hanrei @Wiki H17.11.16 千葉地方裁判所 平成17年(わ)第18号 強盗,強盗殺人,死体遺棄等被告事件



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 毎日のように金集めと称して引ったくりや路上強盗をして遊び暮らしていた被告人4名及びほか1名が,早朝の駅周辺で通行中の当時17歳の女性2名に対してそれぞれ強盗に及び,激しい暴行により抵抗不能となった女性1名を乗用車に乗せてら致するなどした上,犯行が発覚して逮捕されるのを防ぐため口封じとして殺害し,死体を放置されていた冷凍庫に詰め込んで遺棄した強盗,強盗殺人,死体遺棄等の事案につき,成人である被告人2名に対しては無期懲役を,少年である被告人2名に対しては懲役14年又は懲役13年をそれぞれ言い渡した事例


平成17年11月16日宣告
平成17年(わ)第18号等 強盗,強盗殺人,死体遺棄等被告事件

判決
              主文
被告人A1及び同A2を無期懲役に,同A3を懲役14年に,同A4を懲役13年にそれぞれ処する。
未決勾留日数中,被告人A1及び同A2に対し各190日を,同A3及び同A4に対し各150日を,それぞれその刑に算入する。
被告人A1から千葉地方検察庁で保管中の金属バット1本及び木刀1本を没収する。
              理由
(罪となるべき事実)
第1 被告人A2は,B1及びB2と共謀の上,
 1 C1(当時20歳)が上記B2の交際相手の女性に電話をかけてきたことに因縁をつけて金員を喝取しようと企て,平成15年2月27日午前1時30分ころから同日午前2時30分ころまでの間,千葉県市原市a番地所在の市原市立D小学校敷地内において,上記C1に対し,こもごも,所携のアルミパイプを示すなどして威嚇した上,「どう責任とんだ。どうけじめつけるんだ」,「幾ら出せるんだ」,「10出せるか」,「カードあるだろう」などと語気鋭く申し向けて金員の交付を要求し,この要求に応じなければ,同人の身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ,よって,そのころから同日午前2時40分ころまでの間,同所ほか1か所において,同人から現金合計5万円の交付を受けてこれを喝取し
 2 同日午前2時30分ころ,前記D小学校敷地内において,前記C1に同行したC2(当時20歳)に対し,こもごも,所携のアルミパイプを示すなどして威嚇した上,前記B2において,「3日間車を貸してくれ。兄貴の送り迎えに使うから」,「かぎ貸せよ」などと語気鋭く申し向けて普通乗用自動車の交付を要求し,この要求に応じなければ,上記C2の身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ,よって,そのころ,同所において,同人から普通乗用自動車1台(時価約50万円相当)の交付を受けてこれを喝取した。
第2 被告人A4(少年)は,
 1 B3及びB4と共謀の上,同年12月中旬ころ,同県茂原市b番地所在のc住宅3棟駐輪場において,C3所有に係る原動機付自転車1台(時価約3万円相当)を窃取し
 2 平成16年6月1日午前3時ころ,同市d番地所在のC4方において,同人所有に係る原動機付自転車1台(時価約6万円相当)を窃取し
 3 B5及びB6と共謀の上,
(1) 同年7月26日午前3時ころ,同市e番地所在のC5方敷地内において,同所に設置された自動販売機から,同人所有に係るたばこ5箱(販売価格合計1380円)を窃取し
(2) 同日午前3時30分ころ,同市f番地所在のE薬局敷地内において,同所に設置された自動販売機から,F株式会社茂原営業所所長C6管理に係る清涼飲料水6本(販売価格合計900円)を窃取し
(3) 同日午前4時ころ,同市g番地所在のC7方駐車場において,同人所有に係る原動機付自転車1台(時価約5000円相当)を窃取した。
第3
 1 被告人A3(少年)は,公訴棄却前の相被告人A5,B7及びB8と共謀の上,B7の中学校の同級生であったC8(当時30歳)に因縁を付けて金員を喝取しようと企て,同年8月21日午後6時ころ,同県茂原市h番所在のG図書館敷地内において,借金の返済を名目に呼び出した上記C8に対し,「おい,がんたれてんじゃねえぞ。何見てんだよ。何,しかとしてんだよ。どうやって落とし前つけるんだよ。財布,出せよ」などと語気鋭く申し向けるなどして金員の交付を要求し,この要求に応じなければ同人の身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ,よって,即時同所において,同人から現金約1万3000円の交付を受けてこれを喝取し,引き続き,そのころ,同市i番所在のH公園内において,同人に対し,「今からサラ金に行って金を作ってこいよ」などと語気鋭く申し向けて金員の交付を要求し,前同様に同人を畏怖させ,よって,同日午後8時29分ころ,同市j番地所在のI店において,同人から現金20万円の交付を受けてこれを喝取した。
 2 被告人A1,同A2及び同A3は,A5,B7及びB8と共謀の上,前記C8が前記第3の1記載のとおり被告人A3らに金員を喝取されるなどして同被告人らを畏怖しているのに乗じ,上記C8から更に金品を喝取しようと企て,同月25日午後6時ころ,同市k番地の当時のB7方前路上において,上記A2において,左肩を上記C8の右肩に故意にぶつけた上,「痛えじゃん,ぶつかって傷口が開いちゃったじゃねえかよ。どうしてくれるんだよ」,「慰謝料払えよ。金を用意することはできるんだろうな。サラ金に行くか,ぶん殴られるか,埋められるかだぞ」などと語気鋭く申し向けて金員の交付を要求し,この要求に応じなければ,上記C8の身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ,よって,同日午後9時14分ころ,同市l番地所在のJ株式会社K店において,同人から現金50万円の交付を受けてこれを喝取するとともに,「明日までに200万用意しろ」と申し向け,翌26日午後4時ころ,上記B7方において,上記C8に対し,「金をいつまでに作っておけと言ったんだよ。てめえ,なめてんのか。ふざけんなよ」などと語気鋭く申し向け,さらに,同市内を走行中の自動車内において,同人に対し,「これで,買い物できるよね。Lへ行こうね」と申し向けるなどして金品の交付を要求し,前同様に同人を畏怖させ,よって,同日午後5時30分ころ,同市m番地所在のL店において,同人から同人に購入させた財布1個及び指輪3個(購入価格合計12万6000円)の交付を受けてこれを喝取し,引き続き,同日午後9時30分ころから同日午後10時15分ころまでの間,同市n番地所在のM株式会社東側道路上ほか1か所において,同人に対し,こもごも,数回にわたりその顔面及び両腕を手けんで殴打し,両足を足蹴にするなどの暴行を加えた上,「どうやって金を作るんだ」,「明日,親の通帳や印鑑を持ってこい」,「持ってこなかったら埋めるぞ。茂原にいられなくするぞ」などと語気鋭く申し向けて金品の交付を要求し,前同様に同人を畏怖させて金品を喝取しようとしたが,同人が警察に届け出るなどしたため,その目的を遂げず,その際,上記一連の暴行により,同人に加療約2週間を要する頸椎捻挫,顔面・左上腕・両下腿部打撲の傷害を負わせた。
