hanrei @Wiki H17.12.22 東京地方裁判所 平成15年(ワ)第825号,第4024号,第12026号,第15208号,第16270号 損害賠償等請求事件



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 日本トータルネット株式会社からテレビ,文字放送受信表示器等を組み合わせたテレテキストビジョンシステムをクレジット又はリース契約を利用して購入した原告らが,クレジット又はリース料に見合う広告放映料が支払われ,無料又はほとんど費用を負担することなく同システムを取得できると勧誘されたために同システムを購入したのに,広告放映料が途中で支払われなくなったことから,同システムの販売が詐欺的商法であったなどとして,不法行為等に基づき,既払のクレジット又はリース料等から受領済みの広告放映料を差し引いた損害の賠償請求をした事案につき,同社(破産)の取締役又は販売代理店であった被告らに対する請求が一部認容された事例



平成17年12月22日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官
平成15年(ワ)第825号,第4024号,第12026号,第15208号,第16270号各損害賠償等請求事件
口頭弁論終結の日 平成17年7月21日
           判            決


    当    事    者     別紙当事者目録のとおり(※省略)
(以下,法人である当事者の会社の種類の表示を省略する。他の再掲会社名についても同様とする。)
           主            文
1 別紙認容額目録(※省略)記載の各被告は,同目録の対応する原告氏名欄記載の各原告に対し,同目録の金額欄記載の各金員(ただし,「¥0」と記載のものは除く。)及びこれに対する該当する別紙遅延損害金起算日目録(※省略)記載の日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 前項の各原告の各被告に対するその余の請求並びに別紙認容額目録の金額欄に「¥0」と記載されている各被告に対する同目録の対応する原告氏名欄記載の各原告らの請求及び原告らの被告大明通産に対する各請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,被告大明通産と原告らとの間では原告らの負担とし,その余の被告らと原告らとの間ではこれを2分し,その1を被告らの,その余を原告らの各負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
           事実及び理由
第1 請求
 別紙請求額目録(※省略)記載の各被告は,同目録の対応する原告氏名欄記載の各原告に対し,同目録の金額欄記載の各金員及びこれに対する別紙遅延損害金起算日目録記載の日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は,日本トータルネット株式会社(以下「トータルネット」という。)からテレビ,文字放送受信表示器等を組み合わせた後記のテレテキストビジョンシステムをクレジット契約又はリース契約を利用して購入した原告らが,トータルネットの取締役,販売代理店であった被告ら(ただし,被告大明通産については,トータルネットの承継者として)に対し,同システムの販売が詐欺的商法であるなどとして不法行為(被告大明通産に対しては選択的に債務不履行)に基づき既払のクレジット又はリース料等相当額の損害賠償及び訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求めた事案である。
 2 前提事実(当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨により認めることができる。)
  (1) 当事者等
 ア トータルネットは,平成7年7月に設立され(平成8年8月,株式会社コマースネットメディアから商号変更),電光掲示板の開発,組立て,販売,レンタル及びメンテナンス業務等を目的として営業していたが,平成15年4月30日午後5時に東京地方裁判所において破産宣告を受けた。
 イ 被告Y1,同Y2,同Y3,同Y4及び同Y5は別紙取締役目録(※省略)記載のとおりトータルネットの取締役であり(ただし,被告Y3は平成12年12月末ころ退任したと主張する。),被告Y1は,平成11年2月15日に代表取締役に就任した。
ウ 株式会社ジェイネットは,平成10年9月,トータルネットの子会社として,その広告部門が独立して設立されたもので,被告Y3がその代表取締役に就任した。
 エ 被告エコジャパン,同ピアワン企画,同コモスジャパン,同東京文字ニュース中央,同ダイシン及び同ウィンテックは,後記のテレテキストビジョンのトータルネットの販売代理店であった(また,原告らは,被告大明通産はテレテキストビジョンの販売にかかわったほか,トータルネットのテレテキストビジョンシステムに関する営業実施権の承継者であると主張する。)。
(2) テレテキストビジョンシステム
  テレテキストビジョンシステムとは,テレビ(映像ディスプレー),DVDプレーヤー,映像DVDソフト及びテレビの上に設置する文字放送受信表示器の4つの主要機器(以下,一括して「本件機器」という。)から構成される商品であって,テレビに付属のDVDソフトの映像を表示しつつ,第三者である文字放送会社が送信する文字ニュースをテレビの上に設置した文字放送受信表示器でスクロール表示し,この文字ニュースの合間に,電話回線で送信する文字広告を挿入するというシステムを組み込んだものである。
 トータルネットは,文字放送受信表示器に有料広告を流すことによって,原告らがジェイネットから広告放映料の支払を受けることができるとして,本件機器の販売を行っていた(以下,本件機器と広告放映料の授受等を総合した仕組みを一体として「本件システム」という。)。
 (3) 原告らとクレジット会社又はリース会社との契約関係及び債務状況
  別紙債務状況表(※省略)の原告氏名欄記載の各原告(ただし,後記記載のものを除く。)は,同表の対応するクレジット・リース会社名欄記載の各クレジット会社又はリース会社との間で,同表の債務状況欄の契約年月日欄記載の各年月日に,本件機器の代金に手数料等を加えた同表の債務総額欄記載の金額のクレジット料又はリース料を分割払する内容のクレジット契約又はリース契約を締結し,本件機器を購入した。原告らは,同表の職業等欄記載のとおり病院,医院,診療所,理美容院,飲食店等を経営しているもので,その待合室,店舗等に本件機器を設置して,これを顧客の観覧の用に供していた。
