hanrei @Wiki H17. 6.17 名古屋簡易裁判所 平成16年(ハ)第4964号 立替金請求事件



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判示事項の要旨:
建築士養成サービスを行う加盟店の学費ローン契約は,専ら加盟店の受講者確保等を目的としたもので加盟店契約によって禁止されているものであるから,同ローン契約締結につき加盟店を自己の補助者として使用した信販会社の立替金請求は信義則に反し無効とした事例


平成17年6月17日判決言渡
平成16年(ハ)第4964号立替金請求事件
主     文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求  
被告は,原告に対し,金38万5560円及びこれに対する平成16年2月28日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,被告が加盟店である株式会社Aから1級建築士養成講座のサービスを受けるための受講料を原告が立替払いし,原告が被告に対し,立替払金等を請求した事案である。
1請求原因の要旨
(1)原告と被告は,平成15年12月20日,下記内容の立替払契約を締結した(以下「本件立替払契約」という。)。
①原告は,被告がAから平成16年度1級建築士長期設計製図講座(以下「本件講座」という。)に基づくサービスを受けるための受講料として金37万8000円をAへ立替払いする。
②被告は原告に対し,前記の受講料に手数料として金7560円を加えた合計金38万5560円を平成16年2月27日限り支払う。
③遅延損害金は年14.6パーセントとする。
(2)原告はAに対し,平成16年1月15日,前記の受講料相当額を立替払いした。
(3)よって,原告は被告に対し,立替払金及び手数料として合計金38万5560円及びこれに対する平成16年2月28日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
2争点
被告は,以下の要旨のとおり主張するので,これらが本件の争点である。
(1)被告は本件立替払契約を締結したことがない。
(2)仮に本件立替払契約が成立するとしても,被告には真に本件立替払契約を締結する意思がなく(心裡留保),意思表示の相手であるAの従業員のBはこれを知っていた。又は被告とBとの間で真に本件立替払契約を締結する意思がないにもかかわらず同契約を締結した(通謀虚偽表示)。Aは,原告の代理人又は代理人に準ずる立場にあった。
従って,本件立替払契約は無効である。
(3)原告の加盟店であるAは,債権回収が真の目的であることを隠して契約を締結してはならないとするショッピング・クレジット制度取扱に関する基本契約書(以下「加盟店契約」という。)の禁止条項(第10条3項4号)に反して,原告と被告との間で本件立替払契約を締結させたこと等からすると,同契約は信義則に反し無効である。
本件立替払契約が信義則に反し無効でないとしても,平成15年12月下旬頃,被告は本件講座の受講契約(以下「本件受講契約」という。)の解除を申し入れ,解除されていること,その頃被告は原告に対し,同契約が解除されたことを通知したにもかかわらず,平成16年1月15日,原告はAに本件立替払契約に基づき精算金を送金したこと,被告は本件講座を受講していないので何ら利得を得ていないこと等からすると,原告の本件請求は信義則に反し許されない。
第3当裁判所の判断
1争いのない事実,証拠(甲1及び5,乙1ないし6,8,証人B及び被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)平成15年10月19日の午後,Aにおいて一週間前に実施された一級建築士の製図試験の採点会が開催されるということで,被告は同日午後4時頃Aへ行った。
(2)被告は教務課の人に2階の教室に案内され,Bと対面した。被告はBから解答例をもらうと共に,本件講座の説明を受けた。
(3)被告はBに対し,受講申込書(乙1)に署名し,同講座の受講を申し込むと共に,受講料は合否発表後一括払いする旨の申し出をした。Bは同申込書の銀行振込欄に丸を付けた。また,被告はAから念書(乙2)を受け取った。
(4)Aの方針として,受講申し込みが合否発表前である場合には,教材等の手配,講座の人数の把握等,早期に受講者の確保を必要とするために,受講者全員に教育ローンを組んでもらっていたので,Bは被告に対し,同方針に従い,教育ローンの申し込みを勧めた。被告は同ローンの必要性がなかったがBの勧めに応じて,学費ローン契約書(甲1)に署名し,同ローンの申し込みをした。Bは被告に対し,受講料の支払については平成16年1月中にAへ振り込めば同ローンを取り消す旨の話をした。
なお,Aにおいては,一括支払いとは,申し込み後一週間以内に支払う場合又は合否発表後3日以内に支払う場合をいい,教育ローンによる支払の場合は合否発表後1か月以内にAへ受講料の支払がなされた場合に同ローンを取り消す扱いになっていた。
(5)平成15年10月20日午後1時10分頃,原告の従業員であるCが被告の勤務先に電話をかけ,被告に本件立替払契約の意思を確認し,被告は,明細書は自宅へ送付する,3人暮らしである等の返事をした。同日本件立替払契約について,原告は「可」という決裁をした。
(6)平成15年10月25日に設計製図試験の発表があり,被告は不合格であった。その翌日Aから被告に対し,平成16年1月26日までに入金があれば教育ローンを取り消す旨の書面(乙4)が本件講座の教材と共に送付された。その頃被告はBに対し,本件受講契約の解除を伝えたが,解除はできないという返事であった。平成16年1月初め頃被告は原告に対しても,受講しないので請求をしないよう連絡したが,原告は,Aと話をしてほしいという返事であった。
(7)平成16年1月15日,原告はAに対し,本件立替払契約に基づき金37万8000円を立替払いした。
