費)には,各議員が県政調査に資するものとして事務職員を雇用した場合の同職員の賃金も含まれるところ,平成9年度における全国規模のアンケート調査(乙117の1,2)に照らしても,秘書等を雇用している議員はほぼ7割に達しており,2名以上を雇用している者も2割以上に上っていること,その全てが県政調査を目的とするものとは言えないとしても,その雇用に要する費用は相当額に上ると考えられること,平成14年度の政務調査費の実績(乙184の1,2。所属議員個人分の政務調査費の支出状況をとりまとめたもの。)を見ても,人件費として議員1人当たり年額50万7529円(1か月約4万2000円以上)が計上されていること(この金額については,三重県政務調査費の交付に関する条例(乙132)及び同交付に関する規程(乙133)によれば,各年度ごとに各議員による収支報告と証拠書類等の保存が義務付けられているから,人件費に係る最低限の実額として基本的に信用できるものと考えられる。),議員に係る政務調査費の額は月額18万円と定められていることから,人件費自体については実際の支出額より相当低額に抑えられているものと考えられること等を総合考慮すると,事務費(16万円),特にその他事務諸費として定められた金額(8万円)を,一概に高額と言うことはできないというべきである。
また,②(当初1審被告A議員団が提出し,三重県知事により精算(確定)を受ける前提となった実績報告書と本件訂正書との間で各費目の数字に大きな隔たりがあること)については,確かに,当初の実績報告書及び精算書記載の金額は,その金額からして,会議費は1人当たり月額3万円,研究研修費は同17万円,資料購入費は同5万円,事務費は同8万円として,所属議員数である21を乗じて,12か月分を算出した金額であることが強く推認され,かかる処理自体は,実績報告や精算の意味をまったく理解しない極めて杜撰な処理であって,実質的には実績報告書の作成とも精算とも認められないものと言わざるを得ない。しかしながら,前掲各証拠によれば,これは,前示のとおり,もともと本件申合せの定めにしたがって各議員から交付申出がされる費目の別と,本件要領の定める経費の費目とが必ずしも整合していなかった上,平成9年度の年度途中である同年10月に本件改正要領が定められ,新たに従来本件要領が定めていた各経費費目の使途の内容についてこれを振り分ける基準が示されたことから,各議員が交付請求をする際の費目の振り分けにも,またこれを前提とした経理担当者の費目分類・精算にも混乱を生じ,窮余の策として本件改正要領に基づく各費目の振り分けごとに最低限この程度の金額は使用したと考えられる金額を算出して行われたものと認められる。もとより,このような処理が許されるものでないことは言うまでもないが,乙66の1ないし同77の14をみれば,各議員からの交付請求や費目分類以外の点に係る実質的な審査自体は,例年どおり行われており,瑕疵は当初の実績報告書の作成のための最後のとりまとめの点にのみ存在したものであることが認められ,最終的な同年度の実績報告書及び精算は,後に,上記のとおり収集,管理されていた各議員提出の交付請求書をもとに,前示のとおりの費目間の対応関係を定めて再計算がされ,本件訂正書が作成されていることは前記認定のとおりである。そして,上記のところからすれば,実績報告書と本件訂正書との数値の隔たりは,同年度に係る1審被告A議員団の研究費の支出管理の在り方自体が杜撰であったことを示すものではないというべきであり,実績報告書の記載自体も同年度の交付請求書等をもとにして既に訂正されていることからすると,上記金額の隔たり自体が,直ちに本件研究費が目的外に使用されていることをうかがわせる一般的,外形的な事情に当たるとは言えないというべきである。
ウ 結局,上記①及び②の事実は,いずれも研究費の目的外支出をうかがわせる一般的,外形的事情に当たるということはできず,他にかかる事情が存在することをうかがわせるに足りる証拠もない。したがって,本件精算(確定)は適法になされ,研究費も本来の目的に使用されたものと推認されるというべきである。」
  (10) 同38頁15行目「3」を「4」と改める。
(11) 同40頁25行目冒頭から26行目末尾までを削除し,41頁1行目の「(3) 次に,」を「(2) そこで,」と改める。
(12) 同42頁5行目冒頭から44頁1行目末尾までを次のとおり改める。
「5 1審被告らの責任について
    上記のとおり,1審被告A議員団及び1審被告C連合に対する研究費の支出は,いずれも本来の目的に使用されたものと推認され,他にこれを覆すに足りる事情は認められないから,目的外支出があることを前提とする1審原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないことに帰する。」
 2 よって,これと結論を異にする原判決を変更することとして,主文のとおり判決する。
       名古屋高等裁判所民事第3部

          裁判長裁判官   青   山   邦   夫


             裁判官   田   邊   浩   典


             裁判官   手   嶋   あ さ み