その後,本件口頭弁論終結時までに,原告らは,上記各クレジット・リース会社に対し,同表の債務状況欄の既払金総額欄記載の金額のクレジット・リース料を支払っている。ただし,原告X1(原告通し番号251)は,契約締結者の権利義務を相続した者である。
  なお,原告X2(原告通し番号4)及び同X3(同112)については,各原告が対応すると主張する弁論分離前の相被告株式会社オリエントコーポレーションがクレジット契約の締結及びクレジット料の支払を否定しているところ,当裁判所の求釈明にもかかわらず,同原告らは,その締結及び支払を認めるに足りる証拠を提出しないから,これを認めることができない。
(4) 原告らの広告放映料受領状況
別紙債務状況表の原告氏名欄記載の各原告は,ジェイネットから,原告の主張する請求額の内訳欄の放映料受領金額欄記載の金額を広告放映料として受領した。
 3 争点及び当事者の主張
 争点は,①トータルネットの本件システム開発・販売の違法性の有無,②これに関する各被告の個別の責任の有無,③各原告の損害額と各被告の賠償すべき金額であって,当事者の主張は,上記①,②に関しては別紙主張整理表のとおりであり,上記③に関しては別紙債務状況表の原告の主張する請求額の内訳欄の損害額欄記載の金額(各原告主張の既払金総額欄記載の金額から放映料受領金額欄記載の金額を差し引いた額),弁護士費用欄記載の金額(損害額欄記載の金額の1割)及び請求額欄記載の金額(損害額欄記載の金額と弁護士費用欄記載の金額の合計額)のとおりである(ただし,別紙債務状況表の既払金総額欄記載の金額は本件口頭弁論終結時点のものであり,一部の原告について訴え提起時より同金額が増加しており,これは前記のとおり争いのないところであるが,当裁判所の求釈明にもかかわらず,同原告らはこれに応じた損害額の主張及び請求金額の変更をしない。)。
第3 当裁判所の判断
 1 本件機器の販売に係る経緯
   前提事実並びに証拠(甲総114,115,被告Y1,被告Y3のほか括弧書きしたもの)及び弁論の全趣旨によれば,本件機器の販売に係る経緯として,以下の事実を認めることができる。
  (1) 本件機器の販売開始までの経緯
ア トータルネットは,平成10年4月ころ,同年5月から本件機器を病院,医院,診療所,理美容院,飲食店等を経営する顧客に対し,クレジット・リース契約を締結させた上で販売し,その販売促進策として,文字放送受信表示器に有料広告を表示することによる広告放映料を顧客に支払うことによって,そのクレジット・リース料の負担を軽減又は無料化するという内容の事業(以下「本件システム事業」という。)を企画して,本件機器を3年間で3万5670台販売するという事業計画(以下「本件事業計画」という。)を立てた(乙182の1(甲総38))。
 イ トータルネットは,平成10年4月20日,NHKの関連会社である株式会社日本文字放送との間で,年間電波料1800万円と年間制作費1000万円を毎年4月1日までに1年分前払いする約定で,同社が制作する文字放送番組を本件機器に送信して二次利用することを骨子とする契約を締結し,同年5月から番組の配給を受けて,本件機器への文字情報の放映を開始した(乙9(甲総69))。 
   しかしながら,トータルネットは,本件機器を構成する文字放送受信表示器の製造のために必要な前渡金の調達ができず,機器の製造が遅れたなどの事情により,実際に本件機器の販売が開始されたのは同年10月ころからであったため,それ以前の文字情報の放映に係る費用は不要な支出となった。
 ウ トータルネットは,平成10年8月21日,東邦電機工業株式会社との間で,同社に本件機器を構成する文字放送受信表示器を製造させて購入するとの契約を締結した(乙11(甲総67))。
 エ トータルネットは,平成10年9月ころ,本件機器の販売を開始するに先立ち,取扱クレジット・リース会社から,売主と同じ会社が代金相当額を広告放映料の名目で支払うことを保証する販売方法には問題があるとの指摘を受けた。
   このため,トータルネットは,同月25日,前提事実(1)ウの記載のとおり同社の広告部門を独立させてジェイネットを設立し,トータルネットの広告本部長であった被告Y3がその代表取締役に就任した。
 オ また,トータルネットは,平成10年中に,日本文字放送に対し,本件機器を構成する映像DVDの制作も依頼し,同社から合計2万枚の映像DVDの引渡しを受けて,制作費として5430万円を支払った(甲総66)。
 カ トータルネットは,平成10年10月ころ,本件機器の本格的な販売を始めた。
   本件機器の販売に当たっては,ジェイネットが顧客に対し,実際に有料広告の配信があったか否かにかかわらず,月々2万ないし3万円程度の広告放映料を5ないし6年にわたって支払うとの文字情報放映契約が併せて締結された(甲総2,40,59,乙273(甲総93))。 
(2) 広告放映料の支払停止までの経緯
 ア ジェイネットは,株式会社日立製作所との間で,平成11年3月26日,本件機器を構成する文字放送受信表示器への広告の配信を同社に委託し,ジェイネットが同社に所定の広告配信料を支払う旨の委託役務請負契約を締結した(乙21(甲総71))。
 ジェイネットは,平成11年4月から7月にかけて,日立製作所に依頼して,神奈川地区における広告配信テストを実施した(乙25の1ないし3(甲総73))。その結果,設置工事の不具合,既存の電話回線との切替不調,設置者が配線を変えてしまうなどの理由で,既に設置した同地区の300台強の本件機器の中で文字広告を配信できたものは,わずか5,60台程度しかなかった。
   ジェイネットは,その後の同年8月から平成13年5月まで,日立製作所に対し,延べ19万1401件(毎月1回指定された文字広告1件を文字放送受信表示器1台に配信する毎に1件として計算)を配信したとして,広告配信料として合計5310万3897円(消費税込み)を支払った(甲総72)。
 イ 平成11年6月25日,本件機器の販売に関して消費者相談センターに苦情が寄せられて大きなトラブルになっているとして,クレジット会社である国内信販株式会社のクレジットの提供が停止されたことがあった(甲総113)。