(8)被告はAに対し,本件講座の教材を同月22日到達の郵便で返送し,同講座には受講しなかった。
2争点(1)について
前記1の認定事実のとおり,被告は学費ローン契約書に署名したこと,被告は原告の電話確認を受けたこと等を総合考慮すると,原告と被告との間で本件立替払契約が締結されたことを認めることができる。
この認定に反する被告の供述は採用することができない。
よって,被告の主張は理由がない。
3争点(2)について
前記1の認定事実のとおり,被告は合否発表後の一括支払いの申し出をしたにもかかわらず,Bの勧めに従い,本件立替払契約の申し込みをしたこと,Aの方針として,受講申し込みが合否発表の前である場合には,早期に受講者の確保を必要とする事情があったことから,受講者全員に対し教育ローンの申し込みをしてもらっていたこと,Aから被告に対し,平成16年1月26日までに入金があれば教育ローンを取り消す旨の書面(乙4)が本件講座の教材と共に送付されたこと等の事実を認めることはできるものの,いまだ被告において真に本件立替払契約を締結する意思がなかったこと(心裡留保)又は被告とAのBとの間で真に本件立替払契約を締結する意思がなく同契約を締結したこと(通謀虚偽表示)を認めるに足りる証拠はない。
この認定に反する被告本人の供述は採用することができない。
よって,その余の点を判断するまでもなく,被告の主張は理由がない。
4争点(3)について
(1)証拠(甲3)によると,加盟店契約の第2条において,Aが販売又は提供する商品等についてクレジットでの支払を希望する顧客に対して,原告が顧客とクレジット契約を締結すること等を同契約におけるクレジット制度の概要としていること,第4条4項において,Aは顧客と原告との間のクレジット契約申し込み手続の補助を行うこと,第10条3項4号において,Aは,真実は加盟店の売掛金等の決済,回収のためであることを隠してクレジット契約を締結し,又は締結させることが禁止されていること,第12条1項1号において,Aにおいて前記禁止行為があった場合には,原告はクレジット契約に関する精算金の支払義務を免れることがそれぞれ定められていることが認められる。
(2)前記1及び前記(1)の認定事実及び弁論の全趣旨を総合考慮すると,次のとおり解するのが相当である。
①クレジット制度とは,分割払いや後払いを望む顧客の希望に応えて,早期に商品等を受領できるように,加盟店が顧客との間で原因契約を締結することとは別に顧客のクレジットの申し込み手続の補助を行い,クレジット業者と顧客との間で代金等の支払方法に関するクレジット契約が締結されることをいう。
従って,加盟店は,クレジットでの支払いを希望しない顧客に対し,専ら加盟店側の事情によってクレジット契約の申し込み手続を勧めることや,クレジット契約が締結された後も,顧客からの代金等を受領することを約束し,受領した場合には同契約を取り消すという,クレジット契約の締結によって原因契約の代金等の回収を図ることをしてはならないのである。
けだし,そのような加盟店の行為は,支払方法を希望する顧客の事情を考慮するものではなく,専ら加盟店側の事情によるものであり,クレジット制度の趣旨・目的を逸脱し,顧客に対し手数料の負担等の著しい不利益を与えるからである。
②本件では,Aは,合否発表前の受講申し込み者に対して一律に教育ローンの勧誘をしており,合否発表後の一括支払いを希望し,同ローンの必要性がなかった被告に対しても同ローンを勧めたものであり,また平成16年1月26日までに入金があれば同ローンを取り消す取り扱いをしていたこと等からすると,本件立替払契約締結の目的は,受講者である被告の支払方法等の事情を考慮するものではなく,専ら受講者の確保,合否発表後の教材の送付等というA側の事情によるものであり,同契約は加盟店であるAの受講料の決済,回収のためであることは明らかである。このようなAの行為は前記①のクレジット制度の趣旨に基づき加盟店契約で禁止されているのである。
なお,原告は,加盟店契約の第10条3項4号に定める禁止行為とは,現金払いであった顧客が資金不足等で支払困難となった場合に,クレジット契約を利用して,その回収を図るのを防止する規定であり,原因契約とクレジット契約との間には時間的隔たりがある場合をいうのであって,本件のように,それらの契約がほとんど同時に締結されている場合は該当しないと主張するが,同クレジット制度の趣旨からすると,そのように限定して解釈すべきではない。
このような事情がある場合,原告はAに対し,加盟店契約に基づき本件立替払契約に関する精算金の支払義務がない。
また,本件立替払契約と本件受講契約は法律的には別の契約であるが,同一の機会にそれぞれ作成されているうえ,本件立替払契約は本件受講契約の担保として締結されたもので,経済的には本件受講契約と密接な関係があり,本件立替払契約の申し込みにおいても,加盟店であるAの従業員であるBが学費ローン契約書(甲1)の支払方法等の欄を記入する等の同申し込みの補助を行っており,原告とAは,加盟店契約に基づき,本件立替払契約締結について経済的に密接に活動していたのである。
そして,被告は,Aに対し本件受講契約を解除する意思表示を示し,本件講座の教材を返し,受講していないのであるから,実質的な利得がない。
③以上によれば,本件立替払契約が信義則に反し無効であると解することはできないが,Aは加盟店契約に定める禁止行為を行ったのであるから,本件立替払契約締結に際しAと密接に活動した原告は,Aに対しそのような行為を禁止しながら,一方でAに対して精算金の支払義務がないにもかかわらず,それを支払っているのであるから,原告が被告に対し本件請求をすることは,信義則に反し許されないものというべきである。
(3)従って,原告の本件請求が信義則に反し許されないという点において,被告の主張は理由がある。
5よって,原告の請求は理由がないので,棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋簡易裁判所
裁判官河野文孝