hanrei @Wiki H17.10.13 神戸地方裁判所 平成17年(わ)第402号 住居侵入,強盗被告事件



更新履歴

取得中です。


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

判示事項の要旨:
犯人性


主         文
     被告人を懲役4年に処する。
理         由
(犯罪事実)
 被告人は,民家に押し入って金品を強取しようと企て,自称A,B,C,D及び氏名不詳者数名と共謀の上,平成15年12月9日午前3時ころ,兵庫県小野市a町b番地のc所在のE(当時53歳)方の無施錠の玄関から侵入し,そのころ,同人方1階寝室等において,就寝中の同人及び同人の内妻F(当時61歳)の目や口にガムテープを巻き付けた上,両手及び両足をロープ等で緊縛するなどの暴行を加え,さらに,「鍵,鍵,殺す。」などと言って脅迫し,その反抗を抑圧して,両名所有の現金約2018万円及び腕時計5個等約21点(物品時価合計163万円相当)を強取した。
(証拠の標目)
省略 
(補足説明)
1 弁護人は,被告人は本件犯行に関与したことは全くなく,本件犯行現場に赴いたことも全くなく,無罪であると主張し,被告人も,これに沿う供述をするので,当裁判所が,判示事実を認定した理由について,補足して説明する。
2 関係各証拠によれば,何者かが判示の犯行をしたことは明らかであり,そのような犯行があったことについては,特に争いがない。そうしたところ,本件犯行の共犯者であるBは,捜査段階及び公判において,自らの犯行関与を認めるとともに,被告人が本件犯行に加わっていたことを一貫して供述しており,その供述は,十分信用に値する。
3 Bの供述によれば,①Bは,Gという男(上記自称Aと同一人物)と行動を共にしていたが,共犯者であるDらを介して本件被害者の情報を仕入れ,Gから,本件強盗に際し,運転手をしないかと誘われてこれを了承した,②平成15年12月8日午後10時ころ,ブルーバードを運転して,Gとの待ち合わせ場所である大阪市d区内のe交差点付近に行き,同所でGを助手席に乗せ,さらに,近くの公園に行き,4名の中国人と合流し,ラルゴに乗り換えて犯行現場に向かったが,その中国人のうちの1人が被告人であった,③翌9日午前3時ころ,犯行現場付近で,Gが中国人らに指示し,G及び被告人を含む中国人5人が軍手をして被害者宅の方に行き,その後,1人の中国人がバールのようなものを取りに戻った,④Bは,ラルゴの車内で待機していると,中国人5人が戻ってきたので,車を発進させ,e付近の公園に戻り,中国人らと別れた,⑤同日午後2時ころ,再びGと会い,Gから,Bの分け前として400万円,Dらの分け前として500万円を受け取った,というのである。また,Bは,被告人を特定した経緯として,①被告人と会ったのは,本件犯行当日が初めてであったが,そのときの中国人4人の中に,あごひげを生やした男がいて,一番印象に残った,②その後,2回か3回,中国人グループの運転手として名古屋方面に行ったが,そのとき,被告人を見て,小野の事件(本件犯行)のときにいた男だとはっきり分かった,③そのとき,Bは,被告人から,「この前,あなた,いくらもらった。」と聞かれ,実際より少し少なめに答えたが,それでも被告人は,私の分け前が多いことに驚き,ぼやいていた,④また,名古屋に行った際,2回にわたって,被告人から,報酬として10万円,5万円をもらった,⑤逮捕された後,警察で,取調べ警察官から,複数の人物の顔写真が添付された面割台帳(甲61号証と同種のもの。)を示され,被告人の写真を見て,あごひげはなかったように思うが,小野市の事件のメンバーに間違いないと思った,などと述べ,また,公判廷において,実際に被告人を見て,小野市の事件にかかわったものとして見覚えがあると供述している。
4 Bの供述は,他の関係証拠から認められる本件犯行の状況と合致しているのは当然としても,本件犯行にかかわるようになった経過や,犯行当時の状況,その後の被告人を含む中国人グループ等とのかかわり等を含め,不自然,不合理な点は見受けられず,反対尋問にも揺るがず,当初から一貫している上,はっきりしないことはしないと述べるなど,しんしな供述態度が認められる。また,同人は,本件犯行に運転手や情報の仲介者として関与したことなどを正直に述べている上,Aについては,Gという人物として,本件犯行に誘われた経緯等から具体的に供述する一方,被告人については,上記のとおり被告人を特定していった経過を順を追って供述しているのであって,ことさら自己の刑責を軽減しようとしたり,他人に責任を転嫁させようとする姿勢は見受けられず,その信用性に疑いを入れるような事情はうかがえない。