第4 被告人A1及び同A2は,A5と共謀の上,路上を歩行中の女性から金品を強取しようと企て,同年10月23日午後7時20分ころ,同県茂原市o番地付近路上において,同所を歩行中のC9(当時15歳)に対し,被告人A1において,その後方から近付き,いきなり所携の金属バットで上記C9の右手を殴打するなどし,その反抗を抑圧して金品を強取しようとしたが,同人が悲鳴を上げて逃走したため,その目的を遂げず,その際,上記暴行により,同人に加療約1か月間を要する右手打撲,右第二指中節骨骨折,右第三指末節骨骨折等の傷害を負わせた。
第5 被告人4名は,共謀の上,同年11月10日午前零時20分ころ,同県市原市p番地付近路上において,同所を自転車で走行中のC10の左後方から普通乗用自動車で近付き,同人が自転車の前かごに入れていた同人の所有又は管理に係る現金約2万円及び携帯電話機2台ほか12点在中の手提げバッグ1個(時価合計約5万円相当)を引ったくって窃取した。
第6 被告人A1,同A2及び同A3は,A5と共謀の上,同年12月1日午後9時30分ころ,同県市原市O番地付近路上において,同所を自転車で走行中のC11の右後方から普通乗用自動車で近付き,同人が自転車の前かごに入れていた同人の所有又は管理に係る現金約3万7000円在中の財布1個ほか12点在中のトートバッグ1個(時価合計約7万1000円相当)を引ったくって窃取した。
第7 被告人A1,同A2及び同A4は,共謀の上,同月6日午前6時40分ころ,同県茂原市r番地所在のC12方敷地内において,同所に駐車中の同人管理に係る普通乗用自動車1台(時価約30万円相当)を窃取した。
第8(中略)
第9 被告人4名は,共謀の上,同月20日午後7時45分ころ,同県茂原市s番地付近路上において,同所を自転車で走行中のC13の左後方から原動機付自転車で近付き,同人が自転車の前かごに入れていた同人の所有又は管理に係る現金約5300円及び財布1個ほか25点在中の手提げバッグ1個(時価合計約393万7500円相当)を引ったくって窃取した。
第10 被告人4名は,A5と共謀の上,路上を歩行中の女性から金品を強取しようと企て,同月21日午前零時50分ころ,同県茂原市t番地所在のN跡地付近路上において,同所を歩行中のC14(当時41歳)に対し,A5においてその肩付近をつかんでC14をその場に転倒させ,被告人A4において所携の木刀でその腰部及び両下腿部を多数回殴打し,被告人A1,同A3,同A4及びA5において,こもごも,その胸部を多数回足蹴にするなどの暴行を加えてその反抗を抑圧した上,C14の所有又は管理に係る現金約6万6900円,米ドル紙幣約25枚(約2401ドル),モンゴル紙幣1枚(100トゥグルグ)及び財布1個ほか約21点在中のショルダーバッグ1個(時価合計約2万8100円相当)を強取し,その際,上記暴行により,同人に全治約6週間を要する右肋骨骨折,頭部・左下腹・左腰・右股関部・左膝打撲傷等の傷害を負わせた。
第11 被告人4名は,A5と共謀の上,
 1 路上を歩行中の女性から金品を強取しようと企て,同月22日午前4時20分ころ,同県茂原市u番地付近路上を歩行中のC15(当時17歳)及びC16(当時17歳)を認めるや,
(1) 上記C15に対し,A5において,その背後から後頸部付近を手で押して上記C15をその場にうつ伏せに転倒させ,背中に馬乗りになり手で口をふさぐなどの暴行を加えてその反抗を抑圧した上,同人の所有又は管理に係る現金約7000円及び財布1個ほか13点在中の手提げバッグ1個(時価合計約11万円相当)を強取し
(2) C16に対し,被告人4名において,こもごも,その顔面,腹部等を多数回足蹴にするなどの暴行を加えてその反抗を抑圧した上,同女所有に係る現金約2000円及び財布1個在中のバッグ1個(時価合計約8000円相当)を強取し,さらに,同女を同所付近に停車中の普通乗用自動車に運び込み,同車を発進させて同市v番付近のトンネル内に至り,同所において,同女がA5の顔見知りであることが判明したことから,同女に対する上記犯行等の発覚を防ぐため同女を殺害しようと決意し,同車で同女を同県東金市w番所在の元「O」敷地内に連行した上,同日午前6時30分ころ,同所において,同女の頸部にその場にあった電気コードを巻き,その両端を二手に分かれて強く引っ張って頸部を絞め付け,よって,そのころ,同所において,同女を頸部圧迫により窒息死させて殺害し
 2(中略)
 3 同日午前6時30分ころ,前記元「O」敷地内において,同所に置かれていた冷凍庫内にC16の死体を押し込めて放置し,もって死体を遺棄した。
(法令の適用)
罰 条
 判示第1の1及び2の各所為につき いずれも刑法60条,249条1項
 判示第2の1,第2の3(1)ないし(3),第5ないし第7及び第9の各所為につき いずれも刑法60条,235条
 判示第2の2の所為につき 刑法235条
 判示第3の1の所為につき 包括して刑法60条,249条1項
 判示第3の2の所為のうち  
  恐喝の点につき いずれも,包括して刑法60条,249条1項
  傷害の点につき いずれも刑法60条,平成16年法律第156号による改正前の刑法204条(行為時においては上記改正前の刑法204条に,裁判時においてはその改正後の刑法204条に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)
 判示第4及び第10の各所為につき いずれも刑法60条,平成16年法律第156号附則3条1項,同法による改正前の刑法240条前段(所定刑中有期懲役刑の長期は,上記附則3条1項により上記改正前の刑法12条1項による。)
