H17.10.18 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第2251号2544号(通常手続移行) 損害賠償請求

平成17年10月18日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官
平成17年(少コ)第2251号損害賠償請求事件(通常手続移行-第1事件)
平成17年(少コ)第2544号損害賠償請求事件(通常手続移行-第2事件)
口頭弁論終結日 平成17年10月4日
判         決
主         文
1 第1事件被告は,第1事件原告に対し,12万1848円を支払え。
2 第2事件被告は,第2事件原告に対し,9868円及びこれに対する平成17年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 第1事件原告のその余の請求を棄却する。
4 第2事件原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,第1事件においては,これを10分し,その1を第1事件原告の負担とし,その余は第1事件被告の負担とし,第2事件においては,これを10分し,その9を第2事件原告の負担とし,その余は第2事件被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
(第1事件)
第1事件被告は,第1事件原告に対し,13万5387円を支払え。
(第2事件)
第2事件被告は,第2事件原告に対し,9万8689円及びこれに対する平成17年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
第1事件及び第2事件とも同一交通事故による損害賠償請求事件である。第1事件は,第2事件被告が運転していた自動車の所有者である第1事件原告が第1事件被告に対して,自動車の修理代を請求している事案であり,第2事件は,第1事件被告が運転していた原動機付自転車の所有者である第2事件原告が第2事件被告に対して,原動機付自転車の修理代を請求している事案である。
1 事故の発生(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)
(1) 日時  平成17年3月10日午後8時55分ころ
(2) 場所  東京都江東区A丁目B番C号先D道路上
(3) 事故車両,運転者及び所有者
普通乗用自動車(足立○○△○○○○,以下「本件自動車」という。),運転者第2事件被告,所有者第1事件原告
原動機付自転車(江戸川区△○○○○,以下「本件バイク」という。),運転者第1事件被告,所有者第2事件原告
(4) 事故現場の状況及び事故の態様
本件事故現場は,片側4車線であるD道路下り線E交差点手前の第1車線上であり,駐停車禁止場所である。周辺は,歩道に接してビルが立ち並んでいる(第1事件の甲2)。
第2事件被告は,本件自動車を駐車していたところ,第2車線を走行してきた第1事件被告が運転する本件バイクが,駐車中の本件自動車の後部右側に接触した事故である。
(5) 損害
ア 本件自動車の修理代13万5387円
イ 本件バイクの修理代9万8689円(第2事件の甲1)
2 第1事件原告及び第2事件被告の主張
(1) 本件事故は,第1事件被告の前方不注視及びハンドル操作の誤りに原因があるから,同人に事故発生の責任がある。 
(2) 第2事件被告は,本件事故当時,駐停車禁止場所である本件事故現場に,本件自動車を違法駐車したことは認める。
(3) 後記3(1)記載の事実のうち,本件バイクが第1車線上に違法駐車していた本件自動車と接触したことは認めるが,その余の事実は知らない。
3 第1事件被告及び第2事件原告の主張
(1) 第1事件被告は,本件バイクを運転して第2車線を法定速度内で走行中,同車線上を本件バイクの後方から走行して同バイクを追い抜いたタクシーが,第2車線上の前方に停車していた別のタクシーの列に並ぼうとして,突如,ハザードランプを点滅させると同時に,本件バイクの進路を遮り,左に寄って急停車したことから,本件バイクは,そのタクシーとの接触を避けるために,急ブレーキを掛けつつ,やむなくハンドルを左に切ったところ,第1車線上に違法駐車していた本件自動車と接触したものである。
(2) 第1事件被告の無過失
第2事件被告は,本件現場が駐停車禁止場所であるのに,これを無視して本件現場に本件自動車を駐車させたものであるが,同車がかかる場所に駐車していなければ,当然のことながら本件事故は回避されていたことからすると,同人の駐停車禁止違反の駐車と本件事故との間には相当因果関係があるから,同人には本件事故について過失がある。これに対し,第1事件被告は,本件バイクを法定速度以下で走行させ,交通法規を遵守して運転していたのであるから,同人にとって本件事故は不可避であって過失はない。
(3) 第1事件被告の正当防衛
第1事件被告は,本件バイクの背後から接近し,同バイクを追い抜くと同時に同バイクの進路を塞いで左にハンドルを切って停止したタクシーとの衝突を避けるために,急ブレーキを掛けつつ,ハンドルを左に切らざるを得なかったものである。そうすると,第1事件被告の行為は,タクシーとの衝突を避けるためにやむを得ず行った回避行為といえるから,その結果本件事故が起こったとしても,自己の権利を防衛するためにやむを得ず行われた正当防衛行為である。
第3 当裁判所の判断
1 本件事故現場において,第2事件被告が違法駐車していた本件自動車の後部右側に,第1事件被告が運転する本件バイクが接触したことは,当事者間に争いがない。その際,第2事件被告は,ハザードランプを点滅させるなどして,駐車中の本件自動車の存在を後続車両に認識させるべき措置を講じていなかったことが認められる(第1事件の甲5)。また,第1事件被告においても,本件事故現場の手前20から30メートル当たりで,第1車線に駐車車両があることを確認していたことが認められる(第1事件被告の供述)。そして,本件自動車には,本件事故により修理代として13万5387円の損害が発生したことは当事者間に争いがなく,本件バイクにも同様に修理代として9万8689円の損害が発生したことが認められる(第2事件の甲1)。
2 第1事件被告及び第2事件原告は,第2車線上を本件バイクの後方から走行してきたタクシーが同バイクを追い抜いた後,突如,同バイクの進路を遮り,左に寄って急停車したことから,第2事件被告は,そのタクシーとの接触を避けるために,急ブレーキを掛けつつ,やむなくハンドルを左に切ったものであると主張し,第1事件被告はこれに沿う供述をする。しかし,第2事件被告においては,事故後3,4分経過後に事故現場に戻っているから,事故当時の状況を全く見分していないし(第1事件被告の供述),他に第1事件被告の主張を推認するような証拠も見当たらないことからすると,第1事件被告の供述のみで同人の主張を認めることはできない。また,第1事件被告の供述から推認できる状況としては,同人が第2車線を走行中,前方に停車している別のタクシーの存在が確認できたとすると,タクシーが本件バイクの右側を追い抜いた際に,そのタクシーがまもなく停車することは十分予測できる事態であるから,減速するなどして,本件事故を回避するような措置を講ずることも可能であったと考えられる。そうすると,第1事件被告が事故を回避することができなかったと推測することもできない。
3 以上からすると,本件事故は,交通量の多い幹線道路であるため通行の安全を図る必要から,駐停車禁止区域として指定されているにもかかわらず,本件自動車を駐車させ,通行の妨害状態を作出した第2事件被告の過失と,第2車線を走行中,前方の安全確認義務を怠り,あるいはハンドル操作を誤った第1事件被告の過失により発生したものと考えるべきであり,双方の過失割合は,双方の過失を比較して第2事件被告が1割,第1事件被告が9割とするのが相当である。
4 したがって,第1事件原告の第1事件被告に対する請求は,本件自動車の修理代13万5387円の9割である12万1848円を請求する限度で理由があり,第2事件原告の第2事件被告に対する請求は,本件バイクの修理代9万8689円の1割の9868円及びこれに対する遅延損害金を請求する限度で理由がある。
東京簡易裁判所少額訴訟4係

裁 判 官  行 田   豊

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2005年12月14日 17:53
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。