ウ トータルネットは,平成12年夏ころ,取扱クレジット・リース会社から,割賦販売法の改正があるところ,本件システムはいわゆるココ山岡事件において問題となった保証販売に該当するおそれがあるなどとして,本件システム事業による本件機器の販売をやめるよう指導された(甲総45)。
 エ トータルネットは,平成12年9月ころ,日本文字放送に替えて,テレビ朝日系列の文字放送サービス会社である朝日レタービジョン株式会社から文字放送の提供を受けることとし,同社との間で新たに文字放送利用契約を締結した。これに伴い,同年12月に日本文字放送からの文字放送番組の提供が停止された(乙107(甲総90))。
 オ トータルネット及びジェイネットは,平成12年9月11日付けのインフラ整備プロジェクトとして,本件機器の広告配信の改修(整備)工事スケジュールの優先エリアとしていくつかの地域を指定していた。これによれば,同年7月末現在の神奈川県の設置台数(広告放映料を支払っている台数。以下同じ)1102台のうち599台,埼玉県の597台のうち258台,静岡県の266台のうち118台,新潟県の195台のうち175台,長野県の101台のうち43台,九州地方の169台のうち43台,東京の1262台のうち783台が通信不可となっており,実際には広告が送信できない状態だった(乙304(甲総74))。
  また,同月13日現在で,本件機器の全国の設置台数5046台中,2626台は工事の不備,操作の不手際等の原因により広告配信不能の状態であった(乙ソ全12(甲総112))。
  さらに,同年10月の調査によっても,約6000箇所の設置箇所のうち,広告配信可能な設置先はわずか2,3割にとどまっていた(乙111の1(甲総76))。
 カ トータルネットは,平成12年12月ころ,クレジット・リース会社の多数から与信を停止されて収益がほとんど上がらなくなり,その経営状態は急速に悪化した。 
   この多数のクレジット・リース会社からの与信停止を受けて,平成13年に入り,トータルネット及びジェイネットは,文字情報放映契約につき,従前の有料広告の配信の有無に関係なく5ないし6年間一定の広告放映料を支払うという従前の方式に替えて,有料広告が実際に掲載された場合のみ広告放映料を支払うか,又は,1年間だけ有料広告の配信の有無にかかわらず広告放映料を支払い,その後は有料広告が掲載された場合のみ広告放映料を支払うという方式に切り替えること(トータルネット及びジェイネットは,従前の方式をA方式,切替え後の方式をB方式と呼んでいた。)を計画したが,本件機器の売れ行きは低迷した(乙273(甲総93),乙275(甲総89),乙277の3(甲総92),乙278(甲総91))。
 キ そして,ジェイネットから支払われていた本件機器の設置者に対する広告放映料は,平成13年2月分を最後に支払われなくなった。
(3) 広告放映料の支払停止からトータルネットの破産までの経緯
 ア トータルネットは,平成13年4月中旬ころ,テレテキストビジョンの設置者に対し,今後の広告放映料はトータルネットが直接に支払うこととし,同年9月からその支払を再開する旨通知したが(甲総4),結局,その後も広告放映料は支払われないまま,トータルネットは,前提事実(1)アのとおり平成15年4月30日に破産宣告を受けた。
 イ この間の平成13年6月27日付けで,トータルネットの代表取締役である被告Y1と,被告大明通産の取締役である訴外Pとの間で,トータルネットが同被告に対して広告販売事業を含む本件機器に関する販売実施権と企画開発を譲渡し,同被告がロイヤルティー及び手数料として販売価格の14%をトータルネットに支払うことを骨子とする文字放送に関わる事業協約書(本件協約書)が調印された(乙143(甲総33))。
 その後の同年7月4日,被告大明通産は,本件機器をフォースビジョンという名称で販売する旨を関係者に通知したが,同被告からも,原告らに対する広告放映料の支払はなかった(甲総45,乙145(甲総34))。
 2 本件システム事業の違法性について
(1) 以下に指摘する諸点に照らせば,本件システム事業は,その開始の当初から破綻必至の詐欺的なもので違法であったというべきである。
(2) 広告放映料の支払額と有料広告の獲得状況
 ア 本件事業計画(乙182の1(甲総38))によれば,本件システム事業を開始するに当たり,平成10年5月から3年間で本件機器を全国で約3万5000台(うち首都圏で約1万台)販売して広告を配信する状況を整えれば,有料広告を提供するスポンサーが集まる見込みがあるとされており,被告Y1の供述によれば,これに沿って経営が行われていたというのである。そして,被告Y1は,本件システム事業の生命線は広告(の獲得)であることを自認している(同被告11頁)。
   しかるに,前記認定のとおり,本件機器の販売に当たっては,顧客に対しジェイネットから月々2万ないし3万円程度の広告放映料が5ないし6年にわたって支払われるとの文字情報放映契約が併せて締結されていたところ,本件事業計画に従って,本件機器の販売台数が同率で増加して3年後に3万5000台になり,この間1台当たり2万5000円の広告放映料を支払うものとして試算すると,3年間で支払う広告放映料の総計は,およそ157億円(2万5000円×3万5000台×36か月÷2=157億5000万円。甲総81)となる。
    そして,そもそも,前記認定のとおり,ジェイネットは,トータルネットが,取扱クレジット・リース会社から本件機器の販売と広告放映料の支払を同一会社が行うのは問題があるとの指導を受け,その広告部門を分離して設立したものにすぎず,証拠(甲総47,48,99,乙25の1ないし3(甲総73),乙46(甲総26)の8枚目,乙111の1(甲総76),乙132(甲総27),乙304(甲総74),乙ソ全12(甲総112),被告Y1,被告Y3)によれば,広告放映料支払のための費用は,トータルネットがジェイネットに対して支払うことによって負担し,広告獲得に関する活動も,少なくとも平成13年3月の広告放映料の支払停止前までは両社が足並みをそろえて行っていたことが認められる。そうすると,広告放映料の顧客への支払及び有料広告の獲得・配信は,文字情報放映契約上はジェイネットが行うように記載されているものの,実際は,トータルネット及びジェイネットの両社がこれらに関し実質的に一体のものとして活動していたものというべきである(以下,両社を一括して「トータルネットら」ということがある。)。