 判示第8の所為につき 刑法60条,241条前段(所定刑中有期懲役刑の長期は,行為時においては上記改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によることになるが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)
 判示第11の1(1)の所為につき いずれも刑法60条,236条1項(所定刑中有期懲役刑の長期は,上記のとおり軽い行為時法の刑による。)
 判示第11の1(2)の所為につき いずれも刑法60条,240条後段
 判示第11の2の所為につき いずれも,包括して刑法60条,上記改正前の刑法176条前段(行為時においては上記改正前の刑法176条前段に,裁判時においてはその改正後の刑法176条前段に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)
 判示第11の3の所為につき いずれも刑法60条,190条
科刑上一罪の処理
 判示第3の2につき いずれも刑法54条1項前段,10条(いずれも1罪として犯情の重い恐喝罪の刑で処断)
刑種の選択
 判示第4の罪(被告人A1,同A2),判示第8の罪(被告人A1)及び判示第10の罪(被告人4名)につき いずれも有期懲役刑を選択
 判示第11の1(2)の罪につき(被告人4名) いずれも無期懲役刑を選択
併合罪の処理(被告人4名)
 いずれも刑法45条前段,46条2項(判示第11の1(2)の罪についての無期懲役刑以外の刑(没収を除く。)を科さない。)
宣告刑の決定(被告人A3,同A4)
 いずれも少年法51条2項(有期懲役刑を科す。)
未決勾留日数の本刑算入(被告人4名)
 いずれも刑法21条
没収(被告人A1)
 いずれも刑法19条1項2号,2項本文(金属バットは判示第4の,木刀は判示第10の,各犯罪行為の用に供した物)
訴訟費用の処理(被告人A1,同A2,同A3)
 いずれも刑事訴訟法181条1項ただし書
(争点に対する判断)
 被告人4名の各弁護人は,それぞれ,判示第11の1(2)の事実(以下,同事実の被害者を「本件被害者」,同事実に係る強盗を「本件強盗」,同事実に係る殺人を「本件殺人」という。)について,本件殺人は,本件強盗行為の終了後,わいせつ行為をする目的で本件被害者をら致した後新たに生じた殺意に基づいて行われたものである上,両行為の間には時間的・場所的な隔たりがあるから,本件殺人は本件強盗行為の終了後これとは別の機会に行われたものであって,強盗殺人罪は成立しない旨主張するので,以下,判示のとおり強盗殺人罪の成立を認めた理由を説明する。
1 前提となる事実
  関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1) 本件殺人の経緯
  ① 被告人4名及びA5(以下「被告人ら5名」という。)は,平成16年9月ないし10月ころから,通行中の女性をねらった引ったくりや強盗を繰り返していたが,同年12月22日も,千葉県茂原市u番地P駅付近で乗用車(ワゴン車)で移動しながらしばらくその対象を物色した末,同日午前4時20分ころ,カラオケ店から出てきた本件被害者を含む女性2名(以下「本件被害者ら」という。)が同駅付近の路地に入ったのを認めて同女らを襲うことを決め,全員同車を降りて判示第11の1(1)記載の強盗及び本件強盗に及んだ。
  ② そして,本件被害者らからそれぞれバッグを強取して上記車両に戻る際,被告人A2が,同A4に手伝わせて,激しい暴行により完全に抵抗不能の状態となっていた本件被害者を同車後部席に運び込んだ後,被告人ら5名は,被告人A1の運転する同車で直ちに本件強盗の現場を離れた。
  ③(中略)
  ④ A5は,本件被害者から聞いた出身中学校や名前などから同女が中学校の同級生の妹かもしれないと思い,トンネル内において,(中略)同日午前5時ころ,本件被害者の顔を確かめて,同女がA5の中学校の同級生の妹で,顔見知りであることを確認し,その旨被告人4名にも告げた。そこで,被告人ら5名は,トンネル内で本件被害者をどうするか話し合い,その結果,「殺すしかない」旨のA5の発言に全員同調し,口々に,海に沈める,山に埋める,ガソリンを掛けて燃やすなどと殺害方法を提案するなどした。
  ⑤ 被告人ら5名は,殺害方法が決まらないまま,とりあえずトンネルから移動することとし,再び本件被害者を上記車両に乗せて,トンネルから走行距離で約19.3㎞離れた判示元「O」敷地内(以下「O」という。)に移動し,同日午前6時ころから同所で更に具体的な殺害方法や死体の処理方法を相談した末,同日午前6時30分ころ,判示第11の1(2)記載のとおり,その場にあった電気コードで本件被害者の頸部を絞め付けて同女を殺害した。
  ⑥ 本件被害者は,②のとおり上記車両に運び込まれた後も,殺害されるまで終始完全に反抗を抑圧された状態であった。
(2) 本件被害者をら致した目的並びに殺害の共謀時期及び殺害の目的について
  ア 本件被害者をら致した目的
検察官は,本件被害者をら致した目的について,一次的には,本件強盗の際本件被害者に顔を見られたかもしれないとの不安から強盗の犯行の発覚を防ぐためであった旨主張しているので,この点について検討する。
 本件強盗の後本件被害者を前記車両に運び込む時点で被告人ら5名全員の間で同女をら致することについての合意があったことは認められず,同女をら致したのは被告人A2の判断によるものと認められるところ,本件強盗の前に本件被害者らを見掛けた際,被告人A2と同A1が,真意はともかく,本件被害者を強姦する趣旨の発言をしたこと,(中略)本件被害者がA5の顔見知りではないかとの懸念が生じたのは,前記のとおり,同女をら致した後同人から通学している中学校などを聞き出した結果によるものであって,同女をら致する時点では,被告人ら5名はいずれも,同女が被告人ら5名のいずれかを知っているかもしれないなどとは全く考えていなかったことに照らすと,本件被害者をら致した被告人A2の目的の中心は同女に対し(中略)をすることにあったと認めるのが相当である。そして,本件強盗の直前に被告人A2らの上記発言があったこと(中略)などに照らすと,他の被告人らやA5においても,本件被害者を本件車両に運び込んだ後間もなくわいせつ行為をする目的で同女をら致したことを理解しこれに同調する意思であったと認められる。