hanrei @Wiki H17.11.18 甲府地方裁判所 平成17年(ワ)第30号 境界確定等請求



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境界確定訴訟の一事例


主   文
1 別紙物件目録1記載の土地とその南側の被告昭和町所有道路(一級町道3号線)との境界線を別紙図面のA(イ),セ,ウ,エ,オ,C(カ),キ,ケ,E(コ)の各点を順に直線で結んだ線と確定する。
2 別紙物件目録1記載の土地と同目録2記載の土地の境界線を別紙図面のE(コ),F(サ)の2点を結んだ直線と確定する。
3 原告のそのほかの請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は原告の負担とする。
事実および理由
第1 申立て
 1 原告
 ア 別紙物件目録1記載の土地とその南側の被告昭和町所有道路(一級町道3号線)との境界線を別紙図面のイ,セ,ウ,エ,オ,カ,キ,ケ,コ,シの各点を順に直線で結んだ線と確定する。
 イ 別紙物件目録1記載の土地と同目録2記載の土地の境界線を別紙図面のシ,スの2点を結んだ直線と確定する。
 ウ 被告昭和町は原告に対し1000万円とこれに対する平成17年3月17日から支払いずみまで年5%の割合による金員を支払え。

 2 被告昭和町
別紙物件目録1記載の土地とその南側の被告昭和町所有道路(一級町道3号線)との境界線を別紙図面のA(イ),セ,B,ウ,エ,オ,C(カ),キ,ケ,Dの各点を順に直線で結んだ線と確定する。

 3 被告Y
 原告の被告Yに対する訴えを却下する。

第2 事案の概要
 1 争いのない事実
 (1) 別紙物件目録1記載の土地(以下「本件土地1」という)は原告の所有,同目録2記載の土地(以下「本件土地2」という)は被告Yの所有である。その位置関係は別紙図面のとおりである。これらの土地の南側に隣接する道路は被告昭和町の所有する町道(一級町道3号線)である。

 (2) 原告はもと大工で二級建築士の資格をもっている。

 (3) 原告は昭和44年6月1日,Zから本件土地1を買った。Zが所有者であった当時,本件土地1は水田であったが,原告は,昭和43年12月23日,山梨県知事から農地法5条の規定による所有権移転・使用目的変更の許可を受け,そのうえで本件土地1を購入したのであった。

 (4) 本件土地1,2周辺は,昭和56年頃に地籍調査の手続が行われ,昭和58年3月22日,その成果について県知事により認証がされた。この成果である地籍図(これは登記所に備えつけられて不動産登記法14条1項の地図とされている。以下これを「本件地図」という)を見ると,本件土地1と本件土地2の間には南側の町道に接続する町道が存在するような記載となっている(甲6)。

 2 原告の主張
 (1) 境界確定請求
 Zから本件土地1を購入した際,原告はZに境界を確認してもらった。その当時本件土地1の東側には幅5尺の農道状の道があった。これは,原告が購入する2~3年前に,本件土地1の北方の水路のさらに北側に畑をもっていたPがZの許可を得て本件土地1の中に作った私道である。Zは「うちもPさんからじょう口を借りているので,Pさんを通してやってくれ」と原告に頼んだ。この道はPとその親戚しか使っていなかった。
 ところが,被告昭和町は,外見上道路に見えた本件土地1の一部を勝手に道路として本件地図を作成した。また,被告Yに対しても,原告の承諾なく,勝手に境界を指示した。この結果,本来本件土地1と本件土地2は本来別紙図面のシ,スの2点を結ぶ直線を境界として接していたのに,あたかもその間に町道が存在するかのような状態となってしまっている。そこで,原告は,本来の境界であるシ,スの2点を結んだ直線を前提として,被告昭和町との間では,
本件土地1とその南側の町道との境界線を別紙図面のイ,セ,ウ,エ,オ,カ,キ,ケ,コ,シの各点を順に直線で結んだ線と確定すること
を,被告Yとの間では,
本件土地1と本件土地2の境界線を別紙図面のシ,スの2点を結んだ直線と確定すること
を求める。