    ところで,本件事業計画に基づく事業開始後3年間の本件機器の販売による利益は,約50億円弱程度(甲総61上の1台当たりの粗利益の平均13万7480円×3万5000台=48億1180万円)にとどまると推定されるから,トータルネットらは,本件事業計画を達成するためには,上記利益の全額を広告放映料の支払に充てると仮定しても,3年間で100億円以上の収入になる有料広告を獲得しなければならない状況であったことになる。
イ もっとも,本件機器の販売開始からクレジット・リース会社の与信停止までの約2年半の間の販売台数は,被告Y1の陳述するところによっても,実際には約7000台にとどまっていたというのである(乙300)。これに対し,トータルネットらが広告放映料として支出した費用は,トータルネットの決算報告書によれば,平成11年4月1日から平成12年3月31日までは6億8643万9970円,平成12年4月1日から平成13年3月31日までは18億9691万9167円となっており(甲総99,乙46(甲総26)の8枚目,乙132(甲総27)),合計で20数億円にのぼっている。そうすると本件機器の実際の販売台数を前提としても,本件機器の販売利益は,3年間で9億円強(13万7480円×7000台=9億6236万円)と推定されるところ,その全額を広告放映料の支払に充てたとしても,なお約16億円以上の収入になる有料広告を獲得しなければならない状況であったことになる。
ウ ところが,実際の有料広告の獲得状況についてみると,ジェイネット作成の広告放映料請求明細書,広告製作確認報告書(甲総8の1ないし9,9の1ないし6,乙303の1ないし15)には,ジェイネットに年間数百万円程度の有料広告収入があったかのような記載があるにとどまる。このような有料広告の獲得状況は,本件事業計画に基づく約100億円はもとより,本件機器の実際の販売台数を前提として試算した約16億円という多額の広告放映料の支払をするには,微々たるものといわざるを得ず,このような状況は,後述の有料広告獲得のための体制について検討するまでもなく,それ自体において,トータルネットらが結果的に有料広告獲得に失敗したというよりも,当初から実現不可能な計画のもとで,本件システム事業を開始して継続していたことを推認させるものである。
(3) トータルネットらの有料広告獲得のための体制
 ア 人的体制について
(ア) 証拠(被告Y1,被告Y3)によれば,トータルネットらの広告獲得の担当者の人数は,ジェイネットに分離する前は10人以下で,ジェイネットに移管後も4,5名より多くなることはなかったことが認められる。
  そして,被告Y3は,この人員では,採算を維持するために必要な広告の90%以上は広告代理店に依頼して獲得してもらわなければならない状態であったこと,しかるに,実際に広告代理店とそのための契約を締結したことはなかったことを認めており(同被告12頁等),トータルネットらの広告獲得のための人的体制は,不十分なものであったといわざるを得ない。
 (イ) これに対し,被告Y1及び同Y3は,広告に関するマーケティング等を専門家に委託するなどして広告業務を実際に行っていたなどと主張する。
   しかしながら,広告獲得のために,被告Y1の発案で,トータルネットらにおいて,奇広隊という名称で広告営業を外部委託したことがうかがわれるが,これも人員は合計7名にとどまり,期間も平成12年3月1日から20日までというごく短期間であった上,訪問店数841件をまわりながら,獲得した有料広告はゼロであった(乙192(甲総30),被告Y1)。
   また,被告Y1の発案で,平成12年12月に,タイガー作戦という名称で本件機器の設置先に有料広告の紹介を依頼することが計画されたが(乙119(甲総84)),これが実際に有料広告の獲得に結びついたと認めるに足りる証拠はない。
   さらに,トータルネットらにおいて,本件機器の販売代理店の一部に対し,有料広告を獲得した場合には報奨金を出すことを約していた例があったようであるが(乙33),これによって実際に有料広告が獲得できたことを認めるに足りる証拠はない。 
   その他,ジェイネットにおいて,複数の個人又は会社との間でコンサルティング業務委託契約を締結して,広告に関するマーケティングや営業活動をさせていたことがうかがわれるものの(乙15,35,66,67,83,110),これらにより具体的にどのような活動が行われ,どの程度の広告獲得の実績に結びついたのかは不明である。そもそも,被告Y3自身,真に有料広告を獲得しようとすれば,これでは足りず,広告代理店と契約を締結して広告獲得を図らなければならなかったところ,そのような状態にはなっていなかったことを自認しているのであって,これをもって,有料広告獲得のための人的体制が整っていたとは到底評価できない。
 また,被告Y1は,原告らを含む本件機器の顧客についても,当初から事業参画者と位置付けて有料広告獲得に協力してもらう人員と考えていたと主張し,供述する。しかし,トータルネット又はその販売代理店が,顧客に対し,本件機器の販売の際に逐一そのような説明をしていたと認めるに足りる証拠はない。仮にそのような説明を受けた顧客がいるとしても,前記1(2)カ認定のとおり,少なくとも平成12年末までは有料広告配信の有無にかかわらず広告放映料が支払われる約定となっていたのであって,このような状況のもとで,顧客が積極的に有料広告を獲得するための営業活動をすることなど,そもそも考え難いところである。現に広告獲得の責任者であった被告Y3自身,これは有望な広告獲得方法とは思っていなかったというのであって(同被告40頁),トータルネットらにおいて,有料広告獲得のための従業員等を確保すべきであったことに変わりはなく,被告Y1の上記供述は,前記(ア)の認定判断を左右するものではない。
 (ウ) したがって,被告Y1及び同Y3の主張は採用することができず,トータルネットらの広告獲得のための人的体制は,不十分なものであったといわざるを得ない。
イ 有料広告の配信体制(いわゆるインフラ)について