この点について,被告人ら5名がいずれも,捜査段階において,本件被害者をら致したのは同女に自分たちの顔を見られた可能性があるので警察に通報されるのを防ぐためであるとか,そのように理解したなどと供述している上(A5は,そのほか,強姦するためかもしれないとも思った旨供述している。),被告人A2が当公判廷においてもそういう点もあったと思う趣旨の供述をし,同A1がトンネルに着く前の走行中の車内で「顔を見られた」という話が出た旨供述していることからすると,本件被害者が警察に通報することにより本件強盗が発覚するのを防ぐという考えが全くなかったとはいえないものの,わいせつ目的にほとんど触れられていない被告人らの上記捜査段階における供述は,やや不自然な感があり,にわかに信用できず,本件被害者を上記車両に乗せてら致した主たる目的が上記のような本件強盗の発覚を防ぐ点にあったとは認め難い。
  イ 殺害の共謀の時期及び殺害の目的
 本件被害者を殺害した理由につき,被告人ら5名はいずれも,捜査段階及び公判段階を通じ一貫して本件被害者がA5の顔見知りであると分かったことから,そのまま本件被害者を帰せば本件強盗及び本件強制わいせつの被害を警察に通報されて逮捕されることになると思い,逮捕されないようにするためには本件被害者を殺害するしかないと考えて,口封じのために本件被害者を殺害した旨供述しており,前記判示第11の一連の犯行の経過をも併せ考えれば,本件被害者を殺害した理由が,同女に対する本件強盗及び本件強制わいせつの各犯行の発覚を防ぐことにあったことは明らかである。そして,被告人ら5名が本件被害者とともにトンネルを出発したのは,同日午前5時30分ころではないかと思われることから,遅くともそのころまでに,トンネル内で,被告人ら5名の間で本件被害者を殺害する旨の共謀が成立したと認められる。
2 当裁判所の判断
(1) 以上のとおり,被告人ら5名は,本件被害者からバッグを強取し本件強盗行為が終了した後,その際の暴行により完全に反抗を抑圧されている本件被害者を被告人らの乗用車に運び込んで本件強盗の現場を離れ,その反抗抑圧状態の継続下においてわいせつ行為に及んだ後,本件強盗の終了時点から40分くらい経過した後に,本件強盗の現場から走行距離にして約10km離れた地点で,本件被害者に対する本件強盗等の犯行の発覚を防ぐ方策を相談し始め,遅くともその30分くらい後に本件被害者殺害の共謀を遂げ,引き続き反抗を抑圧された状態の本件被害者を同車に乗せて移動し,本件強盗の終了時点から2時間10分くらい後に,本件強盗の現場から走行距離にして約29.3km離れた地点で,本件被害者を殺害したものである。
(2) ところで,強盗致死傷罪は,強盗の機会には人を死傷させるような残虐な行為を伴うことが多いことから,強盗犯がその機会に人を死傷させる行為を特別の犯罪類型としたものと考えられ,強盗殺人罪が成立するためには,当該殺人行為が強盗の機会に行われたことを要し,かつそれで足りると解すべきである。そして,強盗行為と殺人行為が時間的・場所的に離れていたとしても,そのことから直ちに強盗の機会性が失われるものではなく,両行為の間に時間的・場所的乖離がある場合において当該殺人が強盗の機会になされたものといえるかどうかは,上記強盗致死傷罪が設けられた趣旨に照らし,強盗行為と殺人の被害者との関係,強盗行為と殺人行為との時間的・場所的乖離の程度,強盗行為により生じた状況の継続性等の客観的事情及び殺人の犯意の発生時期,殺人の動機ないし目的等の主観的事情を総合して,客観的・主観的に殺人行為と強盗行為との間に強い関連性が認められるかどうかという観点から判断すべきものと解される。
  各弁護人は,本件強盗と本件殺人との間に強制わいせつという別の犯罪が介在しており,被告人ら5名が上記別の犯罪を犯す目的で本件強盗の現場を離れたことを重視しているようであるが,強盗犯が強盗行為の終了後その現場において強盗行為により反抗を抑圧されている被害者を強姦し,その後に殺意を抱いて強姦行為に続いて被害者を殺害した場合に,強盗強姦罪のほか強盗殺人罪が成立することは明らかであり,強盗の被害者を強姦するためにら致し,同様に強姦後に殺害した場合でも多くの場合強盗強姦罪のほか強盗殺人罪が成立すると解されるのであって,強盗と殺人の間に別の犯罪が介在していることや別の犯罪を犯す目的で強盗の現場を離れたことから直ちに強盗の機会性が失われるとはいえない。そして,このことは,上記別の犯罪が強姦であるか強制わいせつであるかによって異なるものではないというべきであり,重要なのは,強盗行為と殺人の被害者との関係,強盗行為と殺人行為との時間的・場所的乖離の程度,強盗行為により生じた状況の継続性,殺人の動機ないし目的等であると考えられる。
(3)ア そこで,更に検討すると,本件においては,強盗の被害者と殺人の被害者は同一である上,被告人ら5名は,本件強盗行為によって完全に反抗を抑圧された状態の本件被害者を乗用車に運び込み,同車を走行させてかかる反抗抑圧状態を維持,継続し,トンネル内においてももはや反抗する気力を喪失している本件被害者を被告人ら5名で取り囲むなどして,本件強盗行為の後も終始直接本件被害者を支配下に置くことにより,本件強盗行為による反抗抑圧状態を維持,継続して本件殺人に至っている。このように強盗の被害者を引き続き直接の支配下に置くことにより強盗行為によって生じた反抗抑圧状態が維持,継続されている場合には,強盗の現場における犯罪状況が延長されているともいうことができ,強盗との時間的・場所的乖離が強盗の機会性の有無に及ぼす影響の度合は,単純に犯人が強盗の現場を離れ,強盗との客観的つながりが中断した場合とは異なるというべきであり,両者を同列に論ずるのは相当でない。。
    そして,本件では,被告人ら5名が本件強盗の現場からトンネルまで移動したのは,本件被害者と行動を共にしていた判示第11の1(1)の強盗の被害者である前記C15が警察に通報するおそれが高かった上,本件強盗の現場が駅に近く通行人もいたことから,直ちにその場を離れる必要があったからであり,移動手段が乗用車であることを考えれば,トンネルまでの移動距離はさほど離れているとはいえず,本件強盗行為の後,トンネル内でA5が被告人4名に本件被害者が顔見知りであることを告げ,本件被害者をどうするかの相談をし始めた時点までに40分くらいが経過している点も,上記のとおり本件被害者は本件強盗の被害者であり,その反抗抑圧状態が維持,継続されていることなどに照らすと,強盗の機会性を失わせるほどのものとはいい難い。