 (2) 国家賠償請求
 原告は昭和47年,本件土地1に自宅を建てるために被告昭和町に建築確認の申請をしたが,被告昭和町は申請を受け付けず,「本件土地1の東側通路状部分とその法面を被告昭和町に提供すれば,家を建てられるようにしてやる」と原告に対して述べた。原告が土地を提供しなかったため,建築確認を受け付けてもらえず,本件土地1に建物を建てることはできなかった。原告は,昭和48年,昭和49年,昭和52年にも建築確認を申請したが,やはり被告昭和町は確認申請を受け付けなかった。そのため,本件土地1は放置したままになり,原告は現在までこれを利用することができない。このように,被告昭和町は,原告に対し,土地を道路として提供すれば建物を建てられるようにしてやるが,そうでなければ建築の話には応じられないから,土地
を提供しろと脅迫していた。そして被告昭和町はZをだまして原告に不利な誓約書を書かせ,都合が悪くなるとそれを撤回した。
 被告昭和町は誤った本件地図を作成し,また,被告Yに対して根拠のない境界を指示して建物を建てさせ,境界を不明確にした。原告は,これを訂正するため,(通路部分について国が所有権を主張していると考えて)国を相手として訴えを提起したり(この訴えは取下げで終了している),本件訴えを提起しなければならなくなった。
 これらのことにより原告は長年悩み続け,著しい精神的損害を受けた。これを慰謝するには少なくとも1000万円の支払いが必要である。
 よって原告は被告昭和町に対し損害賠償として1000万円とこれに対する平成17年3月17日(訴状送達の日の翌日)から支払いずみまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払いを求める。

 3 被告昭和町の主張
 (1) 境界確定請求について
 昭和58年3月22日の国土調査の結果,本件地図のとおり,本件土地1と本件土地2の間に道路が新設された。これは,本件土地1の所有者であったZがその一部を道路として提供したものであり,分筆登記をしたうえで被告昭和町に寄付するのが本来のあり方であるが,昭和56年に地籍調査が実施された際,登記の手続を省略して,道路提供部分を町道としてとりあつかうこととした。
 ところが,原告は,平成14年3月20日,国を相手として訴えを提起し,この訴訟の中で山梨県,被告昭和町も事実上の利害関係人として参加し,同年9月26日の弁論準備手続期日において,地図訂正の合意が成立した。これをふまえ,同年10月25日,原告,被告Y,被告昭和町担当職員のほか,本件土地1の西側隣接地の地権者も立ち会って,別紙図面のD,E,F,G,Dの各点を順に直線で結んだ線で囲まれた土地(以下「本件通路部分」という)を被告昭和町所有の通路とすることで合意し,地図訂正図面を作成した。したがって,本件通路部分は被告昭和町の所有であり,本件土地1とその南側の町道との境界線は別紙図面のA(イ),セ,B,ウ,エ,オ,C(カ),キ,ケ,Dの各点を順に直線で結んだ線である。

 (2) 国家賠償請求について
 原告の主張する時期に原告が被告昭和町に対して建築確認申請をしたのか否かは知らない(被告昭和町に記録が残っていない)。かりに申請があったとしても,本件土地1は市街化調整区域内の土地であって既存宅地あつかいもできない土地であるから,建物を建設できない土地である。申請を受理しなかったのは当然であり違法はない。原告は二級建築士の資格をもっているのだから本件土地1が市街化調整区域内の土地であり都市計画法上の規制のある土地であることを熟知していたはずである。
 なお,被告昭和町の建築確認担当職員が,建築確認申請とまったく関係のない土地寄付問題とからめて申請を受け付けないなどということは考えられないことである。

 4 被告Yの主張
 被告昭和町の主張(1)(境界確定請求について)と同じである。したがって,本件土地1と本件土地2の間には被告昭和町所有地があり,本件土地1と本件土地2は隣接していないから,原告の被告Yに対する境界確定の訴えは不適法である。
 被告Yは,コンクリート壁(土台)のある別紙図面のE(コ),F(サ)の2点を結んだ直線を境界線と主張しているが,これはあくまでも本件土地2と本件通路部分との境界であり,本件土地1との境界ではない。

第3 当裁判所の判断
 1 本件通路部分は被告昭和町の所有か
 証拠(甲3,4,7)によれば,本件土地1と本件土地2はもともと東西に隣接していた土地であり,昭和56年頃に国土調査としての地籍調査が行われるまでその状態が維持されていたことが認められる。
 被告らは,昭和44年以前,その当時本件土地1の所有者であったZが本件通路部分を道路として提供したと主張するが,その証拠は不十分である。かりに,本件通路部分の現況がその時点で農地から道路に変わったという事実があったとしても,それだけでは本件通路部分の所有権がZから他者に移転したことの証拠にはならない。土地の利用形態とその所有形態は別だからである。したがって,地籍調査の時点においては,本件土地1と本件土地2は隣接していたと認められる。
 地籍調査の結果作成された本件地図においては,本件土地1と本件土地2の間に町道が存在するように見える。しかし,地籍調査の成果としての地籍図が実体的に土地の境界を確定する効力をもつものでないことはいうまでもないから,本件地図の記載のみを根拠にその境界が真実の境界であるということはできない。
 被告らは,平成14年9月26日と10月25日,原告と被告らの間で本件通路部分を被告昭和町の所有とするとの合意が成立したと主張する。しかし,平成14年9月26日の「合意」は,原告が国を相手として提起した訴えの中で,その訴訟進行に関する合意として成立したものにすぎず(乙1。なお当裁判所はこの訴訟の審理も担当しており,この事実は当裁判所に顕著である),合意の当事者も原告と国である。この「合意」を根拠として被告昭和町が本件通路部分の所有権を主張することはできない。平成14年10月25日の「合意」も,その内容は,「(原告が,本件土地1)を測量するにあたり,・・・・・・隣接所有者と立会いし,土地の筆界について異議なく確認されたものである」というものであり,筆界確認の立会いを証明するもの
にすぎない(乙2の1~3)。本件通路部分を被告昭和町に寄付するという趣旨のものでないことは明らかである。したがって,いずれの「合意」も,被告昭和町が本件通路部分の所有権を主張する根拠とはならない。
 以上の検討に加え,原告の主張,被告らの主張双方を勘案すると,本件通路部分は終始本件土地1に含まれた土地であり,この部分の所有権が他に移転したことはないと認めることができる。すなわち,本件土地1と本件土地2は現在もなお東西に隣接する土地である。