 次に,有料広告を獲得するに足りる広告配信体制が整備されていたか否かについて検討するに,前記1(2)で認定したところによれば,平成11年4月から7月にかけての広告配信テストで,300台強の本件機器の中で文字広告を配信できるものは5,60台程度と多くても2割程度しかなく,平成12年9月ないし10月ころになっても,全国の設置台数のうち工事等の不備により広告配信が不可能なものが実に過半数又は7,8割に及んでいたというのであり,この両時点の間の広告配信状況についても,大同小異であったものと推認され,現に被告Y3自身,有料広告を獲得するに足りるだけの広告配信可能な状況に何とかするように被告Y1に求めていたが,被告Y3が本件システム事業にかかわっていたという平成12年12月末までは基本的に状況は変わらなかった旨供述しているのであって,有料広告の配信体制及びその整備のための活動も不十分なものであったといわざるを得ない。
ウ 以上からすれば,前記のとおり,トータルネットらの有料広告獲得のための体制は,本件基本計画による約100億円はもとより,実際の本件機器の販売台数を前提としても約16億円という多額の広告放映料の支払をするには,あまりに貧弱であり,これによる活動も申し訳程度の不十分なものにとどまっていたといわざるを得ない。
 そして,前記(2)で認定の有料広告の獲得実績と本件システム事業の実施のために必要とされる有料広告の量との著しい乖離も併せ考えれば,トータルネットらにおいては,一定の有料広告獲得のための活動をしたが,結局うまくいかなかったというのではなく,そもそも,当初から,本件基本計画を達成し,あるいは,実際の販売台数に対応する広告放映料を支払うに足りるだけの原資を獲得するための体制をとっておらず,また,その後もこのような体制をとろうとしていなかったものというべきである。
(4) 本件機器の販売価格と原価の不均衡
   証拠(甲総61,乙182の1(甲総38),乙313)によれば,本件機器は,これを構成するテレビその他の機器の種類によって金額に違いがあるものの,平均して1台百数十万円程度で販売されていたものであるところ,そのうち本件機器を構成するテレビ,文字放送受信表示器,DVDプレーヤー,DVDソフトの原価の割合は,3割ないし4割強程度にとどまり,トータルネット及びその販売代理店は,これに本件機器の工事料,ロイヤリティ,販売手数料等を上乗せして販売していたことが認められる。
 そうすると,本件機器の原価に比べ,経費等を踏まえた販売価格はかなり高額のものであったというべきところ,被告Y1自身,広告放映料の支払の必要も折り込んで高めに販売価格を設定したことを認める一方(同被告31頁),購入者に支払うべき広告放映料の額と獲得できる有料広告の額のバランスが崩れれば,同被告自身の表現を借りれば「たこが自分の足を食う」ような状態となって,本件システム事業は破綻することを認識していたことも自認している(同被告30,45頁)。そして,前記認定のとおり,トータルネットらは実際には有料広告を獲得して広告放映料の支出をまかなえる体制にはなかったことにも照らすと,トータルネットは,広告放映料の支払が早晩破綻することを認識していたにもかかわらず,広告放映料の支払をうたい文句として,本件機器を原価を大幅に超える高額の販売代金で顧客に売りつけ,種々の経費やロイヤリティ等の名目で多額の販売利益を得ていたものであると推認することができる。
 これに対し,被告Y1は,広告放映料の支払を受けることができるのであるから,その分本件機器の販売価格を高額に設定しても不自然ではないと供述する。しかし,トータルネットらに真に有料広告による収益を図る意図があり,有料広告獲得のために本件機器の販売台数を増やしたかったというのであれば,むしろ,広告放映料の支払を伴わないか,あるいは,これを支払うにしても低額に見積もることによって,本件機器の販売価格を低額に抑えることも可能であったし,そのような扱いにすることが自然であったとも考えられ,上記のY1の供述は,採用することができない。
 また,被告Y1は,本件機器のうち,文字放送受信表示器の価値を強調し,特許ないし実用新案を得ていること(乙14,18,43)等を指摘するが,同表示器の原価はたかだか十数万円であったことを被告Y1自身が認めており(乙313),前記認定判断を左右するものではない。
(5) 本件機器の販売の際の広告放映料の支払に関する説明
前記認定のとおり,本件機器の販売に当たっては,顧客に対しジェイネットから月々2万ないし3万円程度の広告放映料が5ないし6年にわたって支払われる旨の文字情報放映契約が併せて締結されており,これは,少なくとも平成12年末までは,実際に有料広告の配信があったかどうかにかかわらず定額の支払を約束する内容のものであった。そして,証拠(甲総12,13,17ないし22,24,60の33頁)によれば,トータルネットら及び販売代理店は,本件機器を販売するに当たり,支払われる広告放映料の月額が本件機器の購入に係るクレジット・リース料の分割支払金の月額とほぼ同額か,又はこれを若干上回る程度であるなどとして,クレジット・リース料の支払がないか,又はほとんど不要になるかのようにうたっていたことが認められる。前記認定の有料広告の獲得状況等を踏まえれば,このような販売形態は,広告放映料の支払が早晩破綻必至であるにもかかわらず,本件機器を売って利益を稼ごうとするもので,不当というほかない。 
   これに対し,被告Y1は,少なくとも途中からは,そのようなことを顧客に申し向けて本件機器の販売をしたことはないかのように供述し,トータルネットが作成した本件機器に係る平成11年9月付けの販売員セールスマニュアルとされる乙31号証には,既に広告が集まっているので広告放映料の支払でリース代が無料となる旨のセールストークをしてはならないとする記載がある(6頁)。
   しかし,そもそも,有料広告の配信の有無にかかわらず,一定額の広告放映料の支払が約され,その支払額が,これによってクレジット・リース料の支払負担がないか,又は極めて少額となるように設定されていたこと自体は,少なくとも平成12年末までは変わりがない。そして,前掲乙31号証自体も,一方では広告放映料の支払によって顧客のリース料の負担が軽減されることを特記事項として記載している(15頁)上,同年8月時点のものと思われるトータルネットの指導員研修資料(甲総60)によれば,本件機器の「セールス・トークの実践編」として,リース料に見合う広告放映料が支払われることにより「無料で設置したことと同じになります。」との記載がある(33頁)ことが認められ,トータルネット自体が,広告放映料の支払によるクレジット・リース料の負担軽減を強調する販売方法を指導していたことが認められ,被告Y1の上記供述は採用することができない。少なくとも,被告Y1においても,その供述するような指導が販売代理店において徹底されていなかったことを自認している。
