hanrei @Wiki H17. 9.26 仙台地方裁判所 平成17年(わ)第71号,第146号,第188号 強盗殺人等被告事件



更新履歴

取得中です。


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

強盗殺人,死体遺棄,住居侵入,強盗,窃盗の共犯事件において,強盗殺人の殺害の実行行為を行わなかった被告人に,その事案の概要,被告人の関与の程度等を検討した上,無期懲役に処した事案


主       文
被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中140日をその刑に算入する。
理       由
(犯行に至る経緯)
 被告人は,本籍地の両親方に居住していた者であるが,会社の同僚としてAと知り合い,被告人が退職後も交友を続け,平成16年9月上旬ころ,Aと共に男性との交際を求めてドライブに出かけた際,Bと出会い,被告人とBは交際することになり,Aとの交友も続けていた。
 被告人は,消費者金融からした借金の返済期日がせまり,借金をしたことを両親に知られて叱られることを恐れ,仕事を辞めて遊びに来ていたBと共に,同年12月12日ころ被告人の自動車で家出した。被告人とBは所持金を持たずに家出したため,直ぐに生活費等に困り,同月13日から同月18日にかけて判示第1ないし第3の犯行に及び,ガソリン代,ホテル代,遊興費等に費消した。被告人とBは,同月19日に至り,ホテルを利用した窃盗やひったくりは逮捕される危険性が高いことから,Bの祖母方への強盗,被告人の両親方への窃盗を企図したが,結局,かねてから被告人やBに過大な借金の請求をしていたことからその態度に腹を立てており,現金を持っていると考えたAを殺害して金員を強取することとした。被告人は,携帯電話のメールを送信してAを誘い,同日午後9時30分ころ,Bの乗車した被告人の自動車にAを乗せ,宮城県a郡b町に向かった。
(罪となるべき事実)
 被告人は,Bと共謀の上
第1 平成16年12月13日午後8時ころ,仙台市太白区所在のホテルにおいて,被告人において,Cが所有又は管理の現金約6万1000円及び運転免許証1通ほか2点在中の財布1個(時価合計約5,000円相当)を窃取し
第2 同月18日午前1時45分ころ,前記ホテルにおいて,被告人において,Dが所有又は管理の現金約3万6000円及び運転免許証1通ほか25点在中の財布2個(時価合計約3万3800円相当)を窃取し
第3 同日午後3時25分ころ,同市若林区c町先路上において,Bにおいて,通行中のEが所有又は管理の現金約8,500円入りの財布1個ほか3点在中の手提げバッグ1個(時価合計約1万6500円相当)を窃取し
第4 A(当時23歳)を殺害して金品を強取しようと企て,同月19日午後10時40分ころから同日午後11時20分ころまでの間,宮城県a郡b町において,Bにおいて,Aに対し,所携の木製棒(直径約3.6センチメートル,長さ約50から60センチメートル)でその顔面を2回殴打し,その後仰向けに倒れたAの後頭部付近及び顔面を棒で多数回殴打し,よってそのころ,同所において,Aを頭部,顔面損傷により殺害し,A所有又は管理の現金約1万8000円入りの財布1個ほか37点在中の手提げバッグ1個及び鍵等5点(時価合計1万4820円相当)を強取した上,さらに同月20日午前0時30分ころ,同県石巻市所在のA方において,A所有又は管理の現金約7000円入りの巾着1個及び預金通帳1通ほか33点(時価合計5678円相当)を強取し
第5 同月19日午後11時20分ころ,前記場所において,Aの死体を同所南側斜面に投棄し,もって死体を遺棄し
第6 Bの祖母であるF(当時75歳)から金品を強取しようと企て,同月21日午後11時30分ころ,仙台市太白区所在のF方に,かねて解錠しておいた西側サッシ戸から侵入し,被告人において,就寝中のFの腰部に馬乗りになって押さえ付けて掛け布団を被せ,Bにおいて,タオルでその両足を縛った上,「金あるだろう,出せ,金はどこにあるんだ,言え。」などと怒鳴りながら,手拳でFの頭部を殴打し,包丁(刃体の長さ約16.7センチメートル)を突き付けるなどの暴行脅迫を加えてFの反抗を抑圧し,F所有の現金約3万円入りのがま口1個(時価約500円相当)を強取し
たものである。
(法令の適用)
 省略