 2 境界確定請求について
 証拠(甲3,6,乙6,原告)と弁論の全趣旨により以下の事実を認める。
 ア 本件土地1と本件土地2の境界付近の現況は,本件地図と似ており,本件土地1と本件土地2の間には通路がある。この通路は原告が本件土地1を買ったときから存在する。
 イ 別紙図面のE(コ),F(サ)の2点を結んだ直線は,現況,コンクリートの基礎(土台)の縁となっている。
 ウ 原告は,現況の通路よりももう少し東側に境界があると認識しているが,被告Yは,現況の通路の東端(コンクリートの基礎の縁)が境界であると認識している。
 以上の事実に加え,平成14年9月26日に原告と国の間で,同年10月25日に原告と被告らの間で,上記のとおりの各「合意」が成立していること,別紙図面のE(コ),F(サ)の2点を結んだ直線は,旧公図の境界線とぴったりとは重ならないが,極端な差異があるともいえないこと(甲3)などの事情を総合的に考慮すると,本件土地1と本件土地2の境界は,別紙図面のE(コ),F(サ)の2点を結んだ直線であると認めることができる。
 これに対し,原告の主張,供述する境界線は根拠が不十分である。当裁判所は,原告が国を相手として提起した上記の訴訟の審理も担当し,その審理の過程で原告本人から事情を聴く機会があった。また,本件訴訟においても,原告に対しその主張を明確にするのに十分な機会を与えたし,本人尋問を採用してその供述をきいた。原告はいろいろと説明するが,要するに,自分が記憶している通路状の土地を前提にすると原告主張の境界線になるはずだというものにすぎない。しかし,まず,原告の記憶が正しいのかどうかを判断するための材料が不十分であり,原告の記憶をそのまま事実として認めることはできない。また,かりに原告の記憶が事実のとおりだとしても,それを前提とする境界線が正しいと認めるだけの材料が不十分である。原告の主張,
供述は採用できないというほかない。
 以上の検討に基づき,主文第1,第2項のとおり境界を確定する。

 3 国家賠償請求について
 原告の請求は,第1に,原告の主張する境界が正しいことを前提にしている。しかし,2で検討したとおり,原告の主張する境界が正しいとは認められないから,これを前提とする原告の主張は理由がない。1で検討したところによれば,本件土地1と本件土地2の境界付近の本件地図の表示は正しくないということができるが,地図の表示に誤りがあるというだけでは原告の土地所有権が侵害されたことにならない。原告には地図を訂正するための方策もある。本件地図の表示が正しくないということだけで原告が被告昭和町に対して損害賠償を請求することはできないし,ほかに,本件地図の表示に誤りがあることによって原告に損害が発生したと認めることもできない。
 原告は,第2に,建築確認申請を被告昭和町が受け付けなかったと主張する。しかし,まず,原告が建築確認申請をしたことを認めるだけの証拠がない。原告は申請をしたと供述するが,本人の供述だけでは不十分である。次に,証拠(乙3ないし5)と弁論の全趣旨によれば,本件土地1は市街化調整区域内の土地であり,かつ既存宅地としてあつかうこともできない土地であるから,建築物を建築することができない土地であることが認められる。そうであるとすれば,かりに原告が建築確認申請をし,これを被告昭和町が受理しなかったとしても,それだけでは被告昭和町の職員が違法に原告に損害を与えたということはできない。この点についての原告の主張にも理由がない。
 原告は,第3に,被告昭和町の職員が原告を脅迫して本件通路部分を提供させようとしたと主張するが,これを認めるだけの証拠もない。原告の供述によっても,そのような脅迫があったとは認められない。この原告の主張も理由がない。
 以上のとおり,どのような観点から検討しても原告の被告昭和町に対する損害賠償請求は理由がない。

   甲府地方裁判所民事部

 裁判官  倉地康弘

(別紙)物件目録(省略)