   もっとも,前記1(2)カで認定のとおり,平成13年に入り,それまでの有料広告の配信の有無にかかわらず広告放映料を支払う方式(A方式)を,有料広告が実際に掲載された場合のみ広告放映料を支払うか,又は当初1年間のみ有料広告の配信の有無にかかわらず広告放映料を支払うが,その後は有料広告が掲載された場合のみ広告放映料を支払うという方式(B方式)に切り替えることが計画されたことが認められる。しかし,この時期において,A方式からB方式への切替えが実際にどの程度行われたかを認めるに足りる証拠はない。したがって,上記の点も,前記認定判断を左右するものではない。
(6) クレジット・リース会社からの指導とトータルネットの対応
 前記1で認定のとおり,トータルネットは,平成10年9月ころに本件システム事業を開始するに当たり,取扱クレジット・リース会社から,売主と同じ会社が分割支払金相当額を広告放映料の名目で支払うことを保証する販売方法には問題があると指摘されたため,トータルネットの広告部門を独立させてジェイネットを設立し,また,平成12年夏ころ,同じく取扱クレジット・リース会社から,割賦販売法の改正に伴い,本件システムはココ山岡事件において問題となった保証販売に該当するおそれがあるなどとして,本件システムによる本件機器の販売をやめるように指導された。
 しかるに,トータルネットは,平成12年12月ころにクレジット・リース会社の多数から与信を停止された後の平成13年に入って,ようやく前述のA方式からB方式への切替えを計画したにとどまり,実際にこのような切替えがどの程度行われたかは判然としない。
 このように,トータルネットは,本件機器の販売開始の当初から,広告放映料の支払を保証する販売方法に問題があるとの指摘を受けていたにもかかわらず,広告放映料の支払をするジェイネットを形式上別会社とするのみで,その後も問題を指摘されながら,何ら販売方法には変更を加えず,クレジット・リース会社の多数から与信を停止された後の平成13年に入って,ようやく定額の広告放映料の支払期間の短縮や廃止といったB方式への切替えを計画したものの,このような切替え自体が現実に行われたと認めるに足りる証拠もないのであって,これ自体,多分に体裁を整えようとしただけで,実体を伴ったものではなかったというべきであるし,結局,本件機器の販売に当たり広告放映料の支払を約する販売方法自体は,最後まで改められなかったものである。
 これらの事実によれば,トータルネットは,広告放映料の支払を保証することによって本件機器の販売を促進するという本件システム事業に問題があることを認識しながら,これを最後まで改めなかったというべきである。
(7) 以上の事実を総合すると,本件システム事業の生命線は広告であり,顧客に支払う広告放映料に見合う有料広告が獲得できなければ,本件システム事業は被告Y1の表現を借りれば「たこが自分の足を食う」ものに等しく,早晩破綻必至であったにもかかわらず,有料広告獲得の点でそもそも実現可能性のない本件事業計画を策定した上,十分な有料広告獲得のための体制の整備や活動も行わないまま,本件機器にその原価を大幅に上回る高額の販売価格を設定する一方,広告放映料の支払を受けることによって顧客のクレジット・リース料の支払がないか,又はほとんど不要になることをうたって本件機器を販売していたものであって,平成10年10月の販売開始の時点から既に,取扱クレジット・リース会社から,このような販売方法には問題があるとの指導を受けていたこと等も併せ考えれば,トータルネットにおいては,そもそも本件システム事業を真に成立させる意思も能力もないまま,本件機器を高額で販売して利益を得ようとしたものであって,本件システム事業は,本件機器販売開始の当初から,破綻必至の詐欺的なものであり,違法であったというべきである。
(8)ア 以上に対し,被告Y1は,本件事業の開始に当たり,株式会社電通に相談したところ,首都圏で1万台,全国で3万台に達すれば広告枠を買い取るといった話があり,本件機器が本件事業計画どおりの販売台数に至っていれば有料広告の獲得は可能であって,本件事業は採算性のないものではなかったなどと陳述する(乙301)。
  しかしながら,証拠(甲総94)によれば,平成9年ころトータルネットの関係者が電通を訪問したことはあるものの,同社の側から,本件機器に関して,広告を提供する旨の具体的な話をし,あるいは何らかの約束をしたことはないことが認められる。そもそも,前述のとおり,トータルネットらの有料広告獲得状況は,単に結果的に販売台数が伸び悩み,採算が合わずに失敗に終わったというには,あまりに少ないものであって,そのような見込みが立ち得たと評価することは到底できないものであり,被告Y1の上記陳述は採用することができない。
イ また,被告Y1は,トータルネットが文字ニュースに関して文字放送会社と現実に契約を締結してそのための費用を支払い,株式会社すかいらーく等と本件システムの提供や文字情報の放映に関する契約を締結するなど,実際に営業活動を行っていたこと,監査法人の監査上特に問題は指摘されていなかったこと,本件システム事業の末期においても被告大明通産に対して本件システムの販売実施権を譲渡するなどの延命努力を行っていたこと,被告Y1らトータルネット関係者において不当な収入を得たことはないこと等を主張する。
 しかしながら,前記のとおり,本件事業の生命線であるはずの有料広告の獲得の見込みがなく,そのための体制すら整備されていなかったこと等を踏まえれば,上記の諸点は,前記認定を左右するものではない。むしろ,上記のような活動は,本件機器の販売を続けていくために体裁を整えていたにすぎないものというべきである。したがって,被告Y1の上記主張も採用することができず,その他前記認定を覆すに足りる証拠はない。
3 各被告の個別責任について
(1) 被告Y2,同Y5,同コモスジャパン,同ダイシン及び同ウィンテックについて
   同被告らは,いずれも適式の呼出しを受けながら,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面も提出しない(なお,被告Y2は,同被告個人に対する訴えが提起される前の当初の段階で,後記の被告東京文字ニュース中央の代表者として出頭したことがあるが,その後は出頭せず,同被告個人としての答弁書その他の準備書面は提出していない。)。したがって,同被告らは,原告ら主張の請求原因事実を争うことを明らかにしないので,これを自白したものとみなす。
