H17.10.27 東京簡易裁判所 平成17年(ハ)第2642号 損害賠償請求

判示事項の要旨:
交通事故による自動販売機の損壊に関し,当該自動販売機の損害額及び営業損害額が争われた事例(確定)



平成17年10月27日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成17年(ハ)第2642号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成17年10月6日
立ち会った司法委員
判         決
主         文
1 被告は,原告に対し,11万9367円及びこれに対する平成14年5月24日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを7分し,その6を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請   求
被告は,原告に対し,84万2614円及びこれに対する平成14年5月24日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 請求の原因 別紙請求の原因記載のとおり
2 争点
(1) 本件事故による自動販売機の損害額
(2) 本件事故による営業補償
(3) 弁護士費用
第3 当裁判所の判断
1 請求の原因1項(事故の発生)及び3項の(3)(諸経費)は被告も認めている。同2項(責任原因)について,被告は争うと主張するがそれ以上の具体的な内容について何ら主張しないから,原告の主張を認めたものとみなされる。
2 争点(1)(本件事故による自動販売機の損害額)について
原告は,自動販売機には,中古市場がない以上,被害者としては新品を購入せざるを得ないのであり,自動販売機の購入価額全額50万6000円をもって損害額と見るべきであると主張する。
そこで判断するに,事故による物の損傷による賠償の範囲は,損害時における損傷物の現実の価額,市場価額のあるものは,原則としてそのものの市場価額,市場価額のないものは購入時からの使用時間,使用方法,償却期間,そのもののモデルチェンジなどによる実際の使用期間等から個々具体的に割り出した価額をもって賠償の範囲とされるものであり,使用により時間の経過と共に老朽化,陳腐化し,その物の実際の価額が減少するのは当然のことであり,賠償の範囲は,減少したその物自体の現在の価額そのものである。
本件自動販売機は,平成5年10月,50万6000円で購入したものであり,減価償却資産である本件自動販売機の耐用年数は5年である(乙5)。本件事故は購入後約9年を経過しているから耐用年数を経過している。被告提出の見積書(乙2)によると帳簿残存価格は2万5787円であり,他方,乙第3号証の見積書において実用耐用年数10年として実質最終残存価額を定額法で購入額50万6000円の20%の10万1200円としていることを踏まえて,帳簿残存価格と実用耐用年数による価額の乖離を考慮,調整して,帳簿価格2万5787円を基本に実用耐用年数を基礎とした価額10万1200円と帳簿価格2万5787円との差額の中間にあたる50%を加算した価額[帳簿価格2万5787円十(実用耐用年数による残存価額10万1200円-帳簿価格2万5787円)×50%]=6万3494円(円未満四捨五入)をもって,損傷時の自動販売機の時価額とみるのが相当である。
3 争点(2)(本件事故による営業補償)について
本件事故による原告の既存自動販売機の営業損害は,損傷自動販売機を撤去し代替自動販売機を設置するまでの稼働できなかった期間の損害とみるべきである。
原告主張の根拠となっている甲第3号証,乙第2号証及び代替自動販売機の稼働が平成14年7月に入ってからという原告の主張を前提に自動販売機損傷による営業損害額を計算すると,乙第2号証によると,損傷自動販売機の事故前1年間の逸失利益(売上183ケース相当分)は12万3071円であり,これを基準にして営業損害を割り出すと,平成14年5月24日に本件自動販売機が損傷し,同年7月に入ってから代替自販機が稼働し始めたというのであるから,稼働開始が7月1日として,稼働しなかった期間は38日間であるから,その間の不稼働による営業損害は,12万3071円÷365日×38日=1万2813円(円未満四捨五入)となる。したがって,本件事故による営業損害は1万2813円を限度として認めるのが相当である。
4 争点(3)(弁護士費用)について
上記1ないし3から,原告は,本件事故による自動販売機の損害額として6万3494円,営業損害として1万2813円,諸経費2万6900円の合計金10万3207円,消費税を含めて10万8367円(円未満四捨五入)の損害を受けたと認められ,上記金額が被告の責めに帰すべき部分となり,これと相当因果関係にある弁護士費用額は1万1000円とするのが相当である。
5 そうすると,本件事故による原告の被告に対する賠償請求債権額は10万8367円及び弁護士費用1万1000円の合計11万9367円となる。
6 以上によれば,原告の請求は主文1項の限度で理由がある。
東京簡易裁判所民事第2室
裁 判 官 堀  田     隆







別紙
請 求 の 原 因
1 事故の発生
(1) 日 時 平成14年5月24日午前9時11分頃
(2) 場 所 東京都羽村市ab丁目c番d号先路上
(3) 当事者および車両
被告車 普通乗用自動車 運転者 被告
(4) 事故状況
上記日時場所において,被告運転の被告車が原告所有の飲料自動販売機に衝突し,これを損傷した。
2 責任原因
本件事故は,被告が,被告車を運転するに当たり,路上に置かれている自動販売機に衝突などすることなく注意して安全に進行すべき義務があるにもかかわらず,これを怠り,漫然と進行したために生じたものであり,被告には,安全運転義務違反が認められ,原告に対し,民法709条により損害賠償責任を負うものである。
3 損害
本件事故により原告に生じた損害は以下の通りである。
(1) 本件自動販売機購入額 50万6000円
本件自動販売機は,平成5年10月に50万6000円で購入したものであるが,本件事故により損傷し,使用が不可能になったことから,原告は,新たに自動販売機を購入することを余儀なくされた。これにより,原告には本件自動販売機購入費として,50万6000円の損害が生じた。
(2) 営業補償      17万4351円
本件事故により,本件自動販売機は,その耐用年数期間中であるにもかかわらず損傷し,引き続き本機による販売がなしえなくなったことから,その得べかりし収入金額が本件事故による損害となる。
金額的には,本機の1年あたりの平均販売実績は12万3071円であり(183ケース分),これに本機の本来の使用可能期間が1年5か月であることから,営業補償として認められるべき金額は,17万4351円となる。
(3) 諸経費        2万6900円
内訳は以下の通りである。
現地確認費      5000円
機材交換費    1万1800円
見積もり代      2200円
廃棄費用       2900円
事務手数料      5000円
(4) 合計額(消費税抜き)70万7251円
(5) 合計額(消費税込み)74万2614円
4 弁護士費用      10万円
上記損害内容に鑑み,本件における弁護士費用は10万円が相当であり,これにより損害額は合計84万2614円となる。
5 よって,原告は,被告に対し,民法709条の損害賠償請求金として,84万2614円及びこれに対する本件事故日である平成14年5月24日より完済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

以 上

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最終更新:2005年12月14日 17:26
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