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,いずれも交際相手である共犯者と共謀の上,被告人において,ホテルに誘い込んだ男性2名から2回にわたり現金合計約9万7000円,物品合計32点(時価合計約3万8800円相当)を窃取し(判示第1,第2),共犯者において通行人から現金約8500円,物品5点(時価合計約1万6500円相当)を窃取し(判示第3),被害者を殺害して金品を強奪する計画を立てた上,共犯者において木製棒で,被害者の顔面,頭部を多数回殴打して殺害し,殺害現場及び被害者方居宅から現金合計約2万5000円,物品合計79点(時価合計約2万498円相当)を強取し(判示第4),被害者の死体を遺棄し(判示第5),被告人及び共犯者において,共犯者の祖母方に侵入した上,包丁を突き付けるなどの暴行脅迫を加えて祖母から現金約3万円入りのがま口1個(時価約500円相当)を強取した(判示第6)という窃盗,強盗殺人,死体遺棄,住居侵入,強盗の事案である。
 被告人は,会社を退職後仕事に就かず,実家で無為徒食の生活を送り,消費者金融会社からの借金が両親に知られることを恐れて家出をし,共犯者と共に自動車内やホテルを転々とし,生活費,遊興費に困るや次々と本件各犯行を犯したもので,本件各犯行の動機は,短絡的かつ身勝手というほかなく,厳しく非難されなければならない。とりわけ,強盗殺人においては,遊興費等欲しさのために被害者を殺害するというもので,人命軽視の態度は甚だしく,その非難の程度には極めて大きいものがある。
 また,被告人は生活費等に困っているが,これは,共犯者との遊興生活を重視し,自己の欲求のままに行動するという被告人の自堕落な生活態度に起因するもので,酌量すべき点はなく,強盗殺人において被害者を選んだのは,被害者から被告人及び共犯者がした借金について過大に請求され,これを恨み,また,被害者を妬んだからであるが,元々過大に請求されたのは,被害者から借金していながら,いっこうに返済しなかったからで,被告人らの方に非があるのであり,本件各犯行に至る経緯についても酌量の余地はない。
 強盗殺人,死体遺棄の犯行については,被告人らは,通行の少ない本件場所を選定して,ドライブに誘う振りをして被害者を呼び出し,被害者殺害後はその居宅にも赴いて金銭を奪うことを企図しているのであって,犯行は極めて計画的である。さらに,当初より被害者を殺害することとし,共犯者において,顔面や頭部を硬質の木製棒で,被害者が頭蓋骨粉砕,脳挫傷,顔面の骨片化して粉砕するまで渾身の力で多数回にわたり繰り返し殴って殺害したもので,殺意は確定的かつ強固であり,その殺害状況は極めて残酷,凄惨である。被害者殺害後は,その居宅に赴いて金品をあさり,現金の他,換金性の高いものを持ち出して処分しているのであり,被害者を殺害したことに対する動揺すら見られず,また,下半身裸にし,死体を厳寒の海沿い斜面に投棄し,約1か月間放置して,腐敗するに任せたことも,被害者に対する一遍の畏敬もなく,冷酷といわざるを得ない。
 被告人らは,23歳の女性の生命というかけがえのないものを奪っており,その一事をもっても結果は極めて重大である。しかも,被害者は,被告人にドライブに誘われたと信じて被告人らと外出したのに,突如共犯者から暴行を受け,顔が判別できないほどに,繰り返し頭部,顔面を殴打され,友人と信じてきた被告人に助けを求めても,これを無視され,無念にもわずか23歳の若さでこの世を去ったのであり,死に至るまでの相当の時間を,被害者が感じたであろう精神的,肉体的苦痛は想像を絶するものがある。
 したがって,遺族の受けた精神的損害もきわめて甚大である。被害者は耳に障害を持ちながら自立した生活を送り,明るい性格から遺族においても,その将来に期待を寄せていたにもかかわらず,突如行方不明となり,約1か月後凄惨な姿となって対面することになったのであり,遺族の受けた苦しみ,悲しみは計り知れず,被害者の両親を初めとして遺族が被告人らに対して極刑を望むなど,峻烈な処罰感情を有するのは当然である。
 窃盗の犯行の態様を見ると,判示第1,第2においては,テレクラ等を利用して,買春をしようとしている男性に狙いをつけて誘い,入室後も自由に退出できるホテルをあらかじめ選定し,男性が浴室に入って裸になった隙に窃取し,付近で待っている共犯者とともに自動車で逃走するという計画的な犯行であり,犯情悪質である。また,被害金額も13万円余りと大きい。判示第3の犯行は通行中の被害者に対し,自転車に乗ってバッグを引っ張ったもので,被害者が転倒し傷害を負う可能性のある危険な犯行である。その被害金額も少なくないばかりか,被告人からはいずれの犯行についても慰謝及び被害回復の措置は何ら講ぜられていない。