 そうすると,同被告らは対応する原告らに対し,不法行為責任を負う。
  (2) 被告Y1について
  被告Y1は,トータルネットの取締役(平成11年2月からは代表取締役)として本件システム事業を中心的に企画して実行した者であり,被告Y1自身,広告の獲得や,本件機器の広告配信のシステムの開発が当初想定していたように進展していなかったことを自認していたばかりか,本件機器の販売開始の当初から,定額の広告放映料の支払を約した上で,本件機器の販売を続けることは,本件機器の売上利益を広告放映料につぎ込む結果となり,「たこが自分の足を食う」に等しい経営状態となることを自認していたものである。そうすると,被告Y1は,本件システム事業の開始当初から同事業の破綻が必至であることを予見しながら,あるいは少なくとも容易に認識することができたにもかかわらず,原価を大幅に上回る高額の販売代金を設定して本件機器の販売を続けていたものであるから,悪意又は重大な過失があり,商法(平成17年法律第86号による改正(廃止)前のもの。以下同じ)266条の3第1項に基づき,その取締役在任中に本件機器の販売契約を締結した原告らに対して損害賠償責任を負うというべきである。
(3) 被告Y3について
  被告Y3は,平成12年6月30日にトータルネットの取締役に就任したところ,前記認定のとおり,平成10年9月からジェイネットの代表取締役として本件システム事業における広告部門の責任者という立場にあった者であり,本件システム事業を正常に存続させていこうとするのであれば,有料広告の獲得が不可欠であることを知悉していたと認められる。しかるに,同被告は,有料広告を獲得するに足りる十分な体制を整えなかった一方,上記トータルネットの取締役就任時点において,実際にトータルネットらが獲得できた有料広告はわずかで本件機器の販売利益を広告放映料の支払に充てざるを得ない状態にあり,本件機器の販売を中止すれば,広告放映料の支払ができなくなる自転車操業の状態にあることも知悉していたことを自認している。そうすると,被告Y3には,トータルネットの取締役として,被告Y1が適切な経営を行うよう監視し,取締役会等を通じてその経営の是正を図るべき義務があったにもかかわらず,これを怠って本件システム事業が早晩破綻必至であることを予見し,あるいは少なくとも容易に認識しながら,これを漫然と継続させたものというべきであるから,その職務の執行について悪意又は重大な過失があったものといわざるを得ず,商法266条の3第1項に基づき,その取締役在任中に本件機器の販売契約を締結した原告らに対して損害賠償責任を負うというべきである。
  これに対して,被告Y3は,同被告自身は広告獲得のために努力したものの,結果的に被告Y1と対立して平成12年12月末に辞任することになったもので,取締役としての任務を怠ったことはないと主張する。
  しかしながら,被告Y3が広告活動を十分に行っていたと認めるに足りる証拠はない。また,被告Y3は,クレジット・リース会社から,トータルネットが本件機器を販売するとともに広告放映料を支払うのが問題であるとの指導を受け,別会社としてジェイネットが設立された経緯を遅くとも平成10年末までには知っていたと自認しており(同被告7頁),クレジット・リース料に見合う広告放映料の支払と本件機器の販売を組み合わせること等の問題性を認識していたはずであるし,前記認定のとおり本件システム事業が破綻必至であることは自ずと明らかであったというほかなく,同被告の上記主張は採用することができない。
  また,被告Y3は,平成12年12月末にトータルネットの取締役を辞任したとも主張する。しかし,その旨の登記はなく,他にこれを裏付けるに足りる証拠はない。仮に,同被告がその時点で辞任した事実があったとしても,その後辞任の登記をするようトータルネットに対し求めたといった事情もうかがわれないから,商法12条ないし14条が類推適用され,いずれにしても,その後の本件機器の購入者に対しても責任を免れることはできないというべきである。
(4) 被告Y4について
    被告Y4は,トータルネットの従業員として取締役就任以前から,トータルネットにおけるローン管理部及び本件機器のユーザーサポートを担当し,平成12年6月30日から平成14年1月11日までトータルネットの常勤取締役として在任した者である(甲総113,乙132,190の7・8(甲総35,36),乙273(甲総93))。
    同被告は,そのような立場に照らして,本件機器の販売の問題性を十分認識し,少なくともその破綻を予見し得たというべきであって,トータルネットの取締役としての在任期間中,被告Y1が適切な経営を行うよう監視し,取締役会等でその経営の是正を図るべきであったにもかかわらず,これを怠って本件システム事業を漫然と継続させたものというべきであるから,その職務の執行について悪意又は重大な過失があったものといわざるを得ず,商法266条の3第1項に基づき,その取締役在任中に本件機器の販売契約を締結した原告らに対して損害賠償責任を負うというべきである。
 これに対し,被告Y4は,自身は名目上の取締役になっていたにすぎず,実際の経営に関与していないから責任がないと主張する。
 しかし,同被告が取締役に就任している以上,同被告が取締役として実際の経営に関与することが不可能であったといった特段の事情がない限り,取締役としての責任を免れるものではないというべきところ,この点に関する同被告の主張は抽象的なものにとどまっており,このような特段の事情を認めるに足りる主張立証はない。したがって,同被告の主張は採用することができない。
(5) 被告大明通産について
    原告らは,被告大明通産は本件機器の50ないし100%近くの出荷に関与するなどその販売に深く関与しており,本件機器の販売をトータルネットとともに全面にわたって行っていたものであり,また,本件協約書を締結した平成13年6月27日以後は,トータルネットの事業を事実上承継し,これに伴って原告らに対する広告放映料の支払債務を含む一切の役務もすべて承継(重畳的債務引受け)しながら,その後に事業の承継を否定してトータルネットを破綻させたなどとして,原告ら全員に対する不法行為又は債務不履行責任を負うものと主張する。
 しかしながら,被告大明通産は,トータルネットの一販売代理店として本件機器を販売したことがあることはうかがわれるものの,原告らの主張するように,販売代理店としての立場を離れて,本件機器の販売の全面にわたって関与したことを認めるに足りる証拠はない。
