hanrei @Wiki H17.11.28 東京簡易裁判所 平成17年(サ)第077212号 証拠保全申立



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平成17年(サ)第077212号 証拠保全申立事件

決        定
主        文
本件申立てを却下する。
理        由
1 申立人は,相手方が保管している平成17年8月31日の夕方5時から7時の時間帯に放送されたニュース番組○○○○(以下「本件番組」という。)のビデオテープ若しくはDVD等(以下「本件ビデオ等」という。)について検証することを申し立てた。
2 本件申立ての理由の要旨は,衆議院議員選挙期間中の本件番組において,○○解説者が発言した,(1) フランスの△△紙は,「自民党小泉氏は独裁的である」と述べており,自民党に対して批判的な論陣を張っている,(2) アメリカの××紙は,「郵政民営化と自民党を支持する」との異例の社説を発表したが,これはアメリカの金融界がジャパンマネーを狙っているからであるとの発言につき,(1)の点は虚偽であり,(2)の点は事実をかなりゆがめているものであるとして,放送法4条に規定する訂正放送を求める訴訟並びに参政権侵害による損害賠償請求(平成17年11月28日受付の補充書2頁)を予定しているところ,本件ビデオ等は放送法5条によりその保管義務は3か月とされているので本案訴訟の提起後の証拠調べでは間に合わないため,証拠保全の措置をとる必要性があるとするものである。
3 放送法4条1項は,「放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によって,その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から,放送のあった日から三箇月以内に請求があったときは,放送事業者は,遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して,その真実でないことが判明したときは,判明した日から二日以内に,その放送をした放送設備と同等の放送設備により,相当の方法で,訂正又は取消しの放送をしなければならない。」と規定している。
上記の規定は,放送事業者の放送により権利を侵害された者は,その放送のあった日から3か月以内にその放送事業者に対して訂正の放送をすることを求めることができることを規定したものと解するのが相当であるが,同条が予定している「権利の侵害を受けた本人」とは,一般的には実体法上保護を受けるに値する権利等の主体としての自然人等を意味し,「その直接関係人」とは,当該本人と直接的な利害関係を有している自然人等であると解せられる。申立人は,本件番組の一視聴者若しくは一有権者としての立場で本件番組に関わりを有するのみであり,このことは申立人も自認しているところであって,放送法4条1項が本来予定している「権利を侵害された者」にあたらないことは明らかである。
また,上記の規定は,仮に真実でない事項の放送がされた場合であっても,放送内容の真実性の保障及び他からの干渉を排除することによる表現の自由の確保の観点から,放送事業者に対し,自律的に訂正放送等を行うことを国民全体に対する公法上の義務として定めたものというべく(放送法1条,3条参照),放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人が,放送事業者に対し,放送法4条1項の規定に基づく訂正放送を求める私法上の権利を有しないというべきである(平成16年11月25日最高裁判所第一小法廷判決。判例時報1880号40頁参照)から,申立人が予定するところの本案訴訟においてもその請求の前提となる法的な基盤を欠くものというべきである。
  申立人が有利に援用する,海外居住者の投票制度に関する平成17年9月14日の最高裁判所大法廷判決(裁判所時報1396号1頁)は,本件とは事案を異にしており,本件には妥当しない。
4 ところで,証拠保全は,本案訴訟における証拠調べに先立って行われる手続であるから,本件申立のごとく,本案訴訟における請求が前述したとおり実体法上の基礎づけを欠いていて主張自体失当であることが明らかであり,証拠調べをしないことが客観的に明らかな場合には,証拠保全の必要性の要件を欠くものとして却下を免れない。
5 以上のところから,本件証拠保全の申立は理由がないからこれを却下することとし,主文のとおり決定する。
平成17年11月28日
東京簡易裁判所民事第8室
裁 判 官    安田弘光