    また,被告人ら5名がその後もトンネル内にとどまったのは本件被害者をどうするかの相談をするためであって,その結果被告人ら5名は同女殺害の共謀を遂げるに至っており,トンネルからOまでの移動についても,車両を運転していた被告人A1の供述によれば,トンネルが本件強盗現場とさほど離れておらず,上記C15の通報等により強盗事件の捜査が開始されている可能性があったことから,茂原市から離れ,強盗等の犯行の捜査が及ぶ可能性のより低い場所で殺害を実行するためであって,本件被害者の殺害を決意した後のその実行のための移動であると認められる。そうすると,トンネル内で本件被害者をどうするかの相談をし始めてからの時間の経過及び移動は本件被害者の殺害に直接結び付くものということができ,上記相談をし始めてから殺人の共謀が成立するまでの時間の経過は長くても約30分程度,その後殺害現場まで移動し殺害の実行に至るまでの時間は約1時間程度であることをも考えると,これらの間の時間的・場所的乖離を重視するのは相当でない。
   以上によれば,本件殺人は,強盗行為の終了後に主としてわいせつ行為をする目的で強盗の現場を離れ,強制わいせつ行為の後に生じた殺意に基づくものとはいえ,本件強盗行為により生じた状況の継続性はもとより,本件強盗との時間的・場所的継続性もこれを肯定することができるというべきである。
 イ そして,本件殺人はまさに本件強盗の被害者を殺害することによって本件強盗等の犯行の発覚を防ぐために行われたのであり,その点で本件強盗と本件殺人の間に密接な関連があることは明らかである。
 ウ 以上によれば,本件殺人は,客観的にも主観的にも本件強盗と強い関連性を有するということができ,本件強盗の機会に行われたものと認めるのが相当である。
(4) よって,本件殺人は本件強盗とは別の機会の新たな決意に基づく犯行であり,強盗の機会の殺人ではない旨の各弁護人の前記主張は採用できない。
(量刑の理由)
第1 本件事案の概要
   本件は,被告人4名がA5とともに連続して敢行した強盗傷人(判示第10)並びに強盗,強制わいせつ,強盗殺人及び死体遺棄(判示第11の1ないし3。以下これらの犯行を総称して「本件強盗殺人等」という。)のほか,被告人A1及び同A2又は被告人A1がそれぞれA5とともに犯した強盗傷人(判示第4)及び強盗強姦(判示第8)並びに被告人4名の全部又は一部が関与した恐喝3件(判示第1の1,2,第3の1),恐喝・傷害(判示第3の2)及び窃盗9件(判示第2の1ないし3,第5ないし第7,第9)から成る。
第2 本件各犯行に至る経緯等
   被告人A1と同A2は幼なじみの同級生で不良仲間であり,平成11年に強盗致傷罪等の共犯事件によりそれぞれ少年院送致の処分を受けた。被告人A1は,少年院を仮退院した後父が組長となっている暴力団の組員となり(その後破門になっている。),仮退院中に窃盗事件を起こして平成15年1月保護観察処分を受けた。他方,被告人A2は,少年院を仮退院した後,強盗致傷罪等により再度中等少年院に送致され,平成14年9月仮退院した。その後,両被告人は平成15年春ころから再び交遊するようになり,被告人A2は,その間判示第1の各恐喝の犯行を敢行した。被告人A3は,被告人A1の弟であり,小学生のころから兄である被告人A1の影響でシンナーを吸入し,中学生ころから被告人A1とともに暴走行為に加わるなど早くから非行を繰り返し,平成14年に窃盗罪により2度にわたり保護観察処分に付されたほか,平成15年には恐喝罪により初等少年院送致の処分を受けた。そして,平成16年4月に少年院を仮退院した後もすぐにシンナーを吸入するとともに,同年夏ころには,不良少年の集団であるいわゆるカラーギャングを結成してリーダーとなった。被告人A4は,中学3年の夏ころから生活が乱れ始め,平成16年夏ころに掛けて判示第2のバイク盗や自動販売機荒らしを繰り返した後,小学校の同級生であった被告人A3と交遊するようになり,同被告人とともに上記カラーギャングを結成してそのサブリーダーとなった(被告人A4は,結成後間もなく,暴力団組員になる決意をして同カラーギャングをやめた被告人A3に替わってそのリーダーとなった。)。
   そして,暴力団組員であった被告人A1が同カラーギャングのいわゆる後見人となったこともあって,被告人4名は,同年6月に少年院を仮退院した後前記被告人A1の父の下で配管工等をしていたA5とともに,一緒に行動するようになり,同年9月ないし10月ころからは,女性であれば抵抗する力が弱く,足も遅いことから簡単にバッグ等を奪うことができ,捕まることもないと考えて,遊興費を得るため,金集めと称して通行中の女性をねらった引ったくりや強盗(以下「引ったくり等」ということがある。)を繰り返して遊び歩いていた。判示第3以下の犯行は,このような生活状況の中で連続的に敢行されたものであり,A5の母らから誘われて加担した判示第3の恐喝等以外は,いずれも,このような引ったくりないし路上強盗あるいはこれに関連し(判示第7は,引ったくり等の犯行に使用するための乗用車の窃盗)又はこれに端を発する犯行である。そして,引ったくりに際してはバイクや乗用車を使用し(判示第5,第6,第9),路上強盗に際しては,金属バットや木刀を使用し(判示第4,第10),殊に,同年12月ころからは,路上強盗に際し,被害者の首を強く絞め付けて失神させ,強取後被害者を乗用車でら致して輪姦し(判示第8),あるいは,路上強盗の際,よってたかって木刀や足で激しい暴行を加えて重傷を負わせるなど(判示第10),凶悪さを強め,ついには,同月22日,路上強盗に端を発する判示第11の強盗殺人等の犯行を敢行するに至った。
第3 本件強盗殺人等について
   以下,まず,その法定刑及び罪質にかんがみ量刑上最も重要な被告人4名に係る判示第11の本件強盗殺人等の犯行について検討する。
 1 本件強盗殺人等の概要及び経過