  そして,Bは,犯行当日,街灯が設置された公園付近の路上で被告人と会い,その後,7時間以上にわたり,被告人と狭い自動車内で一緒に行動し,その際,被告人があごひげを生やしていたことで印象に残り,さらにその後も,少なくとも2回にわたり被告人と行動を共にし,その際,被告人から,本件犯行の報酬のことについて話しかけられたというのであって,このような経緯に照らすと,B供述における識別の信用性は高いというべきである。なお,上記甲61号証の写真10を見ると,その顔写真のあごの部分は濃い陰影になっているものの,写真5や写真19等に比較すると明らかなあごひげとまでは見えないが,Bは,公判廷において,弁護人の誤導ともいえるような執ような尋問に対しても,「警察官から見せられた写真はあごひげがなかったように思うが,同写真は,見た感じそのままであって間違いない。」と述べているのであって,その供述の信用性に問題があるとは考えられない。
5 他方,関係各証拠によれば,①Bは,本件犯行前後ころ,Aから,Hの建物(大阪市d区fg丁目h番i号所在)が,Aの友人のマンションであることを聞かされ,また,被告人らと名古屋方面に行った際,被告人がHに出入りするのを見たと述べているところ,Hのk号室は,被告人の妻Iが契約名義人となっていること,②Bは,Aの依頼により,上記Hにほど近い駐車場Jパーキング(同区fg丁目l番m号所在)の契約名義人となったが,同駐車場の駐車車両は,登録番号「なにわxxxKxxxxステーションワゴン(車名ニッサン)」となっているところ,被告人は,平成16年1月16日,大阪市内の病院で窃盗事件を敢行し,その後,上記車両(エルグランド)を無免許で運転して逮捕されていることが認められ(下記確定裁判),これらの事実は,上記Bの供述を客観的に裏付けているとともに,被告人の,本件犯行への関与を強く疑わせる事情である上,③被告人が使用していた携帯電話から,Aが使用していたと認められる携帯電話への通話が,本件犯行後の,平成16年1月13日に2回,同月14日に1回の少なくとも3回あったことからすると,被告人と,B供述によって本件共犯者とされるAとの間に,人的なつながりのあったことが容易に推認される。
6 以上のとおり,Bの供述は十分信用することができ,これに関係各証拠を総合すると,判示事実は,優に認めることができる。
7 これに対して,被告人は,本件犯行への関与を一切否定し,GあるいはAという男とは会ったこともなく,Bも,前回の法廷で初めて会った,Hというマンションの建物にも見覚えがない,などと供述しているが,上記の証拠関係に照らして信用することができない。
(確定裁判)
 省略
(法令の適用)
 被告人の判示の行為うち,住居侵入の点は刑法60条,130条前段に,強盗の点は同法60条,236条1項(刑の長期は,行為時においては,平成16年法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によることになるが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があっときに当たるから同法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)に該当するが,この住居侵入と強盗との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い強盗罪の刑で処断することとし,これは前記確定裁判があった各罪と同法45条後段の併合罪であるから,同法50条によりまだ確定裁判を経ていない判示罪について更に処断することとし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 本件は被告人が共犯者らと共謀の上,民家に侵入し,家人をガムテープやロープで緊縛するなどし,多額の現金,物品を強取したという侵入強盗の事案である。
 被告人らは,多額の現金を保有している資産家の情報を事前に入手し,下見をした上,家人の帰宅を確認し,ガムテープ,ロープやバール等の犯行道具を準備し,仲間を集めて本件犯行を敢行したもので,その犯行は極めて組織的,計画的なものであることがうかがえる。そして,家人らの寝静まった深夜に,数人で民家に押し入った上,いきなり家人らの顔にガムテープを巻き付け,両手両足をロープで縛るなどの手荒い暴行を加え,さらに,「殺す」などと強度の脅迫をしたもので,その犯行態様はまことに悪質である。また,本件犯行による被害も現金合計約2018万円,物品合計163万円相当と非常に多額に上っているところ,全く被害弁償もなされておらず,被害者の処罰感情も厳しい。
 さらに,上記Bの供述によれば,同人は,本件後も,被告人をリーダーとする中国人窃盗グループの運転手を何度か務めたというのであり,被告人の妻が,被告人らの窃盗グループの拠点と思われるマンションの名義人になっていること,実際にその後犯した窃盗で有罪判決を受けていることからすれば,被告人には,強窃盗事犯について常習性がうかがえ,他方,本件に関しては完全に否認しており,反省の態度は見受けられない。
 以上の事情に照らすと,被告人の刑事責任は重いというほかない。
 しかし,他方,本件は,上記確定裁判と併合罪の関係にあり,上記刑と併せて執行されることなどの事情を考慮し,酌量減軽した上,主文の刑を定めた。
(求刑 懲役6年)
  平成17年10月13日
    神戸地方裁判所第4刑事部
          裁判官  笹  野  明  義