 住居侵入,強盗の犯行においても,被告人らは,あらかじめ,共犯者の祖母宅のサッシを解錠をするなどの周到な準備をして,夜間に侵入し,被告人において,祖母の腰部に馬乗りになり,共犯者において,祖母を脅迫し,手拳で頭部を殴打し,包丁を突き付けるなど強度の暴行・脅迫をしたというのであるから,その態様は危険かつ悪質である。そして,奪った現金も約3万円と少なくないばかりか,世話をした孫から恩を仇で返す様な仕打ちを受けた祖母の心痛も極めて大きい。
 次に,被告人の本件で果たした役割を検討する。
 強盗殺人,死体遺棄においては,被告人は,当初は,共犯者と相談して,被告人の両親あるいは共犯者の祖母から現金を奪おうと考えたが,その後,共犯者から「一人暮らししている奴いないのか。」と言われて,被害者を名指しして被害者に対する犯行のきっかけを作り,最終的には,共犯者から「お前次第だ。お前がやるって決めたんだったら俺は殺すよ。」と言われて被害者の殺害を決意している。謀議においても,被告人は,共犯者に対し,人が来ないし,死体を崖から落とせる場所として本件犯行現場を殺害場所に選んで提案し,共犯者が凶器として使用することにした木製棒が犯行に適しているかを確認し,殺害後被害者方アパートを物色することを提案するなど積極的である。また,被告人は,携帯電話のメールを送信して被害者を誘いだし,被告人運転の自動車に被害者を乗車させて,被害者方アパートから犯行現場まで被害者を運び,犯行現場に到着後,被害者を車外に誘い出し,被害者に近づく共犯者に被害者に気付かれないで行くよう合図している。さらに,被害者が共犯者に殴打されて,被告人に助けを求めているのに,被告人は,被害者を助けもせず,冷徹にも,現場に落ちていた被害者のバッグを拾って車内で物色して,現金を抜き取り,被害者の死体がある現場で被害者方アパートの鍵を探し,被害者方アパートでの物色にも積極的に参加している。
 判示第1,第2の窃盗においては,犯行を実行して,主要な役割を果たし,共犯者の祖母方への強盗においては,祖母方侵入の準備及び祖母を押さえつける暴行をなしており,不可欠の役割を果たしている。
 加えて,本件各犯行で得た現金については,共犯者とほぼ折半しているのであり,これらの事情からすれば,被告人が本件各犯行で果たした役割は,共犯者に比較して著しく軽いということはできない。
 以上検討してきたとおり,強盗殺人罪の刑が極めて重いところ,本件においては,動機,経緯に酌量すべき点がないこと,計画的な犯行で被害者に落ち度はないこと,犯行自体,助けを求め,許しを請う被害者の顔面,頭部を木製棒で多数回殴打するという凄惨な態様のものであること,死体を遺棄し,さらに被害者方に盗取行為に及んでいることからすれば,この種事犯の中でも重い部類に属するというべきであり,強盗殺人の犯行後に共犯者の祖母方への強盗に及ぶなどしており,本件各犯行で被告人は相当の役割を果たしていることからすれば,被告人の刑事責任には極めて重いものがある。
 もっとも,殺害された被害者が1名であること,被告人は,共犯者に対する恋愛感情から共犯者の誘いに応じて本件各犯行を決意し,実行している側面は否定できないこと,被告人が事実を認め反省の態度を示しており,被害者への償いをする意思を有するに至っていること,被告人の父親が情状証人として出廷し,被告人の社会復帰後の同居と監督を誓っていること,被告人に前科がなく,未だ若年で更生の余地があるといえることなど,被告人に斟酌すべき事情も認められる。
 しかしながら,これらを最大限に考慮してもなお,被告人の刑責には,その生涯をかけて償いをすべき重さがあるというべきであり,情状によって刑を減軽するのは相当ではなく,被告人を無期懲役に処するのが相当であると判断した。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 無期懲役)
平成17年9月26日
仙台地方裁判所第1刑事部
   裁判長裁判官   卯木   誠
      裁判官   鈴木 信 行
      裁判官   大木 美結己