   本件強盗殺人等の犯行は,当時毎日のように金集めと称して引ったくりや路上強盗をして遊び暮らしていた被告人ら5名が,判示第10の強盗傷人の犯行の翌日,前夜から遊んだ後遊興費等を得るため千葉県内のP駅周辺を乗用車で走行しながらバッグを奪えそうな女性を物色し,通行中の本件被害者ら(いずれも当時17歳の女性)を認めて,同女らに対しそれぞれ強盗に及び,激しい暴行により抵抗不能となった本件被害者を乗用車に乗せてら致し,ゲーム感覚で集団でわいせつ行為を繰り返した挙げ句,本件被害者が被告人ら5名のうちの1名(A5)の顔見知りであることが分かったことから,これらの犯行が発覚して逮捕されるのを防ぐため,口封じとして本件被害者を殺害し,その死体を放置されていた冷凍庫に詰め込んで遺棄したというものである。
 2 犯行の態様等
(1) 各強盗行為の態様をみると,被告人ら5名は,悲鳴を上げて逃げ出した本件被害者らを追い掛け,A5がそのうちの1名を背後から押し倒し,馬乗りになって手で口をふさぐなどして制圧し,本件被害者に対しては,被告人A2が背後から首付近に両腕をかけ,激しく抵抗する同女に対し,被告人A1が小中学校当時習ったことのある空手の技を使って顔面付近を2回くらい強く蹴り付け,さらに,被告人A2らにおいても同A1の強烈な暴行により抵抗する気力を失った同女に対し,その顔面や腹部等を多数回蹴り付けて,それぞれバッグを強取したものである。その態様は誠に粗暴かつ凶悪であるが,特に本件被害者への暴行は強烈であり,その激しさは本件被害者の身体に多数の表皮剥脱や皮下出血のほか,肝内挫傷が存することからも明らかである。
(2)(中略)
(3) そして,本件殺人行為は,これらの犯行後本件被害者がA5の知人であることが判明したことから,口封じのためその殺害を決意した後,ホテルの廃墟(O)に移動し,同女の衰弱状態を確認するために被告人A2において同女の顔を蹴り,同A1において体にたばこの火を接触させるなどしながら,全裸のままの本件被害者を前にしてその殺害方法等を相談した末,その場にあった電気コードで絞殺することとし,同コードを首に巻き付け,A5が本件被害者の体を支え,被告人4名が二手に分かれて同コードを力一杯引っ張り,同コードが切れると,再度同様にして同コードで頸部を絞め付けて,ついに窒息死させたものである。被告人ら5名は,同コードが切れた際,本件被害者がうめき声を上げ,途切れ途切れの声で必死に「助けて」などと命乞いをしたのも意に介さず,「今更おせえよ」などと言って,被害者の鼓動や失禁を確認しつつ,死亡したことが確認できるまで首を絞め続けたもので,本件被害者の殺害は,自らの保身のためには人を殺害することも意に介さない冷酷非情な動機に基づく誠に残忍なものである。
  そして,被告人ら5名は,陵辱を加えた挙げ句に非道にも殺害した本件被害者の死体を,全裸のままその場にあった冷凍庫内に入れて放置したもので,その行為には,本件被害者を殺害したことに対する後悔ないし悔悟の念や死者に対する畏敬の念は全く感じられない。
3 このように,本件強盗殺人等の一連の犯行は,他人の痛みや苦しみに思いをいたすことのない無軌道な生活の果てに,被害者の人格や尊厳を全く無視し,自己らの欲望の満足と保身のみを意図して敢行した身勝手極まりない冷酷非情な犯行であり,もとより酌量の余地など皆無である。しかも,被告人らは,このような重大かつ残忍な犯行を遂行しながら,その後,本件被害者の衣服等を投棄し口裏を合わせるなどの罪証隠滅工作をし,強取した金品を分配し,帰宅後一眠りをして平然と食事をするなど,本件強盗殺人等の犯行を行ったことを深刻に受け止めている様子がみじんもうかがわれず,犯行後の情状も甚だ悪い。
 4 本件被害者の身上,遺族の処罰感情等
(1) 本件被害者は,仲のよい3人姉妹の2番目として,両親や祖父母の深い愛情を受けて成育し,中学生のころから一時期両親に反抗的な態度をとったことがあったものの両親の愛情のもとに立ち直り,昼間アルバイトをしながら定時制高校に通い,高校では教科書を無償で支給される奨学生に選ばれるほど勉学に励むとともに,中学生のころから交際していた男性と結婚を約束するなど,将来に様々な夢や希望を抱きつつ,充実した日々を送っていたものである。それにもかかわらず,何らの落ち度もなく,突如被告人ら5名に襲われて強盗の被害に遭い,その際内臓にまで損傷を負うほどの激しい暴行を受けた上,陵辱の限りを尽くされ,恐怖と苦痛にさいなまれながら,わずか17歳の若さで生命を断たれたもので,その悔しさや無念さ,受けた精神的・肉体的苦痛には想像を絶するものがある。
(2) 最愛の娘,大好きな妹姉,孫そして将来を誓い合った恋人を突然理不尽かつ残酷な犯行により奪われた両親,姉妹,祖母らの遺族及び恋人の深い悲しみと怒りの念は筆舌に尽くしがたい。特に,深く惜しみない愛情をもって本件被害者を見守り,育ててきた両親は,毎日のように生前の本件被害者の姿を思い出し,現在も毎朝墓前に御飯を持って行って一緒に食事をするなどしており,その癒えることのない喪失感や苦痛には慰める言葉など見当たらない。両親らが,被告人ら5名全員に対し,極刑を希望する旨,峻烈な処罰感情を明らかにしているのも,十分理解できる。
(3) 加えて,本件強盗殺人等の犯行が地域社会に与えたであろう衝撃も軽視することはできない。
第4 強盗傷人及び強盗強姦の各犯行について
 1 判示第10の強盗傷人の犯行について
   同犯行は,被告人4名がA5とともに,本件強盗殺人等の前日に敢行したもので,その暴行態様は,通行中の当時41歳の女性に対しいきなり肩付近をつかんでその場に転倒させ,木刀で下半身をめった打ちにし,さらにこもごも多数回足蹴にするといった容赦のない激しいものである。被害者は,全治約6週間を要する右肋骨骨折等の重傷を負った上,留学中の娘に送る学費や大切な家族の写真等が在中したバッグを奪われており,犯行により受けた恐怖感や精神的衝撃も甚大である。しかるに,被害弁償等慰謝の措置は全く講じられておらず,当然のことながら,その処罰感情は厳しい。
 2 判示第8の強盗強姦の犯行について
   (中略)同犯行は,自らの欲望を満たしたいがためだけの身勝手極まりない動機により,被害者の人格を踏みにじった誠に卑劣で凶悪な犯行であり,被害者は,加療約4週間を要する両肋軟骨骨折等の重傷を負ったほか,精神的衝撃も甚大である。加えて,被告人A1らは,犯行後,被害者に対し「警察に言ったら,お前の家まで行くぞ。(中略)されたことばらすぞ」などと脅して口止めをした上,被害者の車両に付いた指紋を消すため消火器を噴射して車内に消火剤をまくなど犯行後の情状も悪い。しかるに,被害者に対する慰謝の措置は全く講じられていない。
 3 判示第4の強盗傷人の犯行について