 また,債務の承継の点についても,平成13年6月27日にトータルネットと被告大明通産が締結した本件協約書(乙143(甲総33))の内容は前記1(3)イで認定したとおりであって,それが同被告の取締役訴外Pの無権代理行為であるとする同被告の主張はひとまずおくとしても,トータルネットらから広告放映料の支払債務まで重畳的債務引受けをするとの趣旨をうかがわせる記載はなく,他に同被告がトータルネットの債務引受けをしたと認めるに足りる証拠はない。
 なお,被告大明通産は,トータルネットの一販売代理店として活動していたことがうかがわれるが,原告らは,当裁判所からの求釈明にもかかわらず,原告らのうちの誰が被告大明通産を販売代理店として本件機器を購入したのか明らかにせず,同被告に対して販売代理店としての損害賠償請求をしていない。
  以上のとおりであるから,原告らの被告大明通産に対する請求はすべて理由がない。
  (6) 被告エコジャパン及び同ピアワン企画について
    同被告らは,トータルネットの販売代理店として原告らの一部に本件機器を販売した者であるところ,本件機器の販売により,1台当たり30万円というかなり高額の代理店販売手数料を取得するものとして,広告放映料の支払によってクレジット・リース料の支払がないか,又はほとんど不要になる旨を申し向けて本件機器の購入を勧誘し,販売していたことが認められる(甲総12,13,20,22,24,61,乙182の1(甲総38))。
 そして,本件機器の販売価格や実際に獲得できていた有料広告の有無,金額については,トータルネットに問い合わせれば当然に同被告らにおいても知り得る状況であったのであって,同被告らは,本件システム事業による本件機器の販売に前記のとおりの問題があり早晩破綻が必至であることを認識しながらトータルネットと一体となって本件システム事業に参画したか,又は少なくともこれを認識しなかったことに過失があったというべきであるから,不法行為責任を免れない。
 同被告らは,トータルネットの言動を信じて販売したにすぎないとか,原告らを欺罔したことはないなどと主張するが,前述したとおり,これをもって不法行為責任を免れるものではない。
 もっとも,原告X3(原告通し番号83),同X4(同86),同花ノ木製作所(同109のオリックス㈱契約分・債務状況表参照),同X5(同249),同X6(同264)及び同X7(同323)については,別紙債務状況表中の対応する販売会社名欄中の分離前の相被告クレジット・リース会社から販売会社が異なるとされたものの会社名欄に記載のとおり,弁論分離前相被告のクレジット・リース会社から同原告ら主張の被告ら販売会社とは取引をしていないと主張されており,同被告らが包括的にせよ請求原因事実を否認している以上,同原告らにおいて同被告らとの取引の存在を立証する責任がある。しかるに,同原告らは,当裁判所の求釈明にもかかわらず,契約書その他これを裏付けるに足りる証拠を提出しないから,同原告らの同被告らに対する請求を認めることはできない。なお,前記の欄に記載のあるもののうち,原告らが被告エコジャパンと主張するのに対し,株式会社ファンクとの取引であるとされるものについては,ファンクは被告エコジャパンの商号変更前の旧商号にすぎないから,被告エコジャパンが販売会社であると認められる。
(7) 被告東京文字ニュース中央について
   同被告は,対応する原告X8(原告通し番号113の㈱オリエントコーポレーション契約分)との間の本件機器の販売契約がないと主張するが,同原告は平成13年10月4日養子縁組による改姓前の姓で同被告と販売契約を締結したものと認められる(甲Cウ16,弁論の全趣旨)。
 そして,同被告は,同原告主張の請求原因に対し,その余の反論をしないから,同請求原因事実を認めることができ,同被告は,同原告に対して不法行為責任を負うというべきである。
4 損害賠償額について
  原告らは,クレジット・リース会社に支払ったクレジット・リース料の既払金総額が損害額であると主張し,これから損益相殺として原告らが受領した広告放映料を差し引き,これに1割に相当する弁護士費用を加えた金額を請求する。
   しかしながら,本件は,無価値物を売り付けたという事案とは異なり,本件機器は,それ自体固有の商品価値を有するものであり,特にテレビやDVDプレーヤー,DVDソフトは文字放送の送信の有無にかかわらず,通常の形態での使用が可能なものであって,原告らは,本件機器の引渡しを受けて使用を開始し,現にこれを占有していることが認められ,その所有権を確定的に取得しているといえるか否かはともかくとしても,弁論分離後のクレジット・リース会社との間の事件の帰すう等によっては,将来的にその所有権を取得する蓋然性があるし,その全部ないし一部を現在まで使用している(少なくともクレジット・リース料を支払っていた期間は使用していたと推認される。)か,使用し得る状態にあって,引渡し時点以降の使用による利益を得ていることは明らかであるから,このような点を全く考慮しないまま,原告らが支払ったクレジット・リース料(既払金総額)をそのまま損害額と認定することは,公平を欠くというべきである。
 そこで,本件機器の原価の割合は販売価格の3割ないし4割強程度であり,原告らにおいて販売価格の平均33%が本件機器の原価相当額であると自認していること(平成17年3月24日付け原告ら第8準備書面21頁),原告らは本件機器の所有権を必ずしも確定的に取得しているわけではないが,少なくとも現在まで(又はクレジット・リース料支払期間中)その使用によって利益を得ている上,将来その所有権を取得する蓋然性があること,その他本件にあらわれた諸般の事情を総合的に考慮して,損益相殺の規定の基礎にある公平の理念に照らし,既払金総額から40%を除いた金額をもって相当損害額と認め,これから上記の観点とは別個の損益相殺として,放映料受領金額を差し引いた金額を被告らが原告らに対し賠償すべき損害額と認めるのが相当である(以上の損害額の認定は,原告らの主張に照らして認められるところであるから,原告らの主張を争わず,擬制自白が成立する被告らに対する関係でも認められる。)。
 また,弁護士費用については,同金額の1割とするのが相当である。
 以上により,各被告が対応する各原告に賠償すべき損害額を次式のとおり算定すると,別紙認容額目録に記載のとおりとなる。
 (既払金総額