   同犯行は,被告人A1及び同A2がA5とともに敢行したもので,夜間路上を歩行中の当時15歳の少女に対し,金属バットでいきなり殴りかかって金品を強取しようとした誠に粗暴かつ危険なものであり,傷害の結果は加療約1か月間を要する手指の骨折等と重い。また,被害者が大声を上げて逃げたことから強取の点は未遂に終わったものの,同犯行により被害者が受けた恐怖感も大きい。しかるに,同犯行についても慰謝の措置は講じられていない。
第5 その余の各犯行について
 1 判示第3の各犯行は,被告人A3において,実母及び叔父が計画した恐喝に協力することを持ち掛けられたA5に誘われて金銭欲しさからこれに加担し,当時30歳の男性に因縁を付け,脅迫して所持金を喝取し,さらにコンビニエンスストアのATMで20万円を引き出させてこれを喝取した上,更なる恐喝が見込めたことから,A5に誘われた被告人A1及び同A2も加わって,4日後に,被告人A2らにおいて更に因縁を付けて脅迫し,消費者金融会社で50万円を借り受けさせてこれを喝取するとともに,さらにその翌日被害者にクレジットカードで買い物をさせて商品を喝取し,なおも金品を要求してこもごも殴る蹴るの暴行を加えて加療約2週間を要する頸椎捻挫,顔面打撲等の傷害を負わせたものである。これらの犯行は,気弱な被害者の性格につけ込んで事前に共犯者らと明確な役割分担を決めた上で敢行した計画的なものである上,判示第3の1の犯行の際,被害者が恐怖から持病のてんかんの発作を起こしたにもかかわらず,引き続き執ように金員の交付を要求し,さらに多人数で再度激しい暴行を加えて金品を要求するという誠に卑劣で悪質なものである。財産的被害は,判示第3の1の犯行が現金合計約21万3000円,判示第3の2の犯行が現金50万円及び物品被害額合計12万6000円と多額に上っているが,弁償等慰謝の措置は全く講じられていない。
 2 判示第5ないし第7及び第9の各窃盗の犯行は,被告人4名のうちの全部又は一部に係るもので,乗用車又は原動機付自転車で追い抜きざま走行中の自転車の前かごからバッグを奪い(判示第5,第6,第9),あるいは引ったくり等の犯行に使用するため乗用車を盗んだ(判示第7)というものである。引ったくりの態様は危険なものであり,これらの窃盗による被害は,被告人4名に係る判示第5及び第9が,現金合計約2万5300円,物品被害額合計約398万7500円もの多額に上っており,その余の各窃盗の被害額も約10万8000円又は約30万円と少なくない。
 3 被告人A2に係る判示第1の各恐喝及び同A4に係る判示第2の各窃盗の犯行は,いずれも,被告人4名が行動を共にするようになる前のものであるが,判示第1の各犯行は3名でアルミパイプを示すなどして現金や乗用車を喝取した悪質なものであり,判示第2の各犯行は,単独又は共犯による自動販売機荒らし2件,バイク盗3件を内容とする甚だ安易かつ自己中心的なものである。
第6 各被告人の個別の情状及び刑事責任について
 1 被告人A1について
   被告人A1は,本件強盗殺人等(判示第11)のほか,強盗強姦1件(判示第8),強盗傷人2件(判示第4,第10),恐喝・傷害1件(判示第3の2),窃盗4件(判示第5ないし第7,第9)の各犯行を敢行しており,被告人ら5名の全部又は一部による法定刑の重い重大事犯のすべてに関与している。
   被告人A1は,判示第11の本件強盗殺人等の犯行においては,小中学校当時4年間習っていた空手の技を使って,下を向いていた本件被害者の頭が後ろにのけぞるほど強く,その顔面を2回くらい蹴り付けるなどの激しい暴行を加え,(中略)本件被害者がA5の顔見知りと知ってからは,殺害するほかない旨のA5の発言にさして迷いも見せず同女の殺害を決め,殺害場所を自ら選定して移動し,殺害に際しても,衰弱状態を確かめるため本件被害者の体にたばこの火を接触させるなどして平然と殺害を遂行しており,重大犯罪を実行していることに対する心理的な動揺は全くうかがわれず,冷酷非情さが顕著である。(中略)被告人ら5名のグループは,その中で明確な上下関係があったわけではないが,被告人A1は,同A2とともに成人で他のメンバーよりも学年が上である上,同A3の兄であり暴力団組員としての経歴があったことから,自ずとその中で中心的な立場にあり,本件強盗殺人等の犯行においても,被告人A1の発言等が主導性を発揮する場面が少なくなく,量刑上最も重きを成す本件強盗殺人等において同被告人の果たした役割は,被告人A2らとともに被告人ら5名の中で最も重大であったということができる。
   また,被告人A1は,判示第8の強盗強姦の犯行においては,(中略)被害者を脅して口止めをし,犯行後被告人A3らに指示して消火器を持って来させ,被害者の乗用車内に消火剤をまくなど罪証隠滅行為も主導的かつ積極的に行っている。また,判示第4の強盗傷人の犯行においては,自ら金属バットで被害者を殴打して判示の傷害を負わせるなど重要な役割を果たし,判示第10の強盗傷人の犯行においても自らも暴行に加わったほか,判示第3の2の恐喝・傷害の犯行においては,共犯者に誘われてこれに加担した上,積極的に脅迫や暴行を加え,その余の各窃盗の犯行においても,犯行あるいは逃走に使用する乗用車の運転役や見張り役を担当して,それぞれ積極的かつ重要な役割を果たしている。
   被告人A1は,5歳のころに両親が離婚し,当初母の下で生活した後,平成6年ころからは暴力団の組長をしていた父の下で生活していたところ,中学校卒業後の平成11年に被告人A2とともに犯した強盗致傷罪等により初等少年院送致の処分を受け,少年院仮退院後も真面目に稼働することなく,父が組長となっている暴力団の組員となり,仮退院中に犯した窃盗罪により保護観察処分に付され,他の暴力団関係者の自動車を盗んだことで所属暴力団を破門になった後は,他の被告人らと遊び暮らしていた。被告人A1の生活態度は甚だ不良であり,度々更生の機会を与えられながら,自己の問題性を省みることも更生の努力をすることもなく,保護観察中にもかかわらず本件各犯行を累行しており,同被告人の暴力や犯罪に対する抵抗感,罪悪感は甚だ希薄であって,規範意識の欠如は著しい。
   以上の諸点に照らすと,本件強盗殺人等については,本件被害者の殺害はあらかじめ計画したものではないこと,判示第4の強盗傷人については強取の点は未遂に終わったこと,各犯行の被害品の中には,一部被害者に返っているものや押収されているものがあることのほか,被告人A1がいまだ21歳の若年であり,前科はないこと,一応反省の弁を述べていることなど同被告人のため酌むべき事情を十分考慮しても,同被告人の刑事責任は極めて重大である。
 2 被告人A2について
   被告人A2は,本件強盗殺人等(判示第11)のほか,強盗傷人2件(判示第4,第10),恐喝2件(判示第1),恐喝・傷害1件(判示第3の2),窃盗4件(判示第5ないし第7,第9)の各犯行を敢行している。
   同被告人は,判示第11の本件強盗殺人等の犯行においては,真っ先に本件被害者を襲い,激しく抵抗されたことに腹を立てて顔面や腹部を多数回蹴り付けるなどの激しい暴行を加えたほか,(中略)など非道な行為をしている。また,殺害に際しては,自らもコードを引っ張って殺害の実行に加わったほか,A5に対し死亡の際尿が漏れるのを確認するよう指示している。そして,同被告人が本件被害者を乗用車に運び込んでいなければ,本件殺人には至らなかったということができ,同被告人は,被告人A1と同学年であり,暴力団組員としての経歴のある同被告人とは互いに兄弟と呼び合っている仲であることから,同被告人とともに被告人ら5名のグループの中で自ずと中心的な立場にあったことをも考えると,量刑上最も重きを成す本件強盗殺人等において被告人A2の果たした役割は,同A1らとともに被告人ら5名の中で最も重大であったというべきである。加えて,被告人A2は,本件強盗殺人等の犯行の当日同A1方を訪ねた警察官から事情聴取を受けた際,偽名を使ってその場を逃れ,知人に自首を勧められながらも1週間近く逃亡していたもので,犯行後の行動も甚だ芳しくない。
   また,被告人A2は,判示第3の2の恐喝・傷害の犯行においては,共犯者に誘われてこれに加担した上,その提案により,わざと被害者にぶつかって,因縁を付けるための演技をしたほか,脅迫も加え,判示第1の各恐喝の犯行においては,判示第1の1の被害者の言動に立腹していた共犯者に安易に同調して同被害者に暴行を加えることに加担した上,被害者らの畏怖に乗じて金員を喝取することを共犯者らに提案し,積極的に脅迫行為を行っている。さらに,その余の各窃盗の犯行においては,乗用車を自ら窃取したほか,引ったくり役を買って出たこともあった。
   加えて,同被告人は,父の暴力により家庭内が不和になったことなどを契機に同級生であった被告人A1と交遊するようになったものであるところ,強盗致傷等の罪により2回中等少年院送致の処分を受け,少年院仮退院後の保護観察中に判示第1の各恐喝の犯行を敢行し,さらにその余の判示各犯行を重ねたもので,規範意識及び更生意欲の欠如は著しい。
   以上の諸点に照らすと,本件強盗殺人等については,本件被害者の殺害はあらかじめ計画したものではないこと,判示第4の強盗傷人については強取の点は未遂に終わったこと,各犯行の被害品の中には,一部被害者に返っているものや押収されているものがあることのほか,判示第9の被害者に対しては5万円を支払い示談が成立したこと,被告人A1と比べて重大事件への関与は1件少ないこと,いまだ22歳の若年であること,日々事件のことを考えて日記を書き,反省の弁を述べていることなど被告人A2のため酌むべき事情を十分考慮しても,同被告人の刑事責任もまた,同A1と並んで極めて重大である。
 3 被告人A3について
   被告人A3は,本件強盗殺人等(判示第11)のほか,強盗傷人1件(判示第10),恐喝1件(判示第3の1),恐喝・傷害1件(判示第3の2),窃盗3件(判示第5,第6,第9)の各犯行を敢行している。
   同被告人は,本件強盗殺人等の犯行においては,本件被害者のバッグを奪ったほか,被告人A1及び同A2の暴行により抵抗不能の状態にあった本件被害者の顔面を更に2回くらい蹴り付け,殺害に際しては,自らもコードを引っ張って殺害の実行に加わった上,コードが切れて本件被害者がうめき声を上げたときその腹部を踏み付けてもいる。被告人A3については,兄である同A1らに追従していた面もあり,同被告人及び被告人A2に比べれば,積極性及び関与の程度においてやや劣るとはいえ,さしたる抵抗感もなく暴力を振るうなどし,最も重大な殺害行為においては他の被告人と同等の加担をしているのであるから,被告人A3の果たした役割もまた重要であることはいうまでもない。また,同被告人は,判示第10の強盗傷人の犯行においては,重心をかけてかかとで被害者の腹部を数回踏み付ける強烈な暴行を加え,判示第3の1の恐喝及び判示第3の2の恐喝・傷害の各犯行においては,共犯者に誘われるまま安易に犯行に加担した上,自らも脅迫,暴行を加えている。さらに,その余の各窃盗の犯行においては,引ったくりの実行者の体を支えたり,実行者を乗せたバイクを運転したりした。
   同被告人は,1歳のころに両親が離婚し,母と暴力団組長であった父の下を行ったり来たりしていたところ,非行を繰り返していた兄被告人A1の影響により小学生のころからシンナーを乱用し,中学2年時の平成14年に引ったくりやバイク盗により2回にわたり保護観察処分を受け,さらに平成15年には恐喝罪により初等少年院に送致され,平成16年4月少年院を仮退院した後,保護観察中に本件各犯行を敢行したもので,その間平成17年1月に正式に暴力団の組員となる決意をするなど,更生意欲の欠如や規範意識の鈍麻は著しく,非行性は相当深化している。
   被告人A3に関しては,本件強盗殺人等については,本件被害者の殺害はあらかじめ計画したものではないこと,各犯行の被害品の中には,一部被害者に返っているものや押収されているものがあることのほか,関与した重大事犯が比較的少ないこと,被告人A1及び同A2に追従した面もあること,各犯行時16歳であり,現在も17歳の少年であること,それなりに反省の弁を述べていることなどの酌むべき事情もあるが,以上の諸情状を総合考慮すると,被告人A1及び同A2と比較すればやや軽いとはいうものの,被告人A3の刑事責任も非常に重大である。
 4 被告人A4について
   被告人A4は,本件強盗殺人等(判示第11)のほか,強盗傷人1件(判示第10),窃盗8件(判示第2,第5,第7,第9)の各犯行を敢行している。
   同被告人は,本件強盗殺人等の犯行においては,判示第11の1(1)の被害者のバッグを奪うとともに,警察への通報を遅らせるためその靴を持ち去ったほか,被告人A1及び同A2の暴行により抵抗不能の状態にあった本件被害者の顔面を更に1回強く蹴飛ばし,被告人A2に指示されて同被告人とともに本件被害者を乗用車に運び込み,(中略)殺害に際しては,自らもコードを引っ